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253話目

森の守護者の面々には、まだ少し遠慮のあるジルヴァラです。

これがトレフォイルの三人やアシュレーなら、遠慮なく抱っこされてそうです。

 見た目捕らえられた宇宙人状態で森へとやって来た俺は、変わり果てた森の様子に驚きから瞬きを繰り返してしまう。


「何だよ、これ……」

「ぴゃぁ!」


 道中も雪景色になってたし、主様によって雪が増量した我が家の庭ほどではないが雪が積もってるのは想定していた。

 しかし、目の前の光景はその想定を軽く超えてきた。

 これがこの森の冬の日常風景かと一瞬だけ思いそうになったが、テーミアスも驚いてるし、シムーンさんとティエラさんも以下同文な状況なのでやはり日常風景という訳では無さそうだ。

「土木工事でもしてた?」

 俺がそう呟いたのも仕方ないだろう。

 俺が最後に見たのは雪景色になる前の光景だったが──、



「な訳無いよな。何か暴れたんだよなぁ、これ……」



 自分の言葉を自分で否定して、俺は森の様子を改めてじっくりと眺める。

 何本もの木が折れて、地面にも少なくない数の穴が空いている、そんな状況の森を。



「ロック鳥でも暴れたのかもね〜」

「それにしては、範囲は狭いようですが……」

「でも、ロック鳥以外にこの森でこんな大暴れするようなモンスターとかいたっけ〜?」

「モンスターではなく、動物という可能性はどうでしょう」



 シムーンさんとティエラさんの会話を聞きながら、俺は周囲の様子を油断なく窺いつつ、テーミアスが「あっちへ」と示す方向へ足を進める。

 そこは荒らされていない茂みの辺りで、近づくと茂みから複数の白いもふもふがチラ見えする。

 一瞬見覚えのない真っ白もふもふかと思ったが、どうやら雪が降って冬モードに変わっただけらしい。

「怪我はしてないか? 何があったんだ?」

「ぢゅっ」

 テーミアスと一緒にそんな声がけすると、直ぐ様茂みの中から複数の白いもふもふが飛び出して来て、あっという間に囲まれてしまう。

 集まって来たのは、冬毛なウサギ達とひょろりとした体つきのテンの夫婦にテーミアス……ではなく普通(?)のリス達だ。

 少し大きめなキツネとかタヌキとかもいるが、小さいもふもふに遠慮してるのか茂みの方から顔だけ出している。

 そんな彼らから聞いた話によると──。



「前も来た白いうるさいのが暴れていった」


「白いのに捕まりそうになったけど、一緒にいたニンゲンのオスが逃がしてくれた」


「ヤクソウの生えてる所まで案内しなさいよ! あたしが来たのよ! と叫んでいた」


 最後のヒロインちゃんの発言は、テン夫婦の奥さんの方が物真似付きで教えてくれた。

 ちょろちょろと俺の体へ登ってきて、わざわざ抱き留めた腕の中で披露してくれたけど、結構似ていたのでびっくりしてしまった。

 誉めたら夫婦揃ってくねくねして喜んでいたのは可愛かった。

 その後、俺の肩の上から降り立ったテーミアスは、集まった動物達と鼻を突き合わせて情報収集をし始める。

 それを眺めていると、少し離れた場所にいたシムーンさんとティエラさんが足音を殺して近寄って来た。

「何かわかったの〜?」

「私達が近寄っても大丈夫ですか?」

 小さいもふもふが多いから遠慮してくれてたんだなぁとシムーンさんとティエラさんの優しさにほっこりしながら、へらっと笑って頷いて返す。

「殺気を飛ばしたり、大きな声を出さなければ大丈夫です。……それで、森を荒らしたのは、先に行ったあの子みたいです。採集する植物を探すのに、あの子達に聞きたかったみたいですけど」

 その二人へ向けて説明しながら、可愛らしい会議中なもふもふ団子を見ると、俺の声が聞こえていたらしく全員揃ってこちらを見ていて全力で首を横に振っている。

「大声出すから警戒させてしまったんですね」

「逃げ回るから隠れてる場所から追い出そうとしたってこと〜? 馬鹿じゃん」

「直接攻撃してないだけ、まだ可愛げはある……のでしょうか?」

 俺の説明を聞いて、シムーンさんとティエラさんは顔を見合わせて、渋い表情をしながらそんな会話をして、首を傾げている。

 黙って二人の会話を聞いていた俺は、くいくいとズボンを引っ張られていることに気付いて、視線をそちらへ向ける。

 そこにいたのは、後ろ足で立ったウサギ達だ。仲良く前足で俺のズボンを引っ張っていたらしい。

「情報交換は終わったのか?」

「ぢゅっ!」

 ウサギ達に話しかけたつもりだったが、彼らが答えるより早く急いで肩に戻って来たテーミアスが答えてくれる。

 それはいいのだが……。

「…………ったく、急ぎ過ぎたな?」

「ぴゃ……」

 俺の肩へ戻ろうと急いだ結果、目測を誤ったのか俺の顔面に貼りついたテーミアスが、先ほどの一鳴きは何だったかと思うような情けない声で鳴いて申し訳無さそうに肩へと移動した。

