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371話目

まずは誤字脱字報告ありがとうございます!助かっております、これからもよろしくお願いします(*´∀`*)


わかりやすく、後付けエピな話となってしまいました。

でも、何か筆が乗ってしまいまして……。


本編には特に影響のない後付けエピですm(_ _)m



「んむ……?」



 何処か遠くの方で、熊と一緒に俺の世話をよくしてくれていた、オランウータンとゴリラを足してで二で割ったような姿の──俺がお猿と呼んでいた相手の声が聞こえた気がして目を覚ます。

 そういえば、泉の周りでわちゃわちゃしていた中にはあの巨体はいなかったなぁと思いながら目を開けた俺は、しがみついていた熊の胸板に顔をグリグリと擦りつける。

「くま、おさるのこえがした……」

「がう」

 そうかと優しい声で答えてくれた熊は、そのままペロペロと舐めて毛繕いしてくれる。

 そこへ、俺が起きたことに気付いた動物達が乱入してくる。

 撫でろ撫でろと訴えてくる大小取り混ぜなもふもふを撫で回していると、控えめに爬虫類系な鱗組も混ざってきて、熊の周りはまさに混沌真っ只中だ。


「主様は、ちょっと乱入して来ないでくれよ?」


 主様がしれっと混ざろうとしているように見えたので、一応声をかけておく。

 大きい子は比較的大丈夫だけど、小さい子は主様に怯えそうだし。

 お互い怪我したり、させたりしたら嫌だからな。


 一瞬、何ですと!? みたいな表情をして主様がぴたりと動きを止めたので、やはり混ざろうとしていたようだ。


 ぽやぽや微笑んでいるお人形みたいな主様も嫌いじゃないけど、こんな表情をしている主様も可愛くて好きだ。

 俺以外に見せるのがもったいないと思うぐらいに。


「ぢゅぅ!」


 主様をじっと見つめていたら撫でる手が疎かになってしまったみたいで、ノワから催促の声が…………って、いつの間にかノワも撫でられ待ちに混ざってるな。

 主様を押し退けてしれっと犬も混ざってきたりもしたが、その間もお猿は姿を見せることはなかった。



「次は私の番ですから」



 むふんという鼻息が聞こえそうなドヤッとした主様から抱えられた俺は、いい子いい子と主様の頭を撫でていた。

 どうやら本気で撫でられ待ちだったらしい。

「ぢゅぢゅぢゅ」

「がうがう」

 俺が抱っこされて主様を撫でている横では、熊の頭の上に陣取ったノワが俺の街での日常を熊へ語っている。

 熊の大きさだけ気にしなければ、見た目は激ファンタジーでふわふわな光景だ。


 熊のサイズだけ気にしなければ。


 二回言いたくなるぐらい、久しぶりに会った熊は大きかった。

 俺が小さいから大きく見えてたのかと思ってたけど、今いるメンバーの中で一番質量のありそうなお貴族様が可愛く見えるぐらいに大きいので、大きいのだ。

 語彙力どうしたって言いたくなる表現だけど、それぐらい大きい。

 なので、頭に乗っかってるノワがさらに小さく見える。



「ぢっ!」



 態度は誰よりも大きいけど。

 また撫でる手が疎かになって、主様から甘噛みされたりしながら、主様の毛繕いをしてあげていると、洞窟の外からマヒナさんとホークーさんの綺麗に揃った「うわっ」という驚いたような声が聞こえてくる。

