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61話目

本日2話目の投稿となりますm(_ _)mご注意ください。


ジルは別に隠そうとしてる訳ではなく、主様のことを主様だとしか知らないだけです←

「ジル〜! 起きてぇー!」



 アモルさん宅での目覚めは、そんなイオの声で始まった。

 俺は欠伸を噛み殺しながら起き上がると、適当に髪を手で撫でつけて屋根裏部屋から降りる。

「おはよう。ジルはお寝坊さんね!」

「おはよう、イオ。ベッドの寝心地が良くて寝過ごしたんだ」

 ふふふと楽しそうに笑う可愛らしいイオの笑顔につられ、俺も自然と笑顔になって挨拶を返す。

 そのまま、イオに手を引っ張られて洗面所で顔を洗い、朝食のテーブルに着く。

「おはよう、アモルさん、ファスさん」

「ああ、おはよう」

「おはよう、ジルくん」

 アモルさんとファスさんに挨拶をすると、二人からも笑顔で挨拶が返ってきたのだが、何だか少しぎこちない。

 朝食は美味しいが、二人の様子はやっぱりどこかおかしいままで、イオも気付いたのかチラチラと二人の様子を窺っている。

「……あのさ、お世話になっといてなんだけど、俺」

 空気を読んだ俺は、自分からお暇の挨拶をしようと口を開く。お世話になった分の代金は、あの謎指輪をコッソリ置いていこうと考えて。

「違うんだ、ジル! これはそういう事じゃないんだ!」

 俺が何を言い出す気かわかったのか、アモルさんから全力先回りをされて、お暇の挨拶は遮られてしまい、何だったら椅子に座ったままの体勢でファスさんに抱き締められる。

「パパ、ママ? ジルがどうかしたの? ジル、さよならなの?」

 今にも泣き出しそうな顔をしたイオが、不安そうにアモルさんとファスさんの交互に見ている。

「違うわ! 心配しないで、イオ。ジルくんがいたいなら、ずっとうちにいればいいわ。でもね、ジルくん、おうちの人に何も言わずに出てきちゃったでしょう?」

「そうなんだ、それで、その保護者の方にジルの安否を伝えたいんだが……」

 予想外だったのか目を見張っているイオ。俺もまさかの話だったので、一緒になって目を見張ってるのだが。

「……そんなことか。えぇと、構わないけど、『誰ですか?』とか言われても気にしないでくれよ。主様、あまり他人に興味を持たないんだ」

 疎まれていた訳ではないようなので一安心した俺は、主様へ話しかける際の注意事項をアモルさんに伝えておく。

 アモルさん意外と熱血っぽいから主様へ食ってかかって、万が一主様の虫の居所が悪かったりして反撃されたら大変だ。

 主様が反撃なんて絶対なさそうだけど、主様が軽く反撃しただけで大怪我とかになりそうだし。

 脳裏をちらりと過るのは、捕まった俺を助けに来てくれた主様によって焼き尽くされた男達……。そこまで思い出した俺は、ふと自分にエプレを食べさせ、その後蹴ってきた男をどこで見たか思い出す。

