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90話目

ついに90話目……100は行きますね、これ……。


短くサクッとって何だったんでしょう(´・ω・`)

「ジル、幻日サマがお帰りデス」



 プリュイのそんな優しい声で微睡みから目覚めた俺は、先ほどまで見ていた夢が夢だったせいで、カッと目を見開いてプリュイの姿を探す。

「っ、プリュイ! 無事か?」

 思わずそう叫んだ俺に、不思議そうにふるふるとしているプリュイは、当たり前だが何ともなく無傷で、剣はどこを見ても突き刺さってなんかいない。

 俺の夢の中でプリュイは…………リアル黒○げ危機一発をやらされてて、剣を突き刺されていた。

 俺は何とか抜こうとしたけど、ビクともしなくて……そこからどうなったかは夢の中なので朧げだ。

 誰かが助けに来てくれた気もしたけど……。

 こびりついた不安感を掻き消したくて、俺は起き上がった勢いのままプリュイの体へ飛びつく。

 優秀な衝撃吸収材でもあるプリュイは動じる事無く俺を受け止めてくれ、そのまま抱き上げられる。

 もちろん剣の刺さった跡なんかある訳無い。でも、何となく気になってしまい、夢の中で剣の刺さっていた辺りを両手でもにもにと揉み込む。

「ジル? 揉んデモ、ワタクシからミルク出まセンよ?」

「え? あ、違うから……」

 もにもにした場所が胸辺りなせいか、それとも子猫がよくやるミルクが出やすくなるという前足でのもみもみと思われたのか、どちらにしろ全力で訂正したい勘違いだったので、俺は慌てて首を振っておく。

 主様に聞かれて『魔法人形からミルクが出るようにしました』とか、誰得な機能つけられたらどうしようとか考えてしまう辺り、まだ寝惚けてるのかもしれない。

「……ミルク出た方がいいですか?」

「絶対いらない!」

 自分の脳内の声かと思って反射的に全力拒否した俺だったが、ふと声の聞こえた方を振り返るとそこには部屋の扉を開けた体勢のまま、少し悲しげにぽやぽやしている主様がいた。

「あ……怒鳴ってごめん。でも、本当にいらないから。プリュイも改造されそうになったら言えよ? プリュイは俺が守るから」

 主様が善意で言ってくれてるのはわかるが、ここで流されるとプリュイが色んな意味でヤバい改造されそうだ。

 ついでに本人にもしっかりと伝え、ぷるぷる半透明ボディをギュッと抱き締めておく。

「ワタクシも、ジルを守りマス」

 キリッとしたプリュイからはそんな嬉しくなるような宣言が返ってきたのだが……何か忘れてるような?



「ロコ……絶対しませんから」



 いつの間にか張り付くような距離にいた主様が、しょぼんとした表情で俺の服を引っ張っていた。

 服を引っ張ってる主様を引き連れ、俺はプリュイに抱えられて暖炉前へと移動していた。

「これは……ロコへの差し入れです」

 朝ごはんしか食べていなかった俺は、そう言って主様がテーブルに広げてくれた色々な料理が包まれている紙包みに目を輝かせていたが、微妙な間のある主様の言葉に首を傾げる。

「ん? 俺への差し入れ? 主様が買ってきてくれた訳じゃなくて?」

 首を傾げる俺に、何故か首を傾げて返してくる主様。無言でぽやぽやしてるのはなんでだ?

「騎士団長からデハ? 本日ハご一緒デシタから」

「あー、フシロ団長からか。そうなのか、主様」

 プリュイの言葉に得心がいった俺は、首を傾げてぽやぽやしている主様へ改めて確認する。

「はい」

 ぽやぽやしながら、それです、と言わんばかりの表情で頷く主様。

「なんで最初にそう言わなかったんだよ」

 呆れた顔で主様を見てると、また不思議そうに首を傾げられる。

「ま、いっか。せっかくだから一緒に食べようぜ」

「紅茶、入レテきマス」

「ありがと、お願い」

 俺が料理の包装を解き始めると、プリュイがそう言ってキッチンの方へと歩いて行った。気の利く魔法人形だな、プリュイは。

 包みを解いていくと、焼きそばみたいな麺料理とか各種串焼きとかカットされた果物とか統一感のない料理や食べ物がテーブル上に現れる。

 フシロ団長、主様が収納出来るからと色々くれたんだろう。

「主様が預かってくれてたおかげで、出来てたみたいだな。ありがと」

 行儀悪いが紙包みを開けた瞬間から一際強くなった匂いに我慢出来ず、早速何かの肉の串焼きを持ってかぶりつく。

「んまっ」

 主様の収納は時間停止付きだから、串焼きはほぼ焼き立てと同じで、文句無しに美味しい。ただ、大きく切られた肉は俺の口には持て余すサイズだし、甘辛いタレで口周りがベタベタだ。

「ジル、おしぼりドウゾ」

 紅茶を持ってきてくれたプリュイは、タレで口周りがベタベタな俺を見てアラアラと呟くと、おしぼりを差し出してくれる。

 誤魔化すようにへらっと笑った俺がおしぼりを受け取ろうと伸ばした手は、何故か主様に握られていてそのまま手を舐められる。

「……確かに美味しいですね」

 口周り程ではないが、手にもタレが付いていたので『確かに』味はしたかもしれないが……。

「俺の味見してどうすんだよ。ほら、こっち食べろって」

 グッと力を込めて手を引くと、意外と簡単に食べかけられた手を取り戻せたので、代わりとばかりに持っていた串焼きを主様の口元へ押し付ける。

 主様が無言でぽやぽやして串焼きを食べ始めたのを確認して、俺はおしぼりでまず手を拭く。

 そのままの流れで口周りを拭こうとした俺の顔に、ペタリと半透明な青色が伸びてきて貼りつく。

「ふが……」

 口周りを覆われたせいで間の抜けた声を洩らした俺は、犯人であるプリュイを見たが、楽しそうにふるふると笑っていて毒気を抜かれる。そもそも善意からの行動だから怒れないよな。

