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310話目

感想ありがとうございます!全部反応して返信していきたいところですが、すぐネタバレしちゃう質なのでここでお礼を伝えさせてくださいm(_ _)m




「せっかく時間もあることだし、今日の昼ご飯はうどんにしよう」



 隣をてちてちと歩くプリュイを見てたら、何でかうどんを食べたくなったのもある。

 すっかり心のバイブルとさせてもらっているタロサの料理帳を開いて、手打ちうどん作りを開始する。

 手打ちうどん自体は、小学校時代の家庭科で作っただけだったが、何となく流れは覚えている。

 それをタロサの料理帳を見て補い──プリュイという優秀なお手伝いがいることによって無事にうどんの麺は完成した。

 あまりに簡単に出来てしまい、拍子抜けしそうだったが、ここからこのうどんをどうするかという問題は残ってる。

 茹でたうどんをシンプルにかけうどんにしても良いし、天ぷらを乗せるのもありだ。そのまま冷水で締めて……は寒いから、暑い時期にしよう。

 悩む俺の視界に入ったのは、土鍋猫ならぬ土鍋テーミアス。

 お一人様サイズの土鍋を寝床代わりにすやすやと眠っている。火を使ってるキッチンは暖かいから眠くなったんだろう。

 不思議なことに料理はしないのに料理をする道具が揃っている主様宅のキッチンには、土鍋まであるのだ。しかも、サイズ違いで複数個。

 米があるし、しょう油もある世界だから、そこまでおかしな話ではないだろうが、The洋風なキッチンにあるの土鍋はなかなかの違和感だ。

 しかも、俺が来るまで全て未使用。

 管理はプリュイがきちんとしてくれてたから、どれも新品同様なのでこうして使えてるんだけど。

「土鍋……うどん……煮込むか」

 寒い時には美味しいよな、鍋焼きうどん。ま、俺は夏場にも食べてたけどさ。

「プリュイ、冷蔵庫にエビあったっけ?」

「……ハイ、ありマス」

 鍋焼きうどんにはエビの天ぷらが似合う。というか、俺が入れたい派。

 俺の問いに少し悩んでからプリュイが冷蔵庫から出したのは、活きの良い巨大なザリガニ……? いや、たぶん、オマール海老とかそんな感じのやつだよな? いつもの普通なエビって感じのエビは無かったから、微妙な間があったのか?

 俺が斜め上にずれたことを考えている間も、プリュイはしっかりとエビを触手で捕らえている。

 チャキンチャキンという不穏な音をさせている巨大な鋏が、気のせいでなければプリュイを切ろうと頑張って無駄に終わっているのが見えているので、相当活きの良い……エビ? だ。

