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56話目

おはようございます(*´∀`)


朝から生臭くグロ注意すみません(。>﹏<。)

 賑やかな王都が少し静かになる時間帯、おれは一人で騎士団本部へ向かって馬を走らせていた。

「トルメンタ、無事だったか」

 イオお嬢ちゃんを無事にご両親に渡して騎士団本部へ帰ったおれを待っていたのは、険しい顔をした親父殿だ。

「あぁ、おれもオズワルドも、人質になっていたお嬢ちゃんも、足手まとい達も無事だよ。ついでに犯人達も、な」

 団長の執務室で親父殿と二人きり。

 おれは遠慮なく毒を吐かせてもらう。

「悪かったな、あいつらのお守りは大変だったろう」

「ボンボン達より、幻日サマの方がヤバかったけどな」

 肩を竦めたおれに、親父殿はあぁと低く唸るように洩らして、苦笑いをする。

「犯人達が生きていて良かったよ。これで少しは貴族側に繋がる情報が出るだろう。しかし、よくあいつが犯人を生かしていたな」

「たぶんだけど、外から様子を窺ってる時に、中から子供の泣き声みたいなのが聞こえたんだよ。それで、手加減してくれたんじゃないかとか思ってるんだけど……」

 おれの推測に親父殿は顎髭を撫でながら、重々しく頷いた。

「ジルヴァラをあれだけ可愛がってぐらいだ。ありえない話じゃない」

「そうそう、報告書にはあえて書かなかったんだが、人質になっていたお嬢ちゃんは、ジルヴァラと知り合いらしいぞ」

「知り合い? 同郷……はないか。あの村の子供か?」

「いや、なんか旅の道中、モンスターに襲われてた所をジルヴァラに助けられたらしい。で、そのお嬢ちゃん、幻日サマ相手にやらかしたんだよ」

 親父殿がこちらの話に興味を抱いたので、おれはからかうようにわざとらしく焦らしてみる。

「そんなお嬢ちゃんが、あいつ相手にやらかした? 髪でも引っ張ったか?」

「そもそも触らせないだろ、幻日サマなら」

「なら、なんだ? まさか、ジルヴァラを馬鹿にしたとかか?」

「助けてくれた相手を馬鹿にするわけ無いだろ。どっちかというと、淡い初恋って感じで、幻日サマ相手にも怯えてない肝の据わった子だったよ」

「焦らさず教えろ。これから忙しいんだ」

 疲れ切った様子でため息を吐いた親父殿に、おれは悪い悪いと軽く謝ってネタばらしというか答えを口にする。

「お嬢ちゃん、ジルヴァラの本名知らなかったみたいで、幻日サマの目の前で『ロコ』って連呼してたんだよ」

「そりゃ、また……」

 親父殿はそれだけ呟くと天を仰いで絶句してしまった。

「そう言えば、幻日サマとオズワルド、途中で消えたんだが……」

「それに関してはオズワルドから報告が来ている。どうやら主犯格があそこにはいなかったらしい。あいつはそのまま狙われる可能性が高いジルヴァラの元へと向かわせた」

 復活した親父殿は、キリッとした騎士団団長らしいキメ顔で重々しく言い放ってるが、つまりは……。

「ジルヴァラが心配で勝手に帰ったんだな」

「……そうとも言う」

 キリッとしたキメ顔を止めた親父殿は、苦笑いをして肩を竦めて、視線を遠くへ向ける。

「あれは縛れるものではないと陛下も理解してくださってるからな」

「……なぁ、ジルヴァラ、本当にうちの子にした方が良くないか? 下手すればどっかの貴族とかが幻日サマの力欲しさに囲い込みしそうだ」

「わかってるが、ジルヴァラ本人が望んでいない。それを無理に押し通そうとすれば、あいつはジルヴァラを連れて遁走するかもしれないぞ」

「それは上手く幻日サマの方を、ジルヴァラの安全のために、とか言い包めればいいだろ」

 あえて『ジルヴァラを使えば幻日サマを従わせられるかもしれない』という点は口に出さず会話をしていたおれ達は、突然開かれた窓から入ってきた夜風を感じると同時に、揃って剣の柄に手をかけて窓の方を鋭く睨む。


