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37話目

お茶会スタートっす。


新たな攻略対象者の登場です。


だいぶゆるいですが、ご都合主義という魔法の言葉をタグに入れさせていただきました←

「うわぁ……主様カッコいい……」



 ここ何日かでなんやかんやあったが、無事にお茶会当日を迎え、貰った服を着込んでめかし込んだ俺は、主様を前にさっきの台詞吐いてしばらく動けなくなってしまった。

 でも、それも仕方ないよな?

 いつものふわふわとしたローブみたいな服でも格好良かったのに、お茶会のためにきちんと正装はさらに格好良いのだ。

 俺の少ない語彙で表現しきれないのが悔しいが、軍服みたいなカチッとした黒い服で、ところどころ金の刺繍みたいなのがされてて、ため息を吐きたくなるぐらい格好良い。いつもは流してる夕陽色の髪も、緩く編んでまとめられてるの新鮮だ。

 どの攻略対象者より、俺の主様が一番綺麗で格好良いって!

 俺が興奮して脳内で叫んでジタバタしてると、珍しく主様の白い頬にほんのりと朱が射していることに気付く。

「主様、具合悪い? 服きついのか?」

 いつもの服はふわふわゆるゆるだから、締めつけられて苦しいのかと心配して主様を見上げると、深々とため息を吐いて苦笑いを返された。

「……大丈夫です。ロコは靴キツくありませんか?」

「俺も平気! ありがとな、主様」

 逆に心配されてしまい、俺はその場でくるりと回って大丈夫なことをアピールしておく。

 今俺が履いてる艶々した黒い革靴は、実は主様からの贈り物なのだ。

 いつの間にかサイズを測られてたのかわからないが、怖いぐらい俺にピッタリだ。

 嬉しくてへらへらと笑いながら靴の具合を確かめていると、玄関の呼び鈴が鳴る。

「迎えが来たようです」

「おう!」

 やはり主様はお茶会が面倒で嫌なのか、少しぽやぽやを減らしながら俺の手を引いて歩き出す。

 俺は、いざとなれば俺が主様を守らないと、と謎の使命感を抱いて主様の手をしっかりと握り返し、主様と並んで歩き出した。

 馬車が着いた先は、とても大きな門をくぐった先にある、とても大きく立派な建物で、お茶会はその一角の素晴らしく美しい庭園で行われるらしい…………っていうか、お茶会の会場、城だったわ!

 フシロ団長の発言から、そこそこ偉いお貴族様か大商人とか思ってたけど、まさかの王族らしい。

 そりゃあ、冒険者ギルドへ多少の口出しも出来るよな。

 そして、俺が主様を守る。そんなおこがましいことを考えたこともあった気がします。



 そんなナレーションを入れたくなるぐらいお茶会の会場に着いてからの主様は別人のようだ。

 いや、いつも通りぽやぽやしてるんだけど、そのぽやぽやで話しかけてくる相手を上手く受け流してる感じ? そりゃ、見た目より長生きしてる訳だし、今までやって来れてたんだから、対処法ぐらい心得てるわな。

 俺? 俺は会場になってる庭園へ足を踏み入れた瞬間、ほとんどというかほぼ全員が主様に見惚れてたから、最初から完全に空気だ。

 たまに、黒髪とか銀の目とか聞こえてきてじっと見られていた気もするが、すぐに「ひっ」と息を呑むような音がして視線は離れていく。

 俺は主様の足元にくっついて回りながら、主様が渡してくれるお菓子とか軽食をモグモグと食べていた。

 お茶会っていうから、テーブル囲んで座ってあははうふふみたいなのかと思ってたけど、これはちょっとした立食パーティーみたいな感じだ。集まっている人数も広さの割にあまり多くはない。

