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327話目

イメージとしては、お風呂上がりに幼児をバスタオル広げて待つ感じです。


たまに自分のサイズ感を忘れるジルヴァラ。



 二日連続で弁当に入れていた玉子焼きのレシピをカエルラさんに訊かれて答え、代わりに昨日スープを教えてもらったりして、本日の昼ご飯も和やかに終了したのは良いのだが……。



「さぁ、ジルヴァラ、こちらへ来るんだ」



 何故エルデさんは毛布を広げて持った状態でソファに腰かけて、イイ笑顔をして俺を招くのだろう。

 現実逃避してみたが何をしたいかは察せてしまった。

「俺、別にいつも昼寝してる訳じゃないからな?」

「うん? 聖獣の森では飯を食べた後は熊の上で昼寝していただろう?」

 からかったりしている訳ではなく、真面目のまま首を傾げるエルデさんは、好意から言ってくれてるのはわかる。だが、俺の口から思わず出たのは反論だ。



「それは小さい頃の話だから!」



 ふんっと気合を入れて声を張り上げた俺に驚いたのか俺以外の全員が止まり、室内は静寂に包まれる。


 そんな中、テーミアスが俺の肩の上でやれやれとばかりに肩を竦める。器用だな。


「ぢゅぅ」


 耳元で囁かれたのは「今も小さい」という何言ってるんだと言わんばかりの突っ込み……というか指摘だった。



「……そっか、俺まだ小さいのか」



 中身は前世の記憶分一気に年食った気になってたけど、改めて考えれば当たり前な話か。

 何か色々脱力してしまった俺は、ふらふらと歩いて、心配そうに俺を見守っていたエルデさんの持つ毛布にぽふっと体を預ける。

「そ、そんなことは……少しはあるかもしれないが、すぐに大きくなるぞ?」

「……本当に?」

 今いるメンバーで一番大きいエルデさんに言われても、何か疑わしいなぁと思うし、しかもさらっと小さいと認めてるし。

 そんな気持ちを込めて、ジーッと見上げていると毛布で包まれてエルデさんの膝上へと移動させられる。

「そのためにも、しっかりと食事をとって、しっかり睡眠をとることだ」

 上手く言いくるめられた気もするが、間違ったことは言われてないし、食後は少し休むべきだよなと納得して頷いているエルデさんの膝上で寛ぐ体勢になる。


「ちゃぁ」


 それでいいのかよとテーミアスが呆れたように突っ込んで来たので、俺はいいんですーと返してテーミアスのお腹をもふっておく。

 そのままエルデさんの膝上でダラダラとして食休みをしていた俺だったが、思わぬ伏兵がやって来る。

「あらあら、眠くならないのかしら?」

 毛布にくるまれても目を開けている俺に気付いたおばあさんから、優しい声がかけられる。

 優しい笑み混じりの声と共にやって来たおばあさんは、困ったわねぇと全く困っていなさそうな感じで呟いて、毛布の上から俺の体をポンポンと優しく叩いてくる。


「だって……まだ……くさのこってる……」


 そう、残ってる。

 草を刈ること自体はルフトさんの魔法のおかげであっという間に終わったが、集める方はまだまだ終わらない。

 午後からも頑張らないといけないから、本日の俺は昼寝はしないつもりなのだ。



 そうドヤったつもりだったのに、どうやら全ては夢の中でのことだったらしく。

 俺はおばあさんのポンポンに抗えず屈してしまったようで、ハッと気付いた時にはソファの上で丸くなっていた。

 下敷きにしていたエルデさんの姿もなく、慌てて体を起こして時計を確認すると小一時間経過している。

 昨日よりは早く起きられたことに胸を撫で下ろしていると、一緒になって昼寝していたらしいテーミアスが伸びをしてから肩へと登って来て、頬へ甘えるように頭を寄せてくる。

「寝ちゃったな」

「ぢゅぢゅぅ」

 照れ笑いする俺に、寝る子は育つって言われてたぞとからかってくるテーミアスに、仕返しで尻尾をもふる。

 特に嫌がられなかったので、仕返しにはならなかった。

「皆は外か?」

「ぴゃ」

 そうだなと返ってきたテーミアスの相槌を聞きつつ、俺はソファから降りようとしたのだが、その前にキッチンの方からおばあさんが出て来た。

 その手にはお盆があり、そこにはお菓子やお茶など色々乗せられている。

 お盆を手にしたおばあさんは、起きている俺と目が合うと、あらあらと相変わらず優しい笑い声を洩らす。

 ゆっくりとした足取りで近寄って来たおばあさんは、お盆ごと運んできた物をテーブルへ置いてから、俺の隣へと腰かける。

「うふふ。ちょうどお茶の時間にするところだったのよ? お仕事の続きはお茶してからにしましょ?」

 俺に掛けられていた毛布を片付けながら、おばあさんはそう言ってテーブルの上を視線で示す。

 先ほども見たが、確かにそこにあるのはお茶とお菓子のセットだ。

「エノテラさん達は?」

 いただきますの言葉より先に口から出たのは、先ほどの俺の決意のように昼寝なんてしないで仕事をしてくれているであろう面々のことだ。

「もちろん一緒よ」

 うふふと笑ったおばあさんの答えと、外へと続く扉が開いてエノテラさんが入って来たのはほぼ同時だった。

 もちろんその背後にはエルデさんとルフトさん、それにおじいさんの姿もある。

 起きているの俺を見てたエノテラさんは、フッと笑顔になる。二日連続午後をサボった形になってしまったが、その笑顔は優しくて、少しそわそわしてしまう。

 分けて考えてるつもりだが、やはり元推しの笑顔は尊い。


 主様の笑顔はもっと尊いけどな!


 誰かに何か言われた訳ではないが、心の内で主様の笑顔の尊さを叫んでひっそりと頷いておく。

「……おやつを食べたら、もう一働きだな」

 俺の内心になんて知らないエノテラさんは、笑顔のまま俺に歩み寄ってきたかと思うと、身を屈めて目線を合わせてくれて、作業の進捗を教えてくれる。

 俺が眠る前に色々言ったから気にしてくれたと思うと、嬉しくなって頬が緩む。

 誤解でとんでもない初遭遇となったが、仲良くなれそうで良かった。

 推しではなくなったとはいえ、生身のエノテラさんはそれはそれで魅力のある人だから。


「おう!」


 緩みきってる自覚のある笑顔で応えると、エノテラさんは一瞬きょとんとした後、ニッと……少しだけゲーム本編よりは幼い顔で……『エノテラ』の顔をして笑って俺の頭を撫でてくれた。




 ちょっとドキッとしたのは、仕方ないよな?

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


ジルヴァラのミーハー心がうずうずしてますが、恋とかでは無いです。あくまでも、マジで生きて動いてるわー的な感動が根っこです。


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