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278話目

女装注意です。しばらく女装ネタ続きますm(_ _)m



「おはよう、ジルちゃん」



 毎朝恒例のプリュイに埋まりながら移動していた俺は、洗面所でアシュレーお姉さんと遭遇して、軽く目を見張る。

 別にアシュレーお姉さんが泊まってたことを忘れてたとか、寝起きのアシュレーお姉さんが無精髭すごくて驚いたとかではない。やたらと気だるげで色気が駄々漏れだったからだ。

 ここだけ某歌舞伎町みたいだなぁと場違いな感想と共に、へらっと笑ってアシュレーお姉さんを見上げる。

「……おはようございます、アシュレーお姉さん」

 寝起きのせいかとじっとアシュレーお姉さんを見ていると、気付かれてうふふふと笑われる。

「せっかくだから、プリュイちゃんに一戦お相手願ったのよ。もちろん、手加減してくれたんだけど、全く歯が立たなかったわ」

 どうやらその一戦の後、客間の浴室でシャワーを浴びたらしい。よく見たら髪が濡れてしっとりしてる。

「怪我とかしてないですか?」

 アシュレーお姉さんへ問いかけながら、念の為プリュイのぷるぷるボディも振り返って確認するが、双方とも無傷らしい。

 アシュレーお姉さんは服の下へ隠し、プリュイは再生してしまえばわからないが、とジーッと目を凝らしてみても俺の目で看破するのは無理そうだ。

 そんなことを考えながら二人を交互にジーッと見つめ続けていたら、プッと吹き出したアシュレーお姉さんに抱き上げられ、そのまま高速で頬擦りをされる。

「大丈夫よ、ジルちゃん。いくらなんでも本気でやってないわ。朝の運動代わりだから、そんなに泣きそうな顔しないで」

 食べちゃいたくなるわと耳元で悪戯っぽく笑って囁かれ、俺はしぱしぱと瞬きを繰り返してアシュレーお姉さんの顔を見る。

 うふふと笑うアシュレーお姉さんはいつも通りに見えるが、何か少し背中がゾクゾクして落ち着かない気分になる。そわそわしていると、腰辺りにするりとプリュイが巻き付いてきて俺はプリュイの腕の中へ。

「あら、没収されちゃったわ」

「ジルハ、あげマセン」

 手合わせしたおかげでアシュレーお姉さんに対する態度が少し気安くなったのか、プリュイは珍しく怒ったように細かくぷるぷるしてアシュレーお姉さんを睨んでいる。

 初めて見るプリュイの可愛らしい独占欲の示し方に、俺はさっきまでのゾクゾクをすっかり忘れて嬉しくなり、プリュイの体へ思い切り抱きつく。

「プリュイ、好きー」

「ワタクシも、ジルが好きデス」

 勢いで少し子供っぽい口調で小っ恥ずかしい台詞を口にしてしまったが、プリュイは間髪入れずに返してくれ、さらに嬉しくなってプリュイをむぎゅむぎゅ抱きしめる。

「あらあら妬けるわねぇ」

 微笑ましげに優しく笑うアシュレーお姉さんからは、さっきのゾクゾクする感じはなくなっている。

 その代わりではないだろうが、アシュレーお姉さんの手に見覚えのある見慣れない物が握られているのに気付いてしまう。

 言ってて何言ってるだと自分で突っ込みたくなるが、それはそうとしか表現出来ないというかしたくない物だ。

 俺がプリュイに埋まったまま、警戒心も露わにアシュレーお姉さんを見ていたが、アシュレーお姉さんは気にした様子もなくにっこりと微笑んで数歩あった距離を詰めて近づいて来る。


 回り込まれて逃げられない!


 脳内でアシュレーお姉さんから逃げるシミュレーションをしてみた結果、そんな文字が頭の中を過っていった。

 そして、考えてみるまでもなく逃げられないだろうと、俺は色々諦めてへらっと笑い、先日俺が着せられたメイド服を手にしたアシュレーお姉さんの腕に捕らえられてしまう。



「ぢゅぅ!」



 テーミアスの、頑張れという他人事な応援を聞きながら、俺はドナドナとアシュレーお姉さんへ割り当てられた客室へと連れられて行くのだった。

「この為にアシュレーお姉さん泊まってもらったんだな、主様……」

 喜々とした様子で色々用意しているアシュレーお姉さんを横目に、俺はポツリと独り言を洩らして、今現在ハンガーにかけられている俺サイズのメイド服を見る。

 たぶん昨日主様がアシュレーお姉さんへ耳打ちしてたのは、こういう服(メイド服)着せられますか? っていうやり取りをしてたんだろうと腑に落ちる。

 だからといって、これからメイド服を着せられることに納得したわけじゃないけども。

 それでも「楽しみにしてたわよ」と囁かれてしまえば、主様大好きな俺としては拒否するなんて出来ない。

「主様近くで見てみたかったのか」

 先日着せ替えされてたところを見てたらしいし、興味を惹かれてたのかも。

 服を貰って見ただけで満足して欲しかったなぁと、先日去り際ノーチェ様と何か話していた主様へと心の中で文句を言い、俺は無心でアシュレーお姉さんの手によって着飾られていく。



「うふふ、可愛いわぁ」



 しばらくして、姿見の前には不貞腐れた顔をしたメイド姿の幼児がいた。

 つまりはただの俺だ。

 スカートは膝丈なので決して短くはないと思うが、履き慣れないスカートは足元がスースーして落ち着かない。

 そんな俺の背後にはやりきった顔のアシュレーお姉さんがいる。

「靴までちゃんと用意してくれるなんて、さすがお貴族様ね」

 上機嫌なアシュレーお姉さんから化粧までされそうだったが、化粧筆を手にしたアシュレーお姉さんはしばらく俺の顔を見つめ、指先で頬をちょんちょんと突いて一人で頷いて、化粧道具をそっと仕舞っていた。

