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84話目

誤投稿してしまい、本当に申し訳ありません。


実は間違えて、別作品の方に次話投稿してしまいました。


申し訳なくて、慌てて一話書き上げて更新して、改めてこちらにも更新し直します。

 外から酷い雨音が聞こえる。今日の天気は雨らしい。



 誰かに起こされた訳でもなく目が覚めた俺は、外の暗さでよく時間がわからず、目だけを動かして時計を見る。

 時計の針が指しているのは、いつもの起床時間より少し遅めだ。

「なんか、よなか、きこえてた……?」

 静かな隣を窺うと、俺が抱きついていた青く半透明な物がふるふるとしていて、そこから同じ青色が細く伸びて部屋の外まで続いてるようだ。

「プリュイー?」

 体を起こして呼びかけながら、プリュイの一部であろう抱き枕部分をぺちぺちと優しく叩く。

 すると、俺の隣にあったプリュイの一部が一際大きくふるっと震えたかと思うと、ヒュンッと勢い良く細く伸びていた先の方へ引っ張られて視界から消える。

「掃除機のコードみたいだ」

 あははと笑って着替えた俺がベッドから降りようとしてると、完全体となったプリュイが部屋へとやって来る。

「おはようございマス、ジル」

「おはよう、プリュイ。なぁ、夜中に主様来なかった?」

 プリュイの物理的に清涼感のある笑顔を見上げながら、挨拶を返すついでに先ほど思いだしたことを訊ねてみる。

「……サァ?」

 明らかに嘘言ってますという震え具合なプリュイの答えに、俺は苦笑いして肩を竦める。

「主様、心配し過ぎだろ。主様の結界の中にいて、プリュイもいるのに」

 口ではそう言いながらも、やっぱり心配してもらえるのは正直嬉しい。ちょっと、かまってちゃんの気分がわかってしまったので、かまってちゃんにならないよう気をつけないと。

 かまってちゃんして許されるのは、可愛い女の子だけだからな。

「プリュイも主様と一緒で食べられないものないんだよな?」

 嘘を見抜かれたせいか、プリュイはなんとも言えない形状の顔をして俺を見ていたが、俺の問いにはコクリと頷いてくれる。

 一晩寝たおかげか、あのムカムカはすっかり消えてなくなってる。

 別に主様が夜中に心配して来てくれたからとかじゃないから……たぶん。

「昨日ご飯食べ損ねたから、今日は朝から白ご飯にしよう」

「お手伝イしマス」

「おう、ありがと」

 流れでプリュイと手を繋いで洗面所へ向かって顔を洗い、そのまま二人でキッチンへと向かう。

 昨夜でわかったことだけど、新しく生まれ変わったプリュイは万能調理器みたいに色々出来るようになってたので、いてくれるととても助かる。

 一家に一人プリュイが欲しくなるレベルだ。

 欲しいと言われても、プリュイはうちの子だからあげないけど。

 そんな他愛のないことを考えながら、プリュイと朝ご飯のメニューを相談した俺は、当初の予定通り白ご飯中心なメニューにすることにする。

「しょう油あるなら、ミソもあると思うんだけどな」

 もしかしたら主様収納に死蔵されてるかもしれないけど、未だ未発見だ。

「幻日サマと、お買イ物行くノハいかがデショウ?」

「それもいいな。一緒に買い食いするって約束もあるし、面白い食材とか探すのもありだな」

 収納魔法というチートが使える主様と一緒だと、どれだけ買おうが大丈夫だから、楽しそうだ。

 それぐらいのおねだりなら、しても許してもらえそうだし。

「食べ過ぎテ、お腹壊さナイでくだサイね」

「食べ切れなければ、主様に収納しといてもらうから大丈夫」

 心配そうなプリュイに、俺は繋いでない方の手でお腹をポンポンと叩いてみせる。

「ジル、可愛いデス」

 何の脈絡もない誉め言葉を口にしたプリュイからよしよしと頭を撫でられたりもしたが、朝ご飯はベーコンエッグと白ご飯と野菜スープに決定した。

「ご飯も炊けてるし、ベーコンエッグも焼けた。ってことで、俺は主様起こしてくるから、プリュイはスープの鍋見ててくれ」

 ここでスープが焦げたり吹きこぼれたりしても何もせず「しっかり見てました!」とか言い出したらウケるけど、コクリと頷いてくれたプリュイはきちんとした意味で『見て』くれるだろう。

