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345話目

誤字脱字報告ありがとうございます(^^)助かります!


今回の話はツッコミどころ満載かもしれませんが、広い心で流していただけると幸いです。


あと、後書きに追記な感じで言い訳ありますm(_ _)m




[カイハク視点]




 私はフラメント王国の騎士団、その副団長をしている。

 騎士団長は部下からも信の厚いフシロで、付き合いも長い。

 お互い駆け出しの頃からの付き合いだ。

 ただ違うのはフシロは貴族であり、私は平民出身の騎士だった。

 貴族子息の騎士達は平民である私を下に見て侮蔑の言葉を吐いて、時には暴力を振るって来たが、フシロはそんな相手から私を庇って事あるごとに「大切な友だ」と言ってくれた。

 そんなフシロがいたから私は踏ん張れ、辿り着いたのは騎士団副団長という立場だった。

 私を副団長に推薦したのはフシロ──そして、貴族からの虐めに負けず努力する私の姿をずっと見てくれていた先代の騎士団長だったそうだ。

 騎士団長を補佐する立場となる副団長はもともと二人いて、私の他に選ばれたのはゲースだった。

 ゲースもフシロと同じく駆け出しからの付き合いだが、こちらは初対面では平民の私をあからさまではないが下に見ていた。

 だが、表面は貴族至上主義なゲースは、根は真面目で騎士らしく他者を慮れる男で、なんだかんだあったが徐々にだが打ち解けて信頼しあえていた。

 そのまま、共にフシロを支えていけたら。

 心からそう思っていた。フシロもそう思っていたはずだ。



 しかし、それは私達の方だけだったのかもしれない。



 少し前からゲースの様子がおかしくなった。

 確かにお互い偉くなり、ゲースに貴族な嫌な面が出る事もあったが言えば直してくれていた。

 しかし、ある時から「ん?」と明らかに首を捻りたくなるような事が増えてきた。

 元から声を張り上げるように大きな声で話していたが、やたらと声を荒げて部下を罵倒する事が増え、平民出の騎士達を軽んじるようになり、貴族出の騎士をやたらと贔屓するようになった。

 自然とゲースの周りには貴族だという事実を鼻にかけ、鍛錬も疎かにするような騎士が集まるようになっていく。

 当然、周囲からの目は冷ややかになっていき、私やフシロは苦言を呈したがゲースは聞く耳を持たない。

 まるで人が変わったように。


 それを指摘すると、


「私は元からこういう人間だ。今まで愚かな事をしていたと気付いたまでだ。私はここで終わるような人間ではない」


 そう言われてしまった。

 誰かに何かを言われたのかと思ったが、そんな不審な人物がゲースへ近づいた様子もない。

 ただ妙な占い師と話していたという噂があったがこちらは確証がなく──占い師に唆されておかしくなったなんて事は荒唐無稽過ぎるだろう。





 占い師に唆されてあんな行動へ走ってしまったと思いたい、私の友への気持ちが生み出した馬鹿馬鹿しい妄想だ。





「……今はどうしていますかね」



 交代で寝ずの番をしていた私は、揺れる火を見つめて思い浮かんだ過去の幻想へ向けて呟く。

 身の安全を保証されて捕縛された友は、今は城にある貴族専用の牢で過ごしている。

 一度会いに行ったが、まるで憑き物が落ちたように何も覚えておらず、常にぼんやりとしていて会話もままならなかった。

 


 せめてもの幸いなのは、トルメンタを操って暴れさせようとしたのはゲースではない、という事実だけははっきりした。

 ゲースは『トルメンタが暴れるのでそれを理由にフシロを騎士団長から追い落とせばいい』という情報を得ていただけらしい。なので、あんな滑稽な三文芝居のような行動へ出てしまったようだ。

 自身がトルメンタを操ったのなら、慎重で少し気の小さいところもあるゲースの性格なら成り行きを見守ってから事を起こすだろう。



 それが救いになるなんて事はなく、本人は自分が罪を犯したという意識に苛まれ、時折苦痛に満ちた叫び声を上げていると見張りの兵士からの報告が上がっている。




 残念だがどれだけ後悔をしようが、覚えていなかろうが、しでかした事実は消える事はないのだ。




 私が一つため息を吐くと、ジャリと小石を踏む音がして私は剣の柄に手を置いて視線をそちらへ向ける。


「驚かせてごめんなさい、アタシよ」


 警戒されていると感じたのか、柔らかい謝罪の声と共に焚き火で照らされた範囲へ入って来たのは今回護衛を依頼した冒険者のアシュレーだ。

 冒険者ギルドのギルドマスターからの指名で、『あの』幻日様とも組めるだろうと選ばれた物腰柔らかい、見た目も幻日様には負けるが美しい青年だ。

 独特な言葉遣いは初対面なら驚くだろうが、今回連れてきた私の部下にも同じような話し方の者がいるので私は気にならない。

 何より本人に似合っているのだから気にするような事でもない。

「まだ交代の時間ではないですよ」

 焚き火を挟んで向かい側へ腰を下ろした話しかけた私に、アシュレーから返ってきたのは妖しい微笑み付きの何処か含みのある言葉だ。

「うふふ。可愛い子に血生臭い場面なんて見せたくないもの」

 アシュレーの『可愛い子』が表す相手はすぐにわかり、私は内心で首を捻りながら視線をとあるテントへ向ける。

 騎士達のテントから少し離してあるのは幻日様からの無言の要望だ。他人の気配が嫌なのだろうと納得し、自衛の出来る方なのでその位置へテントを設置した。……オズワルドが。