 そちらへ向かいたかったが主様から下ろしてもらえなかったので、主様を移動手段にさせてもらって洞窟から出る。

 声の聞こえた方に視線を向けると、そこにはそっくりな顔にそっくりな驚きの表情を浮かべたマヒナさんとホークーさんがいた。

 二人の視線の先にいたのは、ずぶ濡れで毛皮からポタポタと水を滴らせながら佇む、オランウータンとゴリラを足して二で割ったような姿の生き物だ。


「あ! お猿だ!」


 嬉しさから声を弾ませてお猿を呼んだ俺は、ぶんぶんと手を振って駆け寄ろうとしたが、主様の腕の中にいるのを忘れていた。

 前へ進もうとした体は、ぐいっと腰を掴んで引き戻され、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

「うほうほ」

 熊ほどではないが大きな体躯の持ち主ながら、お猿は穏やかで理知的なお猿さんだ。

 だから今も「あらあら仲良しね」と笑って流してくれている、とてもおしとやかなレディでもある。


 純粋な腕力だけの勝負なら熊にも勝つらしいけど。


 そんな力強さも兼ね備えるお猿だけど、俺を抱き上げる手はとても優しくて、幼い頃はよく抱き上げてもらって森の中を散歩していた。

 なんでここまで俺に優しいんだろうと思っていたら、情報通な年嵩のフクロウがそっと教えてくれた。

 お猿には俺が捨てられたのと同じ時期ぐらいに産んだ子供がいたそうだ。

 でも、その子供はもう何処にもいない。

 住処で留守番をしていた所を人に襲われて──。

 お猿が帰った時には、子供は無残な姿で事切れていたそうだ。

 狂ったように鳴き叫んだお猿は、犯人を見つけ出して報復をした……。

 しかし、報復したって死んだ子供は生き返らない。


 フクロウは、その時のお猿の姿は痛々しくて見ていられなかったと言っていた。


 その後だ。俺が森で拾われたのは。


 そんな全力で人を憎みそうな過去を持ちながらも、お猿は拾われた俺に優しくしてくれた。

 失った子供の代わりかもしれないけれど、俺をいつも優しく慈愛に満ちた眼差しで見守ってくれていた。



 そんな優しいお猿との思い出を、主様との外の世界での生活にワクワクしてて、少しも思い出しもしなかった自身の薄情さに自己嫌悪に陥る。



 そんな俺の気持ちの動きを見抜いているのか、お猿はそっと手を伸ばしてきて、ちょんっと俺の頬を突いてくれる。

「うほほ」

 あなたが元気ならいいのよと笑う姿は、本当にたおやかなレディそのものだ。

 主様にもお猿が穏やかなレディなのはわかったらしく、腰を掴んでいた手が緩む。

 俺はお猿に抱きつきたくて手を伸ばしたが、困った顔でゆっくりと首を横に振られてしまった。

「うほっほ」

「濡れるのなんて気にしないのに……」

 さすがレディ。濡れた毛皮で俺が濡れるのを気にしてくれていたらしい。

 そんなの全く気にしないで水浴び後に突撃してくる面々は見習って欲しい。


 お猿と触れ合うことが出来ず、俺がしゅんとしていると、


「…………仕方ありませんね」


 みたいな主様の言葉が聞こえて、俺は首を傾げながら主様を見やる。


「主様?」


 呼びかけると、ふわりと微笑まれ、無言で頬をむにむに揉まれる。


「うほ?」


 主様の行動の意味は分からないまま無抵抗で頬を揉まれていたが、お猿の驚く声が聞こえて反射的にそちらを見て、俺も驚きから目を見張ることになる。

 先ほどまでポタポタと雫を滴らせていたお猿の毛皮が、明らかにふわっと乾いているのだ。

 タイミング的にも、お猿が驚いていたという点から鑑みても、主様が魔法でやってくれたんだろう。

「ありがと、主様!」

 お猿に抱きつけるのが嬉しいのと、主様の優しい心遣いが嬉しいのとで、嬉しさ極限突破状態になってしまった俺は、深く考えずに主様にギュッと抱きついて嬉しさを表す。

 そのまましばらくぎゅうぎゅうと抱きついてから、何故か拘束が緩んだ主様の腕から、これ幸いにと抜け出してお猿の元へと駆け寄っていく。


「お猿! ただいま!」


「うほ」


 飛びつくように抱きつくと、少しゴワゴワした毛布のような体毛を持つ体に柔らかく抱きしめられる。

 何だったら熊よりも感動的な再会の挨拶になってしまった気がするのは、お猿の持つ女子力のおかげかもな。



 高い高いとお猿に抱き上げられている俺を、熊が微笑ましげに見ている。

 熊の隣には、怯える様子もなくキラキラとした眼差しでお猿を見ているお貴族様。

 なんとなくお貴族様の言いたいことはわかってしまったが、さすがに抱っこはしてくれないぞ?

 お猿の腕力からすれば能力的には可能だが、気持ち的にやってくれないと思う。

 お猿の腕の中、そんなことを考えてお貴族様を見ていた俺は、いつの間にか犬がいないことに気付いて視線をさ迷わせる。

 視線をさ迷わせた結果、カイハクさんとアシュレーお姉さんもいないことに気付いた俺は、首を傾げてお猿を見上げてみる。

 答えは期待してないが、なんとなくだ。



「うほ」



 あなたは気にしなくていいのよと穏やかな言葉と共に、簡単に人なんて引き千切ることが出来る手が優しく俺の頭を撫でていく。

 もしも、犬とカイハクさんとアシュレーお姉さんが一緒なら、面子的に難しい話し合いでもしているのかも。

 それなら、幼児な俺には関係ない話だから、お猿の言葉の意図もわかる。


 なので俺はへらっと笑って頷いておくのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


誤字脱字報告も助かります(*>_<*)ノ


お猿連呼ですが、何か既視感あるなぁと思ったら、某ジ○ージ氏ですね。


全く関係はありませんのであしからず。


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ママみ?には勝てぬ
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