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281話目

捕獲したら離しません。

「さぁさぁ、食べましょ。ここ、ケーキも美味しいけど、ご飯も美味しいのよ」


 そう言ってアシュレーお姉さんが買ってきてくれたのは、俺がウーバーイーツな依頼で訪れたことのあるあのカフェのご飯だった。

 ケーキも美味しそうなカフェだったけど、サンドイッチやバケットサンドもアシュレーお姉さんの言葉通り美味しかった。

 アシュレーお姉さんには行きつけのカフェを紹介してもらったりもしてたけど、美味しい店を見つけるのが上手いんだな。

 アシュレーお姉さんの行きつけのカフェは、品の良いご夫婦と元気の良くて可愛い店員さんのいる雰囲気の良いお店だ。

 しかも値段はお手頃で料理も美味しくて、量も丁度良いという誉める言葉しか出て来ないような店だ。

 アシュレーお姉さんとだけでなく、トレフォイルの三人共行ったりもしてる。



 今度は主様と行くのも良いかな……。



 そんなことを考えて物思い…………というか現実逃避をしていた俺は、


「ジルちゃん、次欲しいみたいよ?」


という、アシュレーお姉さんの苦笑い混じりの言葉にハッとして主様の方を見やる。

「え? あ、はい、お待たせしましたご主人様」

 次を待てずにサンドイッチを持っていた俺の手をはむはむしていた主様に気付き、俺は慌てて次のサンドイッチを逆の手で差し出す。

 もちろん現在地は主様の膝の上だ。抱っこされている状態から抜け出すのに失敗してしまった。

 もうこれは従者の練習とかじゃなく、ただメイド服着た俺がいつもの流れで主様にご飯食べさせてるだけだな。

 もうこうなったら意地でも口調だけは頑張るしかない。

 気合を入れ直した俺がハッとして主様の方を見ると、すでにサンドイッチを食べ終えて、また俺の手をはむはむしていた。

「……ご主人様、私は食べ物ではありません」

 聞いてもらえないだろうけど注意だけはしてみた。

 結果、はむはむから軽く甘噛みへと移行した。

 痛くはないが、本当に食べ物だと思われてないか若干心配になる。

 主様は人外で、肉を生で食べられるくらいの悪食というか、咀嚼出来れば食べられるとか思ってそうだし。

 主様に食べられるならという気持ちはゼロではないが、やっぱり主様と話したり出来なくなるのは寂しいので食べられるのはちょっと……。

 一瞬湧きかけた狂気的な気持ちをぶんぶんと頭を振って追い払っていたら、次を待ち切れなくなった主様から頬をはむはむされた。




 本気でいつか食べられるかもしれない。

「ロコが一番美味しかったです」



 え? これは何に対する答えだって?



 アシュレーお姉さんの買ってきてくれた昼ご飯、今後のため主様にどのサンドイッチが好みか質問したら返ってきた答えだ。


 しかも迷うことなく即答。何だったら食い気味。


 さすがのアシュレーお姉さんもきょとんとした後、苦笑いしていたよ。

 これはポテトチップスとかフライドポテトを食べた後、指を舐めるのが一番美味いんだよ的な意味のやつなんだろう、きっとそうだ。

 俺の精神衛生上、そういうことにした。

 プリュイから手とか顔とかを綺麗にしてもらってる俺をガン見してくる視線を感じるが、気にしたら負けだ。


「私の匂いが消えます……」


 そんなしょぼんとした声が聞こえた気もするが、聞こえなかったことにしておこう。




 色々お世話になったアシュレーお姉さんは、おやつを食べて帰ってしまったため、本日の俺の従者メイド生活も終了となった。


 帰り際、きちんと俺のメイド服を脱がせて、プリュイへ洗濯する時と保管する際の注意事項を指導してくれたアシュレーお姉さんは、本当に素敵なオネエさんだ。



 そして、無事に普段着へ戻った俺はお昼寝の時間だということで、自室のベッドでテーミアスとダラダラして寛いでいた。



「なぁ、俺から主様の匂いするか?」



 シーツの海でお互いお腹を下にして伏せている状態で、隣にいるテーミアスへさっき気になったことを訊ねてみる。

 テーミアスなら人間より嗅覚とか鋭そうだし、気を使って誤魔化したりせずズバズバ言ってくれるだろうと期待して。

 俺の問いかけにもふもふな尻尾をピンッと立てたテーミアスは、その尻尾をゆらゆらさせつつ匍匐前進のような動きでシーツの上を移動して俺へとにじり寄り、目を細めて空気の匂いを嗅ぐような仕草を見せる。

「ぢゅっ!」

「……え? 自分の物だってわからせようとしてる匂いがする?」

 どうしよう、だとしたらかなり嬉しい。

 匂い移りしただけだとしても、俺が主様の物って初対面でもわかるって……うん、やっぱり嬉しいな。

「ぴゃぁ……」

 シーツの上で手足をバタバタさせて身悶えしてると、気付いたらテーミアスから心底心配そうに見られていた。

「あはは、大丈夫だよ」

 本当に大丈夫か? と鳴いて訴えてくるテーミアスを両手でもみもみする。扱いが雑だと怒られるかと思いきや、喜ばれたのでさらに遠慮なくもみもみもふもふさせてもらう。

 流れでもっふもふなお腹に顔を埋めさせてもらうと、ずっと俺といるテーミアスなのに森の陽だまりの匂いがした。

 染みついた匂いはなかなか消えないのかもしれない。

 一瞬そんなシリアスな感じの思考をしたような気もするが、従者メイドで思いの外疲れていたようで、俺はテーミアスのお腹に顔を埋めたまま眠ってしまった…………らしい。





 小一時間後、いい加減に起きろというテーミアスの呆れ声で起こされた俺は、自身の状況が理解出来ず瞬きを繰り返す。

 テーミアスのもふもふなお腹のおかげで懐かしい森の夢を見てたのもあるが、何より体の下に敷かれていた『モノ』が変わっていたからだ。

 眠る前は確かに自身のベッドで、プリュイによって綺麗に洗濯されたシーツの上でうつ伏せ寝していたはずなのだが今俺の下に敷かれているのは──よく眠っているこの家の主だ。

「ぢゅ、ぢゅ、ぢゅー!」

 主様のことが苦手なテーミアスは俺が起きたのを確認すると、文句を言いながらさっさと飛び去ってしまった。

「起きるまで待ってくれてありがとな」

 俺を起こさないよう気を使ってくれたテーミアスにお礼を告げると、可愛らしい見た目にそぐわない男前な仕草で片手を挙げて、気にするなと返してくれる。

 可愛いのに男前というテーミアスのギャップに萌えていると、敷物になっていた主様も起きたようで瞼が震えて、寝起きで潤んだ宝石色の瞳が現れる。


「……ロコ」


 寝起きで掠れた声ととろんとした瞳という色気の無駄遣いを間近で存分に浴びてしまい、起きようとしていた俺はくたっとして起きられなくなってしまい、遠くからテーミアスの呆れた突っ込みを受けることになった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございますm(_ _)m反応いただけると嬉しいです(*´∀`)


ジルヴァラの従者メイド練習終了したようです。あとは本番を待つのみです!

これでどんなへんた……ショタコ……子供好きが来ても大丈夫でしょうか←


ジルヴァラ、気配には敏感で寝起きは良いのに相手に殺意が無いと起きないポンコツ仕様となっておりますm(_ _)m


ちなみに話に出てきたアシュレーお姉さんが紹介してくれたカフェは、ヒロインちゃんも行ってるあのカフェです。

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