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58話目

しっかりフラグ回収していくジルです。


ウザくない元気っ娘再登場(`・ω・´)ゞ


お転婆だけどあちらとは違い、気を使える優しい子です。

「これだけ経ってるのにいつもみたいに探知魔法で探されてないってことは、俺もプリュイみたいに要らない枠に入っちゃったんだな」

 慣れない街中を歩き回ってすっかり迷子になった俺は、街路樹の木陰に座って休んでいた。唯一今手元にあるのは、途中で見つけた謎指輪で、それを構いながら自嘲気味に呟く。

 この謎指輪は、迷ってる最中うっすら湧いたゲーム知識で、そう言えばこの辺に隠されてたハズだ、と冗談半分でその辺の塀に開いてた穴に手を突っ込んだら本当にあった。

 見た目は、大きな黒い石の填まったなかなか高そうな指輪だ。効果とかなんか意味のある指輪だったか、とかまでは思い出せてない。見た目的に高く売れそうなので、最悪売って生活資金にさせてもらおうかと思う。

 こんな高そうな指輪が今まで誰にも気付かれなかったのは、穴が俺の手が辛うじて入るような狭さの穴だったからか、入り口辺りに蛇がいたせいかはわからない。

 黒い石を触ってるとほんのりとあたたかく、なんか精神が落ち着く気がするので、そういう効果の指輪だったのかもしれない。


 思い出せないけど。


 今はそれより、今後のことだ。

 思いがけず後先考えず家出してみたら、成功してしまったんだ。何の準備も出来てない。

 心の何処かで、いつも通りすぐ主様が見つけてくれる、そんな甘い考えがあった俺は、ちょっと身悶えしたくなるくらい恥ずかしいし…………泣きそうだ。

「そもそも、探されないなら家出ですらないのか?」

 失踪? 独り立ち? これは何と言うべきかなぁ、などと割とどうでもいいことを悩んで現実逃避していた俺は、いつの間にか目前にあった小さな人影が覗き込んできていて、驚きから瞬きを繰り返す。

「えっと、イオ……であってるよな?」

 俺の顔を覗き込んで腰に手をあててぷんぷんと可愛らしく怒ってるのは、茶色い髪に茶色の目をした見覚えのある女の子で、俺の呼びかけにもう! と今度は呆れた表情になる。

「そうよ! さっきからずっと話しかけてたのに、ロコ……じゃない、ジル、気付かないんだもん!」

「ごめん、考え事してて……って、あれ? どうして俺の本名知ってるんだ?」

 女の子──イオに頭を下げて謝罪した俺は、イオの口から飛び出してきた本名を聞いて首を傾げて訊ねる。確かイオには『ロコ』が本名だと勘違いされてたはずなんだが。

「実はあたし、人さらいにさらわれて捕まってたんだけど、そこを騎士様達に助けてもらったの。その中のカッコ良い騎士様二人がジルの知り合いで、ジルがジルヴァラって名前だって教えてくれたのよ」

 ふふん、と得意げに教えてくれるイオは可愛いが、なかなか衝撃発言で突っ込みたいところが多すぎて、俺は自らの状況も忘れて思わず周囲を見渡して、イオに危険が迫ってないか確認してしまう。

「人さらいって、大丈夫だったのか? 怪我とかひどい目に遭わされたりしなかったのか?」

「ええ、見ての通りよ」

 そう言って肩を竦めてみせるイオの笑顔は一切の陰りもなく、強がりとかではなく本当に大丈夫そうだ。あの時も勝ち気な子だとは思ったが、本当に肝の据わった子なんだと場違いに感心してしまう。

「良かった……ちなみに、その騎士様ってどんな騎士だったんだ?」

「一人はまだ見習いらしいんだけど、トルメンタ様とオズワルド様っていって、二人共カッコ良かったのよ!」

 夢見る乙女そのものなキラキラした眼差しのイオから出て来た名前は、想像通りの名前で、俺は納得がいって大きく頷く。

「確かにあの二人ならカッコ良い騎士様だし、俺の名前を知ってるのは当然だな」

「あ、でも、あの時のジルだって、騎士様に負けないくらいカッコ良かったのよ?」

 俺の反応に、ハッとした表情になったイオは、慌てふためきほんのりと頬を染めながらそんなフォローをしてくれる。

「そっか、ありがと」

 イオの優しいフォローにへらっと笑った俺は、隣におずおずと腰かけてきたイオの横顔を見つめる。

 イオは少しお転婆すぎるけど性格はいいし、見た目もかなり可愛いし、きっとあと数年すればモテモテになること間違いなしだろう。

 あのイオを溺愛してそうな父親は気をもみそうだ、とまで思った俺は、周囲を見渡してイオの両親を探す。

 まさか人さらいに遭ったばかりの可愛い娘を一人にしている訳ないだろうと思ったのだ。しかし、どこを探してもそれらしき人物は見当たらない。

「…………なぁ、イオ。もしかして、はぐれたのか?」

「うん! さっきまで心細かったけど、今はジルがいるから平気になったわ」

 俺は元気良く無邪気なイオの笑顔に癒やされると同時に、人のふり見て我がふり直せ、という言葉を思い出してちょっとだけ反省した。もう探してくれる人のいない身としては遅いだろうけど。

