331話目
相変わらず寝つきの良いいい子ちゃんなジルヴァラです。
しかし、話の半分ベッドの上にいる気がする主人公ですなぁ←
「主様、これうるさくて寝られないから外してくれよ」
主様によって無事に自室のベッドへ運ばれた俺は、ぺたんと座り込んで首元でちりんちりんと音をさせている鈴を指差して訴える。
見つめ合うこと数十秒。
「似合ってます」
主様から返ってきたのは、ふふんという声が聞こえそうなぽやっとしたドヤ顔とそんな自信満々ながらズレた一言だ。
「……ありがと。でもさ、うるさいから寝不足になりそうだから」
こんな物をしたまま寝たら、体を動かす度にちりんちりんと聞こえて、いくら寝つきの良い俺でも寝られないと思う。
お願いという気持ちを込めて、ベッド脇に佇む主様をジーッと見つめていたら、主様は小首を傾げて俺の方へ手を伸ばしてくる。
やっと首輪を外してくれる気になったのかと思ったら、ちりんという音を立てて外されたのは金色をしている鈴本体のみ。
「色が気に食わなかったのでちょうど良かったです」
そう言って妙にイイ笑顔をした主様は、手に持った鈴を収納──せず握り潰してゴミ箱へ捨ててしまった。
金属製っぽかったけど、相当薄い金属で出来てたんだよな? 紙くずみたいに抵抗なくグシャッと潰れたみたいに見えたけど、そういうことだったんだ、きっと。
鈴だった物が捨てられたゴミ箱から、結構重い音がしたのは気のせいだと思うことにした。
首元のうるさいのも消えたので俺がベッドに横になると、自然な流れで主様が隣へ横たわってその懐へと抱き込まれる。
そうそう。どうせ寒くなって後で湯たんぽにしに来るんだから、最初から湯たんぽにすればいい。
でも、だいぶ暖かくなって来たから、こうやって湯たんぽ出来るのもあと少しかな。
ほんの少し……かなり寂しく思いながら、俺は世界一安全であろう胸の中で目を閉じて眠りへ落ちるのだった。
●
[視点無し]
心配になるぐらい寝つきの良い子供は、青年からガン見されてる事なんて意に介さず無防備な寝顔を見せている。
青年が鼻息がかかりそうな程顔を近づけても、子供の穏やかな寝息に揺らぎは起きない。
それは青年的には気に食わない事だったのか、ぽやぽやとしていた表情が歪み、眉間に微かな皺が出来る。
「……無防備過ぎるな」
子供が起きていたら、主様の腕の中は安全だからな、とへらっと笑いながら答えるのだろうが、安心出来る所では爆睡する子供の眠りは深く起きる気配はない。
ムッとした様子の青年が円やかな頬へ噛みついても、子供はむにゃむにゃ口を動かすだけでその健やかな眠りを妨げる事は出来なかった。
青年は一度子供の頬から口を離してから、しげしげと眺めて子供の円やかな頬の輪郭を指でなぞる。
「もう少し……」
ポツリと呟いた青年は何処か恍惚とした表情で再び隣で眠る子供の寝顔へとゆっくり顔を寄せていく。
そこへ電光石火の勢いで接近してきたのは、茶色いもふもふを上に乗せた青い触手だ。
「ぢゅーっ!!」
茶色いもふもふは、鋭い声を上げながら触手に乗った状態で青年と子供の間へ割って入る。
後ろ足ですっくと立って、前足を広げて青年を威嚇する体勢をとるのは、先ほど就寝したはずのテーミアスだった。
「ち……っ」
気のせいとは絶対言えない大きさの舌打ちが青年の方から聞こえるが、子供の上に着地したテーミアスは怯む様子もなく青年相手に臨戦態勢をとっている。
「ぢゅっ!」
かかってこいよと言わんばかりに青年を睨みつけて一声鳴いたテーミアスだったが、テーミアスの声に反応した子供の手がもぞもぞと動き出して手探りでテーミアスを捕獲する。
「ぴゃっ!?」
突然捕獲されて驚くテーミアスを他所に、寝ている状態でも子供の力加減ばっちりで、優しくテーミアス掴んで胸元へ抱き込み、なだめるように優しく握り込んでもふっていく。
「ちゃっ! ちゃっ! ぢゅ……ぅ」
何事か訴えて抵抗していたテーミアスだったが、うっすらと目を開けた子供から「うん、うん、ありあと……いっしょ、ねような……」と声をかけられ、さらにおやすみのキスまでされてしまい、徐々におとなしくなる。
抵抗を諦めて子供の胸元で丸くなったテーミアスは、自分を睨んでいる青年をチラッと見やる。
ここなら青年が手を出せないとわかっているテーミアスは、思い切り子供に甘えてドヤッとしている。
「ぢゅ!」
その後、青年へ向けて忠告するように一声鳴いたテーミアスは、子供の胸元で丸くなったまま目を閉じてしまう。
青年はしばらく不服そうにしていたが、暖を求めた子供が青年に擦り寄ってくると、蕩けるように微笑んでぽやぽやが戻る。
ベッドの脇で揺らめいて様子を窺っていた青い触手は、青年がおとなしくなったのを確認して、現れた時と同様に音無くするすると去っていってしまった。
これで部屋の中にいる起きて動いている存在は、青年だけ。
本日も青年は目を閉じることなく、子供の寝顔を一晩中ガン見し続けるのであった。
そして、自身が眠っている間にそんな事が起きてるなど、眠る子供は知る由もない。
●
「んー……っ、よく寝た……」
いつも通りスイッチの入るようなすっきりとした目覚めを迎えた俺は、もぞもぞと動いて主様の腕の中から抜け出すと、いつの間にか懐で眠っていたテーミアスを落とさないよう抱えてベッドから降りる。
「ちゃぁ……」
俺の手の中で目を覚ましたテーミアスは、よたよたと肩の上まで登ってくると、眠そうに前足で顔洗いながら挨拶をしてくる。
「おはよ」
普段の男前な姿からは想像つかない……こともないテーミアスの愛らしい姿にくすくすと笑いながら挨拶を返した俺は、寝乱れてしまっている毛皮を直す手伝いを指先でする。
「ぢゅ…………ぴゃっ!?」
やり難いであろう部分を撫でつけていると、テーミアスから「助かるぜ」と男前な言葉が出て来たが、直後に「前見ろっ!?」という警告が……。
「ジル……?」
「ごめん……おはよう、プリュイ」
歩きながらテーミアスの毛づくろいを手伝っていた俺はというと、もう朝のルーティンと化しているプリュイへの衝突というかめり込みを済ませる。
へらっと笑って謝ってから挨拶をすると、めっですとやんわり叱られてプリュイに絡め取られて洗面所へ運ばれる。
「ちゃー……?」
歩くんじゃなかったのかよ、とテーミアスの呆れた声は聞こえたが、プリュイに包まれるのは癒し効果というか安心感があって、ついついそのまま洗面所まで運んでもらってしまう。
明日からはちゃんと自力で歩こうと思う。
そんななかなか成功しないダイエット宣言みたいなことを心の中で思う俺だった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(^o^)
もう皆さん予想済みだったでしょうが、主様の監禁部屋がサラッと前回出ましたねー。
あまりにサラッと書き過ぎて、後書きで一言付け足すの忘れてしまったので今回触れるという体たらくです(*ノω・*)テヘ