 おかげでそこまで厳格なマナーは要求されないみたいで気が楽だ。

 一応、フシロ団長からは最低限のマナーというか、気をつける事は習った。

 結論。


「お前なら口を開かないで大人しくしとけば大丈夫だ」


 だそうだ。

 まぁ、敬語とか謙譲語とか嫌味の応酬とかしろって言われても無理だけどさ。

 主様は貴族っぽい人に話しかけられても「はい」と「ええ」ぐらいしか答えてないが、ほとんどの人はなんか満足げな顔で帰っていく。

 俺? 話しかけてくれる人もいたけど、なんか答える前に「そ、それでは」とか焦ったように去っていってしまうので、ちょっと飽きてきた。

 ぐるりと見渡すと、王族主催お茶会なせいか、庭園のそこここに騎士が立ってるけど、何か見たことのない顔ばっかだ。

 鎧はキラキラしてて見た目だけは綺麗だが、なんか弱そう。

 お茶会の主催者はまだ来てないらしく、主様はちょっと疲れた様子でぽやぽやがかげってる。

「主様、少し向こうで休むか?」

「いえ、大丈夫です。ロコは?」

「俺は、突っ立って美味しいもん食べてるだけだからな。全然平気」

 主様に小声で問いかけると、小声で返ってきて、俺はまた小声で返してへらっと笑って見せる。

 ま、体調的には平気だけど、気分的には飽きてきたので帰りたい。でも、俺のために主様はもっと我慢してくれてるんだから、俺が嫌な顔する訳にはいかないからな。

 俺が気合を入れ直してると、そろそろ帰りたいという祈りが通じたのか主催者が現れたらしく、庭園のあちこちに散っていた参加者達がざわめき始める。

「来てくれたんだね、幻日」

 ざわめきを引き連れて現れたのは、絵本の王子様みたいな……たぶん本物の王子様。キラキラした金色の髪にルビーみたいな瞳をした可愛い系美少年だ。

 そのキラキラした髪と同じぐらいのキラキラした瞳で主様を見上げる王子様は、今はゲームスタートより四年ぐらい前のはずだから、十二歳ぐらいのはず。

 名前は……思い出せない。

 でも、間違いなく攻略対象者で、この国の第二王子だったはず。

 性格は優しく控えめで引っ込み思案、強くなりたくて冒険者に憧れていてヒロインと出会う。

 そんなストーリーだったはず、と珍しく誉めたくなるぐらいきちんと覚えていた自分に感動してると、王子様の目がじっと俺を見てることに気付く。


「お招きいただき、感謝いたします。こちらは私のロコです」


 こういう時って、偉い人から話しかけられるまで喋っちゃ駄目なんだっけ? それともお前が先に名乗れ的に、俺が名乗るべきなのか? そもそも目合わせてよかったのか?


 俺がそんな感じで一人脳内ワタワタしてると、なんか主様が軽く俺を紹介してくれてて、優しく促すように背中を撫でられる。

「はじめまして、ジルヴァラと申します。お目にかかれて光栄です……殿下」

 正式な作法とかわからないので、にこりと気合を入れて笑顔を作って挨拶をして、深々と頭を下げておく。殿下という呼び方は何とかフシロ団長から聞いてた方の記憶で思い出せた。

