344話目
改めて、あけましておめでとうございますm(_ _)m
本年もよろしくお願いしますm(_ _)m
年末コロナになったりしましたが、なんとか生きております。
さらに不定期更新となりますが、よろしくお願いします。
感想ありがとうございます!
主様がいるおかげか道中は安全そのもので、馬車の中でまったりと世間話を出来るほどだった。
周りを護衛してくれている騎士さん達には申し訳ないが、交代で休んでいるらしいんで大丈夫だろう。
野営も出来るという開けた場所の近くでそろそろお昼という時間になり、昼ご飯にしようと馬車を停めて休憩の準備をしていると、存在を見なかったことにしていた馬車が近づいてくる。
向こうの馬車は無駄に華美で重そうだったので、速度ではこちらに追いつけなかったようで徐々に小さくなる姿に安心していたのだがここで追いつかれてしまった。
通り過ぎないかなぁという希望的観測を抱いてみたが、向こうもこちらと同じで休憩をと考えたのか、それとも──。
主様を背後にくっつけながら警戒して見つめていると、アシュレーお姉さんがやって来て俺をひょいっと持ち上げて主様の背後へと隠してしまう。
「アシュレーお姉さん?」
「変な人が降りてきたら困るわ。いい子だから、そこでじっとしてるのよ?」
主様とアシュレーお姉さんがいれば早々危険な目に遭わないと思うが、心配してくれる二人によってしっかりと隠されてしまったので、何となく主様の足にギュッとしがみついておく。
でも好奇心が抑えきれず、チラッと顔だけ覗かせてやって来た馬車の方を窺っていると、絵に描いたような貴族って感じのおじさんが降りてくる。
ちなみに絵に描いたようなとは言ったが良い意味ではなく、悪い意味での『絵に描いたような貴族』だ。
成金趣味ってこういうことかって感じのギラギラしてヒラヒラした服装に、でっぷりとして不健康な体型。
これでただの一般人とかだったら逆にびっくりするってぐらいのお貴族様だ。
そのおじさんの隣にはちょび髭のおじさんが、最初のおじさんにヘコヘコしながらついてきている。
さらにその背後にはガタイが良くガラの悪そうな男性二人と魔法使いらしき女性が一人。メンバー的に貴族なおじさんの護衛の冒険者パーティーだろう。
王都で活動する全ての冒険者と会った訳じゃないから王都の冒険者じゃないと断定は出来ないが、面識がないという事実だけはハッキリしている。
そんな濃い面子が向かっているのは俺達の方ではなく、このメンバーの中のリーダーにあたる騎士団副団長のカイハクさんの方だ。
カイハクさんは休憩中も動物達を乗せている馬車から離れていないので、濃い面子も自然とその馬車へ近づくことになる。
主様の足にしがみつきながら展開を見守っていると、カイハクさんが立ち上がって馬車を守るように前へ出る。
「申し訳ありませんが、我々は特別任務の最中です。いくら同行を許されたとは言え、それ以上この馬車へ近寄る事は許可出来ません」
張り上げたりしてないのに、カイハクさんの声はよく通る。
その声を聞いて昼ご飯の準備をしていた騎士さん達もカイハクさんの方を見て警戒する様子を見せている。
カイハクさんの対応から見ても、騎士さん達の反応から見ても、この濃い面子は招かれざるお客様なんだろう。
もしかしてアルマナさんがチラッと口にしていた『ついてくることになったお貴族様』ってこのおじさんのことか?
出発する時いないなぁとは思ってたけど、カイハクさん、しれっと置いていこうとしてた……とか?
