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348話目

お貴族様方面へムカつきを集中させるため、騎士さん達の設定をちょっと……かなり変更しました。

本来ならもっと嫌なヤツで、もっと酷い目に遭う予定でしたが、まぁ今回の話を読んでいただけばわかると……。




 休憩場所に着いたので、俺は馬車を降りて動物達が乗っている馬車の方へ一目散に駆け寄る。

 道中の動物達の世話は俺の仕事だからな。

 俺にはまだ護衛依頼は受けられないし?

 もう少ししたら、特例冒険者から特例が取れて、E級冒険者を名乗れるってネペンテスさんがこっそり教えてくれたけど、どちらにしろ護衛依頼はC級からしか受けられない。

 つまり逆立ちしたって俺には護衛依頼は無理だ。なので、アルマナさんが道中の動物達の世話という形で俺への指名依頼にしてくれた。


 帰ったらアルマナさんへ改めてお礼言わないとな。


 俺がそろそろってことは、ヒロインちゃんもそろそろなんだろうけど、学園に通ってて忙しいのか、ポイント足りないのかカウンターでネペンテスさんへ詰め寄ってる姿を見かけられているようだ。

 ヒロインちゃんが来ている時は、俺が絡まれないようにと気を使ってもらっちゃってるので、俺が実際に見た訳じゃなく他の冒険者さんからの又聞きだ。

 そんなことをついつい考えながら作業をしていたので、手間取って思ったより時間がかかっていたのか馬車の入り口から声をかけられる。


「……まだ終わってないのかよ」


 不機嫌そうな声はオズ兄でもユリアンヌさんでも、もちろんカイハクさんやアシュレーお姉さんでもない。

 ましてや主様である訳もなく。

 聞き覚えはある声に、俺は少しだけ苦笑いを浮かべてそちらを見て首を振る。


「ったく。飯が遅くなるじゃねぇか」


 苛立たしげな表情をこちらへ向け、そんな言葉を吐いて近づいて来たのはオズ兄とユリアンヌさん以外の二人の騎士のうちの一人だ。

 片方しかいないと一瞬見分けがつかないが、すぐに目の前の相手がどちらかわかった。

 一応、自己紹介的なのは出発前にしてあったから名前は知っているし。

「ごめんなさい、マヒナさん。すぐ終わらせますから」

 そう答えた俺が、水の入ったバケツを持ち上げようとすると、脇から伸びてきた手がそのバケツを持ち上げる。

 思わずきょとんとしてマヒナさんの顔を見上げると、バツが悪そうに視線を外して、

「…………お前一人にやらせていたらいつまでも終わらないからな」

とそんなことを言われる。

「ありがとうございます」

 少し戸惑ったが、一瞬だけ目が合った時のマヒナさんの目に嫌な感じはしなかったので、遠慮なく甘えることにする。

「じゃあ、俺はこいつ達のご飯もらってくるんで」

 へらっと笑ってマヒナさんへ声をかけて、馬車を出た俺は動物達のご飯を受け取って戻る。

 戻る、とはいったものの一回分とはいえ動物達のご飯はなかなか嵩張るし、重さもある。


 六歳児な俺には文字通り荷が重い。


 それでもよろよろとしながら馬車へと戻っていると、不意に脇から伸びてきた手によって腕の中の重みが消える。

 つい先ほど全く同じ既視感を覚える出来事に俺が腕の主を見上げると、そこにはつい先ほど見た顔と同じ顔がある。

「ちびっ子が無理するんじゃねぇよ」

 ぶっきらぼうに言い放った相手は、俺の反応を見ることもなくずんずんと馬車の方へと歩き出す。

「ありがとうございます、ホークーさん」

 足の長さの違いから小走りで追いかけながら呼びかけた名前は『マヒナ』ではなく。これは別に言い間違えた訳では無い。



「……ここにいたのかよ」


「お前こそ何しに来たんだ」



 目の前ではそんな会話を同じ顔が似たような表情を浮かべてしている。

