301話目
冬山の定番ですよねー。
ちなみにもう少し育った時にやると、確実にアハンウフンな展開となります←
そして、さすがに自宅の外での全裸は主様でも抵抗あったようです。
自宅なら全裸でやってます!(謎の報告)
「さむい……」
目が覚めて、ドリドル先生から何があったか問われたのはわかったが、俺自身何が起きたか思い出せず、口から出たのは体からの無意識の訴えだ。
毛布で包んでもらっているが、素肌が触れている感覚があるのでどうやら俺は裸らしい。
「ロコを返してください」
「…………いつの間に脱いだんですか」
ドリドル先生が脱がせたんじゃ? と反射的に脳内で突っ込んだ俺は、主様の方を見て納得する。
主様が何故かわからないが、いつの間にかローブを脱いで上半身裸になっていた。
フシロ団長がお風呂って言ってた気もするから、フライングしたんだろうかとボーッとしていると、主様は呆れた様子のドリドル先生の腕から俺を奪う。
そのまま一度俺の毛布を剥いで、自分ごと毛布で俺を包むようにしてギュッと抱きしめてくれる主様。
そこでやっと、冬山遭難の定番の『人肌で温め合うんだ』ってやつをしてくれるつもりなんだと気付く。
「ありがと、ぬしさま。あったかいよ」
でも、ここにはドリドル先生しかいなかったから良いものの、主様の肌を誰かに見られるかもしれないと思ったら何かムカムカする。
ムカムカしたおかげか、ちょっと意識がはっきりしてきた俺は、主様の素肌にピタリと頬を寄せながら、記憶を辿る。
「…………主様がここに運んでくれたのか?」
「はい」
昨日みたいに地下室で作業してて寒すぎて倒れたんだっけ? と予想してみたが、何かしっくりこない。あと、顔が痛い。
すりすりと主様の胸元へ頬を寄せる度に、ズキズキと痛みが走るのだ。主様の玉の肌に触れて痛いなんてことはないから、俺の方の問題だろう。
主様も俺の動きで何か気付いたのか、ハッとしたように目を見張ると、手を伸ばして来て唐突に顎を掴まれる。
「……ロコ。これは?」
主様の人肌でせっかく温まってきた体が冷えそうなひやりとした主様の声音に、ドリドル先生も近づいてきて俺の顔を覗き込む。
「殴られた跡のようですね。ジルヴァラ、口を開けなさい」
有無を言わせないドリドル先生からの指示に、俺は主様に顎を掴まれたままおずおずと口を開ける。
「歯が欠けたりはしてないですが、口の端が切れてますし、これはたぶん青くなってしまいますね」
「…………ロコ?」
誰にやられた? と言わんばかりにゼロ距離で主様が見つめて来るが、生憎というか幸いというか、記憶は曖昧だ。
おかげで主様に嘘を吐くことなく、わからないと首を傾げて見つめるだけで済むから。
そう思っていると伏兵が現れる。勢いよく飛びついて来たテーミアスだ。
俺が裸なせいでいつものように着地出来なかったらしく、わたわたと俺の首にしがみつく。
爪を立てないでいてくれる気遣いはさすがだが、もふもふが首筋を擽るくすぐったさで身悶えをしてしまい、慌てた主様からの拘束が強まる。
「ふは……っ、もう止めろよな」
何とか落ち着いたテーミアスを両手でもふもふしていると、何か溜め込んでいたのか、一気に喋り始める。
ぢゅぢゅ、ぴゃー、ぢゅぢゅっと大忙しなお喋りにうんうんと頷いて、テーミアスからの説明で俺は──自身に何が起きたかを思い出してしまった。
「……思い出せましたか?」
俺の表情の変化を見て取ったドリドル先生からすかさず優しく、だが有無を言わせない問いかけをされ、俺は咄嗟にぶんぶんと首を横に振る。
「心配しなくても、加害者から報復なんてことはありません。騎士団をあげて守りますから」
余りに怯えたように見えてしまったのか、チクりやがったなこの野郎的な心配をしてると思ったらしいドリドル先生から、そんな言葉をかけられる。
あと、主様は無言のままガンギマリな目でずっと見てきているので、チクりやがったこの野郎的な心配より、相手が消滅する心配の方が先かもしれない。
「びゃっ!? ぢゅぢゅっ! ぢゅーっ!」
さらにテーミアスがブチギレてる。
覚えてない訳ないだろ、あいつぶっ殺しに行くぞ! と可愛い見た目に反して、言ってることはかなり物騒だ。
