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92話目

毎度毎度すみません!感想、本当にありがとうございますm(_ _)mまた書き忘れてしまいました(。>﹏<。)


もちろん、評価も、いいねも、ブクマも大変嬉しいです\(^o^)/

 すぐ帰ってしまうかと思ったフシロ団長だったが、まだ主様に話さないといけないことがあるから泊まり込む予定だと聞いた俺は、ある事を思いつき一緒にお風呂へ入りたいとおねだりしてみた。

 かなり渋い表情をされたが、主様を見習って無言で見つめるという目力で勝負してみた。主様に向けて。

 何とか許可を得られたので、苦笑いして見守ってくれていたフシロ団長に飛びつき、無事二人での入浴となった。




「あ、差し入れありがと。どれも美味しかった」

「そりゃ、良かった。……しかし、先程から思ってたが、辛い物が混じっていたか? 口周りが赤いようだが」

「主様から、舐められた後に力いっぱい拭かれたせいだな」

「力いっぱい拭かれたのはまだわかるが……何故舐めるんだろうな」

「さぁ」



 そんな会話をしながら俺が何してるのかと言うと……、



「フシロ団長の背中、大きいなー」

 体洗用のスポンジで、ゴシゴシとフシロ団長の背中を洗っていた。

 俺と主様のせいでお疲れな様子のフシロ団長に、お背中流しますよーとしてあげたかったのだ。

 ヒロインちゃんと違って俺には癒やす能力はないから、体いっぱいで感謝を伝える代わりにゴシゴシと洗ってるのだが、フシロ団長からは「もっと強くても大丈夫だぞ」と恐ろしい一言が聞こえてくる。

「これが今の俺の力いっぱいだって。もっと鍛えて、フシロ団長に『もう少し弱めろ』って言わせてみせるからな」

「はは、楽しみに待ってるぞ?」

 全身使って全力で洗ってたので顔まで泡まみれな俺を見たフシロ団長は、声を上げて笑って俺の言葉に楽しげに頷いている。

「ありがとう。さぁ、今度はおれが洗ってやろう」

 上機嫌なフシロ団長は、自らザバッとお湯を浴びて泡を流してしまうと、何となく嫌な予感がして逃げ出そうとした俺を捕まえて、遠慮するな、と笑っている。

 髪が濡れているせいかいつもより大人の男性な雰囲気マシマシなフシロ団長に見惚れてる間に、風呂椅子に座らされていて気付いたら大きな手で体を洗われていた。

 主様の例があるので思わず嫌な予感を覚えたが、よく考えればフシロ団長は三児の父だし、トルメンタ様の洗い方は普通に上手かった。

 主様は殺る目的以外であまり他人に触れないから、力加減苦手なのかもな、と思わず遠い目をして考え込んでいる間に、髪まできちんと洗ってもらって、気付いたら抱っこ状態で湯船に浸かっていた。

「あれ、いつの間に……ありがと、フシロ団長。さすが『パパ』って感じだよな。主様、髪洗うのは上手なのに、体洗おうとすると俺を転がしちゃうんだぜ?」

「そうか。まぁ、あいつに他人の世話なんか出来るとは思えないな」

 ははと苦笑いしたフシロ団長の大きな手が触れるのは、主様の全力なお世話のおかげでまだ赤さが引いてないらしい俺の口周りだ。

「俺と出会う前は、生肉食べてその辺の野草食べてたんだってさ。いくらお腹強くて何食べても平気だからって、美味しくないよな、そんな食べ方…………実は美味しいのか?」

「美味しくないから、絶対に試すなよ?」

 もしかして、と思って呟いてたら、フシロ団長から肩を掴まれて本気で止められた。

 前世ではお高い牛肉もしっかり火を通して食べるタイプだったからな、俺は。そんなに心配しなくても、生肉は挑戦しない……とは思う。

「ほら、湯当たりする前に上がるぞ。あそこで、うろうろしている奴もいるからな」

 うろうろしている奴? と首を傾げながらフシロ団長に抱っこされて、ザバッと勢いよく一緒に湯船を出た俺の視界に入ったのは、浴室と脱衣所を仕切る曇りガラス製の扉越しでも鮮やかな赤色だ。