 二人共、癖のない亜麻色の髪に落ち着いた暗めの青い瞳をしていて、同じぐらいの体格で、ほぼ同じ顔をしている。

 つまり、先ほど手助けしてくれたマヒナと、今荷物を運んでくれたホークーは双子だ。

 特に確認はしてないけど一卵性だと思う。この世界で一卵性と二卵性の違いがあるかはわからないけど。



 ちなみにだが、ユリアンヌさんに対する態度とか、俺への発言とかから誤解されやすいけど。



「おい、さっさと終わらせるぞ」


「ちびっ子、ボーッとするなよ」



 この双子はわかりやすく素直じゃないだけなのだ。



 現にさっきから二人共口調は悪いがいつものように声を荒げることはなく、大きな動作もしないようにしてくれている。

 どちらも動物達を怖がらせないようにしてくれてるのが丸わかりだ。


「はぁい」


 笑いそうになるのを堪えて、俺は双子の手を借りて動物達の世話を終わらせる。

 途中、馬車の入り口辺りから窺うような視線を感じてそちらを見ると、カイハクさんとユリアンヌさんが慈愛溢れる眼差しで、ブツブツと文句を言いながらも口元を緩めている双子をこっそり見つめていた。

 そんな二人からの視線に気付かない双子は、俺と動物達へある意味わかりやすい不器用な優しさで接してくれ、無事に動物達の世話を終えるのだった。

 そのままみんなで仲良くご飯かと思ったが、双子はこちらへ合流することなく去っていってしまったため、俺は去っていく背中へ「ありがとう」とお礼を伝える。

 返ってきたのは双子らしく「「あぁ」」という揃った素っ気ない返事だ。

 言った後、顔を見合わせてお互い嫌そうにしていたのがちょっと面白かったなんてのは本人達には言えないな。

 初対面の態度で俺は先入観持ちそうだったけど、そもそもフシロ団長が選んだ騎士さんなんだから、そんな嫌な人が選ばれる訳ないよな。

 そういえばと思い返せば、主様も最初からそんなに警戒していなかったし、主様は双子が優しい人達だってわかってたんだろう。

「ロコ? 何を考えてるんですか?」

 今回は食べさせたい気分らしく主様から食べさせてもらったご飯をモグモグしていると、主様が少しむくれたような表情をして覗き込んでくる。

 俺は口の中の物をしっかりと飲み込んでから、へらっと笑って口を開く。

「主様はさすがだなぁって思ってただけ」

「そうですか」

 俺の答えに満足した様子でぽやぽやを増量した主様は、意外とわかりやすくて可愛いと思う。

 なので、あのお貴族様が追いついて来てなくて良かった。

 こんな可愛いところ見られたら、余計に鼻息荒くして迫ってきそうだもんな。




 ま、もし迫って来たら、危機感の薄い主様に代わって、俺が主様を守るつもりだ。



「ジルちゃん……色々と口から出てたわよ……?」



 再び突っ込まれたご飯をモグモグして気合を入れていた俺は、困ったように笑ったアシュレーお姉さんから突っ込まれ、反射的に隣に座る主様を振り仰ぐ。

 なんだかイイ笑顔でぽやぽやとしていたので、嫌な気分にはなっていないようなので一安心だ。

 主様に向かって『俺が守る』発言は身の程知らずだから、不快にさせちゃったりしてなくて良かった。

 今度はしっかりとお口チャックで内心で呟いた俺は、一人でうんうんと頷くのだった。







「ジルちゃん…………今度は可愛いお顔で丸わかりよ…………?」






 二度目のアシュレーお姉さんの力無い突っ込みは俺の耳に届くことはなかった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございますm(_ _)m反応いただけると嬉しいです(*^^*)


何気に初めて書く双子キャラかもしれません。

どっちがどっちか分からなくならないように気をつけます。

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