315話目
まずは感想ありがとうございます(^^)
少し気にさせてしまったようなので、作中で頑張ってアンサー的なのぶっ込んでみました。そしたら、何か違う物になりました。私のよくなるやつです←
「ジルちゃん、優し過ぎるわ。そんな短慮な馬鹿なんて、気にかけなくても良いのよ?」
ため息組から代表するようにアシュレーお姉さんが口を開くと、艶やかな微笑みと共にエノテラへの口撃が始まり。
エジリンさんは苦笑いながらも相棒を諌めたりはしないので、同意見なんだろう。
主様は…………無言でぽやぽやして、俺の頭を撫でている。アニマルセラピーか?
「エジリンさん。冒険者ギルドとしては、こういう時の罰則ってどうなるんですか?」
どうやら俺の『お詫び』は甘過ぎたようなので、エジリンさんへお伺いを立ててみる。
「腕を折る……と言いたいところですが、一番重い罰則となると冒険者資格の剥奪ですね。次はランクの降格あたりでしょうか」
意外とお茶目なところもあるエジリンさんに驚いたが、その口から出た罰則の内容に俺はさらに驚くことになる。
「重すぎないですか?」
驚いて目を見張った俺に、エジリンさんは薄く微笑んでエノテラをちらりと見ながら口を開く。
「冒険者同士の喧嘩程度ならここまで重くはなりませんが、彼の場合は無抵抗なジルヴァラくんを勘違いとはいえ、命の危険のある状態まで陥らせていますから、当然かと」
エジリンさんの言葉に、エノテラの肩がわかりやすく跳ね、その口からは「……やはり腕を切り落とすしか」と不穏な呟きが漏れ聞こえる。
「そ、それは一番重い罰則の時ですよね! 俺がこき使うってことで、なるべく穏便に……」
「本来なら、組織の秩序を守るためにも重い罰則としたいところですが、被害者であるジルヴァラくんが訴え出ていませんし、目撃者もいないため彼の蛮行は広まっていません。今回だけはジルヴァラくんに免じて、冒険者ギルドからの罰則は、ジルヴァラくんの依頼の手伝いを無償で行うこととします」
相当譲歩してくれてるのかカチャと眼鏡を上げるエジリンさんの表情はかなり苛立たしげで普段より険しく見える。
真面目なエジリンさんとしては、エノテラのことが許せないのかもしれない。
傍目には『何の落ち度もない幼児を突然殴った男』でしかないもんな。
傍目じゃなくてもそうだという突っ込みは俺の脳内には現れず、俺は一人で納得して頷いていて、エジリンさんがしれっとエノテラを無報酬にしていたことに気付けなかった。
反省しきりのエノテラを連れて、エジリンさんとアシュレーお姉さんが帰ってからも、主様はどことなく不機嫌そうにぽやぽやしていて。
「主様?」
名前を呼んでも俺の方を見ない。
少し一人になりたいのかと離れようとしてみたが、それは駄目らしく背後からギュッと抱き込まれて、離れられなかった。
「主様、なんで怒ってるんだ?」
考えてもわからないので、直接訊ねてみたが、返ってきたのは首筋への甘噛みだ。
これも痛くはないが、何も知らない人から見たら見た目的にはかなりホラーかもしれない。
テーミアスはまた頑張って尻尾でバシバシしてくれてるが、相変わらずノーダメージのようだ。
でも、主様は超がつく美人さんだから、吸血鬼的な存在だと思われるかもしれないな。
というか、異世界なんだから普通に吸血鬼いるのか? だとしたら……。
「主様って、吸血鬼なのか?」
「違います」
食い気味に否定された。違うらしい。
そもそも吸血鬼って、俺の知ってる吸血鬼と同じなのか?