「……風呂上がりに拭いてくれる気なんだよ」

「そ、そうか」

 何ともいえない顔をしたフシロ団長は、扉の手前で俺を床へと降ろしてくれたので、俺は自分で扉を開けて待ち人のいる脱衣所へ足を踏み入れ……る前にバスタオルで包まれて抱き上げられた。

「ロコ、おかえりなさい」

「お、おう」

 何だか洗われるじゃがいもにでもなった気分で主様による豪快なタオルドライを受ける俺を、フシロ団長が隣で体を拭きながら困ったような笑顔で見ている。

 悪意があるなら止めてくれるだろうが、主様は善意からの行動だから止めにくいんだろうな。

 俺も止めにくくて、多少の痛みとかは我慢して拭かれている。さすがに顔面とか……股間とか、敏感な部分は多少の力加減はしてくれてるし。

「次は髪を乾かしましょう」

 終わったぜ、と言わんばかりのキラキラぽやぽやして、そのまま髪を乾かそうとしていた主様をフシロ団長が止めてくれ、服を着てこい、と顎で示してくれる。

 いくら主様に管理されてる屋内でも、湯上がりにずっと全裸でいたくはない。

「ちょっと待ってて」

 髪用のタオルを手に待っている主様へへらっと笑いかけると、俺はぱぱっと服を着込んで主様の前へと立つと、向かい合ったまま先程の豪快なタオルドライは何だったんだというぐらいの絶妙な力加減で髪を拭かれる。

