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71話目

前置きとして、私の書くシリアスはしょせんエセシリアスです(`・ω・´)ゞ


そして、怖いもの知らずなナハト様かわええ(ノ´∀`*)

「どういうことなんだよ、トルメンタ兄上! あのジルの傷!」

 浴槽の中でトルメンタ様に詰め寄るナハト様を横目に、俺は黒板を浴槽の縁へと置いてまったりさせてもらう。

「あー、おれも親父殿から聞いただけだが、王都へ来る途中、はぐれのリンクス亜種が出てな。それにやられたらしい」

「はぁ!? ヤバいやつじゃねぇかよ、それ! 討伐隊は出たのか!?」

 浴室内に声を反響させながら、ナハト様は何故か俺を指差しながらトルメンタ様へさらに詰め寄る。

 波打つ湯に体を揺られながら、俺はのんびりと目を細めて他人事のように、俺が討伐対象みたいだなぁ、と呑気な感想を無音で洩らす。

 ナハト様は気付かなかったが、トルメンタ様には何となく気付かれたらしく、苦笑いしてるイケメンに睨まれて軽く頬を抓まれた。

「落ち着けよ、ナハト。ジルヴァラが誰と旅をしてたか忘れてるだろ」

「誰と……って、あの赤い髪してて、やたらと睨んでくる、魔法使いの格好したヤツだろ。あいつ、今日はなんか屋敷の周りふわふわしてたけど」

 あれ変なヤツだな、と言って俺を見てくるナハト様の目に主様に対する怖れはないが、畏まるような気持ちも皆無らしい。完全に不審者を見るような眼差しだ。

 もしかして、と俺がトルメンタ様を窺い見ると、トルメンタ様も俺を見ていて、無言で頷き返される。

「ナハト、親父殿か母上から聞いてないのか?」

「何をだ? そんなことより、リンクスの亜種だろ!」

 恐る恐る訊ねたトルメンタ様に、短気なナハト様はキレ気味な返事をして、ジルの仇討ちだ! とか言ってくれてるが俺はまだ生きているので、仇はとってもらわなくて大丈夫だと伝えたい。

「ジルヴァラは生きてるからな」

「気分だよ、気分! それぐらいオレが怒ってるってことだよ!」

 俺のことでこれだけ怒ってくれてるって喜ぶべきかなぁと相変わらず他人事気分で聞いてると、トルメンタ様からぐいっと抱き寄せられてしまう。

「ジルヴァラ、他人事みたいな顔してるなぁ?」

「(ごめんって)」

 へらっと笑って、ゆっくりと口を動かして謝ったら、トルメンタ様から今度は鼻先を抓まれた。

「ったく。ナハト、ジルヴァラと一緒にいたのは、かなり有名な冒険者だ。幻日という二つ名ならお前でも聞いたことあるだろ?」

「幻日……って、一人でどっかの城滅ぼしたとか、ドラゴン一人で倒したとか、山一つ吹き飛ばしたとか言われてるヤツだろ? それが、あのほわほわした不審者なのか?」

 主様、色んな意味で酷い言われようだな、と思いながら口で呼吸してると、やっと思い出してくれたらしくトルメンタ様の手が離れる。

「……そのほわほわした不審者が幻日だな」

 トルメンタ様もなんとも言えない表情になりながら、ナハト様の言葉を肯定してるし。

「そっか。なら、その幻日がジルを怪我させたリンクスを倒したんだな」

「そういうことだ」

 ナハト様に納得してもらえてトルメンタ様も安心した様子でうんうんと頷いてるが、俺は別の件で驚く羽目になる。

「(って、主様があのリンクス倒してたのか? 一時期リンクス絶滅させます、とか呟いてたのもそのせいなのか?)」

 主様俺のために……とちょっとじぃんとしたが、どうしてそれがリンクス絶滅する話にまでなったのかとか考えたら、感動の方は薄れてしまったが……。

「そんな一人で何でも出来る強いヤツには見えなかったけどなぁ」

 心底不思議そうに呟くナハト様は、大物なのかとても呑気なだけなのか微妙なところだ。

「(主様は、一人で何でも出来るんだよ)」

 俺はふへへと笑いながら自慢げに呟くが、声が出ない現状では誰にも伝わらない。

「(そう、一人で……)」

 繰り返しそう呟いて、俺は一番初めに自分が主様と共に行きたかった理由を思い出す。

「ジルヴァラ? どうした? またのぼせそうか?」

 考え込む俺の顔を心配そうに覗き込み、トルメンタ様が心配そうに問いかけてくる。前回俺をのぼせさせた前科があるから、余計に心配なんだろう。

 俺がそう思って何か答える前に、さっきまでの勢いがなくなったナハト様の弱々しい呟きが聞こえてくる。

「兄上、オレものぼせそうかも……」

「それは困るな。さっきお説教されたばっかりなのに、またドリドル先生からお説教されちまう」

 くく、と喉を鳴らして笑ったトルメンタ様は、俺とナハト様を抱えて浴槽から立ち上がると、そのまま色々堂々とした状態で脱衣場へと向かう。

 引き戸を開けた先には、タオルを手にしたメイドさんが待ち構えていて、トルメンタ様からナハト様を受け取って、あっという間に拭いて服を着せていく。

 あまりの手際に目を丸くしている間に俺は、いつの間にか床へと降ろされていて、それに気付いた時にはやっぱりいつの間にか現れたフュアさんからタオルで拭かれていて、最終的に服まで着せてもらってしまった。

