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幕の外 5−1

まずは感想ありがとうございます!待てができませんでした(*ノω・*)テヘ

たぶんお茶会の会場の外で、ずっと見ながらソワソワしてました。


そして、お茶会編が一段落したので、ジルヴァラ側(幕)の外の様子をチラッと。


ヒロインちゃんにイラッとしたら、遠慮なく後頭部を張り倒してあげてください。


長くなったので2話に分けました。こちらは1話目です。



「うふふ! 今回はちゃんとお茶会の招待状が来たわ!」

 前回のお茶会は好感度かフラグが足りなかったのか呼ばれなかったけど、今回はきちんとあたし宛に招待状が届いた。

 あたしがそれを抱えて小躍りしていると、専属メイドのプーペがキラキラとした眼差しでこちらを見つめていて、一緒になって喜んでくれた。

「良かったですね、スリジエお嬢様。ドレスはどのドレスにいたしましょう?」

「そうね、大人っぽく見えるのが良いわ」

 あたしが笑顔でこう答えておけば、プーペはあたしの望みを確実に叶えてくれるというのは、今までの経験でわかっている。

 プーペはあたしの事が大好きだから。




 でも、さすがのプーペでも、あたしのための従者の用意は無理だったみたい。

「あの、スリジエお嬢様、今の方は何が駄目でしたか?」

 しゅんとしたプーペが話しかけてくるが、あたしとしては何でわからないのと言いたいぐらい。

 プーペが連れてきたのは、何処かの何とかっていう大店の息子らしかったけど……。



「か……目が気に入らないわ。あたしを変な目で見てたのよ!」



 思わず顔と言いかけてしまったけど、何とか上手く誤魔化せた。

 あたしの事が大好きで疑わないプーペは、あたしの言葉を聞いた瞬間眉を吊り上げて、さっきまでは『今の方』と敬意を示していた相手への嫌悪を露わにしている。



 同じ感じのやり取りを数度繰り返したが、プーペは一度もあたしの言葉を疑う事はなかった。

「スリジエお嬢様はお可愛らしいので仕方ないです」

 それどころか、そんな台詞で慰めてくれる。

 結局、プーペが用意した従者候補を全部拒否してしまったが、プーペは特に怒ったりはしない。

 プーペはあたしが大好きだから。

 ただ、お茶会へ連れて行く従者が見つからず困ったプーペは、


「……私が付き添うしかないでしょうか」


 ポツリとそんな事を言い出した。

 

 それは困る。


 あたしみたいに可愛い子には、格好良い従者が当然必要なんだから。

 それこそ、グラが嫉妬しちゃうぐらい……。

 

「あっ!」


 嫉妬で思いついた良い考えに、あたしは思わず声を上げる。

 彼に頼めば、きっとあたしの従者をしてくれるだろうし、グラを嫉妬させつつ、その彼も嫉妬してくれるだろう。

 それに、もしかしたらあの『イベント』が発生するかもしれない。

 そうなった時のためにも彼が適任だ。


「んふふっ」


 楽しいお茶会の光景を想像して笑うあたしを、プーペは自分の事のように嬉しそうに笑ってくれていた。


「……同年代を集めたお茶会なんだろう? 俺は悪目立ちしないか?」

 あたしのお願いに、エノテラはそう言って少し困った顔で見て来ていたが、あたしのお願いを断るなんてエノテラに出来る訳ないよね。

「格好良いエノテラを、皆に自慢したいの!」

 この一言で即落ちだった。

 単純な男って可愛いから好きよ。



 恋人にしたいかは微妙だけど。



 本当はマナーも完璧なグロゼイユにお願いしたかったんだけど、無理と断られてしまった。

「可愛い君の隣に立つのはちょっと……」

 なんて、可愛いことを言ってくれたので、今回断った件は許してあげるわ。




 当日、プーペはエノテラを連れて行くという事に少し難色を示したが、あたしが可愛らしく「駄目?」と言ったら許してくれた。

 それで「スリジエお嬢様と歩くなら見苦しい格好はさせられません」と張り切って、エノテラ用の従者の服を用意までしてくれて。

 本当にプーペは素晴らしいメイドよ。



 主役は遅れて登場するのが世の常だから、あたしはまず用事を済ませてからお茶会の会場へ向かうことにしたんだけど……。


 その用事は一人で行きたかったから、エノテラにはお手洗いに行くと言って恥ずかしがると、すぐ一人になれた。

 用事というのは……いるであろうとある人物を探して会うこと! 少し探したら、やっぱりうろうろしていたので、魔法で仮装して発破をかけておく。

 大丈夫だろうけど、念には念を入れないとね。あたしって、慎重なんだから!