これはテーミアスからバレそうなので、とりあえずもふもふして暖を取るためにお腹へ抱え込ませてもらう。
「あったかいなぁ……」
どう誤魔化すか……別にちょっと殴られたぐらいなだけなんだから、誤魔化さなくても良いかな。
俺がドジって水に落ちちゃったって言えば……。
「ロコ?」
「ジルヴァラ?」
「ぢゅう?」
三者三様な呼びかけは聞こえてるが、溺れかけたせいか体力の消耗が激しい。
瞼を持ち上げたいのだが、錘でもつけられたかのように上がらない。
それでも何かを言わないと、そう思って口を開いた俺だったが……、
「みゃぁ……」
ちゃんと口から出たか、そもそも何を言う気だったかは定かではない。
●
[視点変更]
「子猫……」
何を言いたかったの謎のまま、そんな可愛らしい鳴き声のような一声を最後に、ジルヴァラは疲れ切った様子でまた意識を失ってしまった。
先ほどとは違い、ただ眠っただけなので私は焦る事はしない。
ただジルヴァラを食い入るように見つめているあの方に、一抹の不安を覚える。
懐いてくる子供を保護欲から溺愛しているというには、その妖しい輝きの瞳に浮かぶ色は──。
そこまで考えて、私が心配しなくともジルヴァラなら大丈夫かと、余計なお世話でしかない考えは忘れることにする。
そんな事より、今はきちんと何があったか聞き取りをしておかなければならない。
ジルヴァラはあぁなったら話さないだろう。
ジルヴァラを抱いてぽやぽやしてる方は戦力外だ。たぶん、ジルヴァラにしか興味がない。
だとしたら、話を聞くとしたら『彼』だ。
ジルヴァラが眠ってしまったので拘束する手が緩んだのか、もふもふと揉まれていた小動物が毛布の隙間から這い出てくる。
その正体はテーミアスという幻の獣らしいが、ジルヴァラに懐いてくっついている姿は、可愛いの二乗という感じだ。
「それで、ジルヴァラは誤魔化していましたが、ジルヴァラは誰かに殴られたのですね?」
ジルヴァラを抱き込んで毛布の塊となっているあの方を視界の端に捉えたまま、シーツの上にいるテーミアスへ問いかけると、その通りとばかりにたしっと前足を挙げてみせる。
やはりテーミアスの言葉は私にはわからないが、テーミアスは私達の言葉を理解している。
「ジルヴァラを殴った相手は、あなたも知っている人物でしたか?」
通りすがりに絡まれた可能性もあるが、わざわざこんな幼い子に手を出すなど、恨みからの犯行の可能性が高い。
となると、恨みの元は十中八九ジルヴァラを抱きしめて温めるのに集中しているあの方だろう。
そう考えての質問だったが、テーミアスは可愛らしく首を傾げ、前足をぶんぶんとしながら何かを訴えてくる。
「あなたは顔を知っていた?」
すぐさま前足がたしっと挙がる。
「ジルヴァラも知っている相手でしたか?」
また、たしっと挙げられる前足。
「ジルヴァラは相手の名前を呼びましたか?」
前足は挙がらず、ふるふると首を横に振る。本当に賢い。
「性別は、男ですか?」
またまた、たしっと勢いよく前足が挙がり、怒りを思い出したのか尻尾がぼふっと膨れる。
「ジルヴァラが名前を知らない程度の顔見知りの男、ですか」
冒険者活動をしてることもあって、条件に合う人物は複数出て来そうだが、さすがに殴った後に冷たい水へ放り込む程の恨みを持った人間ならすぐ見つかるだろう。
罰するかなど私には権限がないが、ジルヴァラをこんな目に遭わせた相手にはきちんと『注意』をして差し上げないといけない。
「…………おや」
冷静なつもりでいたが、思った以上に自分はムカついていたようだと気付いた私は、毛布に包まれていて今は頭の先しか見えないジルヴァラのそこをそっと撫でる。
あの方が毛を逆立てそうな表情で触るなと睨んできているのは、軽く無視して。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)
テーミアスとドリドル先生の交流、書いててほのぼのしました。
あれ?となるドリドル先生。主様の執着に違和感を抱き始めてますが、ジルヴァラなら大丈夫でしょうと結論が出たようです←
あと、ドリドル先生、戦えはしないですが、お説教怖そうですよねぇ。




