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79話目

ジルヴァラほとんど出ません回。


白い害虫が出て来ます。扱いが酷いので、本家害虫ファンな方はごめんなさい←

「ふふ、ロコ可愛いです……」



 ドリドル先生ヲ見送り、ワタクシがそっと部屋へ戻ルト、幻日サマはジルをしっかりと捕獲した体勢で、ジルのベッドに寝転がっていまシタ。

 ジルは何故ダカ少し疲れた顔デ、目を閉じてマス。

 ワタクシは、邪魔にならないヨウに、マタそっとジルの部屋を後にシマス。

 幻日サマは、相変わらずワタクシに興味ナド欠片も無いノデ、視線を向けられるコトもアリマセン。

 以前のヨウに掃除を始めヨウとシテ、ワタクシには新たな命令ガあるコトを思い出しマシタ。



『屋敷の管理は今まで通りに。──そして、何よりも優先すべきことはロコの安全だ』



 目覚め告げらレタ命令は、命を持たぬこの身に、ドクリと確かな熱ヲ与えてクレマシタ。

 幻日サマは、ワタクシの姿を見テ、ほんの少しダケ不思議そうデシタが、何よりワタクシ自身が不思議デシタ。

 ワタクシは、ワタクシでシタ。

 ジルのくれたプリュイという名を持つ、ワタクシのままデス。

 ワタクシ……魔法人形ナドに興味ヲ持たヌ幻日サマは、ワタクシに記憶ガあるコトなど、気付くワケもアリマセン。

 ココで記憶ガあるコトに気付かれレバ、またワタクシは消されてシマいマス。

 こんな奇跡が二度モあるトハ思いマセン。


 せめて、もう一度一目ジルと会って話しタイ。


 道具でアル魔法人形が持つには相応しくナイ気持ちに唆サレ、ワタクシはタダのまっさらな魔法人形のフリをシマシタ。

 ソシテ、ワタクシは再びジルと会うコトが出来た上に、コノままで……記憶を持ったプリュイのままデ良いと。

 以前と比べ、戦闘能力ガ増えたこの身ナラ、ジルを守れマス。

 幻日サマより頂いた能力、早速使う時ガ来たヨウデス。




 結界内に侵入しヨウとしてイル怪しい気配に、ワタクシはふるりと体を震わせて、ソチラへ向かい、歩き出しマス。



「ジルは、ワタクシが守りマス」



 ワタクシは魔法人形プリュイ。



 最凶と怖れられる幻日サマより生み出さレ、ジルから名前をもらった幸運デ最強な魔法人形デス。

「本当にここが幻日様の家なの?」

 一般的な家屋よりは多少大きめではあるが、屋敷と呼ぶには小さく地味な建物を前に、白い髪をした少女が信じられないとばかりな素直な呟きを洩らす。

「ま、確かに稼いでる割には小さめだよな」

 そんな少女の呟きを鷹揚な態度で悪戯っぽく笑って流しているのは、先日少女が一緒にいた青年へなりかけなエノテラと呼ばれていた少年ではなく、こちらは明らかに青年と表現される男性だ。