 意味はわからなかったが、化粧はしないで済みそうで良かった。

 その後、櫛で髪を梳いてもらって、可愛げはないけど、そこそこ見られるメイドさんになった……と思う。



「ジルちゃん、可愛いわぁ」


「ジル、可愛いデス」



 俺に甘々な二人から口々に誉められるが、ここで調子に乗ったりはしない。

 そもそも俺ぐらいの年齢なら、男女の差なんてほぼ僅差みたいなもんだからな。

 そう自分に言い聞かせながら、白い膝丈の靴下──ニーソックスっていうんだったか、それを履いて、黒いエナメルっぽい素材の丸みのある靴を履いた。

 もうここまで来たら、お遊戯会でもする気分で演りきってやると開き直って自然と丸まっていた背筋を伸ばして歩き出す。

 向かうのはまずキッチン。

 寝坊助な『ご主人様』を起こすのはその後だ。

 すたすたと歩きながら、てちてちと付いてきているプリュイへメイドさん気分で声をかける。

「プリュイ、朝ご飯の用意をしたいので、手伝いをお願い出来ますか?」

「……ハイ」

 口調を変えた俺にプリュイは少し戸惑ってふるふるしていたが、アシュレーお姉さんは楽しそうに目を細めて後ろを付いてきている。




 キッチンに着いた俺は、せっかく(?)のメイドさんなので朝は洋食にしようと、まずは食パンを取り出す。

「パンはシンプルにトーストして、好きな物塗って食べてもらいましょう。付け合わせはチーズを入れたオムレツに、ソーセージとベーコンも焼いて添えちゃいます。で、脇にレタスでも置いときましょう」

 ちょっと肉々しいかもだけど、主様もアシュレーお姉さんも健啖家だからペロッといけるだろう。

「ハイ」

 今日も優秀な魔法人形のプリュイの手助けがあるので、幼児な俺の料理技術でも何とか四人分の朝ご飯の用意を終わらせる。

 いつもならプリュイの分だけ残して運んでもらうところだが、今日の俺はメ……従者だからプリュイと一緒に後で食べるつもりだ。

「という訳で、プリュイ、ぬ……ご主人様の分と、お客様の分を運んでもらえますか?」

「カシこまりマシタ」

 という訳で、で話が通じてしまって俺が逆に驚いたりもしたが、気遣いの出来る魔法人形のプリュイだからだなと納得する。

「あら、そこまで徹底するのね」

 料理をする俺達を笑顔で見ていたアシュレーお姉さんは、驚いた表情で頬に手をあてて考え込む様子を見せている。

「…………あの方、納得するかしら」

 アシュレーお姉さんは難しい表情でボソッと何か呟いたが、主様を起こしに行くために気合を入れていた俺は聞き逃してしまった。




 靴が違うせいでいつもと違う足音を立てながら廊下を気持ち早足で主様の部屋へ向かう。

 この格好とか色々思うことがなくはないが、主様は楽しみにしてたみたいだし、俺は従者をやり切るのみだ。

 ふんすと気合を入れてたどり着いた扉の前で足を止める。とはいえ睨みつけた扉は自室の扉なので、ちょっとだけ冷静になりそうになってしまい、軽く頭を振る。

 そして、いつもなら問答無用で開ける扉を丁寧に三回ノックする。

「…………失礼します」

 眠りの深い主様からは応えはないが、寝汚い主人を従者が起こすなんてのはあり得るから返事を待たずに部屋へ入るのも問題ないだろ。

 実際、いつも主様を起こしてるのは俺だしな。

 不意に込み上げそうになった笑いを飲み込んで唇を引き結ぶと、俺は扉を開けて勝手知ったる自室へ入ってベッドを目指す。

 今日の俺は従者だから、いつもみたいな起こし方は出来ない。

 声だけで主様起きてくれると良いけど。

「……おはようございます、ご主人様。朝食の準備が整いました」

 一回目。ベッドの近くで声をかけるが起きる様子はない。

「ご主人様、朝でございます」

 二回目。ほんの少しだけ肩が揺れるが、まだ起きる気配はない。

「ご主人様、起きてください」

 三回目。やや声を張り上げると、やっと主様の瞼が震えて宝石色の瞳が現れ、俺を見る。

 ぽやんとしていた寝起きそのものだった瞳は、俺を見てカッと見張られる。

 いつもののんびりとした起床はどうした? という勢いでベッドの上で体を起こした主様は、いつも通り俺を抱えようとしたのか手を伸ばしてくる。

 それを見てベッドからスッと離れて主様の手をやんわりと避ける意思を見せると、見張られていた瞳が今度は細められる。

 口にしなくても『何で?』と言いたげなのが丸わかりな寝起きでぽやぽやな主様に、俺はにこりと微笑んで、



「ご主人様、お戯れが過ぎます。身支度のお手伝いをいたしますので、こちらへいらしてください」



と告げて頭下げるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)


以下言い訳というか、補足?


ジルヴァラは女装しても、絶世の美少女とかにはなりません。そこそこ可愛らしくはなるでしょうが。

それは幼児が可愛い格好をしているという可愛らしさ……のつもりで書いてます←


ちなみに、メイドさんにお触りは厳禁ですので、そこのところよろしくお願いします。

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