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70話目

ついに70話目となりました。

ちょこっとさらっと書くだけのはずが、どんどん登場人物が増え、どんどんフラグ建てられてしまい……。


なんとなくの終わりは決めてるんですが、何せキャラが勝手にあちこち行ってしまうので、進まない(ノ´∀`*)

 トルメンタ様により部屋へと送り届けられた俺は、読みかけにしていたおじーさんシリーズのおじーさんの冒険を椅子に座って読みながら、ナハト様のお誘いを待っていると待ちかねていたノックの音がして本から顔を上げる。

「ジルー、迎えに来たぞー」

「(おう!)」

 出ない声の代わりの応えに、机に置いてあったベルを鳴らしてから立ち上がる。

 小さめなハンドベルみたいなこれは、使用人を呼ぶための物らしいが、今は返事代わりに使わせてもらった。

「(おまたせー)」

 お風呂に必要な一式は用意してもらえるので、俺は黒板だけ持って扉を開けて部屋を出る。と、そこにはナハト様とトルメンタ様、そしてフュアさんがいて。

 お貴族様だからメイドが体を洗ってくれたりするのか、とか前世の俺ならワクワクであろうことを想像してしまう。

 今の俺は幼児なせいか、どちらかといえば落ち着かないからメイドはいらないなーとしか思わないが。

 とか思ってたら、凛とした立ち姿のフュアさんが、少しだけ困ったような顔をして俺を見て口を開く。

「お呼びでしょうか、ジルヴァラ様」

「ジル、自分で体洗えないのか? メイド呼ばなくてもオレが洗ってやるぞ?」

「いや、ジルヴァラは普通に一人で何でもやってたけどな」

 フュアさんに続いたナハト様、トルメンタ様の言葉で、俺はフュアさんがここにいる理由に気付いて、黒板に大きく『ごめん、間違えた』と書いてフュアさんへ見せ、ペコリと頭を下げる。

「ジルヴァラ、もしかして、声が出ないからって、鳴らして応えようとしたか?」

 トルメンタ様には俺の行動はお見通しだったらしく、若干悔しさを感じつつ頷くと、小さく笑われて頭を撫でられる。

 バツの悪さから、むむ、と唇を引き結んでいると、柔らかく微笑んだフュアさんから、

「あの呼び鈴には特殊な魔法がかけられているので、何処の部屋で鳴らされたかすぐにわかるんですよ」

と、すぐにここに来れたネタバラシをされる。

「何かありましたら、遠慮なくガンガンと鳴らしてくださいませ」

 というか鳴らせ、という副音声が聞こえそうな目力で俺を見て一礼し、フュアさんは颯爽と去っていった。

「オレ小さい頃、悪戯でガンガン鳴らして、ヘイズに怒られたことあるから、ジルも気を付けろよ」

 えへんと胸を反らしてお兄さんぶって忠告してくるナハト様に、俺は無言でへらっと笑って頷くだけで終わらせておいたのだが……。

「いや、お前もまだ十分小さいからな?」

 俺が言いかけた突っ込みを、呆れ顔で笑ったトルメンタ様が普通に言ってしまい、ちょっとした兄弟喧嘩が廊下で勃発してしまうことになった。

 主様の家のお風呂も一軒家にしては広めだと思ったが……。

「(広っ)」

 脱衣場の広さから浴室も広いだろうとは思ったが、ガラリと半透明なガラスと引き戸を開けた先にあった、ちょっとした銭湯のようなタイル張りの広い浴室に思わず固まった俺を、トルメンタ様がひょいっと抱えて浴室内へ入っていく。

 陶器と石の間みたいな手触りで、角のない柔らかなフォルムをした、広い浴室に似つかわしい大きな浴槽にはたっぷりのお湯が張られていて、浴室内はぽっかぽかだ。

 ニクス様と入ったら確実に眼鏡曇るなとかどうでもいいことを考え込んでいたら、いつの間にか風呂イスに座らされていて、トルメンタ様によって体を洗われているところだった。

