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277話目

主様がちょっとへんた……ゲフンゲフン。




「…………ふわふわとは?」



 夕ご飯を終えても訊かれなかったので安心していたら、ベッドへ潜り込んできた主様がじっとこちらを見ながらそんなことを口にする。

 うつらうつらしていてほぼ眠る直前だった俺は、ともすれば閉じそうになる瞼を必死に押し上げて主様を見る。

 今現在俺の脳内が眠気でかなりふわふわだが、主様の求める答えはそれじゃない。

「きょうのメニュー、ふわふわ……」

 これで誤魔化せないかなと今日の夕ご飯ふわふわだったとアピールして主様を見るが、納得していないのがこちらを見る眼差しから丸わかりだ。

 このままだと眠らせてもらえなさそうなので、主様の手首を掴んで顔の辺りまで引き上げて、その手に頬をすり寄せる。

「ふわふわ、してるだろ……」

 自分で自分の頬をふわふわ発言するという精神的打撃はあったが、これで主様が納得してくれれば良い。

 アシュレーお姉さんがふわふわと評したのが違う部分だなんて、さすがの主様でもわからないハズ。

 納得してくれたかわからないが頬を寄せた主様の手は、外されることなく頬を撫でてくれ、そのまま移動して頭を撫でられる。

 その心地良さにすでに眠気の限界だった俺は抗うことが出来ず、今度こそ深い眠りへ落ちていくのだった。

[視点無し]



「もちもち……?」



 青年がさほど力を入れずに振り解けそうな黒髪の子供の手にあえて逆らわず従うと、たどり着かされた先はその子供の円やかな頬で。

 子猫のようにすり寄って甘えてくる子供の頬を軽く揉むと、確かに柔らかいがそれ以上に弾力を感じたようで、青年は先の言葉を呟いて寝転んだまま首を捻る。

 唯一答えを持っている子供は、ほぼ無意識に頭へと移って撫でていた青年の手によって眠らされている。

 起こそうかと思っていた青年だったが、むにゅむにゅと口を動かした子供がすり寄ってきて「ぬしさま、すき……」と口にした瞬間、ぴたりと動きを止めて子供の寝顔をガン見することにしたようだ。

 何かを食べている夢を見ているのか、子供の口がまたむにゅむにゅと動き、その動きに惹かれた青年の指が子どもの頬をちょいちょいと突く。

 それがくすぐったかったのか、子供は顔を洗う猫のような動きで自らの顔をくしくしと撫でて、ついでに青年の指を避けてしまう。

「……っ」

 少しムッとした表情になった青年は、頬を突いていた指を今度はむにゅむにゅしている子供の唇へ移動させる。

 薄く開いた唇の間に指が差し込まれてると、むにゅむにゅしていた唇はあむっと青年の指を食み、子供の寝顔が満足げに緩む。

 連動するように蕩けるような笑顔になった青年は、食まれた指先を軽く動かす。まるで猫じゃらしで猫を遊ばせるかのように。

「可愛い……」



 食べてしまいたい。



 そう音無く呟いた青年の顔はいつものぽやぽやとしたもので、その真意はぽやぽやとしている表情からは読み取れない。

 しばらく子供の寝顔を見つめていた青年は、すり寄ってきてはいたが、少し離れていた子供の体をしっかりと抱き寄せる。そして、逃げないようにと腕の中に子供を囲って目を閉じる。

 目を閉じて腕の中の子供の黒髪に顔を埋めている青年だが、眠った訳ではないようで、定期的に猫吸いでもしているような深く息を吸い込むが微かに聞こえている。

 そんなことをされている子供はというと、目覚める様子もなく安心しきった寝顔ですやすやと眠り続けている。





 扉の隙間から覗いた夜回りをしている魔法人形の冷たい視線など物ともせず、青年の『猫吸い』は時々顔を埋める場所を変えながら、早朝子供が覚醒する直前まで続けられた。




「んー、よく寝た!」




 今日も今日とてパチッとスイッチが入ったような目覚め方をした子供は知る由もないだろう。

 自身が目覚める直前まで、今はすんとした表情で眠っているようにしか見えない青年に全身吸われ続けていたなんて。

「……なんか掃除機に吸われまくる夢見たな」

 いつも通りの目覚めながら、朧げに浮かび上がってきた妙な夢の光景を思い出して、俺はぽりぽりと頬を掻いて熟睡している主様を振り返る。

 以前寝惚けた主様にかぷかぷと甘噛みされてたこともあるから、今回も主様が原因──な訳ないか。

 主様はいびきかいたりもしないし、寝息だってかなり顔を近づけなければ聞こえない。

 しっかしまぁ、前世が懐かしくって感じの内容じゃないよな、掃除機に吸われる夢って。

 何となく長毛の猫がお腹を上にゴロンッてして掃除機に毛を吸われてる動画が脳裏を流れたが関係はないだろ。

 猫は実家で飼ってたこともあるが、短毛な普通の三毛猫の雌だった。

 もちろん掃除機で吸ったことはない。

 猫で吸うといえば……。



「猫吸い……」



 お猫様の下僕な前世の友人がそう言って猫のお腹や背中へ顔を埋めて、思い切り吸っていた光景を連想してしまった。

 そしておあつらえ向きに、俺の目の前にはちょーお高い美猫(主様)のすやすやと眠る姿がある。

 これはもうやってみろという天啓かもしれない。

 俺は離れようとしていたベッドへと戻り、ほふく前進で眠る主様の側へとにじり寄る。

 初対面で見惚れた赤色に惹かれ、横向きで寝ているためお腹辺りを覆うように流れる赤色に遠慮がちに顔を埋めてみる。

 髪先まで完璧な主様の髪は全くちくちくしたりすることなく、顔を埋めていてもさらさらとして気持ち良いぐらいだ。

 吸いと言うからには、この状態で思い切り息を吸い込めば良いんだよなと緊張しながら、自然と止めていた息を一旦吐き出してゆっくりと吸い込む。

「はぅ……」

 当たり前だが最近よく仕舞われるローブの中と同じ匂いなのだが、肺いっぱい主様の匂いという状況に頭がくらりとして、意識せず妙な声が洩れてしまう。

 慌てて埋めていた顔を離して主様の様子を窺うが、眠りの深い主様はぴくりともせず微かな寝息が聞こえてくる。

 安堵で胸を撫で下ろしながら、俺は改めて起きるため主様から離れようと体を引こうとしたが、寝惚けた主様に捕まってしまい、つい先ほどまでと同じ体勢になってしまう。

 少し違うのは背中に主様の腕が回されていて、俺の頭辺りに主様の寝息を感じることだ。

 スーッと息を深く吸い込むような音も聞こえた気もしたが、主様の腕から抜け出そうとジタバタしていた俺に深く考える余裕はなく。



 結局、寝惚けた主様の腕から抜け出せなかった俺は、プリュイの手を文字通り借りて何とか主様の拘束からの脱出を果たすのだった。



いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)


反応いただけると嬉しいです(*´∀`)


ジルヴァラが寝ている間、色々(強調)しているようです。

寝起きは良いジルヴァラですが、安心している所にいるとかなり眠りが深いです。たぶん熊の所でも同じ感じで寝てて、毛繕いとかされてます。


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