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94話目

ジルヴァラとプリュイのコンビが書いてて楽しいです(^^)


次はある意味、白き害虫かなぁ。


まだまだジルヴァラと接触予定はありませんが。

「私の方が強いです」


「おう、わかってるから。大丈夫だって」


 何回目かわからないやり取りを繰り返し、俺はへらっと笑って大きな猫みたいになっている主様の髪をそっと撫でる。




 今現在、朝ごはんの片付けを終えた俺は、主様から贈られた本棚から持ってきた本を自室のベッドに座って読んでいるのだが、膝には同じ言葉を定期的に繰り返す主様が頭を乗せて寝転んでいる。

 先ほどの『エノテラ知ってるか』に俺が過剰反応してしまったため、俺がエノテラが好きだと勘違いしたのか、なんか拗ねたみたいな状態になってしまったようだ。

 まさか主様からその名前が出るとは思わず、自分でも突っ込みたくなるぐらいの過剰反応してしまった自覚はあるので、面倒臭がらず主様の呟きに答えてはいるが、さすがにそろそろ疲れてきた。

 ま、そんなところも含めてなんか可愛いので、俺は本を読みながら惰性で主様の呟きに応えて、時々頭を撫でておく。

 今読んでるのは、おじーさんと最果ての赤だ。本当にタイトルにも内容にも統一感がないけれど、売れているらしい、おじーさんシリーズ。

 子供向けの本らしく字は大きめで挿絵もあるのだが、不思議と主人公なはずのおじーさんの絵は無い。

 もしかしたら他の本では描かれてるのかもしれないが、今のところ俺の見た物ではおじーさんの絵は見ていない。

「……そういえば、第二王子のお茶会に呼ばれました」

 主様が膝にいるので腕の力だけでそこそこ重い本持っていたため、ちょっとぷるぷるとしてきたな、と読書を中断しようかと悩んでいると膝の上からそんな報告が聞こえてくる。

「第二王子……グラナーダ殿下だよな。なら、お礼言いたいから俺もついていきたいんだけど、駄目かな?」

「……ロコにお誘いが来ました」

 閉じた本をベッドに置いて、膝の上の主様へお伺いを立てるように訊ねると、返ってきたのは何処となく憮然とした響きの呟きだ。

「ん? 主様のついでに俺もいいよ、じゃなくて、今度は俺にもお茶会の招待状をくれたってこと?」

 簡潔過ぎる主様の呟きに、色々足してこうかな? という答えを推測して確認してみると、微妙な間の後ゆっくりと頷かれた。

「……はい。私の名前の招待状の他に、ロコの名前での招待状も来ています」

 俺の膝上でぽやぽやしてるが、主様の表情からは忌々しげな雰囲気も漏れてきている気がする。

 変なのに絡まれた上、俺が毒物を食べてしまったことを思い出して不快な気分になってしまったんだろうが、あえて俺は気付かないふりをする。

 ここはラノベの典型な鈍感系主人公を真似させてもらおう。

「そっか、なら一緒についていってもいいだろ?」

 髪を梳きながら膝上の主様の瞳を覗き込んでおねだりしていたら、不意に主様の腕が伸びて来てそのまま一緒になだれ込むようにベッドへ押し倒される。

「……絶対に私から離れないでください」

 耳元で囁かれる声は切なげで、あの一件は主様にとってかなりのトラウマになってしまったことを痛感する。

 いつも通りぽやぽやしてたからすっかり気にしてないのかと思ってたけど、そうでもないのかもしれない。

 不謹慎だけどちょっと嬉しくなって、ちょっとだけ甘えるように主様の髪へ頬を擦り寄せる。

 気付かれてはいるだろうが拒否される気配はなくて、安堵と幸福感に胸の奥がほわほわして落ち着かない。

「わかった、約束する。で、お茶会いつなんだ?」

 主様に押し潰されながら、ニヤけそうになる顔で首筋辺りに埋まっている後頭部へ問いかける。

「明日ですが……?」

「へぇ、明日か…………って、明日かよ!?」

 何でもないことのように返ってきた答えに俺もそのまま流しかけて、言われた内容を理解した瞬間、ガバッと勢いよく体を起こそうとして……失敗する。



「主様ぁ、退いてくれって……」



 いくら細身とはいえ、脱いだらすごい系筋肉質な主様の細マッチョな体は六歳児の俺には押し退けられなかった。

「……寝ちゃってたし」

 結局主様は退いてくれず、いい感じの重さと主様の体温と匂いに包まれ、俺が眠気に勝てる訳もなく眠ってしまったようで、目が覚めた時には窓の外は夕暮れの風景だった。