「ちなみにそのエビって……」

「イッセーエビといいマス」

「…………ウワァ、美味しそうダナァ」

 思わず片言になったのは許して欲しい。


 イッセーエビ……って、どう考えても伊勢エビ由来の名前だよな? 見た目は巨大なザリガニ寄りなのに。

 こんなネタな名前の食材、ゲームに出て来たかなぁ。料理自体は、ヒロインは料理得意っていう設定だったから、色々させられた記憶はうっすらあるけども。



 俺に捌かせるのはまだ危ないとプリュイが捌いてくれているイッセーエビを眺めて、俺は内心でそんなことを考えていた。

 ちなみにイッセーエビは最期まで勇敢に戦っていたので、せめて美味しく食べてあげようと思う。



「尻尾つけたら大き過ぎるし、一匹しかいないから、一口サイズの天ぷらにするか。あと必要な具は、最後に生卵落とすとして……」

 俺がブツブツと呟くとすぐプリュイが食材を出してくれる。

 かまぼこ……はないから、白菜とネギ、それに人参も彩りに入れておこう。

「かまボコ……」

 かまぼこが無かったため、プリュイは少し残念そうだ。今度買い物リストに増えてるかもしれない。

「エビ天あるから十分だって。……これ、頼めるか」

 しゅんとしていたプリュイに、衣が入ったボウルを渡して、一口サイズにしたイッセーエビを指差す。

「天ぷらデスね。頑張りマス」

 魔法人形の性なのか、仕事をお願いするとしゅんとしていたプリュイの表情はパァッと明るくなる。

 俺の渡した衣入りのボウルを手に、いそいそと油の準備を始めていく。

 そんな微笑ましい様子を見送ってから、俺の方も具材の準備をしていく。

 うどんの方はプリュイ(触手)が同時進行で茹でてくれているので、茹で上がったら鍋へ入れて作っておいたつゆ入れて具を入れて、最後に卵をポトンと落として煮込むだけだ。

 俺はうどんがグズグズになるぐらいまでしっかり煮込むのが好みだ。もちろん異論は認める。

 ここは作る人の特権ということで、今日は俺好みの煮込みうどんにさせてもらう。

 今回食べてもらってみて、主様の好みと違うようなら主様のはそのように作ればいい。

「ジル、天ぷら揚がリまシタ」

「ありがと! じゃあ、あとは合体させてコトコト煮込むだけだから」

 俺とプリュイのは普通の一人用土鍋。主様用には所謂家庭で鍋する時に使うような大きめの土鍋で鍋焼きうどんを仕立てて煮込んでいく。

 付け合わせに白菜余ったから、塩揉みして漬物っぽくして出しておくかと作業を始めた俺の耳に、テーミアスの叫び声が届く。

「びゃあー!」

 何なんだお前ー! と荒ぶってる様子に、俺は首を傾げてテーミアスの寝ていた方を見やる。

 確か土鍋にすっぽり嵌まって寝ていたはずだけど。

 天然系なラノベ主人公みたいに、テーミアスの入ってた土鍋を煮込んじゃったみたいなこともしでかしてはいないし。

「どうかした…………あー、イッセーエビか」

 テーミアスを見やった俺は、状況を見て納得の声を洩らす。

 プリュイへ勇敢に立ち向かって捌かれたイッセーエビ。その上半身部分の扱いに困ったので、とりあえず調理台の上へ放置していたのだが、それがテーミアスの寝ていた近くだったのだ。

 起きた瞬間、自分とそう変わらないサイズの見慣れない生き物を見れば、びっくりしてしまうのは仕方ないよな。

「ごめん、驚かせたよな」

 ボフッと膨らんでいるテーミアスへ声をかけると、ハッとした様子で俺の肩へと飛んで来て、

「ぴゃっ! ぢゅぢゅ……っ」

と、ちょっとびっくりしただけだし! と何でも無いアピールをしながらも、落ち着くためか全身の毛繕いを始める。

「…………夜に味噌汁でもするか。あ、味噌ないのか。じゃあ、潮汁的な雰囲気で汁物だな」

 テーミアスの毛繕いを眺めながら、俺は勇敢に戦ったイッセーエビの行く末を決めて、そっと冷蔵庫へとしまった。

「ジル、うどん良イ感ジデス」

「おう。じゃあ、俺は主様呼んでくるから、プリュイは出来たのいつものところまで運んでいてもらえるか?」

「ハイ。うどんハ鍋のママデ良いデスか?」

「あぁ。あ、鍋敷き……えぇと、なければ何か熱い物置いても大丈夫な何かをテーブルに置いて、そこに土鍋置いてくれ」

 鍋焼きうどんを食べるための食器は用意していたが、土鍋をテーブルに置く際必要となる存在を忘れていた俺は、鍋敷きないかと代替案と共にプリュイへお願いしてから主様の元へ向かう。




 その道中、はたと俺が思い出したのは、以前主様としていた約束だ。



「うどん……箸使い慣れてからって話してたよな、確か……」



 ここ数日の主様の食事風景を思い出してみる。

 とりあえず思い出せたのは、嬉々として俺へと食べさせる姿だ。



「…………まぁ、最悪フォークで食べてもらえば良いか」



 もう作ってしまったから、今さらどうにもならない。

 フォークでも駄目なら、麺を短く切ってスプーンで食べてもらおう。



「ぢゅぃ、ぢゅっぢゅぢゅ」


「あはは、いくら主様でも、鍋焼きうどん手で食べたら火傷するって」



 あいつなら素手で食べられるだろ、なんていうテーミアスのとんでも発言を笑って流しながら、俺は主様の部屋へと向かうのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


鍋焼きうどん美味しいですよね(^^)真夏でも食べたくなって、私は冷凍のやつ食べてます(*´Д`)


イッセーエビに関しては、深く考えずぶっ込んだネタです。深い意味や伏線なんてないですよー。

まぁ、せいぜい昔転移者か転生者が他にもいたんだなぁという匂わせぐらい?

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