267話目
感想ありがとうございます(^^)
今回短めです。
痴漢ダメ絶対。
主様のは違いますよ………………たぶん。
「ロコがお尻が痛いと……」
床に正座をしながら一体と一匹から説教をされた後もキリッとした表情の主様は、そう言って真っ直ぐ俺を見つめている。
そこには当然邪な感情など微塵も見えず、何か疑った俺の方が間違っていた気分になってくる。
「……そうか、俺のこと心配してくれたんだよな。嫌がってごめんな?」
居ても立ってもいられず隠れていたプリュイの陰から飛び出した俺は、正座させられている主様の元へと駆け寄る。
硬い床にそこそこの時間正座させてしまったので、足の痛みや痺れで立ち上がれないだろうと手を貸そうと思ったのだ。
「主様立てるか?」
そう言って手を差し出したところで、今さらながら俺に主様を支えて立ち上がらせるって無理ゲーじゃね? と気付くが、その時には主様は俺の差し出した手を握っていて。
これは二人して転ぶかもと身構えた俺だったが、差し出した手は引かれはしても、二人して倒れるなんてことは起きることなく、俺は何事なかったようにすっくと立ち上がった主様の腕の中にいた。
「あれ? 主様、足痺れたりしてないのか?」
「はい」
即頷いた主様は、それがなにか? と言わんばかりのぽやぽや具合なので、嘘や強がりを言ってる訳ではなさそうだ。
「我慢してないか? 痛いなら遠慮なく言ってくれよ。いくらでも撫でるからな?」
このままベッドへ運ばれて就寝という流れになりそうなので、俺は念のため主様が痩せ我慢しているという可能性も考えて念を押して訊ねておく。
男は多かれ少なかれ虚勢を張る生き物だからな。
我が身を振り返って主様の微笑ましさに内心でこっそりふふんと笑っていると、主様は足を止めてゆっくり瞬きをしながらじっと俺を見つめる。
そのまま瞬きと同じぐらいゆっくり主様の顔が近づいて来て、耳に唇が触れそうなぐらいの距離となる。
「……いたいです」
やっぱり我慢していたらしい。
「そっか」
「なでてほしいです」
何処か棒読みというか拙いというか、言い慣れてない感じで甘えてくる主様のギャップにやられた俺は、もちろんと大きく頷くしか選択肢はなく。
そんな俺を、テーミアスとプリュイが揃って呆れたような眼差しで見てきていた気もしたが、嬉しそうな主様に見惚れながら運ばれている俺は、すぐ忘れてしまうのだった。
●
「ほら、ここに横になって」
主様の腕からベッドの上へと移動した俺は、早速ベッドをぽんぽんと叩いて主様へ横になるよう促す。
座ってもらって撫でてもいいが、足は伸ばしておいた方が正座後のダメージが抜けやすそうだと思ったのだ。
表情には出ないがやはり痛むのか、主様はいつもより鈍い動きで仰向けでベッドに横たわる。
主様の美貌のせいもあって何かちょっといけない気分になりかけたが、いつもと変わらないじゃんと脳内で冷静な俺が勢いよく突っ込んだので、そんな気分は秒で吹っ飛ぶ。
残ったのは痛みを訴えた主様への純粋な心配のみだ。
「何処が痛むんだ? 痛みが強いなら氷とかで冷やすか?」
「……なでてもらえばなおります」
不慣れな甘えたモードは継続中らしく、相変わらず舌足らずな主様の喋り方に、笑いそうになった口元を引き締めてベッドの上をにじり寄って主様の太股に手を置く。
「どの辺りが特に痛い? 脛とか足の甲? それとも膝とか?」
訊ねながら置いた手を足先へ向けて徐々に這わしていくが、その手を伸びて来た主様の手によって止められる。
痛む所をわかりやすく示してくれるのかと、主様の手に導かれるまま手を動かしてたどり着いた先は、足の上……を通り越して、お腹の辺りだ。
布越しに脱いだらすごい系な主様のしっかりとした腹筋を感じながら、もしかして『痛い』っていうのは怒られたストレスで胃が痛いとかなのか? それとも慣れない体勢で腹筋痛めたとか? なんてことを数秒考えたが、主様が痛いから撫でて欲しいと言うんだから気にせず撫でればいいかと結論づける。
「痛かったり、気持ち悪くなったりしたらすぐ言ってくれよ?」
念の為そう声をかけながら、ゆっくりと手を動かして主様のお腹を撫でていく。
ゆっくりゆっくりと大きく円を描くように撫でていると、薄く開いた主様の口からほぅと小さく洩れた息の音が聞こえる。
「少しは痛み薄れた?」
「……もうすこし、まだです」
主様から返ってきた不自然な言い回しのお願いに、俺はふふと笑って主様のお願い通りに変わらず手を動かしていく。
「眠くなったら寝ていいからな?」
そんな声かけをしながら、主様に乞われるまま張り切って主様を撫でていたはずの俺は──。
「……あれ?」
気付いた時には主様の上に乗り上げるように眠っていて、その体勢で目を覚ますことになった。
お腹を撫でるのが終わって、次はこっち、次はこの辺がとあちこち示される部分を撫でていくうちに体へ乗り上げていた……ような気がする。
それからどうなったかは記憶にないが、俺のことだから主様にくっついたら温かいから眠くなったんだろう。
「……もう痛くないなら良いけど」
途中で寝てしまったから定かではないが、俺を乗せて眠る主様の寝顔は穏やかなもので、俺は少しだけ安心した。
主様の上に乗っているためいつもより難易度高めだったが、無事に主様を起こさず起床を果たした俺は、抜け出すためにずれてしまった布団をそっと主様へかけ直す。
眠りの深い主様は起きる様子はないが、俺の希望的観測かもしれないが独り寝になった途端少し寒そうに見え、俺はひっそりと口元を緩める。
「主様って寒がりだよな」
おかげで子供体温な俺を湯たんぽにしたくなるんだから、寒がりな主様に感謝だ。
「主様の湯たんぽは俺の役目って、言いたいけど……」
主様の寝姿を横目でチラ見しながら着替えつつ、俺はそんな呟きを小声で洩らしたのだが、内容の馬鹿馬鹿しさもあってすぐに苦笑いで無かったことにする。
女々しくなりかけた気分を頭を振って追い払い、寝惚けているテーミアスを腕に乗せて体で支えるようにして部屋を出るため歩き出す。
「落ちるなよー」
「……ぴ」
ほぼ鼻息なんじゃという弱々しい応えと共に、テーミアスは前足を上げてみせるが、今にもまた眠ってしまいそうだ。
微笑ましさに小さく笑いながら扉を開ける俺。
その耳に背後から微かな声が聞こえてくる。
「……ロコだけです」
バッと振り返ったが、ベッドの上の主様は相変わらずすやすやと眠っている。
「あは、何か俺を嬉しくさせる寝言だったな」
たまたまなんだろうが、計ったようなタイミングの寝言で、俺を喜ばせてくれた主様に、俺は込み上げて来る笑いを堪え切れず笑いながら部屋を後にするのだった。
だから俺は知らない。
主様がそもそも寝てなんていなくて、宝石色の瞳が妖しく輝いて俺の消えた扉をじっと見ていたなんて。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)
反応いただけると嬉しいです(*´∀`)
子供のお尻はむちむちで触り心地良いから触りたくなるのはわかります←
主様、ジルヴァラからいつもよりさらに優しくしてもらう方法に気づいてしまいました。