「儂を誰だと思っている! そもそも道中、こちらを気にせず速度を上げるとはどういうことだ!」
カイハクさんへ食ってかかってるのが聞こえてくるが、カイハクさんは動じた様子もなく微笑んでるからそうっぽい。
「申し訳ありませんが、動物達の負担を少しでも減らす為に道中は今より速度を落とすつもりはありません。一秒でも早く動物達を安全な場所へと連れて行けという命令ですので」
こちらの馬車の速度へ文句を言うお貴族様なおじさんに、口調だけは丁寧ながらもニッコリと穏やかに微笑んで引かないカイハクさん。
お貴族様なおじさんは何か言いたげにうぐうぐしていたが、状況が自身に不利なのだけはわかったらしく、お供を連れてドタドタと自分達の馬車の方へ戻っていく。
「……何のためについてきてるのかな」
意味不明過ぎるお貴族様を見送って思わずそんな呟きを洩らした俺の視界に、困ったように微笑むアシュレーお姉さんが入ってくる。
お貴族様達が離れて安全になったのでしゃがみ込んで俺と目線を合わせてくれたようだ。
「あのお貴族様は珍しい動物が大好きなの。それで『せめて一目だけでも会って共に過ごし、可哀想な動物が安全に送られたかみたいのだ』って建前で付いてきてるのよ」
「建前ってことは本音がある……?」
恐る恐る訊ねてみると、アシュレーお姉さんは優しい仕草で俺の頭を撫でてくれる。
「うふふ。大正解よ、ジルちゃん。あのお貴族様に付いてきてるのは、あくどいって評判のやり手商人と捕獲だって言い張った密猟が得意で有名な冒険者パーティー。つまりは……?」
「もしかして、あいつらをどうにかして捕まえようとしてる……とか?」
俺の呟いた言葉にアシュレーお姉さんは無言だったが、正解とばかり浮かんだ妖しい微笑みとあのお貴族様たちの方を見た時の眼差しの冷ややかさが答えだろう。
主様はというと、人のやる愚かなやり取りには興味ありません、という表情でぽやぽやしながら俺の髪を撫で続けていたので、表情の通りに興味がないのだろう。
向こうも幸いにも主様には気付かなかったみたいなので、このまま主様へはノータッチでいてくれると良いんだけど。
なーんて思ったのがフラグになってしまったのかもしれない。
俺がいくらモブな幼児でも、主様の方がラノベ主人公にも勝ると劣らぬチートで、ヒロインも裸足で逃げ出す美人さんなんだから。
そんなフラグな事が動いたのは昼食後──ではなく夜になってからだった。
お貴族様は俺達からかなり遅れて街道脇に作られている野営地に辿り着いた。
昼休憩の時と一緒の理由で、お貴族様の馬車はその重さから速度が出せず俺達の馬車についてこれなかったのだ。
すぐには接触してくることはなく、俺達が夕ご飯を終えて寝る準備を始めた頃、騒々しくお貴族様がやって来る。
お供は護衛であるガタイの良い冒険者が一人だけだ。
野営地で騎士達のいる場所で荒事にはならないだろうと一人なんだろう。
そんな考察をしている俺はというと、焚き火の近くに腰を下ろした主様の膝上に乗せられて、念入りに髪を梳かれていた。
これから寝るんだからどうせぐちゃぐちゃになると思うんだけど、砂とか埃とか付いてるのか、それともさっき動物達の世話をしてはむはむされたりしたからかはわからないが、とても念入りに梳かれている。
暖かい火の側で、安心出来る主様の膝上、それに道中の疲れという条件から俺はもう寝落ち寸前だった。
そんなふわふわした視界の中、目立つ派手な存在がこちらへ向かって来ている気がする。
先ほど視界の端に入ったお貴族様だ。
またカイハクさんの方へ向かうかと思っていたのだが、どうもこちらへ近づいて来ている。
主様へ警告しようとしたのだが、体勢を変えられて優しくトントンと背中を叩かれると一気に瞼が重くなる。
「ぬしさま……」
何とかそこまで口を動かしたのだが、次はどんな言葉で警告しようかと悩んで、俺の意識はあっという間に深い闇の中へ転がり落ちていくのだった。
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展開を何パターンか悩んで、未だに悩んだまま書き進めてます。
矛盾だけはしないようなんとか里帰り編終わらせたいです。




