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333話目

感想ありがとうございます! 確かにあれはモーニングコールといえますね(*´艸`*)


そりゃあ、主様不機嫌になっちゃいますよねぇ。今か今かと待ってたのに、来てくれずに出かけちゃいましたから。


今回はフシロ団長視点スタート、ジルヴァラちょっとですm(_ _)m


[フシロ視点]



 ジルヴァラと会って、すっかり人間臭くなったと思ったが、こういう点では手に余る。


 そんな事を考えながら、俺は隣で見た目的にはいつも通りふわふわしているように見えるあいつを横目で窺う。


 見た目だけはいつも通り。


 そう見た目だけは、だ。


 魔法使いか強力な魔道具を使う大規模盗賊団の壊滅の為、あいつの手を借りる事になったまでは良かったが、やって来たあいつの様子に周囲の空気が凍りついた。

 まだ物理的には凍ってはいないが、下手に刺激したら物理的に凍りつき始めるかもしれない。

 見た目だけはいつも通りなのに、機嫌はわかりやすく最悪らしい。

 尻を触られようが、口汚く罵倒されようが、ほとんど機嫌など損ねた事のないあいつがここまで不機嫌になるとは……。

 自身の魔法の属性のせいか、魔力量がそこそこあるおかげか俺は比較的寒さを感じていないが、魔力量の少ない者は震えていて使い物にならなくなりそうだ。

 原因はなんだと考えるまでもなく、おそらく……いや確実にこいつの溺愛している子供が原因だろう。

 こうしてここにいるからには子供に何か起きた訳ではないだろうが、本人に訊ねても答えないだろうな。

 下手すればそれこそ一面氷の世界だ。

 来てくれてはいるのだから、作戦には協力してくれる気はある……はずだ。



 そう楽観的に考えていたのだが。



「……燃やすなとしか言われてませんので」



 目の前の光景を見てジト目の俺に対して、あいつは拗ねたようにふいっと視線を外してそう言い放つ。


「確かに燃やすなとは言ったがなぁ」


 ため息混じりで見上げた先には盗賊が拠点にしていた廃墟が、巨大な氷山と化してそこに鎮座していた。

 ここから見る限り、訊ねるまでもなく中まで凍りついていそうだ。

 これは生存者は絶望的だ。せめて話を聞くために一人二人は残しておいて欲しかったものだ。


 そんな恨みが視線に出てしまったのか、あいつはきょとんとした様子で首を傾げ、自らが氷漬けにした建物を指差してみせる。


「捕縛しないのですか? 私なら平気ですが、普通の人間なら死ぬのでは?」


「は? 生きてるのか?」


「……バレたらロコに怒られます」


 まぁ、バレたらジルヴァラなら「やり過ぎじゃないか?」ぐらいの突っ込みは入れるか? いや、殺していたら……。

 そこまで考えて俺は大きく首を振る。

 詮無いことを考えても仕方ない。今はそれより盗賊団の確保だ。



「あの氷を……」



 溶かしてくれと続けたかったが、あいつはふいっと視線を外してしまい、聞こえませんとあからさまなアピールをしてくる。

 本当にすっかりわかりやすくなりやがって……。

 ジルヴァラがここにいたなら頼めば機嫌をとってくれるだろうが、ここ最近は同じ依頼で毎日出かけていると報告が入っている。

 常に後見の誰かがついて回っているので危険もないだろうが、一緒にいられないせいであいつの機嫌が悪いのかもしれない。

 考えても仕方がないので、俺は肩をぐるぐると回しながら歩き出す。

 幸いにも作戦のために人員はかなり確保してあり、その全員がほとんど体力を消費していない。



 日が落ちるまでには中へ突入出来るだろう。



「さぁ! 穴掘りの時間だぞ!」



 しまらない俺の声掛けに、顔色の悪かった騎士達から力無い応えが返ってきたが、人数も多くその中には魔法が使える者も数人いたおかげで、日が落ちる前まで中にいた盗賊団は全て捕縛出来た。

