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316話目

感想ありがとうございますm(_ _)m


こんなにもジルヴァラを心配していただけるとは……。


本当にありがとうございます(^^)方針も揺らいでないですし、全然気にしないでください。


私の基本方針はハピエン主義の主人公うちのコ大好きですので(*´Д`)



「じゃあ、ジルを殴ったヤツ、殴りに行こうぜ!」


 ふんすと気合が入ったナハト様を見て、泣きそうになっていたイオも大きくコクリと頷いて、キリッとした表情で拳を握っている。

 そんな頼りになる友人二人に対して俺はというと、久しぶりにフシロ団長の頬擦りを受けて、ジョリジョリされていた。

 痛くすぐったさに笑っていると、先ほどまでふんすとしていたナハト様が冷めきった眼差しでこちらを見ていることに気付く。

「フシロ団長、もう大丈夫だって」

 そこではたと今の俺の状況が、ナハト様の大好きなパパを盗っちゃっているという状況だと気付き、やんわりとフシロ団長の顔を押し退ける。

 だが俺の反応は遅かったらしく、ナハト様はキッと眦を吊り上げて……、


「父上! それはセクハラって言うんだぞ!」


「です!」


「ぢゅっ!」


 あれ? なんか、俺じゃなくてフシロ団長が叱られてる。あと、ナハト様に続いてみた感のあるイオとテーミアスが可愛い。

 紳士なテーミアスは、イオが泣きそうになった時に肩へと乗ってあげて、泣くなと男前に慰めていたようだ。で、今もイオの肩に落ち着いてたが、俺と目が合うとバッと飛んで来てフシロ団長の顔に蹴りを入れてから俺の胸元へ着地した。

「ふ……っ」

 余裕溢れる笑い方からして、フシロ団長はテーミアスの蹴りを避けられたんだろうが、あえて受けてくれたぽい。

 ダメージは無いと判断したのか、俺を泣かせた罰を受けるつもりで避けなかったのか。

 フシロ団長の性格からすると、後者かな。

 そう思いながらテーミアスをもふってフシロ団長を見上げていたら、フシロ団長が今度は苦笑いを浮かべていて、その笑顔は徐々に離れていく。

 何故かと言えば、俺の身柄がフシロ団長から主様の腕の中へと移動したからだ。


「主様もごめんな」


 未だに不機嫌そうなぽやぽやな主様を腕の中から見上げて謝罪するが、返ってきたのはじとりとした不機嫌さを隠さない眼差しだ。

「ロコはあの馬鹿が好きなんですか」

 じとりとしてても綺麗な瞳に見惚れていた俺は、主様の言葉を聞き逃してしまい、しぱしぱと瞬きを繰り返して主様を見るしか出来ない。

 主様突然喋るから聞いてなかったと言えない空気に、俺は助けを求めてフシロ団長を横目で見る。

「何故ジルヴァラが自分を殴った相手を好きだと思うんだ」

 フシロ団長には俺が聞いてなかったのはバレバレだったようで、さり気なく主様が喋った内容を混ぜて主様へ質問してくれたらしい。

 まぁ、主様の質問の仕方がいまいちで、確認の意味もあったのかもしれないけど。

 どちらにしろ助かったので、俺は改めて主様からの問いを頭の中で繰り返し──こてんと首を傾げてしまう。

 今のエノテラを好きか嫌いかと言われたら、わからないが正直な所だからだ。

 あくまでも俺が好きで推してたのは乙女ゲームの中のヒーロー『エノテラ』だ。生きて動いている姿にはミーハー心で感動したが、好きかと言われると微妙だ。

「別に好きじゃない……」

 だからといって、嫌いとは言い切れなく、自分でも語尾にキレがなくなってるのがわかる。

「では、何故あの馬鹿を庇うのですか? 何故あんな目で見ていたのですか? ロコは私だけを見ていればいいんです」

 主様が珍しくたくさん喋ってるなぁという軽い現実逃避をしてしまったが、言われた内容に気付くと口元が緩みそうになってしまい、慌ててキュッと唇を引き結ぶ。

 何か主様がヤキモチ妬いてるみたいで、現金な俺はちょっと嬉しくなってしまったのだ。

 表情を引き締めてから、唇を引き結んでいたのを緩め、いつものようにへらっと笑って口を開いた。

「……見てたのは、憧れからかな、冒険者としての」

 今の時点でもエノテラはそこそこ有名な冒険者だし、元推しとして憧れていた訳だから満更嘘でもない。

「私の方がランクが高いです」

 不機嫌そうなぽやぽやからムッとした表情で移行した主様は、鼻が触れそうなほど顔を近づけて……というか、もう鼻先が触れ合ってる状態で不満げに囁く。

「まぁ、確かにそうだけど、主様は主様だし……」

 ランクの話となれば、Sランク冒険者な主様と並ぶのは、何処かの国にいるもう一人のSランク冒険者しかいないだろう。


 でも、そもそもの話として──。


「主様と比較なんて出来る訳ない。



 俺の中で主様は『特別』なんだから」


 しっかりと言葉にしたら一気に気恥ずかしくなり、主様から目線を外そうとしたが、それより早く息を呑む音がして主様からぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

