93話目
今回短めですm(_ _)m
フシロ団長、胃に穴が空かないか心配になります(´・ω・`)
主様とプリュイと一緒にジャイアントボアなる見たこともないモンスターの解体をする夢を見て目覚めた俺は、顔を洗いに行こうとベッドから降りたところで、部屋に響いたノック音で足を止める。
「どうぞー?」
わざわざノックするなんてフシロ団長かなと思って許可を出すと、やはりというか開いた扉からフシロ団長が顔を覗かせる。
「こんな朝早くどうしたんだ?」
入口から入ってこようとしないフシロ団長に首を傾げて訊ねると、やっとのろのろ動き出して部屋へと入ってくる。
「あいつはまだ寝てるんだな」
「んー、起きてはいるかもしれないけど、ベッドで呼びに来るのを待ってることが多いな。起こしたいなら、声かけるけど?」
だいぶ俺との生活に慣れてくれたのか、起こすぐらいでは主様が気分を害すことがないとわかってきた俺は緩い笑顔で気軽にそう聞き返したのだが、フシロ団長の表情は暗いというか疲れている?
「いや、起こさなくていい。……ジルヴァラにお願いなんだが、もしもあいつが色々ヤバそうなことをしでかしそうだとわかった時、俺と一緒に止めてくれるか?」
その疲れ切ったフシロ団長からされたよくわからないお願いに、俺はしばらく無言で首を傾げていたが、フシロ団長があまりにも疲れている様子だったので、まぁいいかと頷いておく。
「止めるのは構わないけど、あくまでも俺は主様の味方するからな?」
「そういう類のことにはならないから、心配するな。どちらかと言うと……というか、あいつがやり過ぎそうな時に止めるだけだ」
そんな不明瞭な言葉で俺の協力の約束を得たフシロ団長は、少しだけ表情を明るくして帰っていったが、その背中は何か疲れ切ってるように見えた。
昨夜の話し合いで揉めたのかもしれないなぁと考えながらボーッと廊下を歩いていた俺は、掃除中のプリュイにぶつかって埋まってしまい、安全のため抱えられて運ばれることになった。
●
今日の朝ごはんもいつも通り暖炉前のテーブルだ。
今は寒いから暖炉前でちょうどいいが、なんて思ったりもするけれど、夏場でも結局ここで食事をしていそうな気はする。
ダイニング? っていうのか、そういう部屋ももちろんあるが、正直落ち着かない。
テーブルを挟んで主様と向かい合わせで朝ごはんを食べながら、俺はふと思い出したことを口にする。
「そういえばフシロ団長、朝ごはん食べていかなかったな」
フシロ団長と一緒に朝ごはん食べられるかなと昨夜から考えていたメニューは不発となり、いつも通りの朝ごはんだ。
別にいつも通りって手を抜いた訳じゃなくて、ただフシロ団長向けに主食パンにして一品増やすかなぁぐらいの気持ちだったんだけど。
という訳で、今俺達が食べてるのは俺の好みで主食が白ご飯……ライスだ。
まぁ、洋食でもチキンライスとかピラフとか炒飯とかご飯物もあるんだけど、やっぱりパンとかパスタのイメージが強い。
「一応、騎士団長ですから」
俺のズレまくった思考を他所に、ぽやぽやと他人事のように呟く主様は、ナイフとフォークで綺麗に鮭の切り身を解して食べている。
ムニエルにしたからパンでも合わないことはないだろうけど、俺は白いご飯の気分だったから、白いご飯だ。
一応パンも用意したけど、主様は俺と同じで良いとムニエルをおかずに白いご飯を食べている。
洋風な食器に盛っているので洋食っぽいが、箸休めはピクルスっぽく見えてるだけの塩で揉んだ浅漬けきゅうりだ。
あ、でもムニエルは洋食か。洋食……だよな?
それはともかく、浅漬けきゅうりを食べている主様からポリポリ良い音がしてきてるのが、違和感あり過ぎてちょっと面白い。
主様はとんでもない美人だし、美人は何してても美人だけど。
「ロコ?」
「あ、ごめん。主様が食べる姿に見惚れてた」
いくら何でも見過ぎたかとへらっと笑って謝ると、テーブルを挟んで向かい合っている主様から視線を外して、目の前の食事へ集中することにする。
「ん、我ながらなかなかの味だ」
自画自賛していると、主様もぽやぽやして頷いてくれてるのが見えて、さらに嬉しくなる。
生肉と野草に勝てたなら良かった。
ニマニマしながら食べていたから、俺はとても油断していたんだろう。
なんて格好つけて言うのも変だけど。俺はただ、主様からその名前が出るとは思ってなかっただけだから。
「エノテラという名に聞き覚えは?」
一瞬世界から音が消えたかと思ったぐらいの衝撃に、俺は目を見張って息を呑む。
デフォルト名覚えてないけど、ヒロインちゃんの名前とか主様から出る日が来るんじゃないかっていう俺にとっての最悪な想定はしてたんだけど、まさかここで推しだったメインヒーローの名前を聞くとは思わなくて、素の反応をしてしまった。
もちろん、今の俺の推しは主様一択だからな?
誰に聞かれた訳でもないのに脳内で言い訳していた俺は、主様の質問に対する答えを返してないことに気付かない。
「知っているんですか?」
それに気付いたのは、ひやりとした主様の声と同時に伸びて来た手が俺の頬を挟んだ瞬間だ。
「……ちゅよい、ぼうけんしゃだってうわしゃきいた」
かなり喋りにくいけど、これ以上黙っているとさらに疑われそうなので、何でもないこと伝えるため、知っていることを伝える。
実際、メインヒーローの名前はすでにちらっと聞いていた。ソルドさん達から本当にちらっと。
それが乙女ゲームの攻略対象者でメインヒーローだときちんと繋がったのは、主様が『洗浄』してくれた剣がきっかけだけどな。
その剣はまた主様の収納に仕舞われている。
主様は俺の頬をむにむにと揉んでから、フンッと鼻を鳴らすような珍しい仕草を見せる。
「私の方がはるかに強いです」
気にするとこそこなんだ、と思ったがその突っ込みはひとまず飲み込んで、あちゃりみゃえだりょ、と返しておく。
しまらないので、俺の頬を揉むのは止めて欲しい。
いつもありがとうございますm(_ _)m
相変わらず、肉体言語の方が得意な主様。
ジルヴァラのほっぺたは、ふわふわもちもちのショタほっぺです←