 主様の代わりなのかきちんと布団が掛けられていて、主様の姿は何処にもないようだ。

 布団から抜け出してベッドからのろのろと降りながら、欠伸を噛み殺して周囲を見渡すが、やはり主様の姿はない。

 くしくしと目を擦りながら、部屋を出てボーッと廊下を歩いていると……、



「ジル……?」



 また掃除中のプリュイにぶつかって埋まってしまい、ため息を吐いたプリュイからまた抱っこで運ばれることになった。

「ジル、眠かったのデスか?」

「違うって。主様に押し潰されてたら寝ちゃってたんだよ」

 プリュイの心配半分苦笑い半分な問いかけに、俺は唇を尖らせてブツブツと文句を口にする。

「主様に退いてくれって頼んだのに、ギューッて潰されてたんだよ」

 おかげでぐっすりだったんだけどぉ、ともう記憶の中でしか見られないだろう女子高生みたいな口調で語尾を伸ばすと、プリュイからふるふると笑われる。

「ジルは幻日サマが大好キなんデスね」

「おう、当たり前だろ。もちろん、プリュイのことも好きだぞ?」

 意趣返しではなく素直な気持ちから、へらっと笑ってプリュイのぷるぷるボディに抱きついて好意を伝える。

 前世では照れ臭さもあってちょっと濁したりとかしたけど、今の俺は見た目子供だし? 好意はきちんと言葉にして伝えたい。

 人間いつ死ぬかわからないと実感してしまったから、伝えないで後悔はしたくないし、悲しいすれ違いとか起きるのも嫌だからな。

「ワタクシも、ジルのコトが好きデスよ」

 優しい声と一緒につるつるひやひやぷるぷるな頬がピタリと寄せられ、俺は嬉しさからふにゃふにゃと笑いながら、頬擦りをして返しておく。

 吸い付くような肌とか聞くけど、まさに吸い付かれるようなひんやり触感が面白い。

 全くベタついてはいないのに肌にピタリと貼りつく感覚は初めてで面白い。

「へへ、俺達両思いだなー」

「そうデスね」

 ペタリと頬を合わせて二人で笑っていると、寝起きで目やにかよだれでもついていたのか、触れ合っていた頬がでろんと変形して瞬き二つほどの間に顔を撫でられ、すぐ元の姿へ戻る。

 傍から見たなら、子供がスライムに捕食されかかったB級ホラー映像だったかもしれないが、ここには俺達以外は誰もいないので誤解は生まれないだろう。

「……今サラですガ、目的地ハ何処デショウ?」

「あ……えぇと、目的地だよな?」

 ホラー映画ならタイトル何になっただろう、とかどうでも良いことを考えていた俺は、俺を運んでくれているプリュイからの質問に、瞬きを繰り返して行き先を考える。


 思いがけない昼寝から目覚めて、俺は何処へ行こうと思ってたんだっけ?


 寝起きからの記憶を辿った俺は行き先を思いつき、プリュイの腕の中でポンッと手を打つ。

「目的地、主様で」

「フフフ。かしこまりマシタ」

 ふるふると体を震わせて笑ったプリュイは、主様の居場所がわかるらしく自信満々に頷いて歩き出す。

「プリュイ、主様の居場所わかるんだ?」

 プリュイの一切の迷いがない足取りに疑問を抱き、俺はプリュイの腕の中からプリュイを見上げて訊ねる。

「コノ結界内ナラ、ほとんどのコトがわかりマス。もちロン、幻日サマには劣りマスが」

「へぇ、すごいな。じゃあさ、俺の居場所とかもわかるのか?」

「ハイ。ジルのコトは、一瞬たりトモ、見失いマセン」

「お、おう」

 軽い気持ちから付け足した問いに、思いがけず重々しい答えが即座に返ってきてしまい、俺は若干引き気味になりながらコクリと頷く。

 監視されてるのが嫌な訳じゃないが、やたらと真剣な眼差しで見つめられてちょっとドギマギしてしまったのは内緒だ。

 俺がたまに変なとこで寝てたり、勝手に出かけたりしてたから、プリュイにも警戒されてるのかもしれない。

「プリュイがいれば、変な侵入者とか来ても大丈夫だな」

 誤魔化すのも兼ねて、へらっと笑いながらプリュイの体をぺちぺちと軽く叩くと、返ってきたのは創造主である主様と良く似てみえる美しい微笑みで。



「ワタクシがいる限り、我ガ家ニハ、害虫ナド近寄らせマセンから」



 美しく不敵な微笑みに目を奪われ、俺はプリュイに見惚れたまま主様の元へと無事に運ばれていった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


やっと冒険者になるという目的を思い出せました。

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