「…………仕方ないので、あの馬鹿の腕はとりあえず(・・・・・)諦めてあげます」

「そっか」

 とりあえずなんだ、とか、まだ諦めてなかったんだ、とか色々言いたいことはあったが、不機嫌そうだった主様の機嫌が直ったので良しとしよう。

[アシュレー視点]




「俺が言う事じゃないと思うが、あんな軽い罰則で良いのか?」

 幻日サマのお宅を出て、結界の外へと出た途端、お馬鹿さんがそんな言葉を口にする。

 アタシに対する口調はともかく、冒険者ギルドの副ギルドマスターという立場にあるエジリンには少しぐらい丁寧な口調にして欲しいものだけど、お馬鹿さんだから仕方ないと諦める。

 エジリンが気にしていないようだし、アタシも見逃してあげる事にするしかない。

 本当ならジルちゃんをあんな目に遭わせたんだから、エジリンへの口調も含めて、教育的指導で冗談じゃなく腕の一・二本折ってあげたいぐらいなんだけど。

 そんなことしたら、きっとジルちゃんは悲しそうな顔をするから、今回は我慢しとくわ。

「本来なら良くはありません。しかし、被害者であるジルヴァラくんが望まないので、今回は見逃して差し上げます」

 エジリンはカチャと眼鏡を上げながら、薄く微笑んでそう返している。

 言外に含まれるのは『次はない』という最後通告。

 お馬鹿さんはそこまでお馬鹿さんでは無かったらしく、表情を引き締めて大きく頷いている。

 あの白い子猿ちゃんが関わらなければ、お馬鹿さんはマシなお馬鹿さんなのかもしれないわねと考えた所で、アタシはこのお馬鹿さんの抱える大きな問題点に気付く。

「エジリン、このお馬鹿さんって……」

「それに関しては、これから冒険者ギルドで話しましょう。もちろん、あなたもです」

 さすがアタシの相棒。アタシの言いたい事をわかってくれたらしい。

「おう……じゃなくて、はい」

 それと、お馬鹿さんの口調が少し直ったのは、ついついアタシから圧が出ちゃったのかもしれないわね。




 で、三人で連れ立って着いたのは冒険者ギルドの裏口。

 正面だと子猿ちゃんに見つかっちゃうかもしれないし、エジリンの気配りは完璧ね。

 だからといって油断はせず、周囲を確認しながら建物の中へ入ると、そのまま防音が完璧な部屋へとお馬鹿さんを連れ込む。

 この中ではいくら叫んだとしても外に声は届かず、外からの声も聞こえない。

 机と椅子しかない部屋の説明をされたお馬鹿さんの表情が少し青褪めたのは、アタシ達に拷問でもされると思ったのかしら。


 本当にお馬鹿さんね。


 ヤるなら森の中よ。そうすればモンスターか動物が片付けてくれたことになるもの。


 ちょっと悪戯心からニィと微笑んでみせたら、お馬鹿さんはギクリとわかりやすいぐらい肩を跳ねさせて、エジリンからは呆れた笑顔を向けられる。


 うふふ。わかってるわよ、何もしないわ、今は、ね。


 多少警戒させてしまったけれど、お馬鹿さんは大人しく椅子に腰かけてアタシ達と向かい合う。

 ま、アタシはお馬鹿さんの正面に机を挟んで腰かけたエジリンの傍らに、お馬鹿さんを睨むようにして立っているんだけど。

「早速ですが、明日あなたが行う罰としての依頼の件です。まず、今回の依頼が罰として受けさせられた事は、他者へ話してもらっても構いません」

「え……?」

 エジリンの言葉をきちんと理解したお馬鹿さんの目が驚きで見張られる。やっぱり、この子はそこまでお馬鹿さんじゃないわね。

 ジルちゃんの与えた『罰』を話す事がジルちゃんにとって有益じゃないとわかっていて、それを話す許可が出て驚いてるんだもの。

 ジルちゃんが優しいのは美徳かもしれないけれど、冒険者としては侮られる。

 ただでさえ、幼くて甘く見られるんだから、これで殴ったとしても謝れば許すやつとか、ふざけた事思われたら大変よ。

 片っ端からぶち殺したく……あら、駄目よね、物騒な事考えちゃ。

「あの、でもそうするとあの……ジルヴァラが……」

 アタシの物騒な思考が伝わった訳じゃないだろうけど、お馬鹿さんがおずおずと口を開く。

「うふふ、ちゃんと考えられて偉いわねぇ」

「アシュレー、からかわないように」

 思わず誉めたら、渋面のエジリンからやんわりとたしなめられる。

「あら、失礼ね。本気で誉めたのよ?」

「でしたら、なお悪いですよ。……申し訳ありません。相棒の無礼をお詫びします」

 しなを作って流し目をしてみたが、エジリンからはため息を返されて、生真面目なエジリンはアタシに代わって『きちんと』お馬鹿さんに謝罪する。

「い、いえ……」