「犯人の一味かぁ……じゃあ、あれはお礼参りだったのか」

 アハ体験ではないが、色々とスッキリした俺は、怪訝そうにこちらを見てくるアモルさん達に何でもないと首を横に振って、誤魔化すように笑っておいた。

 朝食の片付けをするファスさんを手伝いながら、俺は改めてこれからの身の振り方を考える。

 アモルさん達家族は底抜けにお人好しだから、このままずっとここに置いてくれそうだけど、それだと俺が心苦しい。

「ファスさん、なんか俺でも出来るような仕事ないか?」

 俺がそう話しかけると、ファスさんはうふふと笑って、チラチラとこちらを窺っているイオを目線で示す。

「今はうちのお転婆な天使の遊び相手をしてくれると助かるわ、小さな騎士さん」

「わかったよ。なんか出来る事があったら、遠慮なく言ってくれよ?」

 へらっと笑って肩を竦めた俺は、こちらを期待の眼差しで見ているイオの元へと近寄っていく。

「イオ、何して遊ぶ?」

「うーん、じゃあ、あたしがジルに本を読んであげる」

 チラッと外を見てから、イオは少し残念そうに提案してきて、俺はくすくすと笑って頷いた。

 さすがに昨日の今日で、外へ遊びに〜、とは言えなかった様子の良い子なイオに気付いてしまったから。

 俺達はリビングのソファへ並んで座り、イオが持ってきた本をリビングの低いテーブルへ置いて開き、二人で覗き込む。

 イオが手に持つには、イオの持ってきた本は重すぎた。俺は辛うじて持てるが、今日はイオが俺に読み聞かせてしてくれるらしいので、イオの好きにさせておく。

 題名は見えなかったが、イオが読み上げていく登場人物の名前や展開に何故か既視感を覚える。

 既視感から嫌な予感へと変わり、俺は無言で本を閉じた。

 表紙に書かれていた題名は『騎士になった少年2』だ。あの続編らしい。

「ジル、どうしたの? あ、ちょっと難しい本選んじゃったから? これ、パパの本棚から持ってきたのよ」

 えへんと胸を張るイオは、やっぱりファスさんそっくりで可愛らしい……ではなくて、どう説明すべきかと困り果てた俺は目線でファスさんを呼ぶ。

 実はファスさんは少し離れた場所から、微笑ましげな顔をしてずっと俺達を見守ってくれていたのだ。

「うふふ、どうかしたのかしら? イオったら、そんなに難しい本をえらん……」

 すぐ笑いながら近寄って来てテーブルの上の本を取り上げ開いたファスさんは、そのままペラペラと頁を捲って流し読みをして、笑顔のままパタンッと勢い良く本を閉じた。

「イオ。……これ、パパの本棚にあったのね」

「う、うん、勝手に持ってきて、ごめんなさい!」

 ファスさんの笑顔の裏に、般若が見えた気がする。

 アモルさん、そういう本は子供に見つからないようにしといて欲しい。

 しゅんとしてるイオに、俺はチラッと中身を読んで確認してから新たな本を押しつける。

「イオ、この本読んで?」

「え? うん! いいよ、あたしが読んであげるね!」

 一瞬きょとんとしたイオだが、すぐにパァッと表情を輝かせ、俺が渡した本を抱えて早速開いて、声に出して読み始める。


「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんとおじーさんがいました」


 おじーさんって誰だよ、と突っ込みかけた俺は悪くないと思う。


「──そして、三人は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 色々と突っ込みどころは多かったが、なかなか感動出来る話だった気もする。何より、イオが頑張って読んでくれたので、俺もしっかりと集中して最後まで話を聞いていた。

 あの本を手に消えたファスさんも、いつの間にか戻って来ていて、一緒に話を聞いていたぐらいだ。

 お話に相当感動したのか、ちょっと目がうるうるとしている。

「あのイオが、こんなにしっかりと文字を読めるなんて……」

 違った。イオの成長に感動してただけらしい。

「ねぇ、ジル、次はどれがいい? おじーさんの冒険シリーズもあるのよ?」

 なんかとんでもないシリーズがあるようでちょっと興味を惹かれかけるが、それを邪魔するように軽やかな呼び鈴の音が鳴り響く。

「あら、お客様みたいね」

 パタパタと玄関へと向かうファスさんに、何となく心配になってついていく俺。

 ついでにイオもくっついてきている。

「ファスさん、きちんと相手を確認してから開けないと駄目だからな?」

「そうね、変な人だったら大変だもの!」

 両側から力説する俺達を引き連れ、ファスさんは玄関扉の前で足を止める。

 人の気配はあるが、磨りガラスとかにはなってないので、中から人影は確認出来ない。

「はいはい。……どちら様でしょう?」

 うふふと笑ったファスさんは、俺達の忠告を聞いてくれた……つまりは、



「開けながら声かけたら、何の意味もないんだって……」


「もー、ママったら……」



 誰何しながら扉を開けてしまい、そのまま訪問者と顔を合わせる形になってしまい……。

 当然警戒する間もなく訪問者は目の前だったが、俺は訪問者を確認すると圧倒的安心感から頬を緩めて笑い、一歩前へと進む。



「おはよ、フシロ団長、あとナハト様も」



 オレはついでかよ! とナハト様が騒ぐ中、フシロ団長は渋面のまま屈み込んで俺と目線を合わせる。



「全く今度は何してやがる? 王都からわるーい貴族が、泡食って逃げ出そうとしてるぞ?」



 言われた言葉は全く理解出来なかったが、大きくあたたかな手で頭を撫でられると、主様と離れてからの不安感が薄れて俺は自然とへらりと笑っていた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


フシロ団長現るー(*´∀`*)

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