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270話目

ジルヴァラ、ふやけそう。

「ごちそうさまでした」

「おそまつさま!」

 おやつというにはえげつない量をまさにペロリと平らげた主様に、俺は定番の挨拶を返して皿を片付けるプリュイの手伝いをする。

 俺の方はお洒落なカフェで出て来そうな、主様に比べると可愛らしい量をテーミアスと分け合って食べてちょうど良く小腹が満たされてる感じだ。

「粗末ではないですが……」

 片付けを終えてソファでまったりしていると、主様が不思議そうに呟いて首を傾げているが、動きが無邪気というか無垢というか何か可愛らしい。

 その動きでさらさらと流れる赤色が綺麗なのもあって目を奪われていると、近寄って来た主様によって抱え上げられる。

 運ぶためかと思ったが、主様の顔がぐっと近づいて来て瞳を覗き込まれる。

「ロコ?」

 寝転んだ俺がじっと見ていたから気になってしまったらしい。

 俺の名前を呼んでまた首を傾げる主様は、俺が応えないことに焦れたのかかぱっと口を開いてあむあむと頬を甘噛みしてくる。

「くすぐったいって。主様の髪が綺麗だから見てただけだよ」

「ロコの髪の方が綺麗です」

 笑い声混じりで主様の髪を誉めたら、何故かムッとしたような顔をされて少し食い気味に否定された。

 いくら主様でもそこは譲れなかった俺は、首を横に振りながら主様の髪へそっと触れて笑う。

 相変わらず艶々のさらさらで手触りも抜群だ。

「主様の髪の方が綺麗ですー」

 わざと語尾を伸ばして子供っぽく言い返すと、主様はしぱしぱと瞬きを繰り返して、またぐっと顔を近づけて来る。

 鼻か頬かなとすっかり主様の甘噛みに慣れた俺が思っていると、唇を軽く塞がれた。

 これは反論自体をさせなければいいと考えたんだなとゼロ距離でも損なわれない美貌を見つめていると、そのまま啄むように何度か念押しで唇を塞いでから、満足げな表情をして主様の顔が離れていく。

「……夕ご飯、何か食べたい物あるか?」

 反論するとまた唇を塞がれそうなので話題を変えると、宝石色の瞳がゆらゆらと瞬いてゆっくりと言葉を紡ぐ。



「ロコがいいです」



 この冗談お気に入りなんだなとか、それとも『君の作った物ならなんでも良い』という遠回しな伝え方なのかと瞬き数度の間考えた俺は、後者の方だと思うことにした。

「……カレーにするな?」

 特に主様からの抗議は無かったので、正解だったんだろう。



 ちょっと頬をあむあむとされて、それをテーミアスから呆れた目で見られてたけど。

「カレーはパンにも合うけど……これは食べにくかったかも」

 キッチンへ行くと、ちょうど食パンが丸ごと残っていたので、出来心で中をくり抜いてカレーを入れてチーズ乗せてオーブンで焼くっていうテレビで観たやつを、プリュイから手伝ってもらって再現した。

 その結果がさっきの台詞だ。

 作り方が正解かはわからないが美味しくは出来た。

 ただ思わず呟いてしまうぐらいには食べにくい。

 主様用には大きな一斤を丸々使って作り、俺用には一斤を半分にして作って、それをさらにプリュイと分け合った。

「んー、これってもう少しルーの水分減らして、全部をパンの中に入れちゃえば……」

 カレーでベタベタになってしまった口周りと手を持て余した俺が呟いて思いついたのは、パンなヒーローにもなっているド定番なカレーパンだ。

 残念ながら俺にはルーから水分を抜いてっていうのが難しいので、再現するのは無理だけどな。

 本職の人ならと思い浮かんだのは、俺が何度か配達で訪れたカレー料理が人気な料理屋さん。

 もしも機会があれば話題として振ってみるのも面白そうだ。

 ここまで食も発展している世界だから、俺が知らないだけで普通に揚げたカレーパンも存在するかもしれないからな。

 それか俺より早く、ヒロインちゃんが開発してくれるかもってちょっと期待してる。

 カレーパンなら、お弁当としてカレー好きなソルドさんに勧められるし。

 そうだ。ブロック状にして溶かすだけでカレーが作れるカレールーもあれば便利だよな。

 何で俺が食後に長々とそんなことを考えてるかというと……。



「主様、も、いいって……」



 カレーでベタベタになった俺の顔を主様が毛繕いする猫よろしく延々と舐めてきているからだ。

 手の方は伸びて来たプリュイがサッと綺麗にしてくれたので、顔もと頼みたかったが、その前に主様から捕獲されてしまって今の状態に陥っていた。

 さすがに色々と限界を迎えた俺は、手でそっと主様の顔を押し退けようと伸ばすが、今度はその手を捕らえられて舐められる。

「もう! ほら、主様も食べ終わってるんだし、お風呂行って綺麗にしようぜ?」

 本当は食後すぐに入浴は良くないらしいが、このまま舐められ続けるのは恥ずか死にそうなので背に腹は代えられない。




 まだ舐めたそうな気がする主様を何とか止めて、片付けはプリュイにお願いして俺は主様と一緒にお風呂へ行くことにする。




 いつも通り髪は主様から洗ってもらい、体は自分で洗って主様に背後から抱えられる体勢で一緒に浴槽へと入る。

 今日は主様の洗い髪を緩く結んでアップにしてお風呂に浸からないようにしてみたが、うなじが見えると無駄に色気が増すので外ではこの髪型は止めておこうと思う。

 変態がホイホイされて、ポイポイされてしまうのが目に浮かぶから。

 俺も何かドキドキしてしまい、いつもより早くのぼせて、主様を無駄に心配させてしまったので理由を伝える。かなり恥ずかしくて小声になってしまったが、何とか聞き取ってもらえた。

 主様は無言で目を見張って、しばらく不思議そうに俺を見ていたが、やがて上機嫌にぽやぽやとし始めると俺を抱えて歩き出す。

 髪以外はサッと伸びて来たプリュイによって拭き上げられ、さらに服まで着せてもらったので、このまま寝室でも何の問題もない。


 プリュイは本当に気の利く魔法人形だ。


 主様に抱えられてたどり着いたのは俺の部屋だ。

 ベッドに転がされて、隣にはそのまま主様が寝転がる。

 俺を寝かしつけてくれるのかな、と期待して主様を見ていると、伸びて来た腕に捕まって懐へと抱え込まれる。

「……寝ます」

「え……あ、おやすみなさい」

 一瞬きょとんとしてしまった俺だったが、主様の温もりに包み込まれてるのが嬉しくて、頬を緩めながら主様へ挨拶をして、目を閉じる。

 さっきまでドキドキしていたせいで眠られるか心配だったが、主様の匂いと温もりのおかげかあっという間に睡魔が訪れる。

 眠りに落ちる寸前、柔らかい笑い声と頬に柔らかなものが触れた気がしたが、眠ってしまった俺にはわからなかった。


 

 

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)


反応いただけると嬉しいです(*´∀`)


ついにしっかりと話題に出そうなカレーパン。


忘れなければ←


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