 不幸中の幸いで、廃墟の中にいた盗賊団は寒さによって行動不能になっており、双方無傷での捕縛とのなった。



 しかし、証拠品の数々は氷漬けとなってしまい、自然に溶けるのを待つのは季節のせいもあるが、何より氷の作成者的にも果てしない時間となりそうだという話になり……。

 いつも通り、俺があいつのご機嫌伺いをして氷を溶かすように頼めという任務を仰せつかってしまった。




 次の日。


 俺はかなり機嫌が悪かったあいつを思い出して胃をキリキリさせながら訪問したが、待っていたのは上機嫌にぽやぽやしている姿だ。

 上機嫌な理由は簡単で、ジルヴァラを膝上に乗せてしっかりと捕獲しているからだろう。

 この様子なら氷を溶かす依頼は受けてもらえそうだと胸を撫で下ろした俺だったが、つい昨日の不機嫌さを思い出して愚痴ってしまう。

 俺の言葉を聞いたジルヴァラも不思議そうにしていたので、ジルヴァラが家を出てから何かあったのかと内心で首を傾げるが、ジルヴァラの言葉を聞いて理解してしまった。


 したくはなかったが。


 朝、ジルヴァラに起こしてもらえず、そのまま出かけられたのが気に食わなかったんだなと、納得すると同時に脱力した俺は、しっかりと心に誓う。



 ジルヴァラに、



「何があってもきちんとあいつを起こしてから出かけてくれ」



 そう伝える事を。





 俺を困らせるなとジルヴァラが言ってくれたおかげで、今日の作業はサクサクと終わってしまった。

 昨日の出来事が嘘のようだ。

 氷が溶けた室内はどうやったのかわからないが、全く濡れておらず証拠品の回収も問題無かった。

 その間、あいつは機嫌良さそうにぽやぽやしていて、昨日とは別の理由で周囲を凍りつかせていた。



 本当に人間臭くなったよ、お前。



 困る事も多いが、付き合いの長い俺としては、良い変化だと思っている。



 ──いつか、ジルヴァラを失った時どうなるかという恐ろしさは付き纏うが、あいつがそばにいる限り寿命以外でジルヴァラが害される事はないだろう。


 その寿命すら、ごねてなんとかしそうだな、あいつなら。


 想像して笑っていると、ぽやぽやしているあいつから何処か心配そうに見られていた。



「なんでもないさ」


「……そうですか」



 昔は俺がどんな表情をしても……例え大きな怪我をしていようが、チラッと見てくるだけで無反応だったのが嘘のようだ。




 俺は、今のお前の方が付き合いやすい。



 言いかけた言葉を飲み込んで笑っていたら、俺を見る心配そうな眼差しは不審そうな眼差しへと移行したが、俺は気にならなかった。



 今日の仕事は家の中の片付けの手伝いなので、重い物はエノテラさん、細かい掃除とかは俺が担当していたのだが……。



「どうしたの、ジルちゃん。何か気になるのかしら? 何処か汚れ残ってたかしら?」

 考えないようにしていたが、ふとした瞬間に朝のやり取りを思い出して手が止まってしまった俺に、本日の付き添いを買って出てくれたアシュレーお姉さんが心配そうに声をかけてくれる。

 ちなみにアシュレーお姉さんも掃除を手伝ってくれていて、俺の手の届かない所をテキパキと掃除してくれている。

「あー、ごめんなさい。ちょっと考え事してました」

 ぺこりとアシュレーお姉さんに頭を下げて、作業に戻ろうとした俺だったがアシュレーお姉さんに捕まってひょいっと抱っこされてしまう。

「ちょうど良いから、少し休憩しましょ? 心配事があるなら、お姉さんが聞いてあげるわ」

「えぇと、でも……」

 良い笑顔のアシュレーお姉さんにそう言われたが、サボる訳にはとためらっていると隣の部屋にいたらしいおばあさんの声が届く。それとおじいさんの声も。

「ジルヴァラちゃん、少しお休みしましょ? 私も少しお休みしたいわ」

「うむ。そ、そうじゃな! ばあさんは病み上がりなんじゃ!」

 明らかに俺に気を使ってくれてる二人に、俺はへらっと笑いながら頷くしかなかった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


フシロ団長、相変わらず苦労人ですが、ジルヴァラという切り札が出来たので、ぽやぽやの扱いは楽になったはず!


頑張れ、フシロ団長!←

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