342話目
何度も書き直し、迷走し続けて進んでいます(^_^;)
あたしを出しなさいよ! と耳元で叫んでる方がいまして大変です←
昼寝から目覚めたらアシュレーお姉さんがいて、何故かやたらとノワが「さっきのこと訊いてみた方が良い」と耳打ちしてくるので、俺はアシュレーお姉さんへモンスターの弁当問題を訊ねてみたのだが……。
アシュレーお姉さんだから呆れたりはしないと思ったけど、予想外に深刻そうな表情で質問の意図を問い返されてしまった。
俺は変なこと言っちゃった感にポリポリと頬を掻くと、慰めるように顔を寄せてきているケレンとカナフを撫でながら口を開く。
「実は……俺、ずっと森の仲間が襲ってきたオーガにやられちゃったと思ってたんですけど、ケレンやカナフ達がアレは違ったって教えてくれたんです」
「そうなのね。ジルちゃんのお仲間が無事だったのは良かったわね。でも、違ったっていうのは、どう違ったの?」
仲間の無事を知って安堵しているのが伝わったのか、優しく微笑んだアシュレーお姉さんが俺の頭を撫でながら言葉の続きを促してくれる。
おかげで俺はさっきより落ち着いて話を進められる。
「俺は血溜まりとオーガに驚いてよく見てなかったんですけど、今思い出してみたら、血溜まりの原因になっていたのは鶏だったんです」
勘違いした恥ずかしさを誤魔化すためにふんすと気合を入れて説明したのだが、アシュレーお姉さんの反応はイマイチだ。
もちろんアシュレーお姉さんが俺を嘲笑ったりなんてはしてないが、何か考えているのか心ここにあらずな感じがする。
「アシュレーお姉さん?」
「あら、ごめんなさい。確認なんだけど、その鶏は森に住んでいる鶏じゃなかった、ということかしら?」
「はい。そもそも、森に鶏なんていなかったですから。皆もそう言ってるので間違いないです」
鳥的な生き物は何種類かいたが、俺が見たことあったのはいわゆる野鳥か、ロック鳥みたいなファンタジー生物のみだ。
オーガと血溜まりという衝撃的な光景のせいで、そんな違和感なんて気付けなかった。
今日冷静になってしっかり思い返してみて、やっと気付けたという訳だ。
「皆のおかげだな」
森へ里帰りするにあたって一番気がかりだったことが無くなり、俺はへらっと笑いながら顔を寄せてくる動物達を順番に撫でまくる。
お返しにと舐められ甘噛みされまくっていた俺は、アシュレーお姉さんの固くなった表情に気付くことはなかった。
●
[アルマナ視点]
「お邪魔させてもらってるわ」
ボクがあいつを連れてジルヴァラの待つ部屋へ入ると、そこにはジルヴァラと動物だけでなく見覚えのある青年もいた。
今回の件でボクの方から護衛依頼を指名で出したA級冒険者、アシュレーだ。
エジリンの相棒でもある彼は、口調や姿こそたおやかだが、能力はエジリンの折り紙つき。人間性も問題ないという優良物件だからな。
何よりジルヴァラの事を気に入っていて、可愛がっているので人選としてはバッチリだろう。
本当はここに森の守護者もつけたかったが、貴族の横槍が入ったせいで叶わなかった。
あいつがいる時点でジルヴァラの身の安全は確保されているが、その分周囲の緊張感がとんでもないからな。
今回は騎士団長もいない事だし、森の守護者には抑止力として参加してもらいたかったが仕方ない。
動物達の方はジルヴァラがついていれば暴れる心配はないが、ついて行く人間の方が問題となりそうで頭が痛い。
「ロコ」
そんな事など全く気にしないあいつは、ジルヴァラを返せとばかりにジルヴァラを呼んでいる。
呼ばれたジルヴァラはというと、一度起きていたらしいが、動物達と全力で遊んで疲れたらしくアシュレーの膝を枕にして眠っていて起きる気配はない。
あいつはというと、いつもなら直ぐ様寄っていってジルヴァラを奪うんだろうが、動物達を警戒させてしまっているため近づけないでいる。
下手に動物達に怪我をさせるとジルヴァラが悲しむと思ってためらっているとしたら、あいつの友人としてはかなりの驚きだ。
穏やかな見た目にそぐわない傍若無人を地で行く男がずいぶんと変わったものだと思う。
それと同時に怖くなる。
本気になったあいつにはボクでも敵わない。
もう一人のS級と協力して足止めが出来るかもしれない、ぐらいの力の差がある。
本気になったとしたら……。
「──世界が滅びる、か」
氷漬けか焼き尽くされるか、はたまた切り裂かれるか。
筆舌に尽くしがたい光景の中、きっとあいつはいつも通り微笑んでぽやぽやとしているんだろう。
生きとし生けるもの全てが消え去っった世界で、たった一人ぽやぽやと。
今までは良かった。
あいつが執着するものなど無かったから。
せいぜい少し気に障った相手が焼き尽くされる程度で済み、おかしな二つ名が付けられた程度で終わっていた。
だが今は──。
「うふふ、少しお待ちいただけるかしら?」
アシュレーからジルヴァラを受け取ったあいつは、目に見えて嬉しそうにぽやぽやとして腕の中のジルヴァラへ頬擦りをしている。
匂い付けでもしているのか。
動物達に対抗するような姿に呆れ、頭の中に浮かんでいた重苦しい無駄に深刻な考えは霧散する。
ジルヴァラがあいつを拒まない限り、ボクの悩みは杞憂で終わるだろう。
「ギルドマスター、帰る前に少し良いかしら。ジルちゃんから気になる話を聞いたのだけど」
ボクが上機嫌なあいつを見てため息を吐いていると、アシュレーが話しかけて来た。
その表情にボクはとりあえず浮かれているあいつの事を脳内から追い出す。
あいつにはジルヴァラを与えておけばひとまず大丈夫だ。
そして、話を聞いたボクはまた違う心配事で頭を抱えながら部屋へ帰る事になる。
「誰かが餌でオーガを聖獣の森へ誘い込んだ可能性が出て来るとは……」
ジルヴァラはオーガが奇行に走ったと思っているらしいが……。
「狙われたのは聖獣か? それとも──」
それともの先に思い浮かぶのは、あいつが溺愛している存在とボクらが押し付けたアレのどちらかだ。
どちらが狙われたとしても面倒事の匂いしかしない。
「ジルヴァラから目を離すなよ」
部屋から出る前、ジルヴァラを抱いてとっとと帰ろうとしていたあいつへ声をそうかけると、顔半分でこちらを振り返り──見慣れているボクでもゾッとするような微笑みを残して去っていってしまった。
「……さっきのはどういう感情の微笑みだよ」
一人執務室の机に突っ伏して呟くボクの声に応える者はなく。
付き合いは三桁を越えた相手だが、未だにわからない奴だ。
いつもありがとうございますm(_ _)m
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誤字脱字報告も大変助かっております、ありがとうございます!
相変わらずよく寝ている主人公です。




