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280話目

結局こうなる。



「ご主人様、何かご用はございませんか?」



 いつもよりしっかりとプリュイの手伝いをしたが、そこはもともと仕事の早いプリュイのおかげで早々と終わってしまう。

 なので、俺はストーカーよろしく俺の後をついてきていた主様を振り返り仕事がないか訊ねてみる。

 ちなみにだが、昼ご飯はアシュレーお姉さんがお礼として手配してくれるそうなので、昼ご飯の用意は必要なくなってしまった。

 お茶の時間用のお菓子はこの間作ったのがまだあるので必要ないし、せっかくだから従者っぽいことをしたい。



 勢いよく振り返ったせいか、主様は俺のスカートに手を伸ばした体勢でゆっくりと瞬きを繰り返していて。

 思い切り目が合ってるが、そのままさり気なくスカートをめくろうとした主様の手を、通りすがったプリュイ(触手)がてちんっと弾き、肩のテーミアスがぼふっと膨れる。

「……ご主人様、スカートはめくらないでくださいませ」

 どれだけスカートの中身気になってるんだよ。

 思わずジト目で睨みつけるが、主様は何故か嬉しそうにぽやぽやし始める。


 俺のスカートめくってみても、主様が見慣れてる下着しか履いてないからな?


 そう言おうかとも思ったが、だったら見せろと言われても困るので飲み込んでおく。

 何となくスカートを押さえて主様を窺っていると、しばらく無言で俺を見つめてぽやぽやしてから、そうだ! と言わんばかりの表情になって両手を軽く広げてみせる。



「………………それは職務外です」



 主様はどうしても俺を甘やかしたいみたいだが、俺はせっかくなので従者の練習を継続したい。

 格好からして練習になってるかは微妙だとか、思い浮かんだ件は飲み込んで。

「でしたら、そばにいて私の仕事の手伝いをお願いします」

 俺の決意が伝わったのか、主様は少し残念そうに広げた腕を戻し、ぽやぽやと微笑んでそう提案してくれる。

「かしこまりました」

 パァッと笑顔になった自覚はあるが、主様の役に立てるのが嬉しくて顔が緩むのを抑えられなかった。




 そんなこんなで主様が仕事をくれるというのでついていった結果──。



「…………ご主人様、これがお仕事ですか?」



 俺はお澄ましな微笑みを忘れてジト目で主様を見つめてわざとらしく首を傾げてみせる。

 首を傾げる俺を真似るように首を傾げて返してきた主様は、何か変ですか? と口に出さずに表情で語ってくる。

 仕事をくれるという主様へついていった先で俺の現在地は──確かに主様のそばだ。

 どのぐらい近くかというと、主様の鼓動が聞こえそうなほどの近く。具体的にいうと、机に向かう主様の膝の上に横座りで乗っかっている。

 というか、問答無用で乗せられた。

 一応、何かの書類に目を通す主様に色々手渡したり、「お茶」と言われたらお茶の入ったカップを口元へ寄せて飲ませたりはしてる。

 でも、何か俺の求めていた仕事とは違う気がする。

 明日の練習としてやってるとしたら、ナハト様は俺を膝に乗せることになるのか。

 ナハト様の方が俺よりほんの少しだけ体格が良いとはいえ、主人の膝の上に乗る従者………………やっぱりおかしいよな、考えるまでもなく。

「…………ご主人様、お言葉ですが、やはり私が膝の上にいるのはおかしいと思います」

 ふんすと気合を入れて、あくまでも当社比だがキリッとした表情で言ってやったとなった俺だったが、見上げた主様の反応は変わらない。

 つまりは完全にスルーされた。

 俺の方を見て宝石色の瞳を楽しそうに細めてたから、聞こえてないとかは絶対にないはず。

 これは『初々しいメイドの反応を楽しむ主人』というイメージプレイ的なやつなんだろうか。

 そんな馬鹿馬鹿しい考えまで浮かんでしまったが、主様は片手で俺の頭を猫でも撫でるように撫でながら仕事を続けているので、俺はアニマルセラピーな役割を仰せつかってるのかもしれない。

 だとしたらあまり騒ぐのは不味いかという考えに至り、スカートの裾を直しておとなしく座り直していると、テーミアスが「付き合ってやるよ」と肩へとやって来てドヤ顔をする。

 正直たまに「お茶」とかやるだけで暇だったので、主様に撫でられながら俺はテーミアスを撫でて、小声で世間話をする。

 もう従者してないけど、そこそこ練習にはなったし、良いよな?



 主様を甘やかしたり、主様からスカート守ったりぐらいしかした記憶ないけど。

「へぇ、あの鹿はあそこの森の主じゃないのか?」

「ぢゅ。ぢゅぢゅっ」

「え? そうなのか。確かに強そうだったもんなぁ」

「ぢゅー」

 そんな感じで和やかに肩の上のテーミアスと話していると、仕事を終えた主様の手が伸びて来て俺の頬を軽く摘む。

 主様の手に接近にいち早く気付いたテーミアスはというと、ボッと尻尾を膨らませて飛び去ってしまった。

「ロコ」

 俺の頬をむにむにとしながら、主様が俺の名前を呼ぶ。何かを要求するようにじっと見てくるので、お茶の入ったカップを差し出したが違うらしく首を振られる。

 目で語りかけるのは止めて欲しいなぁと吸い込まれそうな瞳に見惚れてボーッとしていると、主様が突然ガクンッと下を向く。

 おかげで視界に入るのは主様の顔ではなく頭頂部から後頭部になった。

 戸惑いはしたが、主様はつむじまで完璧だと主様のつむじを見つめていたら、そのまま頭をぐいぐいと寄せて来られる。

「……主人を労るのも従者の仕事です」

 それでも俺が戸惑って動かないでいるとボソッと主様がそんな言葉を口にする。

 そこでやっと主様の言いたいことを理解した俺は、そっと手を伸ばして主様の頭をよしよしと撫でる。

「……ロコ」

 どうやら撫で撫でぐらいでは労りが足りないらしい。

「ぬ……ご主人様、仕事をきちんとやって偉いです!」

 素で誉めそうになったのを何とか軌道修正して誉めてみる。

 何だかなぁな誉め言葉だが、これで足りないとなると、俺の誉め言葉ストックなんてもうないから、次は『生きてて偉いです』とか『顔が一級品』とか誉めるしかないんだけど。


「んふ……」


 ひとまず正解らしい。良かった、誉め言葉のハードル低くて。


 珍しく声を上げて笑った主様は、もう抵抗されないと踏んだのか、俺を抱えたまま椅子から立ち上がる。

 ちらりと時計を見るとちょうどお昼だ。

 このまま昼ご飯を食べに行くつもりだろう。

 従者したい俺は抵抗をしようとしたのだが、自らの格好を思い出してピタリと動きを止める。

 この格好でいつもみたいな抵抗をすると、色々丸見えになってしまう。いや、見えてもいつもの下着だから恥ずかしいとかないはずだけど、何か込み上げてくるものがあるのはスカートという服装の持つ魔力か。

 足をばたつかせたせいで乱れたスカートの裾を押さえていると、楽しそうにぽやぽやとした主様が歩きながら顔を寄せてくる。



「──おとなしくしていろ」



 普段とは違うゾクリとするような低音で囁かれ、ビクッとなった俺がおとなしくなってしまったのは言うまでもない。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)反応いただけると嬉しいです(*´∀`)



まだスカートの中が気になる主様。もちろんジルヴァラのスカートの中限定です←

次回があるなら、スカート短くなってるかもしれません。

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