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34話目

おはようございますm(_ _)m


ジルヴァラは本能のまま動いてます。子供っぽく振る舞おうとしない方が子供っぽいジルヴァラ。


ジルヴァラの読んでた本のイメージは、えちいラノベです←

「ロコ、着きましたよ?」

 馬車の揺れで眠ってしまっていた俺は主様に揺すられて目を覚ます。

 昨日、寝たまま運ばれてしまったため、起こしてくれ、と頼んでおいたのを主様はきちんと守ってくれたみたいだ。

 目が覚めたらベッドはそろそろ卒業したいからな。

 六歳児は油断するとすぐ眠くなるから、早く大きくなりたい。

 俺が寝てる間も手を繋いだままでいてくれたらしく、主様の手はすっかり俺の体温が移ってしまって温かい。

「お昼何しよっか」

 早速踏み台を使ってみたく、俺はうきうきと繋いだままの手を揺らしながら、主様と連れ立って家の中へと入る。

「何か買ってくれば良かったですね」

 瞳を閉じたくなる歌手さんが歌ってたような時計をチラ見して確認した主様の言葉に、俺はきょとんとして主様を仰ぎ見る。

「え? 俺、踏み台使ってみる気満々だったんだけど……」

 主様は外食な気分だったかと、苦笑いした俺の頭を、主様は繋いでない方の手で撫でてくれる。

「疲れてませんか? かなり興奮してたようですし」

「それはなんかごめん」

 ドワーフ初遭遇で興奮しすぎたことを思い出してバツが悪くなった俺は、繋いでいた手を離して、へらっと笑って誤魔化しておく。

「でも、今は見ての通り元気だって!」

 主様の膝枕で一眠りしたせいか、強がりでなく本当に調子はかなりいい。なんか夢見も良くて、さっき見かけた『少女』のことなど忘れてたくらいだ。

「……駄目か?」

 俺の上目遣いに効果はないだろうが、とりあえず主様を見上げると自然と上目遣いになるので、上目遣いでじっと見つめて訴えてみる。

「……わかりました。ただし、私も側にいますから」

「それは全然構わないぞ」

 許可ももらえたので、俺は笑顔で主様へ向けて手の平の上に向けて両手を差し出す。

 収納してもらってある踏み台を出してもらおうと思ったのだ。

「はい」

 何故か主様がぽやぽや嬉しそうだなと訝しんでると、両手を差し出した体勢のまま抱き上げられてしまい、俺はジトッとした眼差しで主様を睨む。

「……踏み台、出して欲しかったんだけど」

「あぁ、そういう意味でしたか」

 俺の睨みなど気にする気配もなく、そして降ろしてくれる気配もなく、主様は俺を抱えたままキッチンへと向かって歩き出す。

 抵抗を諦めた俺は、妙な体勢になってしまっていた腕を引き戻し、大人しく運ばれることにした。

「主様、ここに踏み台出してもらえるか?」

 言葉にするって大事だよな、とか倦怠期の夫婦みたいな事をちょっと思いながら、俺はキッチンの床を指差す。

「はい」

 今度こそ意図はきちんと通じて、ガンドさん作の踏み台がキッチンの床へと置かれる。

 キッチンの床にポツンとある踏み台。

 俺はまだ踏み台に乗ってないが、目線は高い。そのまましばらく待つ。相変わらず目線は変わらない。

「………………主様、俺も降ろしてくれよ」

「え」

 心底不思議そうな「え」をもらったが、何とか床へと降ろしてもらった俺は、踏み台の位置を調整して早速調理へ取りかかる。

 高さはバッチリだし、天板も広めだから多少左右には動けるし、何より安定感がいい。

 主様の自律思考型踏み台は、ちょっと足がぶらぶらしてて落ち着かなかったのだ。

「主様、この間炊いたご飯まだあったよな? ここに出してくれるか」

 せっかく主様が近くにいるので、収納へ入れてもらってある食べ物を使ってしまおうと思ってお願いすると、すぐにほかほかの白いご飯が出てくる。

「ありがと!」

 収納って本当に便利なチート魔法だ。

 これだけ便利なんだから、そりゃあ異世界転生チートの定番になるわけだ。

「あと、卵とベーコンと玉ねぎお願い!」

「はい」

 乙女ゲームに似た世界なせいか、それとも地球と繋がってるとでも言うのか、野菜とか名前も見た目もほぼ一緒なので、異世界感が薄くて残念だが暮らす分には楽でいい……主様ー、この巨大な卵は返品で!

 え? コカトリス? 美味しい? でも、ちょっと俺が使うには早すぎるんで、その巨大卵はしまっといてくれ!

 なんて、やり取りもあったりして、俺の頭ぐらいのサイズの卵は見なかった事にした。

 美味しいんですよ? と首を傾げてぽやぽやしてる主様はスルーして、俺はオムライスを仕上げていく。

 オムレツぱかーんタイプではなく、ケチャップライスを薄焼き玉子で包んだ昔懐かしいとか言われそうなオムライスだ。

 なんと言われようが、俺はオムライスならこっちの方が好きだ。オムレツぱかーんタイプが食べたいなら自分で作れって……。

 多少玉子は破れてしまったが、綺麗な黄色いのオムライスを皿へ盛り、無意識に脳内でブツブツ文句を言っていた俺は、口から出そうになった『誰か』への言葉を飲み込んで主様へ向けてへらっと笑う。

