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338話目

ちょい短め、ちょい怪しめ。


相変わらずよく寝る子です。


誤字脱字報告、ありがとうございます! 大変助かっております(。>﹏<。)



 動物達にもみくちゃにされたので、夕ご飯前にお風呂へ入ることにした俺は、主様から念入りに洗われた後、主様の膝上に乗せられて浴槽内に浸かっていた。

 目の前に湯面には、お湯が張られた木製の洗面器が浮かんでいて、その中にはノワがぷかぷかしている。

「ノワ、溺れるなよ?」

 俺が声をかけると、尻尾を揺らして湯面を波打たせて応えてくれたが、今にも寝落ちしそうなので目は離さない。

 俺の方は主様が背後からがっちりホールドして来ているので、万が一眠ったとしても溺れる心配はないだろう。

 寝汚く寝つきの良い主様だが、さすがS級冒険者と言うべきか、ベッド以外でうたた寝している姿とか眠そうにしている姿を見たことない気がする。

 だから、隣で爆睡している主様を見ると、野生動物が懐いてくれたみたいな感動を覚えているのは本人には伝わらないようにしないとな。

「ぢゅわっ!」

 主様の方をちらちらと振り返って目を離していたら、空へ飛び立ちそうな一声と共に洗面器の中からノワが飛び出し──失敗して浴槽の中へドボンッと落ちる。

 ノワの「行くぞ!」という声に驚いた俺が見た時には、ノワは俺へ向かって飛び出したところで、浴槽へドボンしたのを見て、慌てて両手で掬い上げる。

「ちゃぁ……」

 幸いにもすぐ掬い上げたので、お湯を飲んだりはしなかったらしく、やっちまったぜ言いながらと誤魔化すように身震いをして水気を飛ばしている。

「もう、気をつけろって。……主様、そろそろ上がろうぜ?」

「はい」

 ノワも限界っぽいし、主様へ声をかけてから、主様の膝上を下りて浴槽から出る……なんてことは出来る訳なく、そのまま抱きかかえられて、体を拭いてもらって服を着せてもらう、プリュイから。

 主様、脱がせるのはとてつもなく早いのに、着せる方は苦手なのは謎だ。

 本日も主様の腕の中でぽやぽやわたわたこねくり回されていたら、すっと現れたプリュイ(触手)がサッと着せてくれたのだ。

 無事に服を着させてもらった俺は、ノワをタオルで包んでもふもふとタオル越しに優しく揉む。

 そんな俺はというと、主様から髪を拭かれている。

 主様の髪は…………魔法でなのかすでに乾いている。ちょっと残念だ。

 拭いて乾かすっていう大義名分があれば、主様の綺麗な夕陽色の髪に遠慮なく触れるからな。

 今日はこれから夕ご飯だから時短してくれたのかもしれないと残念に思う気持ちを振り払い、俺は主様の腕の中から抜け出し…………、



「駄目です。まだ乾いてません」



 抜け出せず主様が満足するまでしっかりと髪の手入れをされるしかなかった。


 主様、俺の髪好き過ぎだろ。

 プリュイへ下ごしらえを頼んでいたので、夕ご飯の準備は軽く味を整えたり、温めたりとかぐらいで済んでしまった。

 本当にプリュイ様々だ。

 で、主様がやたらと俺へ食べさせたがる雛鳥気分な夕ご飯を終わらせる。

 そのまま自室へ向かおうとした俺は、主様に捕獲されて夕ご飯を食べていた暖炉前のソファへと逆戻りだ。

 そして主様の膝上にうつ伏せで横たわる体勢で乗せられて、延々と撫でられている。撫でる手は頭に始まり、背中を下がっていき、今はお尻辺りだ。

「…………なぁ、これ楽しい?」

 顔だけで主様を振り返って訊ねると、ぽやぽやと楽しそうな表情で頷かれる。

 主様が楽しいならいいかと諦めた俺は、暖炉前のぬくぬくと主様の温もりと優しく……ちょっと妖しい動きの手を感じながら、俺は睡魔に抗うことなく深い眠りへ落ちていくのだった。






 自らの膝上でもぞもぞとしていた子供が動かなくなり、赤毛の青年はゆっくりと瞬きをして子供の顔を覗き込む。

 そこにあったのは青年を信頼しきって眠りに落ちたあどけなく無防備な寝顔だ。

 それを見た青年の顔からは『ぽやぽや』と評される表情が掻き消え、今は蕩けるような微笑みが浮かんでいる。

 青年は微笑んだまま子供の円やかな頬を指先で辿り、少しだけ開いている唇へと触れる。

 青年がふにふにとその唇を指で押すと、何かを食べる夢でも見ているのかはむっと指先をくわえられてしまう。

 軽く目を見張った青年だったが、抵抗することなくじっと子供の顔を見つめる。

 しばらくあむあむと青年の指を食んでいた子供は、食むことに満足したのか青年の指から口を離し、ふにゃふにゃと何事か寝言を呟いて寝返りを打つ。

 うつ伏せからころんと横向きへ。

 そして、暖を求めてか熱源である青年へ擦り寄ってぎゅうぎゅうとしがみつく。

 子猫のような無邪気な仕草に、青年の口からはため息のような音が洩れる。



「……今は『コレ』で我慢してやる」



 そう囁いた青年は、先ほどまで子供に食まれていた自らの指先を見せつけるように赤い舌先で舐めて見せる。

 その間も視線はずっと警戒心の欠片もなく眠る子供の寝顔へ向けられていて。

 低く掠れた声で囁く青年の妖しく光る瞳に浮かぶ熱っぽい色を見ていたのは、ゆらゆらと部屋の片隅で揺れる青色と場合によっては突撃をすべきかと睨みをきかしているノワの名を貰ったテーミアスだ。




 青年がそれ以上何もせず、眠ってしまった子供を抱えて歩き出すのを見送ってから、それぞれ立ち去るかと思われたが──。




「ぢゅっ!!」




 子供をベッドへ運ぶ最中、ずっと子供の尻辺りを撫で回している青年の手つきに、ブチ切れテーミアスの声による突っ込みと物理的突っ込みが青年の後頭部へ入ったが、青年は気にする様子もない。

 子供の部屋のベッドへ子供を寝かせると、当然とばかりに青年は隣へと横たわって子供を抱き寄せる。

 微かに子供の口から「ん……」と声が洩れたが反応はそれだけで。




 視線だけで溶かされそうな熱を持つ視線を一晩中浴びながらも、色々な意味でおおらかな子供は青年の腕の中ですやすやと眠り続けるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


こちらの『待て』はちゃんと出来てるぽやぽやです。

さすがに六歳児に手を出してはいけませんよねぇ。……まぁ、ファンタジーなんで、ちょっとぐらいは良いかなぁと揺れる私がいたりもしますが←

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