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32話目

今回少し短めです。


徐々に染み出してくるするめみたいな主様の狂気←

「ちょっと食べ過ぎたかも……」

 ほぼ一口ずつとはいえ、大きめのバスケットに入っていたパンを空にしたからには、結構な量になったのかもしれない。

 ソファにぐでっと仰向けで転がり、ちょっとぽこんとしてしまった幼児体型なお腹をさすっていると、心配そうに覗き込んできた主様が一緒になってお腹をさすってくれる。

「大丈夫ですか?」

「おう、大丈夫。美味しすぎて食べ過ぎただけだから」

 へらっと笑って主様のさせたいようにさせていると、上着がまくられて主様のひやりとした手が素肌に触れる。

「今日、お風呂はどうしますか? ロコの服はロコの部屋のクローゼットにありますが……」

「俺は一休みしてから入るよ。主様が先に入ってくれ。包帯は自分で替えられるから。それとも、あとで一緒に入るか?」

 素肌を這う手のくすぐったさに身をよじりながらそう答えると、素肌に触れていた手が離れていく。

 たぶん、着替えさせて包帯を替えてくれるつもりだったんだろう。前もそうだったけど、無言でやられるとビックリするのでやめて欲しい。

「私はもうシャワー浴びたので……」

「そっか。俺結構な時間寝てたもんな」

 するりと肌を撫でていた手を抜いて、どこか残念そうにポツリと答えた主様は、そのまま俺の隣へ座って今度は再び服の上からお腹を撫でてくれる。

「それ、なんか、ねむくなりそう……」

 『手当て』という言葉があるぐらいだから、人の手には何かしらの不思議な力があると思う。眠らないようにしないといけないなと、そんなことをつらつら考えているうちに、結局俺は眠ってしまったらしい。




 目が覚めたのは、また主様のベッドの上だった。

 今度は主様も隣ですやすやと眠っている。相変わらず寝顔も完璧な美しさだ。一度もよだれ垂れてたとか白目剥いてたとか口開いてたとか見たことない。

 夜目の効かない俺のためにと、主様が用意してくれた常夜灯のぼんやりとした光が照らす部屋の中、体を起こしてチラリと時計を見る。

 ギリギリまだ今日の内だ。そう言い訳のように脳内で呟く。

 やっぱり眠る前にはお風呂に入ってスッキリしたい派な俺は、主様が眠ってるのを確認してそろりそろりと主様の寝室を抜け出す。

 向かう先は着替えの置いてある俺の部屋。

「……クローゼットに入れるほど、服持ってないよな、俺」

 今さらながら主様の先ほどの台詞の違和感に首を捻りつつ、俺は自分の部屋の扉を開ける。

 クローゼットってこれか、と部屋に入って見つけたクローゼットの扉を何とか開くと、そこにはハンガーにかけられた俺がいつも着てるような服が何着もあって、しばし固まる。

 しばらくして、ぎぎぎと視線を下へとずらす。

 そこには小さめなタンスがあり、引き出しを開けると、俺サイズの下着がびっしり入っていた。

 とりあえずクローゼットは見なかったことにして、俺はいつの間にか洗濯してもらってあった服と下着を持って、お風呂へと向かった。

 今回は主様の乱入もなく、無事に入浴を終えた俺は、お湯を落として使い終わった浴室をザッと掃除しておく。

 湯冷めする前にと、髪を拭きながら廊下を歩き始めた俺は、そこではたとどちらへ行くべきか悩む。

 抜け出して来たからには主様の寝室へ行って、あの安心できる寝床へ戻るが筋だろうが、なんか微妙に気恥ずかしい。

 幼子が夜眠れなくて親のベッドへ潜り込む。

 そんな情景が脳裏に浮かんでしまい、俺はしばらく悩んだ後、自分の部屋へ戻ることを選ぶ。

 どうせ朝は俺の方が早いだろうし、主様は一度寝たら朝まで起きることはない……はず。

「ふぁ……」

 欠伸を噛み殺し、俺は自室の扉を開けて室内へと入る。

 主様によると、魔法で部屋の温度は調節されているらしいが、人気のない一人の部屋は何処となく肌寒く感じてしまう。

 ふるりと小さく身震いした俺は、少し短くなった髪の水気をしっかり拭き取って乾かしてから、ふかふかのベッドへ飛び込む。

 多少生乾きなのは見逃して欲しい。

「そういえば、久しぶりの独り寝だ……」

 夜の闇の中、一人呟いて苦笑いする。

 前世ではずっと独り寝だった気はするが、生まれ変わってからはずっともふもふな家族達とまとまって寝てたし、メイナさん宅ではメイナさんが隣のベッドで寝てくれていた。

 主様にくっついて旅を始めてからは、主様のテントへお邪魔して寝てたから、ほぼ主様と共寝だった。

 誰の寝息も聞こえない夜は、とても静かだ。

 外を車が通る音がしたり、酔っぱらいが騒ぐ声も聞こえない。

 少ししんみりしそうになり、ゆるく頭を振った俺は、目を閉じて深い眠りへと落ちていった。




 眠りが浅くなったのは、首の辺りにひやりと何かが触れた気がしたから。

 その何かは、俺の首を締めるかのようにゆるく巻き付いてくる。

 違和感からぼんやりと開いた目に映ったのは、俺を見下ろす綺麗な夕陽色と宝石のような美しい瞳だ。

「ぬしさま……?」

 首に触れていたのは主様の手だったのかと安心して、俺はふにゃふにゃ笑って再び目を閉じる。

 眠りに落ちる寸前、誰かがため息を吐いて体が浮遊感に包まれるが、安心しきっていた俺は朝までそのまま目が覚めることはなかった。

 目覚ましいらずで、ぱちりと目を開けた俺は、ベッドの上で体を起こしてグーッと伸びをする。

「んー、よく寝たー」

 欠伸を噛み殺しながら、ベッドを降りて洗面所へ向かおうとした俺は、数歩進んだ所で、あれ? と首を傾げる。

 振り返ってベッドを確認すると、昨夜とほぼ同じ体勢のまま主様が眠っている。相変わらず寝顔も完璧以下略だ。

 主様の寝顔はさておき、どう見てもここは主様の部屋だ。本人が寝てるんだから、何言ってるんだって話だが、俺はお風呂へ入った後、自室で眠ったはずだ。

 きちんと着替えてもいるし、髪とかサッパリしてるから夢オチってことはない。

「夜中に戻ってきちゃったのか、俺」

 記憶を辿るが全く思い出せない。

 まぁどうでもいいか、とすぐ思い直した俺は洗面所へ向かう。

 無意識に何度も首に触れてしまうのは、妙な夢を見たせいかもしれない。

 洗面所の鏡で確認したが、特に首になにか傷とか跡があるとか、そんなことはなく。

 しばらく違和感を感じていたが、主様を起こさないと朝食が作れない事に気づいてしまい、すぐにどうでも良くなってしまった。



「今日は踏み台買いに行きたいって頼んでみるか」



 そんな予定を立てつつ、俺は主様を起こすため主様の寝室へ向かって歩き出した。

いつもありがとうございますm(_ _)m


反応あると小躍りして喜んでます(ノ´∀`*)


そしてジルヴァラ。危機感は何処に忘れてきたんでしょう。


皆さんわかってくださってるとは思いますが、主様は首に巻くあれのサイズを測ってます(え?)

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