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329話目

ジルヴァラ成分不足を補給中。


切りが良いので、ちょい短めですm(_ _)m




「どうしたんだよ、主様」



 帰宅してから何度目になるかわからない質問をしたが、俺を背後から抱え込んだ主様からは何の反応も返ってこない。

 帰って早々、お風呂へと直行となり、そのまま隅々まで洗われるお風呂タイムが終わり、それからずっと背後から抱え込まれる体勢で主様が背中にくっついている。

 現在地は暖炉前のソファで、夕ご飯は主様が帰り道の途中で適当に買った物で済ませることになったのだが……。




 その夕ご飯を食べ終わっても離してはもらえず、俺は主様を背後に張りつけ……正確には主様に背後から抱え込まれる体勢でソファから動けていない。

 プリュイも基本的には主人である主様には逆らえないので、呆れたように見ているだけで助けは期待出来ないだろう。

 テーミアスは頑張って尻尾でバシバシッとしていたが主様へのダメージがゼロ過ぎて、今は俺の膝上でちょっと拗ねている。

「ぢゅ、ぢゅ、ぢゅ……」

「うんうん、ありがと。テーミアスは肉弾戦派じゃないから、仕方ないよな。それに主様は強いから」

 自分の非力さを嘆くテーミアスを慰めてもふってあげていると、俺の膝上でとろけてうつらうつらし始める。

「ちゃ……っ」

 次は勝つという一言を最後に、テーミアスは俺の膝上で眠ってしまった。どうしようかと思っていると、プリュイ(触手)が伸びて来てテーミアスの寝床になっている籠を持ってきてくれる。

