03話 ホレ薬のゆくえ
「できたぞ」
「おおっ、これが! この”エベレストのおいしい水”の中身が本当に!?」
エルフさんはホレ薬の製作にあたり、純粋な水を求めた。そこで家に買ってある”エベレストのおいしい水”二リットルのペットボトルを持ってきた。
するとエルフさんが謎パワーのミルディーラで、これをホレ薬に変えた……らしい。中の水はキラキラ光って、ちょっと神秘的だ。
「うん、この水はずいぶん混じりっけがないな。おかげでミルディーラの通りがよくて、まったく減衰せずにミルディーラをこめることが出来たぞ」
「つまり、これを飲むと?」
「ジョタロウにメロメロ。ジョタロウに性欲を感じてしまい、抱いてほしくてたまらなくなる。間違って意中の相手以外には飲ませるなよ」
「ムホォーーッ! ホッ、ホォウ!」
まさに悪魔の薬だ! 人の心を支配する邪悪な魔法薬を手にしてしまった!
さて、問題はこれをどうやって住原サユリに飲ませるかだが。
「うーむ、ムムム………………よしっ、幸いにも季節は夏! ならばこうしよう」
~住原サユリ・ハート奪取計画~
『あー、最近まったく暑いわね。たまんないわ』
『住原さま、冷たいお水をご用意いたしました。いかがでしょう』
『あら、気がきくわね山条。お礼にアタシが食べ終わったあとのアイスの棒あげるわよ。ゴクゴク』
~計画・全行程終了~
「と、いうわけだ! どうだ、完璧だ!!」
「お前、そのサユリという女の従僕か召使いなのか? 主をかどわかそうなど、大した悪党だな」
「さーて。そうと決まったのなら、明日までにこれをキンキンに冷やさないとね。ドライアイスも買ってこなきゃな。明日の学校で、彼女のわがままボディはオレのもの……ぐふふっ」
ペットボトルを持って部屋を飛び出し台所へ。
冷蔵庫の中にペットボトルを入れた丁度その時、玄関が開いて元気な声がした。
「ただいまー。お兄ちゃんいるー?」
妹の山条星奈だ。
顔は子供そのものなのに発育が良くて、最近けしからんエチエチボディになってきているので、目のやり場に困る。
「おう、お帰り……って、友達も来てんのか。いらっしゃい」
「よっ、お兄さんお邪魔ー」
「……どうも」
星奈の後ろには他に二人の女の子がいた。学校でもよく星奈といっしょにいる子たちだ。
ハツラツ系の堀那江琉ちゃんに、クール美人系の花京典美ちゃん。
堀那ちゃんはまぶしい笑顔であいさつしてくれるから良いが、花京さんの方はいつも嫌そうな顔をしているので苦手だ。
「みんなで居間で遊ぶから、こっち来ないでねお兄ちゃん」
「ああ、邪魔はしねーよ。オレも忙しいから部屋には来るなよ」
星奈と別れて部屋に戻ると、ゼーレさんとこれからのことを話しあう。
「さーて。とりあえずオレの役目はエルフさんをダンジョンに送るまでってことで良いんだよな?」
「うん、そこからは何とかする。あの蛮人どもの囲いを破って、回廊に行く手段はあるか?」
「ない。オレみたいな一般のガキは立ち入り禁止だ。『ダンジョンを見せてくれ』と言っても追い返されるだけだ」
「くううっ、いったいあそこへ行ける身分というのは、どういったものなのだ。何かしらの血統の一族でもなければいけないのか?」
「いや、そういうんじゃないが【ダンジョン探索士】って資格を持っている奴だな。資格を得るには自衛隊に入って訓練を受けるか、もしくはダンジョン庁の資格試験を受けるかだが」
もっとも受けるのは元警察官や自衛官やアスリートなど体力自慢や身体能力の高い連中。その中で審査を通るなんて無理な話だ。
「フム、要するに戦士としての能力を示す場で認められねばならんということか」
「てことで、それはオレに期待しないでほしい。とりあえず普段のダンジョン付近の資料映像を見せるから、それを見て意見を言ってくれ。そういった写真には事欠かないからな」
オレはPCをたちあげ、今まで撮ってきた写真を表示する。
「すごい術だな。こんなにたくさんの絵を映し出せるなんて。しかもどれもすごい精密だ」
「こっちじゃ、驚くほどのものじゃないんだけどな。で、これが普段のダンジョン周りだ。あそこまで人はいないが、常時自衛隊員が10人ほど張っている」
「なんだ、普段はこの程度なのか。これなら何とかなりそうだ。わが魔法で、これくらい突破してみせる」
「そうか。魔法使いのゼーレさんには簡単すぎる仕事か。ならオレは情報収集と、ほとぼりが冷めるまでの世話くらいでいいな。気が楽になった」
『国家権力粉砕』なんて口では言っても、何も出来ない雑魚だからね。
と、安心したら急にもよおしてきた。
「悪い、ちょっとトイレ行ってくる」
「トイレ? とは何ぞや?」
「聞くな。要は下半身のお仕事だ」
ふうっ、言葉が通じるとはいえ、ゼーレさんにはこっちの常識を教えていかないとな。
でないと、いちいち面倒だ。
妹の友達と出くわさないようにと思ってトイレ前に来たが、その期待は裏切られた。
クール系美少女な花京さんとバッタリ出くわしてしまった。
「あ……お兄さん」
うわぁ、よりによってこの子とこんな場所でバッタリか。
『気持ち悪いです。見ないでください。話しかけないで』
とか視線だけで言ってくる子なんだよな。
「あ、ああ。お先にどうぞ。オレはまだあんまりだし、後でもいいから」
「あ、いえ、私はその……お兄さんから先にどうぞ」
あん? 花京さんがオレに話しかけた?
いつもはなるべく話さないよう無視してる子なのに?
彼女を見ると、妙に顔を赤らめてモジモジしている。
まるで恋する乙女? オレに対し?
そんなバカな……ハッ!
「かっ花京さん! まさか冷蔵庫にあった”エベレストのおいしい水”を飲んだ?」
「え? ペットボトルの冷たいお水なら、星奈ちゃんが出してくれましたけど。みんなで飲みましたよ」
ギャーーッ!!
家族がいるのに、あの危険薬物入りのペットボトルを冷蔵庫に入れとくなんて、何考えてんだオレ!!