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82話目

まずは、また感想のお礼を書き忘れてすみません!

いつも、投稿した後に思い出すのはなんなんでしょうね(´・ω・`)


今回は料理回です。

この世界は相当神様が手を抜いたのか、前にいたであろう転生者か転移者が頑張ったようです。


ジルヴァラの料理の腕前は普通程度です。料理本見ながら作れば、何となくこんな味なのかな? という料理が作れます。

「プリュイ、料理も出来るんだな」

「嗜ム、程度デスが……」

 主様とのお茶会で、思いがけず仲間達にきちんと話がついていたことがわかって安心した俺は、今プリュイと並んで料理をしていた。

 俺の前世の記憶的に和食と呼びたくなる感じの料理も食材も調味料すらも、この異世界にはちゃんと同じ名前で存在するので、今日の夕飯は麻婆豆腐と卵スープだ。

「……って、麻婆豆腐は和食じゃないな」

 豆腐と豆板醤、それになんと粉末の鶏ガラスープの元まであるのだ、この世界。というか、出てきたのは主様の収納の中からだけど。

 何処で買ったかとか貰ったとかは忘れたそうだけど、名前とかどんな調味料かは覚えていてくれたので、こうして料理に使えてる。

 片栗粉とかの粉類は元々家にあって、お腹が空くとお湯に溶いて飲んでいたらしい。

 片栗粉なら砂糖入れればくず湯みたいで美味しいかもしれないけど、粉のみをお湯で溶いて飲むなんて、どれだけ食べることに興味なかったか良くわかるエピソードだ。

「生肉食べるのとどっちがマシだろ」

「お肉ハ焼かないト駄目デスよ?」

 生肉を食べると思われたのか、真剣な顔をしたプリュイの半透明ボディが、俺の暴挙を阻止しようとまな板に乗せていた肉の塊を覆ってしまう。

「俺は食べないよ。森でもちゃんと熊が焼いてくれてたからな? 生で食べてるのは主様」

「……アァ」

 色々納得したのか、気の抜けるような声を出したプリュイは、苦笑いしてお肉を返してくれた。

「挽き肉にする道具……はさすがにないだろうから、地道に手で叩くか」

 前世で使ってた安物な包丁とは違い、主様の家の包丁は通販番組も真っ青な切れ味だから、そこまで苦な作業にはならないだろうと俺は踏み台の上で気合を入れて両手に一本ずつ包丁を持って構える。

 そんな俺の手を、背後から伸びて来た手がそっと掴んでくる。

「なに? 主様」

「危ないです、ロコ」

 両手首を掴まれて持ち上げられたので、俺は包丁を持ったまま万歳してる状態だ。

 俺としてはこの体勢の方が危ないと思うが、主様は退くつもりはないようだ。掴まれた手首はビクともしない。

「主様、俺、刃物持って狩りしたり、短剣でモンスターと戦ったりしてるんだけど」

「それはそれ、これはこれです」

 力強く言い切られてしまったが、たぶんモンスターと戦ったりしてる方が危ないだろ。向こうは動いて反撃もしてくる訳だし。

「どうしても必要だというなら、私がやります」

 さらにそんな力強い言葉をいただいてしまったので、俺は両手に持っていた包丁を主様に預けて、作業をお願いすることにした。

「そうか? じゃあ、肉は主様にお願いするな? 俺はネギとか刻むから……」

 肉を切るために立っていた場所を主様へ譲った俺は、言葉通りネギを刻もうとネギを置いといた場所を振り返ると、青く半透明なボディが変形してネギとか生姜とかニンニクとか……とりあえず、俺が切ろうと思ってた物を全て切り刻んているところだった。

「静かだと思ったら……」

 しかも、チラッと説明しただけなのに、スープに入れようと思ってたネギの青い部分だけ残してみじん切りにしてくれてたり、たぶん木綿な豆腐はさいの目に切られてたりと色々バッチリだ。

「ありがと、プリュイ」

 一気に作業が進んだので、俺は鍋にお湯を入れて、プリュイが切ってくれたネギの青い部分と薄切りにしてもらった生姜を放り込んでスープの準備をしつつ、もう一つの鍋で麻婆豆腐の準備も進めていくことする。