 アタシ達を見て、戸惑うように応えるお馬鹿さんの視線が揺れている。これで少しは自分達の異常さに気付ければ、まだ救いはあるのだけど。

 口出ししてあげるほど、アタシはあなたに興味はないから、手助けはここまでね。

 ジルちゃんがこんなヤツをキラキラした目で見る理由はわからないけど、無様な事はこれ以上しないでくれると良いわね。

 アタシの小芝居が終わると、部屋に備え付けられたベルが鳴り、扉へ向かったエジリンが手にして帰ってきたのは、二枚の書類。

「では、これを読んでください。そして、自筆でサインを。……お名前は書けますか?」

「はい、読み書きはゾンネさんとカエルラさんが教えてくれたので……」

 コクリと頷いてお馬鹿さんがゆっくりと書類の文字を目で追っていく。

 エジリンには止められなかったので、アタシも立ったまま見させてもらう。


 内容は簡潔に言うと、


 一枚目は、


『今回の件は、自身が後見をしている冒険者の依頼放棄による発生した不利益補填の為、無償での労働で放棄された依頼の作業を行う事に同意する』


そんな内容で。


 二枚目は、


『今回の件に関係した他の冒険者の名前を口外する事を禁ずる。何故無償での労働となったか訊ねられた場合は一枚目の理由を述べる事。依頼放棄をした冒険者を今回の件に関わらせない事』


 そんな明らかに誰へ向けた物か丸わかりな内容で。


 やっと内容を理解したのか、サインをしようとしていたエノテラの手がぴたりと止まり、エジリンと書類の間を視線が忙しなく動く。


 あら。この反応ってもしかして……。


「うふふ、知らなかったのかしら? あの依頼を放棄したって冒険者が、あなたが後見してる子猿ちゃんだって」

「おや、そうでしたか。私はその件があったので、良い理由付け(いいわけ)が出来ると思っていたのですが……」

「アタシは、それを気に病んで依頼先へ行ったんだと思ってたわ」

「確かに……。勘違いしたと言ってらっしゃいましたし、あの少女が依頼放棄をしたと知らずに、何故あなたはあそこへ行ったのですか?」



 エジリンと顔を見合わせてそんな会話をしてから、エジリンが一番の疑問点を顔色が悪い本人へ訊ねる。

 そうよね、本人がいるんだから、訊くのが早いわ。



「そんな訳……依頼放棄をした冒険者は、ゾンネさんへ暴言を吐いて……逃げ出した、と……。スリジエが、そんなことする訳が……」



 アタシ達の声は聞こえていないのか、お馬鹿さんは頭を抱えてブツブツと呟いている。

 その表情は信じていた相手に裏切られたと言うには少し違う気がして、アタシはふと思いついた事を実行しようと動き出す。

 まずは、ポケットから予備で持ち歩いている最近売れ筋な付与がされているブレスレットを取り出す。

 シンプルな細工のされた細い輪の銀のブレスレットは、簡単に嵌められる留め具付きなので、ちょうど良い。

 そのまま思い悩んでいるお馬鹿さんの手首に、それをカチャリと嵌めてしまう。


「え? ……これは?」


 金属の冷たい感触にきょとんとしたようにアタシを見たお馬鹿さんへ、アタシはニッコリと笑ってみせる。

「アタシの商品。試作品なのよ。あげるから、試してみてくれるかしら?」

 有無を言わせず、ついでに何なのかも伝えずに押し付けがましく渡されて、お馬鹿さんは少しだけ戸惑った様子だったけれど、ブレスレットを眺めて、


「あ、あぁ、わかった。シンプルで格好良いな、ありがとう」


と何処かスッキリした笑顔で礼を口にする。


 その反応にやっぱりそうなのかしら、と口から出そうになった言葉は飲み込み、改めて書類へサインをするお馬鹿さんの顔を見つめる。


「ったく、スリジエは何してるんだか」


 苛立ちながらも困ったように呟きながらも、お馬鹿さんの表情には相手への好意が滲んでいる。



「本当に、お馬鹿さんねぇ……」



 アタシにはそれしか言えないわ。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


気が向くと返信代わりに、本文に答えをぶっ込むスタイルでやっております←


という訳で、ヒドイン(笑)ちゃん対策、もちろんエジリンさんはきちんと考えてましたよーというお話でした。

忘れ去られてそうですが、あの依頼ぶっちしたのはヒドイン(笑)ちゃんです。諸悪の根源です。


エノテラくんには、防波堤として頑張ってもらいたいものですねー。物理も可。

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