 こちとら六歳児だから、多少の粗相は許して欲しい。

「そんなに固くならなくていいよ。正式な場ではないから。今回は僕が個人的に開催したお茶会だからね」

 ふふふと柔らかく笑う殿下の表情に裏は見えず優しそうだ。

「招待したのも、少しでも幻日と話してみたい。近くで会ってみたいという人達ばかりなんだ」

 瞳をキラキラさせて主様を見上げて楽しそうに喋る殿下の言葉を聞いて、俺はこのお茶会の空気感に納得してしまう。

 やたらと皆さん主様を見つめているが、悪口とかは全く聞こえず、アイドルを見るファン……しかもにわかではなく古参みたいなお行儀良い雰囲気なのだ。

「それで皆さん好意的なんですね」

 つまりは主様ファンの集いかよ、と少し緊張を緩めてへらっと笑って呟くが、思いがけず殿下との距離が詰まっていて目を見張る。

「僕は第二王子のグラナーダ。ジルと呼んでも?」

 あれ? 引っ込み思案なんだよな、とか思ったけど、たぶん好きなものが一緒だから親近感あるんだろうと自己完結して、俺はにこりと笑って頷く。

「もちろんです、殿下」

「ありがとう、ジルヴァラ。僕のこともグラと呼んでくれていいよ?」

 引っ込み思案のはずなんだけどぐいぐい来るなーと思いながらも、俺は愛想良くしとかないとと日本人お得意の笑って誤魔化すで受け流しておく。

 これで真に受けて「グラ様」とか呼んだら、フラグの気配がビンビンなんで、呼ぶ気は全くない。

 そういうのは、あのヒロインちゃんとして欲しい。

 そう言えば、あのヒロインちゃんの名前なんだろう。一応貧乏貴族設定だから家名は固定であったけど、名前の方はデフォルトなんだろうか。

 そもそも現実となった時点で、そういう縛りは……いやでも、オズ兄の名前とかニクス様ナハト様兄弟の設定とか記憶のまんまだし。

「ジル?」

 一瞬考え込んだつもりだったが、意外と長く考え込んでしまったのか、殿下から怪訝そうに呼ばれ、主様は心配そうにガン見してきてる。

「すみません、緊張してて聞き逃してしまいました。なんのお話でしたか?」

「ふふふ、そんなに固くならなくていいって言ったよね。ただ、幻日とどうやって知り合ったのかと思って。幻日に聞いたとしても『〇〇で拾いました』とかで終わるだろうし」

 さすが主様ファンな殿下だけあって、主様のことがわかってる発言だ。

 殿下の後ろに控えてる護衛らしき二人も慣れてるのか、無礼ととられかねない主様のぽやぽやした態度を気にする様子もない。

 主様ファンで何で俺まで呼ぶのかと思ったが、主様の話を聞きたかったのだと納得して、俺は少し入りすぎていた肩の力を抜く。

「主様ならそうなりそうですね。俺と主様が出会ったのは森の奥で、俺がオーガに追いかけられてたのを主様が助けてくれました。それから、俺が──」

 話が長くなりそうなので、俺達は途中でテーブルセットの方へと移動して、そこに向かい合って腰かけて話し続ける。

 殿下は本当に主様が大好きらしく、俺の話に適度な相槌を打ちながら、熱心に聞き続けている。

 主様は置き物のように俺の隣に腰かけてでぽやぽやし、俺と殿下を微笑ましげに見つめてる。

 主様の様子をちらと横目で窺うと、主様以上に微笑ましげな表情で護衛二人と遠巻きに見てきているお茶会の参加者達が見える。

 なんて、平和なお茶会だ。

 貴族のお茶会なんてドロドロで陰口罵倒の応酬とか思って悪かったな。とか、思ったのが悪かったのだろう。

 俺がフラグ建ててどうするんだって話だけど。



「おやおや、グラナーダ殿下、こんな胡散臭い冒険者とお茶とは、王家の品位が下がるのではありませんかな?」



 そんなまさに俺の想像してたような台詞を吐きながら、品位云々言ってる本人が一番品位無いだろうというゴテゴテな格好した中年男がお供連れで庭園へ姿を現す。

 さっきの口撃の矛先は、殿下なのか主様なのか。

 見定めようと俺が猫被るのも忘れて思わず睨んでいると、ぽやぽやしてる主様と目があった中年男の表情が汚いモノを見たとばかりにさらに醜く歪む。

 そして、その醜く歪んだ口元に浮かぶのは、相手を痛めつけようとする嗜虐的な粘つく笑みだ。



 あぁ、これは主様の敵だ。



 俺の中に、ストンとその認識が落ちてくると、中年男への嫌悪が一気に増す。

 俺は被っていた猫を復活させてにこりと笑いながらも、警戒するようにじっと中年男を見つめていた。



 何だったら子供だってことを免罪符にして殴りかかってやろうかと思いながら。

いつもありがとうございますm(_ _)m


ちなみにどうでもいいでしょうが、この話のヒロインはアレな感じの子なんで、攻略対象者はヒロイン側についてざまぁというかプギャー? されてしまうかもしれない子達と、ジルヴァラ側につくというかそばにいる子達とで別れます。


今回の子は、主様のファンなのでジルヴァラ側になると。

ここで、ジルヴァラを排除してやる! とならないいい子です。


あと、何話か忘れましたが、主様の台詞を変えました。名前呼ばない人設定なのに、フシロ団長の名前呼んでた_(┐「ε:)_

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