「主様、挽き肉…………え、粉?」

 挽き肉を作成中なはずの主様を振り返った俺は、まな板を前にしてぽやぽやドヤぁという顔をしている主様と、まな板の上に出来た赤い山を見て、しばし言葉を失う。

「細かくすればいいんですよね? 凍らせて粉砕しました」

 これが一番処理が楽なんです、とぽやぽや微笑んだ主様の言葉は聞かなかったことにする。一体何の処理だとか聞くと、絶対怖ろしい答えが返ってくる予感がする。

「あ、ありがと……」

 挽き肉と呼ぶには細かすぎるが、別に俺達が食べるんだから気にしない。火が通りやすくなって、お腹を壊す確率が減っていいぐらいだ。

 中華鍋……中華なんて存在しないから中華鍋とは呼ばないだろうけど、俺の記憶の中では中華鍋と呼ばれていた鍋もあることはあるが、六歳児な俺では使いにくいし、俺が自宅で麻婆豆腐作る時は鍋だったので、鍋で作業を進めていく。

「まずは刻んだ生姜とニンニクとネギと……」

 俺が口に出すのとほぼ同時にプリュイが材料を差し出してくるので、本当に作業が楽だ。

 あまりの手際の良さに、そのうち『そしてこれが出来上がったものです』とか料理番組みたいに差し替えられそうだな、と思って一人でくすくすとウケてると、背後からぬっと主様が覗き込んでくる。

「私の砕いた肉の出番はいつです?」

「このあとだよ」

 ふ、と笑った俺は、視界の隅でサラサラと流れてくる主様の綺麗な夕陽色の気付き、主様を振り返る。

「髪汚れちゃいそうだから、結んでくれるか?」

 これから強火にしたりするし、万が一燃え移ったりしたら大変だ。色味のせいもあるが、なんか主様の髪はよく燃えそうに見えてしまう。

「私は気にしませんが……」

「俺が気になりまーす。俺、主様の夕陽色の髪好きなんだからさ」

 へらっと笑って悪戯っぽく返すと、主様がゴソゴソする気配が背後でしてきたから、髪をまとめてくれているようだ。

「結びました」

「ん、ありがと。近くで見ててもいいけど、火傷には気をつけてくれよ?」

「はい」

 背後で楽しそうに頷く気配がして、俺は自分のことのように嬉しくなる。食べることに興味がなかった主様が、少しでも興味を抱く切欠になれたように感じて。

 プリュイという優秀な助手がいてくれたおかげで、予想より早く出来上がったのは良かったのだが……。




「……ご飯、炊き忘れた」




 パンと麻婆豆腐の相性は、俺的にはいまいちだったとだけ言っておこう。

「そもそも、麻婆豆腐ってスープ扱い? おかず扱い?」

「さァ? ワタクシにはわかりかねマス」

 新しい食べ合わせの発見とはならなかった夕食を終えた俺は、プリュイと並んで洗い物を片付けながら訊ねたが、返ってきたのはふるふるした苦笑いだ。

「主様の本棚に料理本とかあるか?」

 それもそうか、と納得した俺は、すぐ新たなことに興味を抱いて、部屋の隅に佇んでいる主様を振り返る。

「………………買い占めてきます」

 即座に踵を返そうとした主様の服を掴んで引き留め、俺はふるふると勢いよく首を横に振る。はっきり止めないと、主様は本当に本屋から料理系の本を買い占めてきそうだ。

「いや、無いなら無いで良いから。お礼伝えに行くついでに、ファスさんにおすすめの本とか聞いてみるかな」

「……外へ行くのは駄目です」

 服を掴んだ俺の手を逆に掴み、主様は先ほどの俺より勢いよくはっきりと首を横に振って意思表示してくる。

「主様と一緒ならいいだろ?」

「ずっと手を繋いで離さないなら許可します」

「俺どんだけ迷子になると思われてるんだよ。ま、それで主様が安心するならいいぜ。俺も嫌じゃないし」

 つまりは手を繋いでお散歩って訳だ。よく考えれば、最近はほとんどそんな感じの外出だった気がするけど……。

「なんかどんどん主様過保護になってないか? ……って、ちかっ!」

 問いかけながら主様を振り返った俺は、予想よりかなり近くにいた主様に驚いて目を見張る。

 どれぐらい近かったかというと、振り返った瞬間、俺の顔面は主様のゆったりとしたローブに覆われて真っ暗になったぐらいだ。

「……主様の匂いだぁ」

 せっかくなので、遠慮なくくんかくんかと匂いを嗅がせてもらう。

 こんなふざけた行動をしても嫌がられたり戸惑われたりしないなんて、だいぶ仲良くなれたと実感出来て嬉しくなる。

「片付けは終わりですか?」

「ん、終わったー……」

 主様の柔らかな声にコクリと頷き、両手で主様の服をしっかりと掴んでふにゃふにゃになりそうな体を支えておく。

「では、お風呂ですね」

 そう呟いた主様の声音がとても楽しげだったので、俺は今日はもう入らないとは言えず、言いかけた言葉を飲み込んでへらっと笑っておいた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


万能料理具と化しているプリュイさん。

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