340話目
今日は3話更新となります、ご注意ください。
こちら更新1話目です。ちょっと間が空いた理由は後書きにて。
動物達を森へ返す相談をすると言ってアルマナさんが出て行ってしまったため、一人お留守番となった俺はもふもふ達に囲まれて部屋の真ん中に陣取っていた。
大きめな猫科猛獣的な子とか、イタチみたいな子とか色々いるが、皆おとなしくて俺に撫でられてくれている。
「皆おとなしくていい子だな」
一応大人組な主様は、アルマナさんと依頼についての話のため連れて行かれたので、今部屋に残っているのは俺ともふもふな動物達だけだ。
なので、俺が話しかけたのはケレンやカナフ達だ。
前世でやってたら、幼い子供や可愛い女の子、男でもイケメンなら微笑ましく見られ、それ以外だとムツ〇ロウさん的な人じゃない限り、変人扱いされる光景だろう。
ここの世界では動物達と会話で意思疎通出来てるので変人扱いはされないので気にしなくて良いのだが、一人で動物達へ話しかけているという傍目から見たらちょっと……な光景だなと思ってしまったのだ。
そんな変な悩みを抱いてしまった俺の髪を、こちらを見ろとケレンが食んでくる。
「あはは、ごめんって! 俺の髪食べるなよ!」
ふんふんとかかる鼻息に声を上げて笑いながら抗議すると、寡黙なカナフがやんわりとケレンを止めてくれる。
相変わらず良いコンビのようだ。
「なぁ、ケレンとカナフ達送ってったら、聖獣様ちらっとでも見られるかな?」
二頭の鼻面を撫でながら好奇心に負けて訊ねると、まじかよみたいな顔が両側から寄せられる。
「ヒヒン!? ヒヒッ!」
「ヒヒーン……」
驚いた顔の二頭が同時に喋るのでほとんど聞き取れなかったが、何か聖獣様がどうのこうの言ったのはわかったので、もう一度訊ねようとしたタイミングで主様達が戻って来てしまった。
主様は魔力とか諸々強すぎるせいか動物達と相性が悪く、主様がいると動物達は静かになってしまう。
ケレンとカナフだけは、皆を守ろうと思っているのか、鼻息荒く主様を睨みつけている。
その皆の中に俺も含まれているらしく、襟首を掴まれたかと思うと気付いたらケレンの背中へ乗せられていた。
森で暮らしていた時によくやられていたが、背中へ放り上げられたのだ。
久しぶりだったので少しびっくりして固まってしまったが、遠慮なくケレンの鬣を掴んで体勢を立て直す。
「主様なら警戒しなくて大丈夫だぞ? 俺がここでこうして生きてるのも、主様がオーガ倒してくれたからなんだぜ?」
俺はケレンとカナフの首筋を軽く叩きながら主様の安全性を説明してるのだが、その主様から視線がグサグサ突き刺さってるので説得力がないかもしれない。
「主様は皆を傷つけたりしないから。な? 落ち着いてくれよ」
しばらくぽふぽふと二頭の首筋を叩いていると、やっと信じてくれたのか少し落ち着きを取り戻す。
落ち着いたカナフによって襟首を咥えられ、ケレンの背中から宙ぶらりん状態へとなった俺は、すかさず手を伸ばしてきた主様の腕の中へと移動することになる。
「ロコ」
襟首を持たれたのが乱雑な扱いに見えてしまったのか、ぽやぽやの消えた主様から全身を舐め回す勢いでの確認があったりもしたが、何とか納得してくれた。
今度は俺の匂いが気になるのか、無言で首筋辺りの匂いを嗅いでいるが、今ここにいるのは動物達以外だとアルマナさんだけなので苦笑いで主様の行動をスルーして俺を見てくる。
「そいつは放っておくとして……明日からの予定だが、ジルヴァラとそいつに指名依頼を出した。事後報告になって悪いな」
「主様が確認してくれてるし、アルマナさんが無茶なこと言わないってわかってるんで、大丈夫です」
へらっと笑って答えると、アルマナさんは照れ臭そうに笑ってくれて頬を掻いている。
見た目は美少年なので可愛らしいが実年齢は……気にしないでおこう。
見た目幼児、中身一応成人な俺が突っ込むべきじゃないなと思ったのもある。
「出発は明日ですか?」
「さすがに今日決めて、明日出発とはいかないんだよ。冒険者の方はともかく、今回は国からの依頼で騎士も連れて行けとさ」
ハァとため息を吐いて肩を竦めるアルマナさんに、主様は無言でちょっと嫌そうにしているので、どちらにとっても不服らしい。
聖獣の森はこの国にとって重要な場所らしいし、仕方ないんだろうけど騎士と聞くと畏まって四角四面な人が来そうで面倒そうだ。
そこまで考えて、はたと冷静になる。
この国の騎士って、よく知ってる相手が率いている集団なことに。
