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380話目

ダイナミック帰宅したい人外さん。



 教育的指導を受けている犬を睨んでいる主様の腕辺りをとんとんと軽く叩いた俺は、視線がこちらへ向いたのを確認してへらっと笑ってみせる。


「主様、主様。俺は、別に警戒してるとかじゃなくて、主様に朝ご飯作ったり、主様と朝ご飯食べたり、忙しい主様となるべく一緒にいたいから、朝ちゃんと起きてるだけだからな?」


 そう笑顔付きで説明すれば、主様は納得してくれたのかゆっくりと瞬きをしてから、いつも通りぽやぽやとした雰囲気となる。



 ほんのちょっとだけ、主様に置いていかれてるのでは、という恐怖が拭えていないせいもあるのは秘密だ。

 いつか俺が一人前の冒険者になれれば、笑い話として伝えられるだろう。

 その時、俺は主様と暮らしてはいないとは思うけど。



 さすがに独り立ちしたら出ていかないと行けないよなぁと、今は決意としてすら言えない言葉を飲み込んで、俺はぎゅうぎゅうと抱きしめてくる主様へへらっと笑っておく。



 って、俺のどうでも良い話より、今はプリュイのことだと思いついた俺は、何故か犬へ向けてドヤッとしている主様の肩辺りをぽんぽんと叩いて意識を俺の方へと向けようとする。

「ロコ?」

 すぐに俺の意図に気付いてくれた主様は、犬から視線を外して小首を傾げながら俺の名前を呼んでくれる。

 すぐ反応してくれたことが、さっきのエセシリアスの名残でやたらと嬉しくて顔が緩みそうになったが、何とかぐっと堪えてプリュイの方を視線で示して訊ねる。

「なぁ主様、プリュイどうやってここへ来たんだ? ずっと俺達について来てたのか?」

「あぁ。あれは転移陣が何事も無く動くか試すために連れて来ました」

 プリュイの言っていた通り主様はちゃんと答えてくれたのだが、その言葉の意味が理解出来ず、俺は無言のまま瞬きを繰り返した後、何となく犬を振り返る。



「わふわふん」



 犬から返ってきたのは、マジでそいつ転移陣刻みやがった、という呆れ混じりで主様の発言への裏付けだ。

 俺の聞き間違いじゃなければ、転移陣とか聞こえたけど、転移陣ってあの転移陣?

 ファンタジーとかで見る、床とかに描かれた魔法陣に乗ると、遠く離れた場所に一瞬で移動しちゃうっていうチートなやつ。

 その転移陣?

 いや、そんなチートな物がまさかありえな…………くないな、主様なら何か出来そうだ。

 そもそも主様自体が規格外過ぎるチートさんだ。

 厨二な方々の想像するような俺つえーを煮詰めたようなステータスだし。

 脳内で流れるように自分の思考に突っ込んでいた俺は、誉めて誉めてと言わんばかりにぽやぽやと俺を見てくる主様の頭へ無意識に手を伸ばし、何も考えず撫でる。

 予想外だったのか主様がちょっとビクッとなったが、気にせずなでなでと撫でる俺。



「わふっ」



 自分が何をしているかに気付いたのは、犬が自分も撫でろと鼻先を突っ込んできたからだ。

 はたと冷静になった俺は、えへへと誤魔化すように笑いながら主様の頭を撫でていた手を引っ込めて犬の鼻先を撫でる。

 こちらはよく撫でているので、遠慮なくがしがしと。

「わふわふわふ」

 こっちもと言いながら耳を倒してみせるので、俺は主様の腕の中から身を乗り出して犬の頭へしがみつくようにして、その耳の後ろ辺りをがしがしと掻いてやる。

 気持ち良いのか、犬の後ろ足がちょっと落ち着きなく地面を掻いている。

「がう」

 そこへ熊から、後ろ足、という簡潔な注意の言葉が入る。

 この注意の意味は、後ろ足の動きは無意識に動いてしまっているらしく、何度か犬を撫でていた俺を弾き飛ばしたことがあるせいだ。

「……わふん」

 わかってると拗ねたような声音で答えた犬だったが、相変わらず後ろ足は地面を叩いている。

 サイズさえ気にしなければ可愛らしい姿だが、さすがに犬のサイズだとちょっと掠めただけで俺なんか小枝のように吹き飛ばされる。

 小さめもふもふ達も巻き込まれて被害に遭うことはあるが、こちらは弾き飛ばされるのを楽しめるぐらいに丈夫ではある。

 俺の方はというと…………うん、そこまで丈夫ではないので、その度に犬は熊とお猿から詰められてたのも良い思い出だ。

「ロコ」

 懐かしい思い出にふけっていたら、名前を呼ばれたので身を捩って主様の方を向くと、主様は礼でもするように頭を下げている。

「…………えっと」

 鈍感系っぽく気付かないふりをしようとしたが、察せてしまったので犬から手を離した俺は、下げられていて撫でやすくなった主様の頭をぽふぽふと撫でる。

 主様の夕陽色の髪は、犬のもふもふに勝るとも劣らぬつやつやさらさらの手触りだ。

 それがわかってるのか、持ち主である主様も心なしかドヤッとしてる気がする。

「わふん」

 主様を撫でているとまた犬が撫でろと鼻先を寄せてきて、このままだと延々と繰り返しになるんじゃないかと思っていると、今の俺にとって救いとなる声が聞こえてくる。


「皆様、到着されマシタ」


「うほほ」


 プリュイとお猿の言葉に、ぱっと顔を上げてそちらを見ると、言葉通りカイハクさんを始めるとする騎士団の面々とアシュレーお姉さんがやって来るところだった。




 つまりは別れの時間がやって来たという訳で……。




 しんみりとしかけた俺に気付いた主様が、ドヤッとしながら洞窟の方を指差し──、



「私が設置した転移陣がありますから一瞬で行き来できます。安全性も確認済みなので、今からでも使えます」



 俺が先ほど流してしまっていたとんでも発言をもう一度披露してくれたので、犬へ挨拶をしようとしていたカイハクさんが穏やかな笑顔のまま固まってしまった。




 オズ兄を含む残りの騎士さん達も固まる中、アシュレーお姉さんだけがうふふと艷っぽい笑い声を洩らしている。



「あらあら、さすが幻日サマねぇ。甘やかしの規模が違うわ」



 そんな言葉と共にアシュレーお姉さんが流し目を向けてるのは、勘違いのしようもないぐらい俺の方で……。



 俺はお礼を言うべきか悩みながら、相変わらずドヤッとしている主様の顔を見上げるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)



異世界スタンドのおかげか、過去の短編を読んでいただけているようで自分も見返して、こんなの書いたっけ? となってたり……←


記憶力どこ行ったーって感じです(*ノω・*)テヘ

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