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336話目

動物の種類に悩んで、まぁ定番かなという所で落ち着きました。


 子供の頬って柔らかくてぷにぷにして、動物の肉球みたいな麻薬性があるよな。

 猫の下僕だった前世の友人は、猫の肉球をぷにぷにしたり、匂いを嗅ぎまくったり、俺が見てなきゃ舐めそうな勢いに見えたぐらいだ。

 なんて突然俺が何を言い出したとか思われそうだが、軽い現実逃避だ。

「おい、さすがにジルヴァラがぐったりしてるぞ?」

 一緒に屋根の上を移動してきていたアルマナさんが、移動中も延々と俺の頬をぷにぷにしたり、頬擦りしたり、甘噛みしてきていた主様を呆れ顔でたしなめてくれる。


 そう。移動中ずっと、だ。


「嫌がってません」


 止める気は無いのか、ふいっと視線を反らした主様の発言にアルマナさんは深々とため息を吐いて、足元を指差す。

「あのなぁ、こんな高所にいて抱えられた状態で嫌がったら、落とされそうで抵抗出来ないだろ」

 最初に俺を問答無用で窓から連れ出した人とは思えない正論に、主様の目がカッと見開かれたかと思うと、ぷにぷにしたりガジガジしていた俺の顔をガン見してくる。

「…………嫌ですか?」

 ぽやぽやが消えてしゅんとしてる主様は可愛いすらあるが、今は動物達の方が気になるのでゆっくりと首を横に振りつつ、

「嫌じゃないよ。でも、今はそんな状況じゃないし、人目があると恥ずかしいから控えて欲しいかな」

と説明する。

 主様は人外だから話通じないとかないので、こう言えばわかってくれるだろう。

「人目が嫌だと……」

 そこだけ拾って、じっとアルマナさんを見るのは止めて欲しい。

 わかってくれたか不安になるから。



「ボクがいなくなったらジルヴァラは悲しむよな?」



 俺が不安になっていたら、こちらを見ることなく動物達の行方を探していたアルマナさんから、そんな唐突過ぎる質問をされる。

「え? はい、そうですね。悲しいし、寂しいです」

 質問の意図がわからないまま頷くと、主様の方から「ちっ」という舌打ちのような音がする。

 反射的に主様を見上げると、こちらを見て微笑んでぽやぽやとしている。舌打ちしそうな表情には見えないので空耳だったらしい。

「まったく……何処まで狭量なんだ。ボクも初めて見たぞ」

 アルマナさんはブツブツと口内で何事か呟いていたが、やがて大きく息を吐いてある一点を指差した。

「あそこだ。飛ばずに逃げているようで良かった」

「……飛べる動物が捕まってたんですか?」

 それは動物と呼ぶより、鳥って呼ぶような? でも、動物達も一緒にいたなら、動物呼びで合ってるか?

 そんなことを考えながらアルマナさんが指差した方向を見る。

 俺の視力では、建物の間に辛うじて何かいるかな? それを人が囲んでるかな? ぐらいな光景にしか見えないが、アルマナさんにははっきり見えているんだろう。

 それより風に乗って微かに動物達の声が聞こえて来てるのだが、何だか聞き覚えのある声が混じっている気がする。

「あれ……この声って……」

 首を傾げて聞き耳を立てていると、アルマナさんが顔を近づけて問いかけてくる。

「やはり聞き覚えがあるか?」

「はい……やはりって、どういう意味ですか?」

「実は話していなかったが、捕まっていた動物達の中には聖獣の森で捕獲されたと思われる動物が混じっていた。それを聖獣の森へ送り返すためにも、ジルヴァラへ護衛も兼ねて里帰りを頼みたかったんだ」

「あー、それでついでに聖獣の森の異変も確認してこいって感じでしたか」

 色々腑に落ちた俺は、うんうんと一人で頷いていたため、アルマナさんが次に呟いた小さな呟きを聞き逃してしまった。



「あの聖獣へのご機嫌伺いはジルヴァラにしか頼めないからな」



 何か言われた気がしてアルマナさんを見たが、返ってきたのは苦笑いと竦められた肩だ。

 主様に関してだなと納得した俺は、不機嫌さを滲ませてぽやぽやとしている主様を振り仰ぐ。

 今の不機嫌さは俺の里帰りという話題が出たからだと予想出来たので、なだめるようにぴたりと主様の胸元へ額を寄せる。で、その体勢からの上目遣いだ。

「里帰りっていう名目の護衛依頼だからな? もちろん、俺一人なんてことはないだろうし、心配するなよ。俺の帰る場所は──」


「私の所です」


 ちょっとあざとすぎたかと思ったが、格好つけて言い切る前に主様から食い気味で宣言されてしまった。

「わかった、わかった。ちゃんとお前へもボクの名前で指名依頼を出してやるから」

 で、主様はアルマナさんをジーッと見つめて無言の訴えをしていたらしく、降参とばかりに両手を上げたアルマナさんが苦笑いをして主様へそんな提案をしてくる。

 主様は無言でぽやドヤッとしているのでその提案で納得したらしい。

 さすが主様の扱いに慣れてるな、アルマナさん。

「じゃあ改めて、ジルヴァラ、あれは止められるか?」

 アルマナさんの切り替えの早さと、捕まえられるか? じゃないことに引っかかってしまい、一瞬答えが遅れてしまったがすぐ大きく頷いて自信を表す。

「……え? はい、たぶん、知ってる奴らだと思うんで、説得は聞いてくれると思います」

 記憶の中の彼らは個性的ではあったが、凶暴なんてことはなく理性的な性格をしていた。

 もふもふなチビ達の中に混ざった俺を邪険にしたりせず、背中に乗せてくれたり、毛繕いしてくれたり、群れの一員として迎えてくれた。


「……行きます」


 まだ一年も経っていないのに寂しさと懐かしさにしんみりとしかけた俺だったが、主様の一声にコクリと頷いて念のため主様の服をギュッと掴む。

 直ぐ様浮遊感が体を襲い、一気に風景が流れていき、気付いた時には騒動の真っ只中で。




 位置的には、囲まれた動物達とその動物達を囲んだ人達のちょうど真ん中だ。

 主様から地面に降ろしてもらったが、当然グサグサと双方からの視線が突き刺さる。


「幻日様!? なんでこんな所に……っ」


 怯えを含んだ驚きの声が人間達の方から複数上がり、反射的に主様は怖くないと反論しそうになるのを何とか飲み込む。


 空気は読まないとな。


「落ち着け。こいつを刺激するな」


 恐慌状態になりかけた人間側は、続いて現れた冒険者ギルドのギルドマスターであるアルマナさんの一言で、一応落ち着きを取り戻す。

 その様子を視界の端で捉えながら、俺は囲まれていた動物達の方を見る。

 見たことない動物の姿もあるが、一番目立つ二頭は俺の方をじっと見て今にも駆け出して来そうな気配を見せている。

 聞き覚えのある声だと思ったのは聞き間違いではなかった。



 一頭は染み一つない真っ白い体の牡馬(ぼば)だ。ただし、その額にはスラリと伸びた一本の角がある。



 もう一頭は、夜の闇で染め抜いたような黒色の毛色の牡馬。こちらには特徴的な角は無い。その代わりではないが背中に毛色と同じ真っ黒で大きな翼が生えている。



 どちらも街中で見かける馬より大きく立派な体躯で、そしてどちらも──。



「「ヒヒーン!」」



 間違いなく俺の友人だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


グリフォンとかキマイラとかも悩みました。


ユニコーン白いから、ペガサスの方は黒くしちゃえ精神で黒くしました←

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