 血のように濃い色の赤毛、瞳の緑色も濃い色。

 少し退廃的というか夜の匂いをさせる青年は、良く言えば無邪気、普通に言えば無神経な反応で目の前の家を観察してる少女を楽しそうに眺めている。

「塀は高いけど、門は開いてるし、勝手に入れちゃいそうじゃない」

 なによこれ、と言いながらも、少女の金色の目は好奇心からか楽しそうにキラキラと輝いている。

 エノテラの方なら、頬でも染めてそんな少女に反応するのだろうが、青年の少女を見る目には、そんな色欲的なものは全く浮かばず、その眼差しは見守っているかのようだ。

「そうだな。だが、ここはあの幻日の家で、許可なく一歩でも入れば命は無いという噂だな。入れるのは、幻日に許可された者だけだって話だ」

「ふぅん。──なら、あたしは大丈夫ね」

「は?」

 心から出たらしい素の声を洩らした青年が間の抜けた顔で少女を見るのと、少女が勝手に門から家の敷地へ軽やかな足取りで入っていくのは同時だった。

「お、おい! 止まれ!」

 青年が伸ばした手はやたらと自信満々な足取りの少女には届かず、少女は玄関へと向けて進んで行く。

「ほら、あたしならだいじょ……ぶふっ!?」

 ニンマリと笑った少女が、可愛さの欠片もないドヤ顔を披露した瞬間、不可視の壁がキラリとその姿を光の反射で現し、喋っていた少女を何の遠慮もなく弾き飛ばした。

 ご自慢であろう愛らしい顔は、思い切り壁で弾かれてへちゃむくれの変顔となり、決定的瞬間を目撃してしまった青年の肩はふるふると小さく震えている。

 それでも吹き飛ばされた少女を受け止めてあげてはいるので、青年は見た目より面倒見が良いのかもしれない。

「な、なによ、これ!」

 助けてくれた青年に礼を言うこともなく、勢いよく起き上がった少女は憎々しげに玄関を睨んでいる。

 見ようによっては、子猫が毛を逆立てて威嚇してるようで愛らしいかもしれない。


 ここの主である幻日の心は全く動かないだろうが。


 連れの青年の心もあまり動かなかったのか、青年の口元には苦笑いが浮かんでいる。

「だから言っただろ。次は無傷ではすまないかもしれないぞ?」

「違うわ! 今のはあたしだってわからなかったの。あたしだってわかれば、幻日様が開けてくれるから。幻日様は勘違いしてるって、教えてあげないといけないの」

 子犬がキャンキャン吠えるように元気良く自信満々で宣った少女は、止める青年の手を振り解いて、また門の中へと突撃しようとする。

「まぁ、少し痛い目見れば止まるか」

 そんな少女の無謀な特攻を止めたのは、青年の真摯なやる気のない言葉ではなく、何の前置きもなく中から開かれた玄関の扉だ。

「ほら! あたしだって、気付いてくれたわ……って、何よ、あんた」

 パアッと頬を染めて笑顔を浮かべた少女は、開かれた玄関から現れた存在を見ると、あからさまに嫌悪を覗かせる。

 それは太陽の光を透かせて青く輝く人型をした半透明な生き物。

 少女と青年に知る由もないが、それはプリュイという名を貰った稀有な魔法人形で。


 ここに現れた理由はただ一つ。



「許可ナク入るコトは、ワタクシが許しまセン」



 ふるりと美しく青い体を震わせ、プリュイは微笑んで少女と青年を見つめる。

 その足元からは、ピキピキと音が聞こえてきて、地面がゆっくりと凍りついていく。

「なによ、この化け物! こんなのいるなんて、あたしは知らない。出てきてないじゃない!」

 そんな意味不明な事を喚いた少女は、恐怖と怒りからか表情を歪め、プリュイへ向けて手を突き出す。

 明らかな攻撃意志を感じる動作だ。

「止めろ! スリジエ! あれは魔法人形だ!」

 声を荒らげ、青年は少女を止めようと腕を伸ばしたが、少女の行動の方が早かった。

 少女の前に生み出された何本もの光の矢が、寸分違わず全てプリュイへと向かって放たれる。

「敵対行動ヲ確認。排除シマス」

 ツルリとした面でわかりにくいが、不敵に微笑んだプリュイは、まるで怯える気配もなく、蜘蛛の巣でも払うように軽く腕を振る。

 それだけで少女が放った光の矢は跡形もなく消え去る。

「そ、そんな……」

 愕然とする少女へ、プリュイの右手が向けられる。先ほど少女がしたのと同じ姿勢だ。

 しかし、その手に集まる魔力は桁違いだ。

 それを肌で感じてしまったのか、恐怖で動けなくなり、少女は棒立ちで動かない。

「あの子を、傷つけるモノは、ワタクシが許しマセン」

 地面の凍りついた部分が一気に広がり、それは明確な意志を持って少女へ向かっていく。

「あ、あ……っ」

「スリジエ!」

 青年が叫びながら少女を抱えて地面を転がったのと、少女がいた場所の地面に鋭く巨大な氷の棘が生えたのは同時だった。

 あのまま少女が立ちすくんでいたら、少女は全身串刺しとなって、致命傷を食らっていただろう。

 体勢を立て直した青年は、まだ何か言おうとする少女を横抱きにして振り返る事なく全力で走り去る。

 青年の見事な逃げっぷりに、プリュイは瞬きするような動作をして、首を傾げる。

 追うべきか悩んでいるのか、その場に佇んでいると、背後からパタパタと軽い足音がして玄関の扉が開かれる。



「プリュイ、いた!」



 先ほどの少女より勢いのある突撃でプリュイへ抱きついてきたのは、えへへ、と笑う黒髪の子供だ。

「ジル? どうシマシタか?」

「……あのさ、ちょっとうとうとしたら、プリュイが戻ってきたのって夢だったんじゃないかって不安になったから、確認しに来た」

 照れくさそうな笑顔と遠慮のないギュッという腕の締付けに、プリュイはツルリとした面に幸せそうな微笑みを浮かべて、子供を抱き着かせたまま屋内へと戻っていく。

「そうデスカ」

「プリュイは何してたんだ?」

 くっついて歩いてるので、お互いちょこちょこ歩きとなり、動きにくいがプリュイと子供に離れる気はないらしい。

 無邪気な笑顔で見上げてくる子供に、プリュイはちらりと冷気の漏れ出して来ている玄関の扉を見やり、不敵に微笑んだ。




「白い害虫を、処理してマシタ」




 こっち(異世界)のゴキブリって白いのかと、子供が思ったり。



「凍らせるのって、処理楽だって言うもんな」



 プリュイ魔法使えるんだな! とキラキラした目で子供が手放しで誉めたため、拗ねた夕陽色の青年により、私の方が凄いんですから、と屋内が完全に凍りついたりしたが、概ね平和だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


ヒロインちゃん、ジルヴァラにいつになったら会えるんでしょう。

そして、連れの方有能。

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