「団長」


「わかってる」


 冷え冷えとした夜の空気に混じった、濃い血の臭い。

 死を感じさせる慣れ親しみたくないが、嗅ぎ慣れた臭いだ。

 自然と口から出た呼びかけは緊張していて、おれは内心苦笑しながらも、顔に出さず親父殿と並んで油断なく次の展開を待つ。

 ドサリと重い音がしたのは窓の外。ここは二階なので、地面まで少し遠いがかなりハッキリ聞こえた。

 耳を澄ませていると、うぅぅという幽鬼のような声も聞こえてくる。

「グールかゾンビか?」

 首を傾げて呟いたおれに、親父殿は油断なく剣の柄に手をおいたまま、ゆっくりと窓へ一歩踏み出す。

「腐臭はしなかったが……」

 そう呟いた親父殿は、窓の外を窺おうとしたんだろうが、その直前に空中から現れたとしか思えない動きで、窓枠へ着地した人影がある。

 部屋の明かりに照らし出されたのは、鮮やかな赤毛と美し過ぎる美貌。先ほど別れたばかりの、いつも通りなローブ姿の幻日サマだ。

 見間違えようがない相手に、おれは緊張を解きかけたが、隣に並ぶ親父殿は剣の柄に手をかけたままだ。

「何をしに来た」

 低く問う親父殿に、幻日サマはいつも通りふわふわと微笑んで、両手を広げて見せる。その両手は赤に染まり、わかりにくいが暗い色のローブも濡れて色を変えているようだ。

「ロコのために、殺すなと言われてたので」

「……生きてるのか?」

「呻いてるので生きてるのでは? まぁ、ロコを傷つけるような手足……いりませんよね?」

 親父殿と幻日サマの会話を聞き、ニッコリと笑って吐かれた言葉の意味を理解したおれは、親父殿の言葉を待たずに駆け出す。

 途中で出会った騎士達を巻き込み、ついでに治療で必要になるであろう物を別の騎士に取りに行かせて、おれは残りの騎士達と窓の外……音的には演習場の辺りだろうと予想して目的地を目指して走り抜けた。



「ぐっ」

 隣の騎士が上げそうになった声を飲み込むのを聞きながら、おれは呻いている男を無言で見下ろす。

 意識ははっきりとしているようだが、その口から出てくる声は呻き声ばかりだ。

「……確かに生きてると言えば、生きてるな」

 これで証言とか出来るのか、と若干心配になったが、それは親父殿が何とか上手くやるだろう。

 今はこの男を口封じとかで殺されないよう安全な場所へ保護しないといけない。

「おい。死にたくなければ抵抗するな」

 そう男へ話しかけて、運ばれてきた担架に乗せながら、おれは自分の発言の馬鹿馬鹿しさに内心で自嘲するように呟く。



『手足のない人間がどうやって抵抗するんだ』



 そう思って。

「あ、れ……?」

 何となく目を覚ました俺は、目だけで動かして周囲を見渡し、掠れた声を洩らす。

 部屋の内装的に、主様の寝室なことは別に驚かないが、そこに肝心の主様の姿がない。

 体を起こし、ぽふぽふと手を伸ばして探ったシーツは冷たく、いなくなってからしばらく経っている事がわかる。

「そもそも、あれが夢だった?」

 まだ主様帰ってきてないのか、と俺がちょっとしょぼんとしていると、タイミングよくガチャという金属音がして扉が開く。

「ロコ? 起きてたんですか? 怖い夢でも見ましたか?」

 入ってきて開口一番にそう言いながら、主様が少し早足でベッドへ近づいてくる。

 主様の白い頬がほんのりと上気してるので、お風呂上がりなんだろう。

 近寄ってきても、夜の匂いもあの鉄錆びたような匂いはもうしない。ただ石鹸とシャンプーの香りだけだ。

 無言ですんすんと匂いを嗅いでいたら、思う存分嗅げとばかりに風呂上がりの主様から抱き締められる。

「臭いですか?」

「全然臭くないよ。さっき、主様の匂いじゃない匂いがしてた気がしたから、確認してただけ」

 これだけあからさまに嗅いだらさすがの主様も体臭が心配になったんだな、と申し訳なく思いながら、へらっと笑って答えると抱き締めてくる腕の力が強くなり、首筋に主様のさらさらの髪と息がかかる。

 くすぐったくて身動ぎしてると、主様から匂いを嗅がれてる気配がある。どうやら仕返しのつもりらしいが、意外と子供っぽい。

「あ、俺お風呂入ってないから、汗臭いから」

 しかも今日はプリュイの手伝いしたり、庭に出たりしたから、いつもより汚れてるぐらいだ。

「もうごめんって!」

 謝りながら、やや強引に主様の頭を押すが、離れる気配はなく濡れた何かが首筋を撫でる。

「ふぁ!?」

 ゾワッと背筋に走った感覚に、思わず妙な声を洩らしてピンッと背中を真っ直ぐにして固まる俺。

「じゃあ、お風呂行きましょうか」

 固まって無抵抗になった俺をそのまま小脇に抱えた主様は、機嫌良さそうにぽやぽやして先ほど入ってきたばかりの扉から出て歩き出す。

 俺が再び動き出せたのは、脱衣所で主様によって全部服を剥かれた後だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


反応いただけると嬉しいです!


この先、またまた主人公に負荷をかけたくなる悪癖が出まして、少しストレスある展開になる予定です。

少しでもストレス減らすため、書きまとめてあげるか、一話ずつポチポチするか悩み中です(*>_<*)ノ

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