 そしてその隣では、主様が串焼きをもぐもぐしながら、なんかちょっと悔しそうな顔してる。

 プリュイの行動の意味はわかったが、主様の表情は意味不明で首を傾げていると、主様の手によってプリュイが剥がされる。

「ありがと、プリュイ」

 鼻で呼吸は出来ていたが、やはり口元を覆われると息苦しく、俺はこっそり息を吐きながらプリュイへお礼を言う。

「落ち着イテ、食べてくだサイね」

 主様に掴まれた触手をスンッと勢いよく引っ込めながら、プリュイは優しく窘めて去っていこうとする。

 とっさにその背中へ向けて新しい串焼きを取って差し出すと、勢いがつきすぎて俺の手ごとプリュイの体内へと収まる。

「あ……ご、ごめん! 大丈夫!? 痛くないか?」

 幸いというか突き抜けてはいなかったが、腹部に手が突き刺さるという仕出かした俺から見てもなかなかの衝撃映像だ。

「……ハイ。ちょっと驚きマシタ。痛みハないデス。串焼き、ご馳走サマデス」

 そう言って笑ってくれたプリュイの言葉には嘘はなさそうだったので、俺は串焼きから手を離す。そうすると、先ほどまで見えていた串焼きは見えなくなってしまう。

「ロコ、こちらも美味しそうです」

 プリュイの不思議ボディに目を奪われていると、主様が塩焼きそばみたいな麺料理を俺の口元へ押し付けてくる。

 一口あーん……ではなく、容器ごとだ。

「ちょ、主様、いくら柔らかい素材の容器だからって、容器ごとは食べられないからな?」

「そう、なんですか?」

 そうだよな。いくら主様が食に興味がないとはいえ、さすがに容器を食べたりなんてしない……よな。

 確認するのも怖いので、俺は不思議そうに首を傾げている主様から視線を外し、押し付けられていた焼きそばを受け取る。

「ん、ちょっとスパイシーだけど美味い。主様も食べてみろよ」

 パスタみたいにフォークでくるくると麺を一口分巻き取り、主様の口元へ近付けると、素直に口が開かれる。

「……確かに香辛料が効いてます?」

「だな。俺の舌にはちょっと辛い」

 ベーッと舌を突き出して、ふへと笑ってると主様から顎を掴まれて、ジッと見つめられる。

「な、なに……?」

「ちょっと赤くなってます」

「あぁ、舌か? 辛かったから、血行良くなったんじゃないか? 別に火傷したとか、痛みがある訳じゃないから心配しなくても大丈夫だよ」

「人とは弱いものですね」

 ふっと吐息を洩らして儚く微笑む主様はまさに芸術品のような美しさだが、辛い物食べて舌がピリピリした程度でこんな深刻な顔をされてしまうとなんか申し訳ない。

「だから、平気だって。もっと激辛なもの食べて唇腫れたって、しばらくすれば治るんだぜ?」

 人の回復力舐めるなよ、と思いながら、唇を突き出してたらこ唇を表現してみせると、主様は悩むようにこてんと首を傾げて、あ! といった表情をしたかと思うとグッと顔を寄せてきて、ペロッと唇を舐められた。

「……え?」

「よく舐めといたら治ると言うので……」

「それは言うけどさ、今は何ともないからな?」

 反対にあの焼きそばを食べた主様から舐められたから、なんだったら少しピリピリするぐらいだ。

 それを伝えたら、ベロベロに舐められる未来しか見えなかったので、俺は口を噤んで……違う料理を食べることにする。

 無言のまま、また塩焼きそばを食べようとしたら、主様の心配そうな眼差しがずっと見つめてきて、食べづらかったのだ。

 フシロ団長は色々買ってくれたので、まだまだ料理はある。とりあえず、今日のところは辛くなさそうなのを食べておこう。




 心配そうな主様の眼差しと不意のあーんを受けながら食事を続ける俺は、ふと前世で食べたある食べ物を思い出す。


 それは暑くなると縁日などで売られていた、色鮮やかなシロップの掛けられた氷の山──かき氷だ。


 頭キーンはなった事はないが、あれを食べると舌がとんでも無い色になることは経験済みだ。

 ちょっと舌赤くなったぐらいでこの心配ぶりなら、真っ赤とか緑とか、果てには青とかになったら、主様買った店に殴り込みに行きそう……って笑えないな。

 自分の想像で苦笑いした俺は、また何あったのか!? と心配そうなぽやぽやを飛ばしてくる主様へ、何でもないとへらっと笑ってみせるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


書きたいことを書いたら終わる予定が、次々に書きたいところが浮かぶので、なかなか終わらせられないループです。


もう暗転して数年後……とか何回か考えました(*ノω・*)テヘ


キャラ紹介を書いて、増やし過ぎたキャラを整理しようとしてます←

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます!お話が面白すぎてどんどん読めちゃうので、もう90話なのか、、!という感じですびっくり。次も楽しみにしています〜!♪
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