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339話目

動物とモンスターの区別は人側からの大まかなものということで……←


誤字脱字報告助かります! ありがとうございますm(_ _)m




「ん……っ」


 すっかり通常運転な気持ち良い目覚め方をした俺は、俺を抱き込んで眠っている主様の寝顔を堪能した後、その腕の中から抜け出してベッドから下りる。

 主様のお気に入りな黒猫姿から着替えていると、寝惚けた様子のノワが飛んで来て後頭部へ着地する。

 そのままノワを付けて廊下を歩いていると、プリュイを見つけたのでタタタッと駆け出して飛び込む勢いで抱きつく。

 衝突する! なんてことはなく、俺の接近に気付いていたらしく、体の柔らかさを変えたプリュイから危なげなく受け止められる。

 ぷにゅんといういつもより柔らかなプリュイの体へ埋まった俺を、プリュイは困ったような表情をツルツルした面に浮かべて見下ろしている。


「めっ、デス」


「へへ……ごめん、つい」


 やんわりと叱られたので謝ったのだがついつい笑ってしまい、反省してないと判断されてしまったらしく、伸びて来た触手によって頬をむにむにと揉まれる。

 痛みはないが見た目的に不安にさせてしまったらしく、肩の上へ移動したノワがぴゃと情けない声を上げている。

「らいじょぶらから」

「ぢゅぅ?」

 不明瞭な発音で『大丈夫だから』と訴えてみたが、何言ってるんだ? と聞き返されてしまった。

「気ヲつけテくだサイ」

 そんな俺達のやり取りにふふっと笑ったプリュイは、頬をむにむにしていた触手を移動させて、俺をノワごと持ち上げる。

「行きマス」

 細めの触手でも危なげなく俺を持ち上げ、移動中も揺れたりせず安定している。プリュイは素晴らしく快適な移動手段でもある。


 って、また歩かせてもらえてない。


 思わず内心で突っ込んだが、やる気に満ちているプリュイへ水を差せず、俺は苦笑いしながら廊下を洗面所へ運ばれていく。

 洗面所で何事もなく下ろしてもらい、顔を洗ってから一緒へキッチンへ。

 今度は並んで手を繋いでとてとてと歩いていく。

「今日の朝はご飯の気分!」

 なんとなく宣言してからプリュイに手伝ってもらって朝ご飯を作っていく。

 ちなみに白米はほぼ毎朝炊いていて、主様に収納してもらってある。

 生肉食べるよりは、白飯食べてる方が何倍もマシだから非常食として食べろと伝えて。

 実行されてるかは不明だ。今度フシロ団長にでも確認してみよう。

「……せめておにぎりとかにすべきか?」

 ふと白飯を食べている主様を想像してみたが、絵的にどうなんだという想像しか出来なくて、俺の口からは思わずそんな言葉が洩れる。

「どっちにしろ似合わないか」

 最終的に出た結論はこれだったが、おにぎりは食べやすいと思うので暇な時に握っておいてもいいだろう。

 主様の収納魔法は時間停止するんだから、たくさん預けておいても大丈夫だからな。

 うんうんと頷きながら玉子焼きを巻いていた俺の脇では、プリュイがおにぎりをひょいひょいと増産していた。

 思わず二度見したら、不思議そうにふるふるしなが首を傾げられる。

「ジル?」

「あー……いや、なんでもない、おにぎり、ありがと」

 俺の独り言を聞いたプリュイが気を利かしてくれたのに、違うなんて俺には言えなかった。


 たとえ、今日炊いた一升の白飯が全ておにぎり(塩むすび)となっていたとしても。



「うん、収納してもらえば良いからな……」



 今日のお昼をおにぎりにすることに決定した瞬間でもあった。

「んー、プリュイのおにぎり、力加減絶妙だよな」

 主様の口元にもおにぎりを運んでやりながら、交互に自分の口元へとおにぎりを運んでモグモグと咀嚼する。

 俺の感想を聞いたプリュイ(触手)は、ノワにちょっかいを出されながら部屋の隅で照れたように揺れている。



 かなり主様へ食べさせても残ったおにぎりは弁当箱に詰めて、おかずを入れた弁当箱と共に主様へ手渡しておく。

「これ、今日の俺と主様の昼ご飯だから、預かっといてくれるか?」

「はい」

 ぽやぽやと頷いた主様は、渡した弁当箱へサッと手をかざして収納してしまう。

 それは何度見ても不思議な光景だ。


『まるで魔法だな』


 思わず出そうになった感想を飲み込んで、自嘲するようにへらっと笑う。

 まるでなんて言わなくても、本当に魔法だからな。



「ロコ?」



 目の前のチート級ファンタジーな存在である主様を見つめてちょっとした感慨にふけっていたら、いつの間にか主様の腕の中にいてほぼゼロ距離で見つめっていた。