 それから、エノテラの所へ戻る。

 心配そうだったけど「エノテラ格好良くて緊張しちゃって……少し休んでたの」と言ったら、すぐ納得してくれた。



 ちなみに狙い通りかなり遅れて現れた可愛らしいあたしに、会場中から視線がバシバシ飛んで来て突き刺さる。

 プーペが磨いてくれたのもあって、ドレスを着たあたしはとんでもなく可愛いから、見惚れちゃうのは仕方ないわ。

 エノテラだって頬を染めて褒めてくれたもの!





 さて、まずはお茶会の主催者に挨拶するのがマナーよね。

 グラは何処かしら?  と視線を巡らせると、ちょうどナハトと話しているところ。

 んー、正直、ゲーム開始時でも幼い感じだったから、今のナハトってかなり子供っぽいから好みじゃないのよねー。

 せめて、その兄のニクスぐらいなら落としてやる気にもなるのに。

 そういえば、ニクスはお茶会に来てないのね。きっと、あたしの言葉を気にして引きこもってるのね!

 あとはタイミングを見て接触して「あなたはあなたよ」って囁やけば、ニクスもあたしにメロメロよ。



 あたしって罪な女と笑いそうになるが、今はグラの攻略が優先ね。

 グラは滅多に会えないんだから!

 せっかく第一王子と接点持ったのに、何か頭が悪いっていうか、悪役な格好良さ無いんだもの!

 それなのに、グラには会わせてくれないし、あたしの言う事を完全に信じてくれる訳じゃないし。というか、理解出来ないってどういうこと?

 まぁ、第一王子はグラより頭が悪いっていう設定なんだから仕方ないよね。

 頭を使う感じのことは、あちらへ話せばいいわ。そうすれば上手くやってくれるでしょ。



 それより今はグラね。


 天真爛漫さと元気の良さで、そこら辺の令嬢とは違いをアピールしていかなきゃ。


「来てあげたわ! グラ!」


 大声で愛称も呼んで、親密さを匂わせるのも忘れちゃ駄目ね。

 エノテラが嫉妬してるのか、背後で何か言ったけど、今日のエノテラは従者なんだから気にしない。

 何せ今日のお茶会には、グラとナハトのルートで悪役令嬢になるミラベルもいるはずなんだから。

 あたしの方がグラと仲良しなところ、しっかりと見せつけるわ。

 学園の同級生でもあるミラベルは、すでにナハトを攻略し始めてるのか、ナハトへ話しかけるとやたらと絡んでくるんだもの。

 グラの方はあたしと仲良しだって悔しがらせたい。

 騎士団長の息子と第二王子なら、第二王子の方が優先度は上よ。

 ナハトは学園でも会えるけど、グラは学園ではなかなか会えないから、今日はしっかり話さないと。

 グラは一度攻略しちゃえば、あとはずーっと一途に病むまで想い続けてくれるから楽なのよね。

 そんな本音を押し隠して、あたしはえへへとグラへ笑いかける。


「あたし、たっくさん冒険したのよ?」


 もちろん話題にするのは、あたしの華麗なる冒険者生活。

 ちょっと嫉妬させるのに、冒険者の先輩達が格好良いのよ! と誉めるのを忘れていない。

 こうするとエノテラの好感度と上がるから、一石二鳥なのよね。

 冒険者好きのグラは目を輝かせて…………あれ? 気のせいかな、あまり喜んでくれてない? あ、あたしの可愛らしいドレス姿のギャップにやられてるのかな? うふふ、年上なのに可愛い! 本命はあの人だけどグラも良いなぁ。