「フシロ団長が来てくれるのかな」
それなら主様の扱いも慣れているし、安心しかないんだけど。
俺の独り言を聞き留めたアルマナさんは、ゆっくりと首を横に振ってちらちらと主様を見ながら苦笑いのまま口を開く。
「残念ながら騎士団長は、副騎士団長のこともあるんで、今は王都から離れられないそうだ。その代わり、ジルヴァラと仲の良い騎士を選んでくれたらしいぞ」
「ちっ」
このタイミングで何故か主様の方から舌打ちのような音が聞こえ、反射的に顔を上げて主様を見る。
目が合うと顔が近づいてきて、こつんと額を触れ合わせた状態で、じっと瞳を覗き込まれる。
「ロコは緑のより私の方が……」
「時と場所を考えろ」
主様は何か言いかけたが、呆れた顔をしたアルマナさんからの突っ込みで遮られてしまう。
「あー……騎士ってオズ兄なんだな」
途中で遮られてしまった主様の発言から『仲の良い騎士』がオズ兄だと悟った俺は、ほぼゼロ距離な瞳を見つめてへらっと笑いかけておく。
下手にフォローしても主様の警戒心を煽るだけだと、今までのやり取りで学習したのだ。
「オズ兄の何が気に食わないんだろ……」
俺がそう呟くと、主様は何処か不満そうにぽやぽやとしながら俺をギュッと抱きしめてきて、アルマナさんはそんな俺達を見て──。
「……そんな理由かよ」
小声でボソッと何かを呟いた後、なまぬるいようななんとも言えない眼差しを主様へ向けていたのが印象的だった。
●
出発は諸々の準備とか先触れとか色々あるそうで、なんと一週間後になると帰宅後に連絡が来た。
同行するのはオズ兄を含むフシロ団長直属の騎士が数名、それと俺と主様を含む冒険者。
それと何故かお貴族様がついてくることになったらしい。
主様が珍しくわかりやすく嫌そうなぽやぽや感を出していたので、貴族は嫌いらしい。
まぁ、身分を傘に尻触ってきたり、愛人になれとか言ってくる相手に好感は抱けないよな。
「そう思うよな?」
「ぢゅっ」
「ヒヒン」
「……」
出発までの間、毎日会いに来てやってくれとアルマナさんにお願いされたので、本日も動物達へ会いに来た俺は、動物達相手に世間話をしていた。
敷かれた藁の上に座り込んだ俺を囲んで、動物達もそれぞれ座ったり寝転んだりして寛いでいる。
同意を求めた俺に、ノワは「だな」と大きく頷いてくれたが、ケレンとカナフはまだ主様に心を許してないらしく「知らない」と素っ気ない答えと無言が返ってくる。
他の動物達はというと、揃って可愛らしく首を傾げて反応してくれている。
主様達と会う前まではこんな感じで過ごしていたなと、ほっこりする光景に頬を緩めていた俺だったが、思い出さないようにしていた凄惨な光景が瞼の裏に蘇り、思わずケレンとカナフへ腕を伸ばしてギュッと抱きしめる。
「ちゃぁ?」
「ヒヒーンッ?」
「ヒン……?」
俺の変化に気付いた動物達が心配してくれてわらわらと体を寄せて来て、俺はもふもふ団子の中へ埋まってしまう。
温もりに包まれると、あの日見た凄惨な光景──死体と血溜まりが染め変えた懐かしい泉の光景が余計色鮮やかに浮かぶ。
だが、問わずにはいられなかった。
弱い俺は逃げ出してしまったが、これは向き合わなければいけない現実なんだから。
「……どれぐらい死んだんだ?」
俺の震える声の問いかけに、ケレンとカナフを始めとする聖獣の森棲みの動物達は揃って目を見張ってから
────こてんと可愛らしく首を傾げた。
「え?」
予想外なリアクションに、今度は俺が目を見張って固まり……。
「……ヒン、ヒヒン」
そして、しばらくしてからケレンが申し訳無さそうに教えてくれた。
『あれは森の動物の血じゃなかった』と。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)
話がだらけそうなので一気に複数話あげたくて書き溜めてたのもありますが、実は書きたかった台詞の為の展開を書き間違えておりまして……。
しかも、まさかの第1話です(・・;)
そこを書き直して……とも思いましたが、他にも書いちゃっていそうだったので、仕方なく書きたかった展開を変えたりしていたので少し無理矢理感があるかもですm(_ _)m
以下蛇足です↓
本当は「血溜まりがあった」→「返り血でしたー(笑)」という流れにしたかったのに、何を思ったか死体の描写を書き込んでしまったため、その死体をどうにか無理矢理した感じになってしまいました。
数年前の自分の後頭部をどつきに行きたい。