「……ん。終わりましたよ、ロコ」

「ありがと。主様、フシロ団長おやすみなさい」

 満足気な顔で乾かし終えた俺の髪を梳いている主様に、俺は主様にお礼を言って、主様とフシロ団長へ就寝の挨拶をしてから迎えに来てくれたプリュイと共に自室へと向かう。

 これから主様とフシロ団長は、大人の話し合いがあるらしいから、俺はおとなしく寝ておこう。

 そう考えてベッドへ潜り込むと、プリュイが本を持ってベッドの脇に置かれた椅子に待機していることに気付く。

「読み聞かせしてくれるのか?」

 枕元のランプだけ照らす薄暗い部屋の中で、プリュイは半透明な体をテラテラ輝かせながら頷いている。

「ありがと。……じゃあ、お願いするよ」

 薄暗いせいもあり、深い水底にいる気分になる青い体を見つめた後、俺は目を閉じてプリュイの優しい声に耳を傾ける。




「ジャイアントボアの解体のヤリ方にツイテ……──」




 読み上げられる本がモンスターの美味しい食べ方の本だったせいか、夢見はあまり良くなかった。

「エノテラという名前に聞き覚えは? お前に聞くだけ無駄だろうが、念のため確認だ」

 向かい合って座る相手の顔は暖炉の炎に照らされていて、妖しげな輝きの瞳が妖しさを増している。

 意思の弱い者なら見つめられるだけで正気を失い、こいつの信奉者になるか恐怖で狂うかもしれない。

 一番よく見つめられているであろうジルヴァラは、確かにこいつへの好意を体いっぱいで叫んでいるが、今のところ全くの正気にしか見えない。

 畏怖の対象でしかないこいつを可愛いと宣うところは、ある意味正気を疑われるかもしれないが。

「誰ですか?」

「今日のお前の留守中に襲ってきて、魔法人形に撃退された勇気溢れる若手有望な冒険者のお名前だよ」

 俺の皮肉をたんまりの乗せた台詞に、ゆっくりと瞬きをした宝石のような瞳の色がどろりと暗さを増す。

 それを見て取った俺は、カツカツとテーブルを指で叩きながら、ゆっくりと首を横に振る。

「手を出すことはいくらお前でも許可出来ない。で、やっぱり知らないんだな?」

「……魔法人形からその報告は受けました。ですが、やはり知りません」

「お前の場合、色んなところで恨みを買っているからな。しかし、今回は逃げ出したという連れの言葉がある」

 俺の言葉にゆっくりと瞬きを繰り返す様子を見る限り、あの魔法人形は本当に全てを報告していなかったようだ。

 魔法人形が忘れるなどということは有り得ない。あえて、伝えなかったのだ。


 先ほど入浴前、俺が一人になった際に魔法人形の方から『幻日サマには、ジルが狙わレタとはマダ伝えてマセン』とこっそり囁いてきた時は本当に驚いた。


 ドリドルから伝え聞いた話の通り、明らかに感情溢れる態度で、情報を伝えてこいつが暴走する危険性を察して俺へ伝える役目を任せてくるとは、主が規格外だと創造物すら規格外らしい。

「魔法人形を責めるなよ。今回実行犯であるエノテラの方は唆されただけで、逃げ出した連れである白髪の少女の狙いは…………ジルヴァラだったそうだ」

 言い終えた途端、地面に押し付けられるような圧に襲われ、俺はグッと歯を食いしばって耐える。

 さらにこの間の比ではない速度で周囲が凍りつき、窓からはピシリピシリとひび割れるような音が聞こえてくる。

 念のため周囲から人払いをしておいて良かった。

 遠ざかりそうな意識の中、俺はそんなことを考えながらフッと笑ってみせ、今にも飛び出しそうなあいつを睨む。

「残念だが未遂な上、証言者は魔法人形のみ、しかも固有名詞は口にしていない。捕まえるには弱い。外面が良いのか、冒険者ギルドでは人気者らしい上に、結構な大物にも気に入られてるそうだ。確固たる証拠もなしに手出しは出来ない」

 一つ一つ子供に言い聞かせるように話していくと、少しは落ち着いたのか圧は弱まり、氷の世界がゆっくりと溶けていく。

「……この間も来たのに、ですか?」

「『あの子は正義感が強いから、モンスターに見えるような魔法人形を使ってる方が悪いんですよ!』だそうだ」

「なんですか、それは……」

 そのあまりにもな台詞に、一般常識とはかけ離れているこいつですら呆れを隠さず、俺を見つめて首を傾げている。

 あまりに呆れたせいか、こいつの怒りさえ薄れたようだ。ある意味快挙かもしれない。

「冒険者ギルドの受付嬢の言葉だよ。エノテラが冒険者だとわかった時点で騎士に冒険者ギルドへ向かわせ、連れだと思われる白髪の少女のことを聞き込みさせたんだが、その時に騎士が受付嬢からそう言われて叩き出される勢いで帰って来たらしい」

 俺の言葉を聞いて無言でニコリと微笑む姿は俺でも見惚れそうになったが、美し過ぎる微笑みの意味するものに俺の背筋に悪寒が走る。

「おい、今はまだ手出しするな。……向こうから何かしてきたのなら仕方ないが、こちらから手を出すと面倒になる。──お前はともかく、ジルヴァラの身が危うくなる」




「そうですか。……なら、危うくするモノ、全てを消し去ればいいでしょう?」




 ふふふ、と楽しげに嗤う人外に、俺は怖気立つ自身を圧し殺して不敵に笑って…………全力であいつを止めた。





 最終的には、



「ジルヴァラに言いつけるぞ」



というかなり情けない切り札を繰り出すことになった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


受付嬢の台詞、自分で書いたくせに「はぁ!?」と思ったのは内緒です(*ノω・*)テヘ


たぶんエノテラくんは、彼女は俺が守らないとという正義感で燃えてるんじゃないですか、知らんけど。

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