 しょうがない。グラが照れちゃうなら、あたしの方がちょっと積極的に行かないと。そう気合を入れて、あたしはさらなる冒険の話を続ける。



 まだまだ話し足りなかったけど、グラの背後にいる従者が何か耳打ちをして「殿下はお忙しいのです!」と連れて行ってしまった。

 仕方ないので、あたしはもう一人の攻略対象者であるナハトの方へ向かう。

 もちろん、ずっと気付かなかった体をしてよ? 気付いてたのに無視されたなんて知ったら、ナハトが拗ねちゃうわ。




 ナハトに話しかけたら、バレちゃったのか素っ気ない態度をされちゃうけど、誉めたら照れた様子であたしの事を誉め返してくれる。

 うふふ、幼くても男の子よね。

 でもごめんね、年下は好みじゃないの。

 初恋泥棒しちゃったかしらと思いながら、エノテラを自慢することも忘れない。

 欲しいって言われそうだから先手を打ったら、邪魔者…………うふふ、邪魔者だけど良い刺激になる相手が姿を現してくれた。

 見るからに『悪役令嬢』な同級生、ミラベル。

 自分の身分の高さを傘に着て、ヒロイン(あたし)をいじめてくるはずなんだけど、まだ本編開始前な時期なせいか、おとなしいので物足りないのよね。

 突っかかっては来るのだけど、なにか違う。

 ウザい学級委員みたいなの。

 確か、ワガママで高慢ちきなはずなのに。




 怖がってエノテラに甘えると、目に見えてエノテラの表情が緩み、周囲もちらちらと悪役令嬢なミラベルを見ている。

 この反応はどう見てもか弱いあたしの方が被害者だもの、仕方ないわ。



 心の中でドヤッていると、ナハトがミラベルをたしなめてくれている。

 なんだかんだで、ナハトもあたしが好きなのよねー。



 表情に出さないよう気をつけながら、その時を待っていると、ついに待ちに待った声が聞こえてくる。

 ここは正義感の強いヒロインとして先陣をきって行かないと!

 そう思うけど、ナハトも悪役令嬢のミラベルも足が速い。

 あたしは出遅れてしまった……けど、問題はないわ、ここから挽回すればいいもの。



 犯人の絶叫に、モブな参加者達は悲鳴を上げて逃げ出す。

 見物人が減ったのは残念だけど、主役は残っているから、流れとしてはいい流れね。

 本音がボソッと洩れてしまった気もするけど、誤魔化す自信はあるので構わない。



 さぁ、ここからはあたしが主役よ!



 犯人が狂ったようにナイフを振り回してるけど、この世界のヒロインであるあたしに当たるはずなんてないわ。

 ここは可憐にあたしが人質交換を訴えて、グラの好感度を稼ぐ場面なんだから。

 そう思ってグラを確認すると、ナハトと何かを相談している。

 あ、もしかしなくても、あたしや……一応あの悪役令嬢のミラベルを逃がす算段をしてるのね! 危ないからってあたしは逃げたりしないわ! 卑怯な悪役令嬢のミラベルとは違うのよ?


 グラ達に気を取られていたら、悪役令嬢のミラベルなんかに先を越されてしまった。



 悪役令嬢とはいえ、やっぱり好感度欲しいのよね!


 でも、あたしだって、負けないんだから!



 あんなナイフ、あたしを傷つけられるはずなんてないんだから!


 あたしの勇敢さにぽかんとしてるエノテラを置いて、あたしは犯人の前に飛び出す。


 さぁ、そんなモブじゃなくて、あたしを人質にすればいいのよ!

 とんでもない大物出て来ちゃうかもしれないけど!



 楽しい想像に胸を躍らせていたあたしは、不意に腕に走った灼熱感と痛みに、反射的に声を上げてしまう。



 なんで、なんで、なんで、なんで?



 痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!



 なんで、ヒロインのあたしが怪我をしてるの?



 あたしが血を流すなんておかしい!



 喚こうとしたあたしの目の前を、ずっと会いたかった緑色の髪の青年が通って…………痛みに苦しむあたしを無視して、モブを助ける。

 どうして、あたしを助けてくれないの、オズワルド! あたしはここにいるのよ!?




 あ、そうよ、あたしはまだオズワルドに会えてないもの!  会えてたら、オズワルドは誰よりも早くあたしを助けてくれて、優しく抱きとめてくれるの!



 今はエノテラで我慢するわ……そう思ったあたしは、無言で近寄って来た相手に思い切り突き飛ばされ、地面を転がされて、呆然とすることになるなんて……。




 何でなのよ!

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(*^^*)反応いただけると嬉しいです\(^o^)/


ヒロインちゃん、自分で書いてて、あんたねぇ、と本気で言いたくなる←

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