「ありがと、プリュイ」

 そう小声で言って両手でテーミアスをすくい上げた俺は、起こさないよう気をつけながら籠の中へそっとその体を横たえる。

 置いた瞬間、ぴすー、みたいな鼻声が聞こえてギクッとしたが、もふもふな塊と化したテーミアスに起きる気配はなくホッと胸を撫で下ろす。

 そのままテーミアスの入った籠はプリュイ(触手)が運んで行ってくれた。

 たぶんいつも寝ている場所へ連れて行ってくれたんだろう。

 そんなやり取りが行われている間も主様は何の反応もなく、たまーに背後から俺の項辺りにぐりぐりと顔を押し付けて来てくすぐったい。

 気のせいじゃなければ、ぐりぐりとされる度に匂いも嗅がれている気がする。

 風呂上がりだし、主様が全身隅々まで洗ったんだから臭くはないと思うんだけどな。

 赤ちゃんだと、ミルクの匂いがするー、みたいなことを言われて吸われてるが、俺はもうミルクの匂いはしない……はず。

「主様、何か嫌なことがあった? それとも、おれが何か気に障ることしちゃったのか?」

 体の前に回されている主様の手にそっと触れながら、先ほど何度かした問いをまた繰り返す。

 触れたせいか、それとも質問の回数を重ねたからなのかはわからないが、ピクリと反応がある。

 そのまま無言で主様の言葉を待っていると、背後からやっとボソリと……感情が消えたかような不安になる声音で主様の言葉が聞こえてくる。



「………………里帰りするつもりか」



 咄嗟に、いつもの丁寧なのも良いけどこっちの口調も格好良いよなぁとか一瞬ズレたことを考えてしまったせいで反応が遅れてしまい、回されている主様の腕がギュッと締まる。

 油断すると落とされそうな締まり具合に、俺は主様の腕を必死に叩いて緩めてくれるように訴える。

「お、おちるかとおもった……」

 何とか通じたらしく意識が落ちる前に腕は緩み、俺はふぅとまずは一息吐いてから、少しだけ緩んだ主様の腕の中でよいしょと体を反転させる。

 ジタバタした後、主様の足を跨ぐ感じで向かい合ったので、ちょっとコアラっぽい体勢だ。

 抱き締める腕は強いが、膝上から逃げようとしなければ行動に制限はされないので出来た芸当だ。



「……本当にどうしたんだよ、主様」



 振り返って主様の顔を見た俺の口からは、思わずそんな問いが洩れる。



 久しぶりにきちんと向き合った気すらする主様は、いつものぽやぽやは全く消えていて、まるで迷子のような顔をして俺を見ていて。

 いつから見ていたかはわからないが、瞬きを忘れたようにジーッと俺をその宝石色の瞳に映し込んでいた。


 明らかな異常事態に、俺は主様の方へと身を乗り出し、ぺたりと額と額を寄せ合う。

 それでも主様は瞬きしないので、至近距離で見つめ合う。


 あ、でも、ちょっとだけびっくりさせちゃったのか、目が大きくなったかも。


 主様他人から触られるの好きじゃないっぽいからな。

 まぁ、恐れずに触ってくるのは痴漢とかそういうヤツばかりなら嫌にもなるか。


 驚かせて申し訳無さを覚えたが、今は主様の体調の方が心配なので額へ意識を集中させる。

 触れ合っている主様の額は、俺の体温より少し低いけどあたたかくいつも通り、あとすべすべしてる。こちらもいつも通りだ。

 とりあえず発熱してたり、やたらと体温が低いとかは無いようで何よりだ。

 少し息が乱れている……ような気もするが、これは驚かせたせいだな。


 主様の体調チェックも終わったので俺は体を離そうとしたのだが、主様の腕にグッと力が込められて離れられない。

「……里帰りするのか」

 今度はゼロ距離で同じ問いが繰り返されて、俺はゆっくりと瞬きをして何度もされた問いの意味を考えるを

「あー、そんな話だったな。……もしかして、俺とエルデさん達の会話聞こえてたのか?」

 やたらと『里帰り』にこだわる主様に疑問を覚えたが、答えにすぐ行き着いて俺はその答えを質問として口にする。

「……はい」

 間近で見つめ合って少し落ち着いたのか、主様のぽやぽやが若干戻り、口調もいつもの物へと変わる。

 そんな様子に安堵しながら、俺はへらっと笑って口を開く。

「里帰りはしたいけど…………って、最後まできちんと聞いてくれ!」

 里帰りを肯定した瞬間、グッと強まった腕と肌に感じる冷気に思わず声を張り上げる。

 何とか腕の力は緩んだが、俺を見ている眼差しはわかりやすく不満げだ。

「里帰りしたいけど、今じゃないなぁって感じ?」

「つまり……里帰りしないんですか」

「しないよ」

 しっかり言っておかないと主様には通じないので、主様の目を見つめてはっきりと否定しておく。

 今は。という単語をつけるとややこしくなりそうなので、あえて付けないでおく。



 里帰り宣言する時は一人で行けるようになった時のつもりなので、その時は堂々と胸を張って里帰りさせてもらうつもりだ。



 すっかりいつものぽやぽやに戻った主様は、やっと腕の力を抜いてくれたので、俺は主様の膝上に乗ったまま大きく伸びをする。

 主様にギュッとされているのは嫌ではなかったが、同じ体勢で拘束され続けていたせいで体が強張ってしまったのだ。




 うーんと大きく伸びをして体を解していた俺は油断しきっていた。



「早く一人で里帰り出来るぐらいに大きくなりたいよな……あ……っ」



 無意識に願望が口から洩れてしまい、ハッとして口元を手で覆いながら主様の反応を恐る恐る窺う。


 聞こえてない──なんてことはなかったらしく、イイ笑顔をした主様が俺を見つめている。

 その手に鈴のついた首輪を持っているのは、黒猫の着ぐるみパジャマの付属品だろうか。


 そうであって欲しい。


 とりあえず、まだ『話し合い』は終わらせられないようだ。

 

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


あちゃーなジルヴァラです。格好は相変わらず黒猫です。

暑くなるまではこの格好させられそうです。

そして、現実世界が寒くなる頃、こちらは暑くなっていきそうな予感がひしひしと。

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[一言] 微かに はぁはぁ してる御人が
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