246話目
前書きに書くようなことではないですが、メール執筆出来なくなってしまったのが、本当に不便です。゜(゜´Д`゜)゜。
知らずにメールで送ってしまい、何処行った?と探すこと小一時間、やっとメール執筆機能がなくなったというのを知りました(´・ω・`)
パソコンのない私にはとても助かる機能だったんですけどね。
「……………………何か用ですか」
ヘルツさんの怒鳴るような声が聞こえた後、かなりの間が空いてから主様から出たのは、誰が聞いても気持ちの入ってないことが丸分かりな面倒そうな問いかけだ。
なぁっ!? とか即座に反応したのが微かに聞こえたので、ヘルツさんは無事みたいだけど、かなりぷるぷるしてそうだ。プリュイとは違う意味で。
主様のローブの中で苦笑いしていると、今日は俺の首筋で眠っていたテーミアスが目を覚まして、状況がわからず不思議そうに「ぢゅ?」と短く鳴いている。
テーミアスは俺が家にいる間は、探検と称して一匹であちこち出歩いている
たまに変な所へ入ろうとしてプリュイに捕獲されて叱られそうになると、俺の所へ慌てて逃げ込んで来て可愛らしいアピールをしてくる。
そうするとプリュイからはそれ以上怒られないと学習してしまったらしい。
ちなみに昨日は、ちらっとだけナハト様とイオの顔を物陰から見て、あっという間に姿を消してしまった。
俺に付き合ってくれてるし、子供嫌いな訳じゃないとは思うんだけどな。
「お客さんが来てるんだよ」
可愛らしく小首を傾げるもふもふな友人に小声で説明していると、今度はヘルツさんより落ち着いている男性の声が聞こえてくる。
「親父は少し黙っててくれ。あー、幻日様、先日うちの元・メンバーがジルヴァラへ迷惑をかけてしまったんだ。それで、リーダーである親父と共に改めてジルヴァラへ謝罪をさせてもらいたいんだが……」
「どうぞ」
ファラドさんの申し訳無さそうな台詞に対する主様の答えは、布越しでもわかるほどに乾き切っていて素っ気無い。
その上、主様は玄関の扉を開けた位置から動いてない気がする。
ファラドさんの声も少し離れた位置から動いてないと思う。
「いや、その、だから……」
ファラドさんとしては「どうぞ」と言われたからには、中へ通されるか俺を連れて来てくれるかと思ったんだろうが、主様はその一言を言い放って会話を終了させたつもりらしい。
俺に謝罪したい→『どうぞ』(謝罪を受け取った)→さっさと帰れ。
みたいな感じかもしれない。
そういえば、俺は酔っ払って寝ちゃったから、主様にきちんと何があったか説明してないもんな。
主様からしたら、突然自分を嫌ってる相手が来て理由のわからないことを言ってる状況だから仕方ない……のか?
身を隠した状態で頭を悩ます俺だったが、テーミアスから「お前が出てけばいいだろ」という至極真っ当な忠告をもらってハッとする。
懐に押し込まれ隠されたせいで妙に悩んでしまったが、相手は顔見知りなヘルツさんとファラドさんで、話題の中心は俺なんだから俺が出て行くのが一番話が早いよな。
「主様、ヘルツさんが俺に何かする訳ないだろ? いい加減出してくれよ。主様が二人を家の中へ入れたくないなら、ここで話を聞くからさ」
ローブの内側でぺたぺたと主様の胸元を軽く叩いてアピールし、一番平和であろう提案をしたのだが、主様は無反応だ。
ヘルツさんとファラドさんのいる方からは「なっ!?」と驚きの声が聞こえて来たから、これだけくっついてた主様に聞こえなかったなんてことは無かったはず。
見えないけど、たぶんすんっとした表情で立ってるんだろうなぁとため息を吐いていると、テーミアスが俺の耳元でコソコソと主様を動かすための入れ知恵をしてくる。
「え? 俺がそれ言うのか? ……わかったよ」
俺がためらってると、小さな手で遠慮なく耳を引っ張られるので、俺は色々諦めて主様の胸元へぴたりと頬を寄せる。
その瞬間、ドクリと耳元で心臓が脈打つ音がした気がするけど、たぶん緊張している俺自身の鼓動だろう。
「ぬしさま……無視しないで? 俺、泣いちゃう……」
テーミアスに言われた通り、精一杯甘えた声で泣き落とししてみたが、そのテーミアスからは「ぢゅぅ」と思い切り下手くそだと呆れきった感想が来た。
無駄に俺が恥ずかしい思いしただけじゃないかとテーミアスを睨んでいると、不意に肌に触れる空気の温度が変わり、視界も一気に明るくなる。
眩しさにしぱしぱと瞬きを繰り返していた俺は、こちらを見て目を丸くしているヘルツさんとファラドさんに向けて、ひとまずへらっと笑いかけておいた。
出してもらえたからには一応効果はあったのかと恐る恐る主様の顔を見上げると、すぐにその美麗な顔が近づいて来て左右の目尻に何度も唇が触れてくる。
