表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
387/399

375話目

なんとか『待て』出来ている……のか。




「ジルなら大丈夫だろうけど、一応気をつけるんだぞ?」


「何かあったら、大声であの方を呼ぶのよ?」



 集団の最後にいたオズ兄とアシュレーお姉さんは、心配そうにそんな一言を残して去っていって。


 残されたのは俺と動物達だけ。


 主様は気付いたらいなくなっていたのが、ちょっと寂しい。

 俺がしゅんとしていると、すかさずお猿がやって来て俺を抱き上げてくれる。

「うほうほうほ」

 そのまま主様を真似るように頬擦りされ、その間中主様が俺にべったり過ぎると文句を言い続けるお猿。

「ぢゅっ」

 そこへ、あれでも我慢してる方だぜと普段の主様を知るノワが告げ口したため、お猿だけではなく熊の目つきも悪くなる。

 さらに犬まで加わって、三頭は顔を突き合わせてコソコソと……いや、しっかりと主様への対策会議を始める。

「がうがう」

「わふわふ」

「うほうほ」

「そんなこと言うなよ……、俺、皆のことも主様のことも好きなんだから……」

 三頭の言ってることをを聞く限り、彼らの中ですっかり主様は『小さい子供が好きな変態野郎』になってしまったらしい。

「ぢゅぢゅぢゅ」

「その通りじゃないからな? 確かに主様は子供には優しいけど……」

 ノワだけに聞こえるように小声で言ったのだが、丸聞こえだったらしく三頭が揃って長々とため息を吐く。



「「「うちのちびに手を出したら食い千切る」」」



 俺以外の人間には、がうがう、わふわふ、うほうほという可愛らしく鳴いてる声にしか聞こえないだろうが、綺麗に揃った物騒な発言に、俺は苦笑いするしか無かった。

 最終的に『あんな奴のことはどうでも良い』という結論になった三頭は、それぞれのもふもふボディで俺を囲んでぎゅうぎゅうとすることにしたらしい。

 巻き込まれそうになったノワは、早々に逃げ出して熊の頭の上に鎮座して、ぎゅうぎゅうとされている俺を眺めている。

「そんなに囲まなくても逃げないって……」

 小さい頃はよたよたと歩き回って危ないからと、小さめな子達も一緒になって俺を囲んで移動するベビーサークルみたいな状態になっていた。

 そんなこと思い出して懐かしむ俺だったが、口から全て洩れ出していたようで熊から「今も小さい」と突っ込まれてしまう。

「ちゃっ」

 熊の頭の上にいるノワも「確かに」と同意を示して頷いてるし。

 まぁその通りなので、俺が否定もせずにへらっと笑っていると、もふもふ包囲網が動き出して転がされて、到着したのは犬の柔らかいもふもふ毛に覆われた腹の下だ。

「わふん」

 くるんと丸くなって先ほどとは違って一頭で俺を抱え込んだ犬は、ずっと小さいままなら良かったのにな、と鼻先を寄せて来てふぅという鼻息混じりに囁く。

 ここで口からのため息じゃないあたり、ちょっとシリアスが逃げ出す光景だよな。

「わふわふ」

 くすくす笑いながら濡れた鼻先をペタペタと触っていると、森から出てからどう過ごしてた? と問われたので、俺は大きく頷いて口を開く。


「話したいことたくさんあるから、聞いてくれよ」


 一晩で話し終えるかなぁと思いながら、俺は主様との衝撃の出会いから始まる話を──。



「わふわふわふっ」



 始めたかったのだが、アイツの話はいらないからな! と言われてしまったため、最初から躓くことになってしまった。



 ──とはいっても。



 俺とアイツこと主様は切っても切り離せない関係……とかいうと仰々しいが、俺は主様を追いかける形で森を出た訳で、主様抜きで話なんて出来るはずもなく。

 熊とお猿その他もふもふ達は微笑ましげな雰囲気で俺の話を聞いてくれていたが、犬は常に鼻面に皺を寄せてぐるるると低く唸っている。

 宥めるように犬の鼻面を撫でながら話していたが、その程度じゃ犬の機嫌は直らず、触れ合っている俺の体には唸り声による振動が伝わってきている。

 俺なんかぺろりと一飲み出来そうな大きさの口を使ってわふわふと気の抜ける鳴き声で文句を言う姿には、やはり威厳的なものは感じられず、それを見ている俺の顔はゆるゆるだと思う。

