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43話目

某国民的アニメのヒロイン並みにお風呂が好きなようです。


ラッキースケベはないです。ショタなので(ㆁωㆁ*)

「ありがと、ドリドル先生」

 やっと掠れていた声も戻ってきて、滑らかに言葉が出るようになった俺は、のろのろと服を着込みながらドリドル先生へお礼を言う。

 今日はまだお風呂の許可がおりなかったため、ドリドル先生が濡れタオルで体を拭いてくれ、先程のお礼はそのお礼だ。

 主様は戦力にならないが、ベッドの側でぽやぽや見守ってくれている。

「体力が落ちてますから、あまり無理はしないように。あたたかくして眠るんですよ?」

 服を着替え終えた俺をベッドを寝かせて布団をかけてくれたドリドル先生は、医者というより母を思わせる台詞で心配してくれていて、俺はくすぐったさに布団に口元を隠して頷く。

「はぁい。なぁ、明日はお風呂入ってもいいか?」

 ついでにお風呂のおねだりをする。体は重いが、やっぱり一日一回はお風呂に入りたい。前世ではそこまでお風呂好きだと思ってなかったが、俺は結構お風呂好きだったらしい。

「お風呂は……どうしても入りたいのですか?」

「駄目か?」

 うぅと唸りながら、目から上だけを布団から出してドリドル先生を見つめていると、しばらくして苦笑い混じりでため息を吐かれる。

「……一人では不安なので、明日男性の使用人の方を寄越してくれるようにフシロ団長に頼んでおきます」

 一人でゆっくり入れないのは残念だが、とりあえずお風呂には入れそうなので、俺は笑顔で大きく頷いて嬉しさからジタバタした結果、おとなしく寝なさいとドリドル先生からベッドへ縫いつけられ、眠るまで見つめられることになった。

「ジルヴァラはお風呂好きなんですね」

 答えはないだろうと思ったが、私は先ほどの嬉しさからジタバタしていたジルヴァラの無邪気な仕草を思い出して微笑みながらポツリと呟く。

「はい。私と一緒に住んでからほぼ毎日入ってます」

 思いがけず返ってきた答えに、私は軽く目を見張って青年の方を見るが、青年が見つめていたのは当然だが私ではなく、すやすやと穏やかな寝息を立てているジルヴァラだった。

 通常通りな青年の態度に、私は気にせず笑いを浮かべるのみで流して、ジルヴァラを清拭するのに使っていた道具を片付けいく。

 最初から青年に手伝いなど期待していないので、青年へ声をかける事もなく黙々と。

 そんな青年は、薄く微笑んてベッドで眠るジルヴァラを穴が開くほどに見つめている。

 自らの吐いた血に塗れて倒れた直後の姿と毒の後遺症で魘されていた弱々しい姿を知ってる身としては、穏やかな寝顔を見つめたくなるのはわかり、私は苦笑いのまま人ならざる美しさの青年の横顔を見る。

 初対面の印象では、浮世離れを体現したような雰囲気で、高名な芸術家が命を賭けたとしても創れないであろう美しさの、まさに人外というべき『生き物』だった。

 幻日という高位冒険者の話だけはフシロ団長から聞いていたが、こんな人間味のある表情をするなんて思わない逸話ばかりを聞いていたせいか、未だに目の前の少々ポンコ……愉快な相手が同一人物かとたまに疑ってしまう。 

 穏やかな話し方でのんびりと話すのはただの個性かと思っていたが、自分の感情を上手く言葉に出来ず、ジルヴァラを甘噛みしてしまう辺り、話すのはあまり得手ではないのだろう。

 そのせいで微笑んで適当に流しているうちに、神秘的な存在として勝手に周囲が持ち上げた。そういう一面もあるのかもしれない。

 未だにジルヴァラから目を離さない青年を視界の端に捉え、私はお節介ながらそんな想像をして微笑ましく思いながらも、さすがに見られ過ぎてジルヴァラが鬱陶しそうなので、青年を引きずってジルヴァラの部屋を後にする。

 ジルヴァラから目が離せないため、青年に許可を得て、客間を借りて泊まり込みをしている私は、ジルヴァラの元へ戻りたそうにしている青年を追い払って、私も借りている部屋へと帰る。




 真夜中、ジルヴァラの様子を見に部屋へ入った私は、そこに彫像のように佇んでジルヴァラを見つめている青年と遭遇してしまい、



「……せめて添い寝なさい」



と、引きつった笑顔で何とか妥協案を絞り出すのだった。

 ジルヴァラの様子を見るのは青年に任せ、借りている部屋へと戻ろうとした私は、暖炉前のソファに腰かけるフシロ団長を見つけて目を見張る。

「何かありましたか?」

 一度帰ったはずのフシロ団長の疲れた様子に思わずそう問いかけると、苦笑いでひらひらと手を振られた。

「膿の元は見つかりそうだが、なかなか面倒そうな相手でな。下手に突けばフリッシュ男爵が切られて終わりとなりそうで、今は周囲から固めているところだ。で、帰り道ジルヴァラの様子というか、あいつの様子が気にかかってな」

「お疲れ様です。あの方はまだジルヴァラにかかりきりですよ。先ほどもいつの間にかベッドの側に佇んでらしたので、添い寝するように言っておきました。ジルヴァラが寝てる限り、朝までおとなしくしててくださると思います」

 フシロ団長が心配しているのは、あの方がフリッシュ男爵へ報復に行くのではないかということだろう。

 あの方ならそれこそ一人で関係者を全員文字通りこの世から消し去れるのかもしれない……噂を信じるなら。

「どう見てもあれは大きな駄々っ子にしか見えないのですが……」

 先ほどまでの様子を思い出して呟く私に、笑みを消したフシロ団長は暗い表情で暖炉の火へ視線を向けてポツリと洩らす。

「その『駄々』で簡単に国一つ滅ぼすぞ、あいつなら。今までは、本人の扱いさえ気をつけていれば良かったが、今はとんでもない弱みが出来た」

「弱み……ジルヴァラですね」

「ジルヴァラ本人が全く気付いてないのは仕方ないとして、幻日の方は無意識なのかわからないのが俺は恐ろしいよ」

 ハァと深々ため息を吐いたフシロ団長は、炎の弱まってきた暖炉へ薪を焚べ、揺れる炎を見つめている。

「……ジルヴァラがあの方を守ろうとして、毒だと知っているのにエプレを食べた事は気付いていらっしゃるんでしょうか」

 私が思わず口にした内容に、フシロ団長は疲れた表情でやめてくれとばかりに首を横に振る。

「恐ろしいことを言うな、ドリドル。……ジルヴァラを監禁ぐらいで済めばいいが」

 簡単に想像できてしまった未来に思わず視線をジルヴァラの部屋の方へと向けるが、聞こえていなかったようで何の反応もなく、私は人知れず安堵の息を吐く。



「まぁ監禁されても、すぐ飛び出して来そうな気がしますけど、あの子なら」



 私が笑顔でそう呟くと、フシロ団長は額を押さえて天を仰いでしまった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


主様は、エプレをおやつとして食べてたぐらいなんで、ジルヴァラは間違えて食べたんだろうと思ってそうです。

主様の想像を超えるジルヴァラ←

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