くすぐったさから首を引っ込めると、逃げるなとばかりにぎゅっと抱きすくめられてしまい、
「──泣くな」
と耳元でド低音で囁かれてゾクッとしてしまった俺だった。
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あうあうしながら、主様からちゅっちゅっと音がしそうな軽いキスを受けていた俺は、はたと今の状況に気付いて何度目かわからない接近をしてきた主様の顔を手で押し返す。
もちろん嫌な訳じゃないし、そんなに力は込めてないが、拒絶の意思はしっかりと伝わったらしく主様からじとりとした視線を向けられる。
「がはは、ジルぼうずに嫌がられてるじゃねぇか!」
俺がフォローするより早く飛んで来たのは、豪快な笑い声と面白くて堪らないと丸分かりなヘルツさんのよく通る声だ。
「……いや、親父もよくエレクトに嫌がられてるからな?」
苦笑いしたファラドさんがボソリと突っ込むと「うるさい! あれは照れ隠しだ!」と、ヘルツさんからの教育的指導が入った。
「……ロコ」
「俺は別に嫌じゃないから。ヘルツさん達と話せないから止めただけだよ」
しゅんとぽやぽやしなくなった主様に、しっかりと嫌じゃないアピールをしようと主様の頬にキス……は難しいから、頬をぴたっと付けて軽くすりすりとしてから顔を離す。
嬉しそうにぽやぽやしてる主様の頬はプリュイに負けないぐらいつやつやのもちもちだった。
おぉと思いながら主様の頬と触れていた自分の頬に触れた俺は、ちょっとした親子喧嘩をしているヘルツさんとファラドさんへ視線をやる。
ファラドさんはきちんと髭を剃っているが、ヘルツさんの顎には以前と同じように無精髭が生えている。
フシロ団長も髭を生やしてるから頬擦りされてるとジョリジョリするけど、綺麗に整えられているのからそんなに痛くはない。くすぐったいけど。
でもヘルツさんの無精髭はまばらだし、チクチクしてそうだから、小さな女の子は痛がりそうだ。
「ヘルツさん、ファラドさん、こんにちは。謝罪は聞こえたから、もう気にしないでいい……ですよ?」
そんな考察をしながら、これ以上ヘルツさんをここに置いておくと主様と全面戦争とかしそうなので、話を進めてしまおうと話しかける。
ヘルツさんにはタメ口だったけど、ファラドさんには丁寧に話しかけていたから口調が迷子になる。
ヘルツさんは「ん?」という顔をしたが、ファラドさんはすぐに理由を察してくれたようでヘルツさんとよく似た笑顔を見せてくれる。
「ジルヴァラ、私にも親父と同じ話し方で構わない」
「んあ? そういうことか! こいつはそんなこと小さなこと気にしないから、おれと同じように話していいぞ……それより、幻日。いい加減、ジルぼうずを離せ。嫌がられてただろ」
ファラドさんの有り難いお言葉に乗っかろうとした俺より早く、ヘルツさんがハッとした様子でファラドさんを見て笑い…………主様を睨んでそう言った。
たぶん自分が娘ちゃんに嫌がられてるのに〜っていう八つ当たりだな、これは。
「ロコは嫌がってません」
主様はふふんと微笑んで言い返すと、口喧嘩した子供のようにぷいっとヘルツさんから顔を背ける。
「なぁっ!?」
「ヘルツさん」
顔を赤くしてぷるぷるとしだしたヘルツさんに、俺は自らの頬を撫でながらヘルツさんを呼ぶ。
本当は近づいてしっかりと説明したいけど、ヘルツさん達は結界でこれ以上は入って来れないし、俺の方からは主様が降ろしてくれないため近寄れない。
「なんだ、ジルぼうず。そいつから離れたいなら、いつでも大歓迎だ。うちの息子になればいい」
「ありがとう、その気持ちだけもらっておく……って、主様、そんなつもりは全くないからしまおうとしないでくれ!」
角が立たないような答えが気に食わなかったのか、額面通り受け取って危機感を覚えたのかは不明だが、再びローブの懐にしまわれかけた俺は、必死に犯人である主様を止める。
かなり不服そうにぽやぽやしてるが、とりあえず止まってくれたので、俺はふぅと息を吐いてヘルツさんの方を改めて見て、もう一度頬を撫でてみせ、
「……あのさ、もしかしてだけど娘ちゃんは、ヘルツさんの髭がチクチクして痛いんじゃないか?」
で、俺より年下でまだ「ぱぱきらーい」とかなりそうもない女の子が嫌がりそうな原因を伝えてみる。
「え」
「……確かに痛がってたな」
固まるヘルツさん。
納得するファラドさん。
どうやら心当たりがあるみたいだし、これで少しは娘ちゃんから嫌がられるなくなると良いけど。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)
更新頻度落ちないように頑張りますが、メール執筆機能がなくなったのはかなり痛いです(´・ω・`)
他の方はどうされてるのか……。




