96話目
ジルヴァラのヤキモチ妬いた相手はノーチェ様でしたー(*´艸`*)
まぁ、主様が家に入れる女性なんて限られてますよね。
そう考えると、ソーサラさんはかなりレアケース。でも本人は、ジルヴァラ(ショタ)に夢中。
「ノーチェ様は、主様に何の用だったんだ?」
トルメンタ様に抱えられていたから匂いでも移ったのか、ソファに腰かけた主様の膝に乗せられ首筋に主様を埋めた状態の俺が問いかけると、ノーチェ様からはおっとりとした微笑みが返ってくる。
「ほら、急にお茶会のお誘いが来たのでしょう? ジルちゃんのお洋服が必要だと思って、届けに来たのよ」
「そうだったのか。ありがと、ノーチェ様」
そんなのんびりした会話をしている俺達が何処にいるかというと廊下で話すことでもないかと移動して、いつもの暖炉前のソファだ。
ソファに腰かけてるのは、俺を乗せた主様とノーチェ様だけで、トルメンタ様は用心棒よろしく姿勢良く立って待機してるし、フュアさんはプリュイと一緒にお茶を入れてくれたりしている。
「買い物帰りに寄ったの。だから気にしないで。ここまではあの人が送ってくれたのよ」
うふふ、と頬を染めて笑うノーチェ様は恋する乙女みたいで、『あの人』が指す相手が誰かすぐわかってしまう。
可愛いなぁと思って一緒になって笑っていると、主様が首筋へ顔をぐりぐりと押しつけてくる。
くすぐったさからやんわりと主様の頭を背後へと押し戻していた俺は、はたと気付いてノーチェ様の方をバッと見る。
「なぁ、一応主様って男だし、貴族の女の人が一人で訪れてても大丈夫なのか?」
「あら、ジルちゃんはおしゃまさんね。でも、大丈夫よ。念のためメイドは連れて来ているし、幻日様相手でそのような疑いを抱く愚か者はいないから」
うふふ、と笑って紅茶を飲むノーチェ様はいつもとおりのおっとりとした微笑みなのだが、何処かゾワッとするものを感じた俺は反射的に身震いしてしまい、背後の主様からの拘束が強まる。
「ロコが気にするのなら、くだらないことを囀る人間の口など塞ぎますが?」
首筋からやっと顔を上げた主様が名案とばかりに呟くのを聞き、この分なら本当に大丈夫そうだなと思いながら、口から出そうになった俺の方の呟きは紅茶と一緒に飲み込んでおく。
「実は明日のお茶会、ナハトもご招待いただいてるの。うちの馬車で一緒に行きましょうね」
楽しそうなノーチェ様の言葉に逆らえず……まぁ、逆らう必要もないので、俺は主様を振り返ってお伺いを立てる意味でその表情を見てみる。
何事もなかったようにぽやぽや微笑んでるので良しと判断して、ノーチェ様へと視線を戻した俺は「お願いします」と言ってペコリと頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いするわ、ジルちゃん。ナハトったら、ジルちゃんと一緒じゃなきゃ出ないって言うんですもの」
困った子よねぇ、と言いながらもノーチェ様の目は優しく細められていて、ナハト様が可愛くて仕方ないのが見て取れて、何だか俺まで嬉しくなってくる。
ナハト様はすっかり上手くノーチェ様に甘えられるようになったらしい。
明日会ったらからかってやろうかな、とニマニマしていると、ノーチェ様の微笑ましげな眼差しは俺へも向けられていることに気付いてしまい、一気に面映ゆさを覚えて身悶えしたくなる。
「それにね、ニクスもジルちゃんが来るなら、お茶会出ても良いって言ってくれたのよ?」
「え? ニクス様が?」
「そうなの。ジルちゃんが一緒なら楽しいかもしれない、って言ってくれて。早速新しいお洋服作っちゃったわ」
うふふふ、と笑うノーチェ様の背後で、お茶の用意をしてくれてるフュアさんもキリッとした表情ながら嬉しそうだ。
「そうなのか。二人に、俺も二人とお茶会行けるの楽しみだって伝えといてくれよ」
「うふふ、わかったわ」
最後までお上品ながら嬉しそうに笑って、ノーチェ様はトルメンタ様と共に迎えに来た馬車へ乗って帰っていった。
残ったのは、当たり前だが主様と俺、片付けをしてくれているプリュイ。それと、