「ほら、出来上がりだ。スープは朝の残りを温めたから、それでいいか?」

「……ええ」

 主様の物言いたげな視線は気付かないふりをして、俺はもう一つ同じ手順で少し小さめなオムライスを仕上げていく。

 久しぶりなせいか、また破れてしまった。なら、ケチャップで誤魔化せばいい。

「冷めないうちに食べようぜ?」

 主様の分のオムライスもケチャップで文字を書いて、玉子が破けた所を誤魔化してしまう。

 きっと俺は前世でも、こうやって誰かとオムライス作って、文句を言い合いながら笑ってたんだろう。

 思いがけず浮かんで来たおぼろげな記憶は、破けた玉子をケチャップで誤魔化すように、へらっと笑って誤魔化してしまおう。

 今の俺は、ジルヴァラ。ただの主様大好きな六歳児なんだから。





 少ししんみりした気分になった俺だったが、オムライスを主様から誉められてどうでも良くなったあたり、本当に俺は主様大好きすぎる上に、現金な性格だと自分でも思う。

 午後からは使った場所ぐらいは掃除しようとキッチンを軽く掃除したあと、俺は主様の部屋のソファでまったりさせてもらっていた。

 俺の部屋にあった本棚から本を持ってきて、文字の勉強も兼ねての読書タイムだ。

 走り込み行こうとしたら、やっぱり止められた。

 転生特典なのか、ただの幼児の柔らか脳が優秀なのかはわからないが、今のところするすると覚えていけている。

 たまにわからないところがあれば、机に向かって嫌そうにぽやぽやしてる主様の所へ行って教えてもらったりして、のんびり過ごす。

 今読んでるのは、田舎生まれの少年が逆境にも負けず強くなって騎士になり、綺麗な奥さんとたくさんの愛人でハーレム作るという……というか、六歳児が読む本か、これ。

 なんか内容が怪しくなってきて、俺は首を捻る。


 ピーをピーして、ピーがピーで……。


 脳内で再現するのも憚られるぐらいのピンクい内容になってきた。俺は面食らって瞬きを繰り返す。

「ロコ?」

 首を左右に傾げてしげしげと本を眺めていたら、俺の不審な動きに気付いたらしい主様から呼ばれる。

「なんか思ってたのと違った。偉くなる前に、エロくなった?」

 いや、一応偉くはなってるけど。

 オヤジギャグみたいな感想を言って、困惑を隠さず主様へ今読んでる本の表紙を見せる。

 ラノベみたいに、いかにもな肌色の多い絵がついてればわかったかもしれないが、いかんせんこちらの本の表紙には文字しかない。

 タイトルはまんま『騎士になった少年』だし。まさか、こんなあからさまな濡れ場ありとは。こっちの世界の娯楽小説って、全部こうなのか? と見るともなしに音読したらピーで埋め尽くされそうな文字列を眺めていると、伸びて来た手により本を奪われる。

「これは、何処に?」

「俺の部屋の本棚にあった。主様の趣味な「違います」……あー、ごめん?」

 ぽやぽやしてるのに食い気味に否定されてしまい、俺はしゅんとなりながら頭を下げる。

 確かに、これが趣味なんですか? とは思われたくない類の本だもんな。俺は嫌いではないけど、この本は一人でゆっくり読んで楽しむものだろう。

「適当に子供向けを頼んだのですが……」

 危険物を扱うように本を摘み、何処となく脱力した様子でポツリと洩らす主様。

「題名で選んだんじゃないか? 次は俺もちゃんと内容確認してから読み始めるよ」

 違うのを読もうと何冊か持ったきた違う本を手に取り、パラパラと頁をめくって内容を確認しようとしたが、その前に主様から本を取られてしまう。

 ちらりと読めた内容は、お姫様と英雄のあーれーな内容だったようだ。

「……ロコの部屋の本棚の中身は確認して燃やしておきます」

 ぽやぽやした雰囲気のまま据わった目で呟く主様に、俺は苦笑いして他の本を守るようにギュッと抱え込む。

「駄目だって。主様読まないなら、あげるなり売るなりすれば?」

 ヤバい禁書ならともかく、ちょっとエロいだけで燃やすのはやり過ぎだろう。

 幼児なせいか性欲的な興味は全く湧かないが、本を燃やすということは勿体なく感じてしまう。

「……わかりました」

 不服そうだがとりあえず燃やされるのは回避できたらしい。

 主様なら、その気になればこの場でも、ボッてやって燃やせるからな。

「次は喜んでくれる人のとこに行けるといいな?」

 渋面の主様をよそに、ぽふぽふと本の表紙を軽く叩いてた俺は、主様が本選びを頼んだという相手がちょっとだけ気になっていたり?

 たまたま題名で選んで間違えたんじゃないかと擁護してみたけど、その割には俺が持ってきた本、全部それっぽい。主様の反応を見る限り、間違いないだろう。


 嫌がらせ? 天然? 勘違い?


 どれだろうなと考えていたが、その日の夕方、「夕飯一緒に食おうぜ」と現れたトルメンタ様とオズ兄に来訪により、



「え? それ選んだのおれだな。幻日サマが読むんじゃなかったのか?」



と、思いがけず犯人が判明。



 トルメンタ様がぽやぽや微笑んだ主様から消し飛ばされ(冗談)そうになる一幕があったりもしたけれど、主様は心が広いので無事に一緒の食卓につくことになった。

いつも反応ありがとうございますm(_ _)m


トルメンタ様に死亡フラグ建ちました(ノ´∀`*)


ジルヴァラは冗談だと思ってますが、主様は本気と書いてマジと読みます←

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