 隣ではナハト様が俺の方をチラ見しながらドヤ顔で頭を洗っていたが、シャンプーの泡が目に入ったらしく、痛みでわたわたし始めた。

 俺はナハト様の一連の流れは見なかったことにしてあげ、鏡越しに俺を洗ってくれているトルメンタ様の顔を見上げる。

「ボーッとしてたから、勝手に洗い始めたぞ?」

 鏡越しの俺の視線に気付いたのか、トルメンタ様はニッと笑って泡まみれのスポンジを見せてくる。

「(ん、ありがと)」

 頷いてお礼を言うと、ちょうど洗い終わったところだったらしく、トルメンタ様はシャワーヘッドを掴んでそのまま俺の体に付いた泡を流してくれる。

「髪は自分で洗うか?」

 目に入ったシャンプーの痛みでまだ呻いているナハト様をちらりと見て、俺の方を心配そうに見るトルメンタ様に、俺はコクリと頷き返す。

 ここで俺の前世というチートがうなる……というか、ただ普通に頭洗うって話なんだけどな。

 実際、前世の記憶があって助かってることって、俺ほぼ何もないような気がしてきたんだけど。

 逆に素直に甘えられない部分とか、やたらと無茶して怒られてるような……?

 これって俺に前世の記憶があるのはチートとかじゃなくて、ただのカミサマ的な存在の消し忘れとかなのかも。死に方もあんな感じで、誰かを助けた、とか、謎の突然死、とかじゃないし。

 ヒロインちゃんみたいに特別な力が湧く気配は今のところ全くないし。

「ジルヴァラ? いつまで泡立ててるんだよ。羊みたいになってるぞ」

 ボーッと考え込みながら頭をシャカシャカと洗っていたらとんでもないことになっていたらしく、笑みを含んだトルメンタ様の声にハッと現実へ戻される。

 鏡を見ると、白アフロ状態になった銀の目をした子供が、間の抜けた顔でこちらを見つめ返している。なんて、思い切り俺なんだけど。

 目に入ったシャンプーの痛みから復活したナハト様が、あはは、と笑いながら白アフロを突いて来てるので、苦笑いした俺はさっさとシャワーで泡を流してしまう。

「ほら、ジルさっさと行こうぜ」

 リンスインシャンプー的な物なのか、リンスはないので、しっかりと全身から泡を流した俺とナハト様は手を繋いでとてとてと浴槽へと向かう。

「はしゃいで転ぶなよ」

 背後からそんなトルメンタ様からの心配そうな声が聞こえたので、声の出ない俺はコクリと頷き、ナハト様は「子供扱いすんなよ!」というThe子供な元気の良い返事をしている。

 で、直後にフラグ回収したナハト様が滑って転びそうになるまでがセットなイベントだったようだ。

 手を繋いでいた俺は何とか支えて踏み止まろうとしたが、足元が悪い上に俺はナハト様より小柄なので、逆に一緒になって転びかけてしまう。

 襲い来る痛みを想像してキュッと眉を寄せたが、背中に触れたのはタイルの硬い感触ではなく、程よい張りと弾力のある筋肉で覆われたトルメンタ様の体だ。

「あー、ほら、言ったそばから……。ジルヴァラまで怪我するぞ?」

 呆れ混じりの声から察するに、トルメンタ様はこの展開が読めていたようだ。

 というか、ナハト様が常習犯なだけかもしれない。

 隣で同じようにトルメンタ様に受け止められているとナハト様をジトッと見ると、誤魔化すように鼻先を擦りながら視線を外される。

「ったく、ジルヴァラと風呂に入れて嬉しいのはわかるが、ジルヴァラは傷が塞がったばっかりなんだからな?」

 からかうような声音でそう言いながら、トルメンタ様は俺とナハト様を抱え上げて、そのまま浴槽へと向かうことにしたらしい。

「傷……?」

 バツが悪そうな顔して抱き上げられていたナハト様はトルメンタ様の言葉にきょとんとし、その視線は同じように抱き上げられている俺の体をなぞっていく。

 ナハト様の視線が止まったのは、俺の脇腹に並行に走る数本の引き攣れた傷跡だ。


「(トルメンタ様)」


 黒板に書いて説明するのも面倒なので、俺はトルメンタ様へ丸投げすることにして、無音でその名前を呼んで笑いかけておいた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


もうここまで来たら、目指せ100話ですかね(笑)

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