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295話目

クッション用のほのぼの? 回です。


トイレって何回書いたか……。



「なぁ、プリュイ。主様、昨日の夜、暖炉の近くでうたた寝でもしてたか?」

 プリュイと一緒に朝ご飯の準備をしながら、俺はふと思い出したので夢うつつで感じた気のする違和感の話を振ってみる。

 ほぼ眠らないプリュイなら、主様の行動を見ているかもしれないと思ったのだ。

 深く考えず口にした俺の問いに、プリュイのぷるぷるボディが大きくふるっと震える。


「……何故デスか?」


 やけにシリアスな感じの反応が返ってきてしまい、俺はおやと内心で呟きながら首を横に振ってへらっと笑ってみせる。

「大したことじゃないけど、夢うつつで焦げ臭かった気がしたから、暖炉の前で寝ちゃったのかと思っただけ」

 嘘偽り誤魔化しではなく、実際そう思っただけだと俺が笑顔で答えると、プリュイは安堵した様子でまたふるりと震える。

「カモしれマセん」

「……そっか。風邪ひかないと良いけどな」

 口にしてみてから、あの主様が風邪をひくとは思えなくて、くすくすと笑う。

 俺の肩の上で尻尾をたしたしとしながらテーミアスも笑ってるから、同じことを思ったんだろう。




 主様が焦げ臭くなるような『何か』をしたなんて、俺は気付かなかったことにしておこう。

 きっと、プリュイはそれを俺に知られたくないのだから。

 怪我をしたことで主様の過保護スイッチが入ってしまったのか、朝ご飯を食べる際も……というか、起こした直後から主様の様子が少しおかしい。

 冬の盛りは過ぎたが、まだ肌寒い時期なので、意外と寒がりな主様がくっつきたがるのはわかるが、今日は度を越している。

 完全にひっつき虫と化していて、常に俺の後ろをついて歩き、焦れったくなったのか結局抱えられてしまったので、俺は主様を移動手段として室内を移動することにする。



「いや、ここはついてくるなよ?」



 トイレの中までついて来ようとしたので、かなり本気で拒否してやっと一人でトイレへ入らせてもらえた。

「ぢゅっ」

 大変だなと他人事のように鳴いたテーミアスを指先で軽く小突いて、俺はへらっと笑っておく。

 もちろん用を足した後、しっかり手を洗ってから小突いたことは言うまでもない。



「…………何故その毛の塊は一緒に入っても良いんですか」



「えぇと……」



 トイレ前で出待ちしていた主様がテーミアスの存在に気付き、じとっとした眼差しで文句を言われたことも言うまでもない……。



「ぢぢぢっ」



 やらしい目で見るからだろと主様へ的外れな煽りをするテーミアスを、もふもふしておとなしくさせた俺は、未だにじとっとして見つめてくる主様にため息を吐く。

 トイレに関しては折れられないので、このまましばらくスルーしておくしかない。

 そのうち忘れてくれるかもしれないし。



 そう楽観視していた俺は、生物である限りトイレは数時間に一回は行くという当たり前なことを忘れていた。



 数時間後、またトイレに行きたくなり、トイレへ向かう俺。当然のようについてくる主様。

 そして、先ほどと同じやり取りを繰り返すことになるのだが、今度はなかなか主様が諦めない。

「先ほど一緒に入ってました」

 そう言って主様が見ているのは、俺の肩の上でドヤッとしているテーミアスだ。

 正直、連れションという文化もあるので男同士ならトイレに連れ立って行くのもおかしくは……と思いかけてしまったが、普通に恥ずかしい。あと物理的に狭い。


「ずるいです」


 主様はまだ諦めない。しょうがないので俺は──。



「プリュイ、ちょうど良かった! よろしく」



「ぢゅっ!?」



 テーミアスを鷲掴みして通りがかったプリュイへ預け、一人でさっさとトイレへ入ることにした。

 これで文句は無いだろう。色々限界だったので、テーミアスの文句は聞こえなかったことにする。



 幼児に用を足させる体勢とか、誰か主様に教えたりしないよな? とちょっとした不安を覚えつつ、俺はゆっくりとトイレから出た。

 トイレ前で待っている主様は少し不満そうにぽやぽやとしていたが、今度はテーミアスを置いて入ったので、テーミアスへ言いがかりをつけたりはしなかった。

 そんな主様はすかさず俺を抱き上げ、俺の肩の上へ舞い戻って毛繕いをしながら不服を述べているテーミアスへ、横目で視線をやって何かドヤッとしている気がする。

「ぢゅっぢゅっ!」

 元から入れてもらえなかったお前と一緒にするなとテーミアスが尻尾ぶんぶんで応戦したので、また俺がもふもふしてなだめていると、


「ちっ」


という舌打ちみたいな音が主様の方から聞こえてくる。

 え? と主様の方を見たが、相変わらずぽやぽやとしていて、俺と目が合うと不思議そうに首を傾げている。

 こんなあどけない仕草の出来る主様が舌打ちなんてする訳ないから、俺の聞き間違いだろう。

「そうだ、お前もたまには森に帰らないと行けないだろうから、明日は冒険者ギルドへ行って、適当な依頼を受けようか」

 主様へやんのかこらぁとやってるテーミアスを両手でもふもふして、気をそらすためにそんな話題を口にしてみたのだが、これは思いの外良い考えかもしれない。

 俺のやっていた採集依頼は思いがけず多くの人を助けていたみたいだし、ガッツリ採集依頼をこなすのも良いだろう。

 まぁ、どんな依頼でもやりがいがあるなら構わないけど。

「ぢゅっ!」

 付き合ってやるぜ! と男前に応えてくれたテーミアスは、愛らしい仕草で俺の頬へすりすりと顔を寄せてくる。



「…………毛の塊風情が」



 主様が何かボソッと呟いたのはわかったが、テーミアスをもふもふするのに夢中だった俺には内容までは聞き取れなかった。

 特に言い直すことも、俺の名前が呼ばれる様子もないので、独り言で「可愛い」とか言ったのかもしれない。

 性格と行動は男前だが、テーミアスの見た目は最強に可愛いもふもふだからな。




 トイレついてくる問題という情けない問題以外は平和な一日を過ごした俺は、次の日宣言通りテーミアスを連れて冒険者ギルドへ訪れていたのだが──。




「あのじじ……おじいさん、あたしをいじめるの……。怖いからもうあたしは行きたくないの! どうしてもって言うなら、もう一人の特例冒険者に頼んで……っ!」




 そんなことを受付カウンターでハラハラと涙を流しながらネペンテスさんに訴えるヒロインちゃんと遭遇し、そっと近づいて来たエジリンさんによって保護された俺だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*^^*)


ちなみに、王都までの旅路で野営してる時とか、普通に連れ立ってトイレ行ってました。ソルドさんとか、ソルドさんとか、ソルドさんとか、こっそりとソーサラさんとか。


その頃は、主様あんまりジルヴァラに興味無かったので……今ならきっと一騒動ですねー。


そして、300話目を目の前にこのストーリー展開にしてしまったので、主様不在の300話になっちゃうかも(*ノω・*)テヘ


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