 宝石みたいな吸い込まれそうな瞳を覗き込んでいると、嬉しそうにぽやぽやとした様子で鼻先を何度かぶつけられる。

 俺がずっと見上げてたから、抱き上げろって意味だと思ったんだな、この反応ってことは。

 納得したので声をかけて下りようとしたが、主様があからさまにしゅんとしてしまったので、言い出せなくなってしまった。




 それを確認した主様がこっそり口の端を上げていたことを、俺は知らない。




 下りようとするとしゅんとする主様に負けてしまい、冒険者ギルドの前までという約束で抱えられたまま移動することにした。


「ぢゅ……」


 ノワから小さな声で騙されてるぞと言われたが、主様が俺を騙すなんてあり得ないよな。

 俺を騙しても何の得もないし。

 でも、言われたら気になってしまい、主様の顔をじーっと見上げていたら、視線に気付いた主様の顔が近づいて来て軽く唇を触れ合わせてから離れていく。



 うん、騙してるかはともかく、とても機嫌が良さそうなので、突っ込むのは止めておこう。

 主様の機嫌が悪いと、冒険者ギルドの職員さん達が困るからな。


 しかし、冒険者ギルドの職員さんへの俺の気遣いは無駄になってしまったかもしれない。


 到着した冒険者ギルドの前で、俺は思わず自らの行動を否定するようなことを考えてしまった。

 機嫌が良さそうだった主様も、警戒も露わなぽやぽや感で冒険者ギルドの建物の方を見つめていて。

 周りにいた冒険者さん達が戦々恐々なのは気のせいじゃないよな。

 別に不機嫌でも、主様は周りへ当たり散らしたりはしないぞ?



 ただ…………、



「おい、そろそろ春になっていうのに、この辺を真冬へ戻す気か?」



 駄々洩れた魔力が周辺へ影響を及ぼしちゃうだけで。


 魔力駄々洩れ不機嫌主様へ突っ込める数少ない人物であろうアルマナさんは、突っ込みをしつつ現れて、ため息を吐いて手招きをする。


「ほら、こっちから入るんだ。アレが出て来る前に」


 冒険者ギルド内の騒ぎを他所に、手招きされるまま進んで行くと、入り込んだのは冒険者ギルドの隣の建物だ。

 アルマナさんは簡単に入っているように見えたが、扉には魔法陣的なのが見えたので簡単に入れないよう結界か何かあったんだろう。


 主様に抱えられて運ばれている俺は、ただただ運ばれていく。




 外から見るより中はかなり広いようで、長い廊下を歩いてやっと辿り着いた扉をアルマナさんが開けると、中は厩舎になっており、敷き藁の上で動物達がそれぞれ寛いでいる。

 窓に鉄格子があるが、あれは逃亡防止ではなく中の動物達を守るための物だろう。

 昨日はもみくちゃにされただけであまりゆっくり話せなかったが、ケレンとカナフ以外にも聖獣の森から来た子の姿もあるし、それ以外の子達も好事家に狙われそうな見た目の子達だ。

 警戒しているのか、昨日みたいに駆け寄ってきてもみくちゃにされたりはせず、全員が揃って無言で俺達を見ている。

 

「……えぇと、ここにいるのって全員普通の『動物』ではないです?」


 色々気になったが、まずは昨日聞きそびれたことを確認すると、アルマナさんが答える前に本人達が頷いてくれる。

 こくこくと頷く動物達に、アルマナさんは苦笑いしながら、

「まぁ、分類としては動物だが、ただの動物ではなくジルヴァラの肩にいるテーミアスと同じだな。魔法を使うが、モンスターと違って魔石は持たない」

と説明してくれたのだが、やはりこの分類は何回聞いてもファンタジーだ。

 魔石のあるなしなんて、外から見てもわからない…………いや、わかるのか、もしかして。

 今度主様…………じゃなくて、ソーサラさんに訊いてみよう。

 魔石についての考察を頭の隅へ追いやった俺は、今現在目の前にいる動物達に関係するであろう質問を口にする。

「聖獣ではないんですね」

「聖獣と呼ばれるのは、聖獣の森の主である白き狼のみだ」

 いかにもで厨二心をくすぐるが、残念ながら俺は会ったことがない。


「白い狼か……」


 アルマナさんの言葉を反芻しながら「会ってみたいなぁ」と呟く俺を、俺以外がガン見していることに、俺だけが気付いていなかった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


里帰り、無事に行けるでしょうか。


そして、動物達をパニクらせた白いお方はおとなしくしてくれるのか。

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