「心配してるだろうから、イオの両親急いで探そうか。俺も一緒に探すからさ」

 早速立ち上がった俺は、イオに向けて手を差し伸べて安心させようと笑いかける。

「ありがとう、ジル! あ、でもジルがここから離れたら、ジルもあの赤い髪の人に心配されるんじゃないの?」

 笑顔で俺の手を握って立ち上がったイオは、笑顔を曇らせて心配そうに訊ねてくるが、俺は苦笑いして首を振る。


「俺なら大丈夫だよ」


 主様がもう俺を探すことはないだろうから。


 言えなかった言葉を飲み込んで誤魔化し、俺はイオと手を繋いで歩き出した。

「良かったわ、イオ……」


「またさらわれてしまったのかと……」


 幸いにもすぐイオの両親は見つかったが、すぐ立ち去ろうと思っていた俺はイオごと号泣するイオの両親に抱き締められて身動きが取れなくなってしまった。

 つい先日さらわれたというイオの話を聞いていたから、この反応も当然だよなと俺は抵抗するイオの声を聞きながらおとなしく抱き締められていた。



「また君に助けられたね。本当に君はうちのイオの小さな騎士だ」

「えぇと、お名前は確か……」

 しばらくして落ち着きを取り戻したイオの両親に、俺はへらっと笑ってみせる。

「俺はジルヴァラです。イオが無事で良かったです」

 現在の場所は感動の再会した所からは移動していて、通りに面したお洒落なカフェだ。

 お礼を、と言われたので一度断ったが、結局押し切られてお茶をごちそうになることになった。

 正直、朝ごはん食べ損ねてたから助かる。

 俺の前にはオレンジジュースと結構な量のあるサンドイッチ。

 テーブルを挟んで正面に座るイオの前には同じくオレンジジュースと小さなケーキの盛り合わせみたいな可愛らしい見た目のプレートが置かれている。

「たくさん食べなさい」

「遠慮しなくていいのよ?」

 イオを挟んで座って、こちらを優しい眼差しで見つめてくるイオの両親に、俺は笑って頷く。

「ありがとうございます。遠慮なくいただきますね」

 早速オレンジジュースを飲ませてもらう。歩き回って喉が渇いていたから余計美味しく感じる。サンドイッチもパンがふわふわで美味しい。

「ジル、どうしてさっきから話し方違うの? 普通に話せばいいじゃない」

 サンドイッチを夢中で食べてたら、俺のよそ行きな話し方が気になっていたらしいイオから、そんな指摘をされてしまう。

「そう言われても……」

「わたし達にはイオに話しかけるみたいに話してくれればいいわ」

「そうだな。子供が気を使うものではないよ」

 イオとよく似た……というか、イオが二人に似たんだろうが、イオと同じぐらい陽キャでグイグイくる両親によって、よそ行きジルヴァラは引っ剥がされてしまった。

「……俺口悪いんで、気に障ったらすぐ言ってくれよ?」

 諦めてそうへらっと笑って言うと、家族三人揃って、そっくりな笑顔で笑われてしまった。

 で、改めてイオの両親も自己紹介してくれて、父親の方がアモルさん、母親の方がファスさんだそうだ。

 イオの肝の据わりっぷりとかは、母親のファスさん譲りだろう。

「それで、ジルはなんで一人なのかな?」

「そうよね、わたしもそれが気になってたのよ。あの綺麗なお兄さんとははぐれたのかしら?」

 仲良し家族にホッコリしていると、今訊かれたくないことナンバーワンな事をぶっ込まれ、俺は飲んでいたオレンジジュースで咳き込んでしまった。

「ちょっと! ジル、大丈夫?」

 ゴホゴホと盛大に咳き込んでると、心配して隣に移動してきたイオが背中を擦ってくれる。

「ごめ、ん、ありがと……もう平気だ」

 涙目で謝罪とお礼を言うと、イオはニコッと笑ってくれる。文句無しに可愛い。

 ヒロインちゃんにも負けてない笑顔だ、と思った俺は、ズキッと胸に走った痛みに気付かないふりをしてイオへ笑い返す。

 俺がいなくなったら、たぶん主様は乙女ゲームの正規ルートへ何処かで戻って、ヒロインちゃんと出会って、あっという間にほだされちゃうんだろうな。

 俺みたいなどこの馬の骨かわからないような子供にほだされるぐらいに、意外と寂しがり屋な主様だから、ヒロインちゃんみたいな相手なら……。

「ジル、まだ苦しいの? お医者さん行く?」

 想像だけでかなりの渋面になっていたのか、イオは心配そうに訊ねてくるし、アモルさんもファスさんも同じように心配そうな顔をしてくれてる。

「ごめん、大丈夫だって。一人でいたのも、あの人には王都まで連れて来てもらうって話だったんだよ。だから、一人なんだ」

 へらっと笑って告げると、イオはへぇそうなんだー、と笑って流してくれたが、アモルさんとファスさんは一気に表情が曇った。


「君みたいな幼い子が王都で一人で暮らしてるのかい!?」


「ジルくん、うちのイオに負けないくらい可愛いのよ? すぐさらわれてしまうわ、あなた!」


「そうだね、ファス。ひとまず私達が保護しよう」


「いい考えね、あなた」


 口を挟む間もなく、息ぴったりな夫婦の会話が交わされ、俺とイオは揃ってパチクリと瞬きを繰り返すのみだ。


 イオがさらわれたばかりなせいもあって心配性を拗らせていた二人により、俺の本日の宿泊先はあっという間に決まってしまった。



 まぁ、今日のところは何処かで野宿する予定だったから助かるんだけどさ。

いつもありがとうございますm(_ _)m


ジル、ここに落ち着きましたー(*´∀`*)


すぐ見つかっちゃいそうですが、意外とジルの知り合いとはほとんど接点がないご家族です(`・ω・´)ゞ


主様、早く迎えに来ないと、ただの異世界転生でジルに可愛い彼女出来ちゃうぞーって感じです(*>_<*)ノ

まぁ、一応BL物なんでないですけど^_^

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