「ぢゅぢゅー、ぢゅっ!」

「そっか、ありがとな。じゃあ、行きましょう」

 道すがらテーミアスには必要な植物を説明してあったため、さっきの情報交換で生えている場所を知ってるか聞いてくれたそうだ。

 その上道案内も先客避けもしてくれるという話なので、遠慮なく甘えることにしてもふもふ達に付いていこうとした俺を、ゆるーく苦笑いしたシムーンさんが止める。

「ごめんね〜、妖精ちゃん。ぼく達、話が全くわからないんだけど〜」

「え? あ、そうですね、みんなちょっと控えめな声ですもんね」

 先ほどのテーミアスほどではないが先走ってしまったことに気付いててへへと照れ笑いした俺に、

「いや、そういう問題……なの〜?」

「私に振られてもわからないですよ」

 また顔を見合わせたシムーンさんとティエラさんは小声で何か会話して、俺の方をちらちらと見ている。

「えぇと、この子達は俺が探してる植物の今現在生えている場所を知ってるので、案内してくれるって言ってます」

 その視線に照れ臭さを感じながら、俺は軽くどやっと胸を張ってもふもふ動物達の有能さをアピールをする。

「ぢゅっ!」

 俺を真似たのかテーミアスも肩の上でどやっとして、足元の動物達も倣ってそれぞれ前足を上げたり、尻尾をピーンとしたりしてたり……とりあえず可愛い光景が広がる。

 シムーンさんとティエラさんにもその可愛らしさは効果絶大だったようで、二人揃って頬を緩めている。

「「可愛い(です)」」

「先客にも会わないようにしてくれるって言ってくれたんで、早速行きましょう」

 揃った誉め言葉に、我が意を得たりと笑いながら、俺は動物達に囲まれた状態で歩き出す。

 頬を緩めていたシムーンさんとティエラさんも、数歩離れてついて来てるのでこのままの速度で進んでも大丈夫そうだな。


「妖精ちゃんが、マジ妖精ちゃんしてる〜」

「いい加減、その呼び方は止めて欲しいんですが」

「えー、どう見ても妖精ちゃんでしょ〜」

「ジルヴァラは自分が呼ばれてると認識してないようですが?」

「え?」

「気付いてなかったんですね、やっぱり」


 実はそんな密やかな会話はバッチリ聞こえてしまってる。

 一応シムーンさんへのフォローになるかわからないが、変な呼び方には気付いてたんだよ。

 下手に突くと大怪我しそうだから、基本的に聞こえないふりでスルーしてたけど。



 そのことを伝えられない時点で、全くフォローにならないことに気付くのは目的地に到着した後だった。

「よ……ジルちゃん、後でその子達撫でたりしても大丈夫〜?」

 動物達の案内によって必要とする植物を採集して行く途中、俺への呼びかけを『ジルちゃん』に変えたシムーンさんが話しかけてきたと思ったら、ワクワクとした表情で動物達を見て、そんなことを訊ねてきた。

「乱暴にしなければ撫でてもいいよって言ってますから、シムーンさんなら大丈夫ですね」

「あはっ。うん、優しくするね〜」

 俺の答えに何故かふはっという感じで笑ったシムーンさんは、ほんのりと頬を染めて嬉しそうに笑って動物達を見ている。

 そんなに触りたかったのかと思った俺は、自分は今からでも平気っすという見た目とそぐわない体育会系な返事と共に立候補して来たウサギを抱き上げ、シムーンさんへ手渡す。

「へ? え? なにこれ」

「ウサギです。お尻からこう包むようにして、落とさないよう気を付けてあげてくださいね」

 きょとんとしたシムーンさんにくすくすと笑いながら、シムーンさんがウサギを抱きとめてくれたのを確認して手を離す。

「ふわぁ〜、見て見てティエラ、この子、ちょーもふもふふわふわ〜」

 感動した様子でウサギを抱っこするシムーンさん、抱っこをされてふんふんと得意げに鼻をひくつかせているウサギ、どちらも無邪気で可愛い。

「……可愛いなぁ」

 そんな気持ちがポロッと洩れた呟きを聞き止めたテーミアスは、



「自分はもっと可愛いから撫でてもいいんだぞ」



という台詞と共に、野性何処やったというお腹見せポーズで俺に撫でるように催促してきたりもしたが、概ね平和な採集となった。




 なるはずだった。




「あー! こんな所にいたのね!」



 少し離れた場所からでもよく聞こえる、そんな叫び声が聞こえてくるまでは。

いつもありがとうございますm(_ _)m


平和な空間に嵐乱入です←


ヒロインちゃんはどうしてもゲーム脳なので、ちまちま見分けて薬草採集とか苦手です。


ゲームなら同じ箇所に生えてて、サクッと採って終わり。

ゲームではモン◯ンなイメージな採集でした。


感想などなど反応ありがとうございます(^^)


反応いただけると嬉しいです(*´∀`)

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