「お夕飯作りのお手伝いをさせていただきます」
キリッと微笑むフュアさんだ。
●
フュアさんは荷物持ちと付き添いの役目もあったが、明日の俺の準備を手伝ってくれる役目もあって、ノーチェ様についてきてそのまま泊まるという話になっていたらしい。
なので、ついでに夕ごはんの準備も手伝ってくれるつもりらしい。
手伝ってくれると言われても今日は手早く牛丼もどきとサラダにするつもりだったから、せいぜい野菜を刻んだりお皿を運んだりするぐらいしか頼むことがなかったが、それでもフュアさんは気にした様子もなくキビキビと動いている。
しかも、いつの間にか頼んでいない調理器具の片付けまで完璧に終わっていて、俺は出来上がった牛丼もどきを前に瞬きを繰り返す。
「手伝いありがとな、フュアさん、プリュイ。フュアさんとプリュイの分はここに置いとくから、よかったら食べてくれよ」
料理を運ぼうとしてくれているフュアさん、片付けをしてくれているプリュイ、それぞれの方を向いてお礼を言ってからテーブルの上に置いた二人分の料理を示すと、
「お気遣いありがとうございます」
「ありがトウございマス、ジル」
フュアさんからは凛々しい微笑みが、プリュイからはふるふるとした癒し系物理的涼やかな微笑みが返ってくる。
「ロコ」
料理を運んでくれるフュアさんを見送り、プリュイに戯れながら片付けをしていると、待ちきれなくなったのか主様が迎えに来てくれて、小脇に抱えられてしまった。
いつもならキッチンで調理中もぽやぽや側にいる主様だが、今日はフュアさんもいたから遠慮したのか、先に一人でテーブルに着いて待っていたのだ。
主様に運ばれた先では、きちんとテーブルセッティングがされていて、俺が置いた時より高級そうに見える。
例えそれが牛丼もどきだろうとも。
どうでもいいことだが、何故牛丼『もどき』なのかというと、主様収納から出て来た何かわからない謎の肉だからだ。
ちょっと切って焼いて食べてみたら牛肉に似た味をしてたので、牛丼に食べたくなって牛丼にしてしまった。
主様が倒したモンスターか動物か、はたまた貰った肉なのかも不明らしいが、美味いは正義だ。
「美味しいなぁ、この肉……」
今日は赤身だが、所謂霜降りっぽい部位もあったし、そこはすき焼きみたいにして食べるのもいいかもしれない。
「甘辛い味の肉とご飯です」
主様は相変わらずそのまんまな感想を呟いているが、表情はいつもよりぽやぽやしてるし、食べる速度も落ちないようなので口には合ったようだ。
「口に合ったみたいで良かった」
へらっと笑った俺は、自分の分を片付けることに集中していたのだが、珍しく主様が空の食器をジッと見つめていることに気付く。
「主様? 食べ足りなかったなら、おかわりあるけど……」
「お願いします」
もしかして、と思って口にした言葉に、主様の表情がぽやぽやを増し、少し弾んだ声と共に空になった丼を差し出される。
これは相当気に入ったらしい。
味付けと言うより、丼という食べ方が楽で気に入ったのかもな。
そうだとしても……。
「やっぱり嬉しいよな」
ふへへと気の抜けた笑顔を浮かべながら呟き、俺は受け取った丼を手に立ち上がると、炊飯器と鍋が置かれているワゴンへ近寄っておかわりをよそって主様へと差し出す。
「ありがとうございます、ロコ」
「たくさん食べろよ」
「はい」
ぽやぽやと頷いた主様は、俺がたくさん食べろと言ったせいではないだろうが、結局この後二回おかわりして炊飯器と鍋を空にしてしまった。
食後のお茶をゆっくりと楽しむ主様の姿はいつも通りで、食べ過ぎて苦しんだりしている気配は欠片もなく。
まだまだ主様のこと知らないんだな、とちょっと感動してしまったのは内緒だ。
いつもありがとうございますm(_ _)m
100話が見えてきちゃいましたよー(。>﹏<。)
100話行ったら、適当なキャラ紹介でもぶっ込もうかと思います。
いいね、評価などなど反応ありがとうございます(。>﹏<。)
やっぱりわかりやすい反応いただくと燃えちゃいます(*ノω・*)テヘ