いや、もしかしたら、吸血鬼はこの世界だと普通の人枠に──……。
「……主様、がじがじすんなよ。くすぐったいって」
珍しくシリアスなことを考えようとして俺の思考を遮るように、主様の首筋への甘噛みが再開され、ぴぃぎゃーっ! とテーミアスも激おこ状態で俺の耳元辺りがカオスだ。
不機嫌な主様を撫で撫でし、テーミアスをなだめて落ち着かせる頃には、何を考えていたかなんて、すっかり忘れてかけてしまい……。
そこへさらに、
「ジル! お見舞いに来たよ!」
「ジル! オレもいるからな!」
なんて、賑やかに現れたイオとナハト様により、完全に忘れ去られてしまうのだった。
●
主様が不機嫌だった理由、思いがけずイオとナハト様のおかげで分かったかもしれない。
「なんで怒らないんだよ! ジル、死にかけたんだぞ!?」
「ジルの馬鹿! あたしが代わりに殴っちゃうもん!」
怪我の理由を説明し、その相手が謝りに来てくれて和解したことをへらっと笑いながら伝えたら、二人は怒りで顔を真っ赤にして怒り出してしまったのだ。
ぷんぷんという擬音がつきそうな怒りっぷりで詰め寄られ、俺は二人を連れてきてくれたフシロ団長へ助けを求めて視線を向ける。
「……ジルヴァラ、俺が怒ってないと思ってるのか?」
しかし、返ってきたのはいつもの優しい笑顔ではなく怒気の滲む表情で、ついでにそんな言葉までついてきてしまった。
「え……」
突き放すようなフシロ団長の言葉と表情に、そんな弱々しい声が出てしまう。
俺は思ったよりフシロ団長に甘えていたのかもしれない。
フシロ団長なら苦笑いしながらも、俺の味方をしてくれると思い込んでいた。
「……っ」
唇をギュッと噛み締めるが、幼児な『俺』は懐いていた相手から突き放されたことが相当堪えたらしく、視界が歪む。
「な……っ、おい、ジルヴァラ!」
「ジル泣かないで……っ」
「父上がジル泣かせた!」
途端にぎょっとした様子でフシロ団長が何かを言いかけていたが、俺につられてイオも泣きそうになり、ナハト様がぷち切れてフシロ団長をぽかぽか殴り始め、室内はカオスだ。
「──ロコを、泣かせたな」
そこに俺をソファに置いてゆらりと立ち上がった主様も参戦するようで、さらなるカオスの予感もしたが、その前に俺はフシロ団長ではない腕に抱えられて、しぱしぱと瞬きを繰り返して腕の持ち主を見つめる。
「あらあら、うちの人ったらジルちゃんを泣かせてどうするつもりかしら。……ジルちゃん、泣かないで」
母性あふれる微笑みを浮かべて俺を抱き上げてくれたのは、ノーチェ様だ。フシロ団長だけじゃなかったのかと頭の隅で突っ込みを入れるが、俺はまだ泣いてはいないとはいえ、えぐえぐ状態なのですぐに何処かへ消えていく。
「あの人ったらね、ジルちゃんが犯人を罰しないことにしたのが気に食わないのよ。何故だかわかるかしら?」
ノーチェ様の言葉に視界の端で主様に詰め寄られてアワアワしていたフシロ団長を見ると、苦虫を噛み潰したような表情になってこちらを見ているのに気付く。
「騎士団長として、悪いことした人は許せない……?」
首を傾げて思いついた答えを口にした俺に、ノーチェ様は柔らかく微笑んで優しく湿布の上から頬に触れてくる。
「うふふ。それもあるわね。でも、もっと単純なことなの。ジルちゃんを傷つけた相手が何も罰せられないのがムカついてるのよ、あの人」
「……けど、ちゃんと勘違いだって謝ってくれたんだぜ?」
ノーチェ様に説明されてちょっとグラッと来たが、エノテラの顔が脳裏に浮かんでしまい、つい拗ねたような口調で反論してしまった。
「そう、根はいい人なのね。でもね、ジルちゃん。ジルちゃんはもし幻日様が誰かに傷つけられて、加害者が『勘違いでした、すみません』って謝ってきたら、その人をすぐ許してあげられるかしら?」
そんな俺の内心を見透かしたような微笑みを浮かべたノーチェ様からそんな台詞が出てくる。
そして、その台詞に対する答えは考えるまでもない。
「許して、あげられない……」
「そうよね」
その先をあえてノーチェ様は口にしなかったが、立場を変えて考えれば簡単な話だったのに、元推しと話せた俺は浮かれていたのかもしれない。
「フシロ団長、心配かけてごめんなさい……それと、ありがとう。ナハト様もイオも、怒ってくれてありがと」
ノーチェ様の腕に抱かれたまま、フシロ団長へ、そして同じく怒ってくれていたナハト様とイオへ謝罪と感謝を告げる。
いつものような優しい笑顔を浮かべたフシロ団長が近寄ってきてくれて、俺はノーチェ様の腕からフシロ団長の元へ。
主様だけは未だにちょっと不機嫌そうにぽやぽやしていたが、俺はひとまず懐かしい熊を思い出させるたくましい体にギュッと抱きつくのだった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)
今回の感想も、書き方もお優しいですし、ふむふむそう感じますよねぇ、となって参考になってますので、大変感謝しております。
作中に入れられるか微妙なのですが、ジルヴァラが彼を厳罰にしなかった(出来なかった)理由もきちんと入れたいです。
うちのジルヴァラの根幹みたいな部分の話なので。
更新が空いたのは、ただ単にリアル暑すぎで萌力が低下しただけなので←




