9話目
初感想ありがとうございます!
今回、短めですm(_ _)m
「本当……こ……ガキが……人質……」
「見た……がい……ん……よ……」
頭が割れるように痛み、目覚めようとする俺の邪魔をする。
聞き覚えのない複数の男の声と、下卑た笑い声がぼんやりと聞こえている。
また熱が上がったのか、脇腹がじくじく痛み、息苦しい。
怪我人を診に行ったドリドル先生は大丈夫だろうか。
怪我をしたという子供も気になるし、主様が火事に巻き込まれてないか……。
そこまで考えて、やっと意識がはっきりとしてくる。
確か俺はドリドル先生を送り出して、残った方の冒険者に……。
そこまで思い出せた俺は、薄目を開けてそっと周囲を窺う。
木で出来た壁を見る限り、俺が寝かされているのはテントではなく何処かの小屋っぽい建物の中のようだ。
かなり埃臭いが、一応ベッドらしきものの上には寝かされている。
拘束はされていないが、体調のせいか嗅がされたあの変な臭いの薬のせいか、上手く体に力が入らない。
壁を向くように体を横向きにされているので、背後で話している男達の姿は見えない。
だが逆に考えれば、俺が薄目を開けて周囲を窺っているのもバレにくいとも言える。
どう考えてもこれは真っ当なご招待ではないが、何故俺を連れ出したかがわからない。
騎士団に何かをしたいというなら、直接夜襲をしたり、ドリドル先生を攫った方が効果的だと俺には思えるのだが。
ぼんやりとする頭で考えたもしかしたらと思える理由は、俺が騎士団に守られているように見えたせいで、金持ちの子供かなんかと勘違いされて誘拐された、とかぐらいだ。
捻り出した答えは、意外としっくり来てしまい、俺は心の中で力無く笑う。
この場合犯人達は、騎士団に身代金要求するんだろうか、と他人事のように考える。
(駄目だ、まだ動けそうもない。何嗅がせやがった?)
俺は内心で毒づき、指先へ力を込めよつとするが、先ほどとあまり変わらない。
男達はまだ何かを話してるが、また徐々に意識が遠のき、男達の声はどんどん聞き取れなくなる。
必死に抗おうと痛みという刺激を得るため拳を握ろうとするが、そもそも体に力が入らないのだから、どうにもならない。
こういう時に魔法使えたら、と思ったのを最後に、俺の意識は完全に闇へと沈んでいった。
●
──時間は少し遡る。
怪我人が出たと呼びに来た冒険者を追ってきたドリドルは、騒ぎの中心へたどり着いていたが、追っていたはずの冒険者を見失ってしまっていた。
「……怪我人の確認の方が先ですね」
別に冒険者とはぐれても問題ないと判断したドリドルは、目についた騎士へと近づいていく。
「先生、どうされたんですか?」
ドリドルが話しかけるより先に、ドリドルに気付いた騎士が、驚きを隠さずドリドルへそう声をかけてくる。
「冒険者が騎士からの伝言だと紋章を持って私を呼びに来たので。怪我人が出ているという話ですが、何処にいらっしゃいますか?」
「怪我人ですか? 確かに火事騒ぎで煙を吸ったり、逃げ出す時に転んだりして怪我をした方は数名いらっしゃいますが、先生の治療を必要とするほどの重傷が出たという報告は私は聞いておりません……少々お待ちください」
ドリドルの真剣な表情に、騎士は怪訝そうな表情で首を傾げて、少し離れた場所で動き回っていた同僚の騎士を呼び寄せる。
「どうかしたか?」
「誰か冒険者に頼んでドリドル先生を呼んだか? 怪我人が出たという話なんだが」
「いや、俺はモンスターが出たっていう誤報の場所に行ってたが、そちらでも怪我人は出てない。だから、わざわざ先生を呼びつけたりはしてないはずだ」
顔を見合わせて狐につままれたような表情で首を傾げている騎士達の会話を聞きながら、ドリドルはだんだんと不安を覚えていき、火が出て燃え尽きた件のテントを見る。
「火事になったテントの持ち主は?」
「それがおかしなことに無人だったようです。やけに火の回りも早かったようなので、もしかしたら誰かが油を撒いたのかもしれません。消火作業中煙を吸った騎士がおりますが、軽症です」
ドリドルの質問に、最初に話しかけた騎士がそう説明し、その説明を聞いたドリドルは嫌な予想が現実になりつつある事を感じ、表情を固くする。
「……モンスターが出たというのは?」
診察用の鞄を握り締めたドリドルは、次いでモンスターの襲撃を調べていたらしい騎士へと微かに震える声で問いかけた。
「そちらは誤報だったようです。誰かがモンスターが出た! と叫んだため、パニックを起こした人々が逃げ惑い、転んだりして数人が怪我をしましたが、せいぜい擦り傷です。その後、念のため周辺をくまなく確認しましたが、モンスターの痕跡は全くありませんでした」
騎士から返ってきた答えはやはりというかドリドルの予想通りだったのか、何かが起きていると察して姿勢を正した騎士へと頷いて見せる。
「明らかにこれは騎士をテントから引き離すための陽動です。……狙いはフシロ団長でしょうか?」
なら何故私まで、と口内で呟いたドリドルの視界に、パニックになった人々を落ち着かせるため声をかけているフシロの姿が映る。
「そうですよね、フシロ団長は誰よりも早く民を守るために駆けつける方で……テントに残る訳が……」
ひとまず無事なフシロの姿に安堵しかけたドリドルだったが、すぐにもう一つの可能性に気付いて、元来た道を駆け戻っていく。
「「先生!?」」
驚く騎士達に、ドリドルは説明する間すらおしいのか振り返りもせず、
「この騒ぎの狙いはジルヴァラです!」
と、フシロにまで聞こえるよう叫び返して駆けて抜けて行く。
狙い通りフシロにもドリドルの声は届き、すぐ事態を察したらしく、見た目にそぐわない健脚ぶりであっという間にドリドルへ追いついてしまう。
「私の杞憂なら、いいのですが」
「それなら、ただの笑い話にすればいい」
予想が外れることをそう願い口にして走る二人を迎えたのは、最悪の予想通りな光景で。
人が出払ったテントの奥の仕切りの布の向こう、そこで眠っていたはずのジルヴァラの姿は何処にも見当たらなかった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
もふもふの方を見返して、とんでもないことに気付きました。
新しいレビューもらってたんですけど!?
しかも、だいぶ前に!←
放置してた時期にもらってたので、全く気付いてなかったです(TдT)
今からでも直にお礼メッセージしようか悩んでます。