 この気の抜けた姿の『犬』は俺だけに見せる姿だと思ったら、なんだかとても胸があたたかくて嬉しくて。

 主様への好きとは違うけれど、犬達のことも大好きだから。

 ふにゃふにゃとだらしなく笑っている自覚はあったが、久しぶりの家族との会話が楽しくて気にしていられない。

 途中、ケレンとカナフと、ついでに翼の生えた猫が夕ご飯として果物とピチピチしている巨大魚を持ってきてくれたので、俺とノワは果物をありがたくいただいた。

 ピチピチしている巨大魚は、犬と熊が美味しくいただいてくれたが、持ってきた翼の生えた猫はちょっと不服そうだった。

 だけど、さすがに自分の身の丈より大きい魚を生では食べられない。

 お礼を言ってからそれを説明すると、人間は軟弱だなと前足でペシペシと叩いてきて可愛かった。



 夕ご飯を食べながらも話し続け、一通り話し終えたのだが、王都を出る少し前に起きたエノテラとのすれ違いによる一件を話した結果が……。



「「「ソイツぶっ殺す」」」



 主様並みの過保護だったらしい犬と熊とお猿から不穏な声が発せられることになってしまった。

 俺は軽くさらっと何でもない風に話したのだが、ノワはまだエノテラを許せていなかったらしく、事細かにエノテラからされた件を話してしまったのだ。

「ノワ……」

 困り顔で肩の上にいる小さな友人を呼ぶと、


「ぢゃっ!」


 ノワは、当然だろっ! と尻尾を膨らませてぶんぶんと振り回して怒り狂っている。


 正直──とても可愛い。


 つい口から駄々洩れたらしく、余計怒らせてしまい、睨まれて尻尾でベシベシと顔を叩かれる。

「ごめんって……」

「ぢゅーっ!」

 全面的に俺が悪いので謝ったら、そっちじゃねぇよ! とさらに怒り出すノワに戸惑う俺。

「可愛いって言ったから怒ってるんじゃないのか?」

「ぢゅぢゅぢゅぢゅ、ちゃあ!」

 俺の顔をベシベシと叩きながらノワの言葉に痛いところを突かれた俺は、ノワをなだめながら頭を下げる。

 仲間に心配させるんじゃねぇよ! と言われてしまうと、俺には言い返すことなんて出来ないよな。


「……あー、反省してる。心配かけてごめん」


 そもそも、無断で森を旅立っちゃってるからな、俺。



「がうがう」



 最終的に、元気なら構わないと笑って熊がまとめてくれて、俺はそのもふもふがっちりボディにギュッと抱きつく。


「わふん?」


 いやそこはこっちに抱きつけよ? と犬がジト目で突っ込んでいるが、熊は気にした様子もなく抱きついている俺を優しく撫でてくれている。

 一振りで人間の頭なんて豆腐みたいに弾けさせてしまえるはずの前足は、どこまでも優しく俺の頭を撫でる。


「……大好きだよ」


 転生してチートはもらえなかったが、ちょっと変わっているけど大切な家族といえる存在と出会えた。

 そんな感謝の気持ちを込めて熊へへらっと笑いかけると、



「わふわふん?」



 何でそれ自分に向けて言わないんだ? と拗ねた犬によって、主様より豪快な甘噛みをされることになってしまった俺だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)



なんか主様の呪いなのか、難産でした(´・ω・`)


とりあえず『待て』は出来ているようです。いつまで耐えられるかは未定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