 俺はプリュイにスープ鍋を託して、主様の部屋を目指してパタパタと廊下を駆けていく。

「主様、おはよう!」

 扉をノックして返事を待つ事なく入室した俺は、寝室へと続く扉を念のためもう一度ノックをしてから入って行く。

 万が一、主様が見られて困るようなことしてたら、俺も困るからな。

「主様、起きてる?」

 ベッドの上に膨らみがあるので、主様がいるのはほぼ間違いないが起きる気配はない。

 パタパタとベッドへ突撃した俺がぴょんっと飛び乗っても、主様のお高いベッドはあまり軋まない。

 だが、揺れはしたので、やっと布団の膨らみが動いて、布団の下から夕陽色の頭が覗く。

「主様、ご飯出来てるけど、起きられそうか?」

 かなり眠そうな様子の主様に、俺はずりずりとベッドを這って近寄り、主様の顔を覗き込む。

 フシロ団長は主様の眠りが浅いようなこと言ってたけど、どう見ても寝汚い方だよなと考えながら、ぼんやりと蕩けそうな宝石色の瞳を覗き込む。

「ロコ……」

「ん」

「たべたいです」

 眠そうな声で呼ばれたので頷くと、妙に甘やかな声でそう囁かれ、声の主である主様を窺い見ると熱っぽい眼差しで俺を見ている。

 色々勘違いしそうになる声音と表情に勘違いすることなくパァッと笑った俺は、寝乱れた主様の髪を軽く直してやりながら、俺は体を起こしてベッドから身軽に飛び降りる。

「りょーかい! 用意しとくから、主様は顔洗ってこいよ」

 そう言って振り返ると、主様は半端に手を伸ばした妙な体勢でこちらを見ていたが、すぐにぽやぽやと頷いて起き上がる気配をみせた。

「……はい」

 ちょっと残念そうな主様の表情に首を捻る俺だったが、すぐ自らの空腹を思い出して主様を気にせずキッチンへと戻る。

「スープ、イイ感じデシたのデ、火とめマシタ」

 しっかりスープ鍋を『見ていて』くれたプリュイは、俺の姿を見るとそう報告してくれた。

「ありがと、プリュイ」

 踏み台を移動して鍋を覗き込もうとした俺を、それに気付いたプリュイが伸ばして体で持ち上げてくれる。

「ありがと。力持ちだな、プリュイ」

 俺を持ち上げてるプリュイの体の太さは、俺の腕とそう変わらないのに安定感は半端ない。

「美味しそうだな。主様もすぐ来るだろうし、盛っちゃおうぜ」

「ハイ」

 優秀過ぎる助手なプリュイにより、返事の数秒後には二人分の食器が用意されていたが、俺はあえてふるふると首を横に振る。

 訝しげな顔でふるふるするプリュイに、俺は顔の横でチッチッと格好つけて指を振って見せる。自分でやってて寒いが、一度やってみたかったのだ。

「ジル?」

「いや、そのさ、プリュイも一緒に食べよう?」

 俺を支えてる触手をふにふにと揉みながらおずおずと提案してみたが、やはりというかプリュイから返ってきたのは困ったような笑顔だ。

「ありがとうございマス。オ心と料理ダケハ、いただきマス」

「そっか。……なぁ、主様いない時なら一緒にテーブルで食べてくれるか?」

 ゆっくりと降ろしてくれるプリュイの体をむぎゅと掴みながら、上目遣いをしてあざとくおねだりしてみる。

 他に人目がないし、プリュイ相手だから出来たけど、恥ずかしいなこれは。これを連発出来るヒロインちゃん、尊敬するぞ。

 まぁ、向こうは可愛い女の子で、ある意味必殺武器みたいなものだよな。攻略対象者をころころしちゃう訳だし。

「……二人きりの時ナラ」

「やった!」

 ヒロインちゃんほどの効果はなくとも、俺の捨て身の上目遣いにも一応の効果はあったのか、プリュイは仕方ないですね、といった表情で頷いて、俺に巻きつけていた体を引っ込める。

「んぁ」

 そのくすぐったさから、思わず間の抜けた声が洩れてしまい、俺は口元を手で覆い隠して、上げた声のおかしさからくすくすと笑う。

「すみまセン、くすぐっタかっタデスか?」

「ん、ちょっとな。俺こそ、変な声出してごめん……って、主様? 何してんだ?」

 俺に謝りながらも、伸ばした体でご飯を盛ってくれたりベーコンエッグを皿へと移してくれたりとテキパキ動くプリュイの側に、いつの間にかぽやぽやしてる主様を見つけて俺は首を傾げる。

 主様がいること自体は別段不思議ではないが、その手にスープ用の皿を持ってぽやぽやしてたので、何をしてるのかと思わず口に出してしまっていた。

「私も手伝います」

「え? あぁ、スープ運んでくれようと思ったのか。ありがと、主様」

 主様のしたいことがわかった俺はへらっと笑うと、踏み台に乗ってスープの入った鍋を覗き込み、お玉で軽く掻き混ぜる。

 今日のスープは、ベーコンと適当な野菜をぶち込んだ適当野菜スープだ。ベーコンのおかげかそこそこ美味しく出来たと思う。

「はい、ロコ」

 楽しげにぽやぽやしている主様から受け取った皿にスープをよそい、主様へと返す。

 それを二回繰り返してから、三回目に受け取った皿だけは主様にではなく、プリュイへと渡す。

 主様は微笑んでるだけで特に何も言わなかったので、俺の好きにさせてくれるってことだろう。

「冷めないうちに食べてくれよ?」

 主様が二人分の朝食をお盆に乗せて運んで行くのを追いかけながら、俺はキッチンで片付けをしてくれているプリュイへと声をかける。

「ハイ」

 プリュイがふるりと震えて笑顔で応えてくれたのを確認して、俺は無言で笑い返して先を行く主様を追う足取りを速めるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


誤投稿してしまい、本当に申し訳ありませんでした。



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