「(ありがと……)」

 抵抗する間も恥ずかしがる間もなく世話を焼かれてしまい、脱力しながらお礼を言うと、フュアさんからは満面の笑顔が返ってきたので良しとしよう。

 そういえばトルメンタ様は? とそちらを見ると、すでに自分で体を拭いてきちんと服を着込んでいた。

 成人男性だし、騎士団で生活してるんだから当たり前って言えば当たり前だな、と失礼な感心をしてるとトルメンタ様の視線がこちらを向く。

「ジルヴァラは歩けそうか?」

 トルメンタ様の問いかけが引っかかり、首を傾げてそちらを見ると、うとうとし始めているナハト様がトルメンタ様に抱っこされている。

「(大丈夫)」

 俺がへらっと笑って大きく頷いて返すと、いい子だ、とトルメンタ様から頭を撫でられる。

「部屋まではフュアに案内してもらえ」

 一人で戻れる、と言おうとしたら、トルメンタ様の手が伸びてきて、ちょんっと額を小突かれる。

「さっき迷子になってたのは誰だったかなぁ? 部屋でドリドル先生が待ってるはずだから、おとなしくフュアに案内してもらえ」

「さぁ、行きましょう、ジルヴァラ様」

 思わず断ってくれるかとフュアさんを見上げた俺だったが、キリッと微笑んだフュアさんさんから手を繋がれてしまい、諦めておとなしくついていくしかなかった。

「では、おやすみなさい、ジルヴァラ様」

「(ありがとう、フュアさん。おやすみ)」

 フュアさんが道に迷う訳もなく、無事に部屋の前まで送り届けられた俺は、挨拶を交わしてフュアさんと別れて部屋へと入る。

「(ドリドル先生、いるー?)」

 きちんと声をかけながら扉を開けたが、そもそも今の俺は声が出てないので無言で入ったのと同じだなと思ったりしないでもないが、俺用に用意された部屋だから特に問題ないだろ。

「おかえりなさい、ジルヴァラ」

 トルメンタ様の言った通りそこにはドリドル先生がいて、ソファに座ったまま笑顔で俺を迎えてくれる。

 ドリドル先生の両腕が広げられていたので、悪戯心からとてとてと駆け寄って抱き着いてみる。

「おっと……!」

 戦えるお医者さんな体幹しっかり目のドリドル先生の体は揺らがず、俺をしっかりと受け止めて、そのまま軽々と抱き上げられる。

「(ただいまー)」

「こら、危ないですよ」

 柔らかくたしなめられ、ドリドル先生から頭を撫でられていた俺は、そこでやっとドリドル先生の背後に気配もなく立つ人影に気付いて軽く目を見張る。

「あぁ。この方なら庭をうろついていて、庭師の方と睨み合っていたところを回収しました」

 俺が何かに驚いたのに気付いたのか、ドリドル先生は何処となくヒヤリとした笑顔を浮かべ、俺の視線の先──俺をジッと見ている主様がここにいる理由を教えてくれた。

 宝石を思わせる美しい瞳はドリドル先生は見えてないかのように俺だけを映していて、少し居心地が悪い。

 暴言を謝りたいが、やっぱり躊躇いはある。でも、この機会を逃せば、さらに謝りにくくなるのは目に見えてるので、俺はドリドル先生に抱えられたまま黒板に『ごめん』と書いて主様へ見せる。

「主様! 酷いこと言ってごめん!」

 出ないことはわかっていても、口でもきちんと謝りたくて声に出した俺は、勢いで言い切ってから、声が出たことに驚いて思わずドリドル先生を見る。

「おや、声が出ましたね」

 あまり驚いた様子もなく頷くドリドル先生は、こうなることを予想出来ていたのかもしれない。それでも安心したように笑ってくれて頭を撫でられる。

「(おう! 良かった……って、あれ?)」

 俺も少しホッとして返して、すぐに異変に気付く。また声が出せない。

 何で? とドリドル先生を見ると、ドリドル先生も驚いた顔をして、俺の喉元へ手を伸ばしてくる。



「ロコの声は、私だけに届けばいいんです」



 ドリドル先生の手が俺の喉元へ触れる前に、ボーッとしているようにしか見えなかった主様が動き出し、俺の体は主様に抱えられていた。

「それってどういう……」

 意味だ? と主様を見上げて問いかけようとした俺は、再び普通に発声出来たことに気付いて、瞬きを繰り返してまたドリドル先生を見やる。

「(ドリドル先生)」

 呼びかけるが、また声が出ない。

 今度は主様を見上げると、自らの腕の中にいる俺の様子を見て満足そうにぽやぽやして微笑んでいる。

「主様?」

 ポツリと呟いた呼び声は、普通に空気を揺らして外へと飛び出す。もう訳がわからない。

 俺があわあわとして、主様とドリドル先生を交互に見ていると、ドリドル先生の方から深いため息が聞こえ、ドリドル先生が掴んだソファの肘置きからミシミシと聞こえてくる。



「あなたが犯人ですか!」



 その後に発せられたドリドル先生の怒声は夜の静寂を切り裂き、窓ガラスを大きく震わせ、フシロ団長とトルメンタ様と、ついでにヘイズさんまで俺の部屋へ駆け込んで来ることになった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


原因判明しました(*>_<*)ノ

ドリドル先生の予想、外れてましたー(*´Д`)

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