「あの子なら今は一番安全な場所で眠っているはずですが……」

 言葉を紡ぎながら脳裏に浮かんだのは、夕飯を食べてうつらうつらし始めた幼子をしっかり抱えてテントの中へ消えた後ろ姿だ。

 最初から彼らは夜の見張り要員には数えていないので「おやすみなさい」と見送った際、うつらうつらしていた幼子から「うにゃにゃい……」という律儀に挨拶だけ返ってきたのを思い出して少し笑いそうになる。

 慌てて口元を引き結ぶと、アシュレーがうふふと笑って口を開く。

「あれ、可愛かったわね」

 私が何を思い出したかバレバレだったようで、私はバツの悪さを誤魔化すように軽く咳払いして緩みかけた気持ちを切り替える。

「それで先ほどの言葉はどういう意味でしょう」

「そのままよ。……あのお貴族様に我慢なんて出来るとは思えないもの」

 まるで子供の悪戯を叱るような優しい声音ながら、細められたアシュレーの瞳は何処までも冷ややかで。

 彼が『そういう輩』を憎んでいるのか、可愛がっている幼子への悪影響のせいかは不明だが、私としてもどちらもほぼ同意見なので「あぁ」との相槌だけで返しておく。


 これ以上の会話は必要ない。


 見張りの私はここを離れず、ただ腰かけていれば良い。





 壁のない夜の外で過ごせばよくある事なのだから。




 何処か遠くの方から悲鳴のような声が聞こえてくるなど。

 きっと何か野生の動物が鳴いているのだろう、自分の愚かさに気付いて。



 いちいち反応していたら身が持たない。



 私がすべき事は今守るべき動物達の安全の確保。




 勝手に無理矢理ついてきた者が一人が消えようが、私には関係ない。






 誰もいなくなった焚き火の向こう側を見ながら、私は弱くなった焚き火の中へ薪を放り込んで火の勢いを保つのだった。

「ん……」

 すやすやと眠っていた俺だったが、何か嫌な気配を感じて目を開ける。

 薄ぼんやりと明るい周囲を見渡し、ここがテントの中だと気付く。

 視線を上に動かすと相変わらず寝顔まで完璧な主様。

 そもそもしっかり主様に抱えられて眠っていたんだけど。

 王都までの道中、テント内で少し離れて眠っていたのがはるか昔のことみたいなくっつきっぷりだ。

 あの頃とは季節が違うのもあるのかとぼんやりしかけた俺だったが、目が覚めた理由を思い出してハッとして起き上がろうとする。

 しかし、いつもならスッと抜け出せる主様の拘束が全く緩まない。

 それどころかさらにぎゅうぎゅうと抱きしめられ、完全ホールド状態だ。

 起きてるのかと窺うが、どう見てもすやすやと眠っている。

 起こすのは忍びないが、俺の野生の勘的なやつが嫌な気配が近づいて来ているのを訴えている。

「主様、なんか来てるって!」

 小声ながら声を張り上げるという我ながら器用な声がけをすると、主様の腕が俺の後頭部へ回されて、主様の胸へ顔を埋めるよう押しつけられる。

「だいじょうぶですから」

 聞こえてきた主様の声は少し眠そうで、それ以上声をかけるのも躊躇われて俺は口を噤む。




 それに主様が大丈夫だって言ったんだから、きっと大丈夫。




 そういえば外にはアシュレーお姉さんもオズ兄もいるんだから心配ないかと一人で納得した俺は、緊張していた体の力を抜いて再び寝ることにする。




 次に目が覚めたのは、爽やかな朝の光おかげ──、




 ではなく、



「おい! 俺達の依頼人を何処へやりやがった!?」




 むさ苦しい男の怒声による目覚ましのおかげだったので、今日はなんかむさ苦しい一日になりそうだ。




 俺は寝惚けた頭でそんなことを考えて欠伸を噛み殺すのだった。


いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいですm(_ _)m


↓以下追記です。


本編で表現しろよと言う感じですが、私の筆力では無理だったのでここに少し書かせてください。


今回カイハクさんが語ったゲース像は、カイハクさんが見ていたゲースです。

トルメンタから見たゲースとはだいぶ違うと思います。

そりゃそうだろうという話ですが、新入りペーペーな騎士と駆け出しの時からの付き合いのある友人では見る顔も見せる顔も違う……という感じにしたかったんです。

ちなみにトルメンタが語ったゲースは、ほぼ乙女ゲームの中ボスになったゲースです。

今回もフシロ団長が存命なおかげでゲースは道を外れません。

もうフシロ団長が主人公なんじゃという勢いでゲーム展開に影響する重要人物です。


そのせいでゲースが中ボスゲースになってくれず、ヒロインちゃんが頑張った裏話があるんですが、ここまでのお話でわかるようにその努力は残念ながらほとんど実らず終わってます。


以上長々とありがとうございました。何処かにフシロ団長からのゲースな話書いてたらたぶん矛盾しちゃってるかも(え)

気付いたら教えていただけると幸いです。実はこの展開にしたのは『森の動物達、実は返り血だったぜ』展開が出来ず、その後に捻り出した流れなので……。

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