240話目
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ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる主様の腕の中で待機していると、玄関のベルが鳴って来客を告げる。
俺は何とか主様の腕の中から抜け出すと、パタパタと玄関へと走って扉を開ける。
玄関のベルは実は結界内なので、玄関のベルを鳴らせるイコール主様に許可された相手なので扉を開ける動作にためらいは一切ない。
「ジル、来たぞ!」
「おまねきいただき、ありがとうございましゅ……す」
開いた扉の先にいたのは、もちろん待ち人の二人とそれぞれの付き添い──ナハト様の付き添いは執事のヘイズさんとイオの付き添いは元冒険者な店員のニウムさん──の計四人だ。
いつも通りなナハト様とかしこまって可愛らしく挨拶をしたイオに、俺はパッと笑顔を浮かべて挨拶をして招き入れる。
「いらっしゃいませ、ナハト様、イオ。ヘイズさんとニウムさんもいらっしゃいませ!」
ナハト様とイオはもうすでに雪遊びする気満々な格好で、俺と同じようにもこもこするぐらい着込んでいる。
そのもこもこな二人に負けないぐらいにもこもこな俺は、もこもこな二人に両側から手を握られたので、三人並んで家の中をてぽてぽと歩いていく。
玄関に入らず直接庭へと行くルートもあったが、掃き出し窓……って名前だったと思うけど、そこからも庭へと出られるし、二人の持って来た荷物もあるようなので一回屋内へと入ってもらったのだ。
ちなみに二人が持っていたのはお土産だそうで、今現在は着替えとかの荷物と一緒に付き添いの大人組が持ってくれている。
その渋いイケオジコンビな大人組は、落ち着いた余裕のある大人の男って感じの笑い方で俺達を見守っている。
「ロコ……」
主様もいつまでも心配してないで、二人を見習って落ち着いて見守っていて欲しいものだ。
「うわ、本当に真っ白な雪がこんなに積もってるぞ!」
「綺麗だね、ジル!」
「だろ? 主様が降らせてくれたんだぜ?」
庭へと突撃して、一面の真っ白な雪に見惚れてるナハト様とイオに、俺はついつい主様が降らせてくれたと強調して自慢してしまったが、二人は気を悪くする様子もなく、キラキラとした眼差しで主様を見る。
「そうなのか!」
「幻日様の魔法すごい!」
「へへ、そうだろ? 主様、ありがとな!」
手放しで感心するナハト様とイオに我が事のように嬉しくなって笑み崩れた俺は、こちらをじっと見守っている主様に気付いて感謝を告げる。
それを聞いた素直でいい子なナハト様もイオも主様を見て、
「ありがとうな!」
「ありがとうございます!」
と自然な様子で感謝を口にし、俺達は三人で揃ってぺこりと主様へ頭を下げる。
主様は少し戸惑ったようにぽやぽやしていたが、怒っている訳ではなさそうだったので、俺達は顔を見合わせて笑い合うとそのまま踵を返して手を繋いだまま雪へと突撃した。
「「あ」」
二人のお守りなイケオジコンビのそんな声が聞こえた気もしたが、雪に埋まって大笑いしている俺達にはよく聞こえなかった。用事があるなら声をかけてくるだろう。
さすがに繋いだ手を離して起き上がった俺達は、全員揃って雪まみれだ。
お互いその姿を見て笑い合っていると、初対面なイオを慮ったプリュイがそっと触手だけで登場して「アラアラ」と雪を払って去っていく。
「ジル! 今のが、ジルが大好きなプリュイ?」
子供に怯えられそうな登場をしたプリュイに、イオは可愛らしくまん丸に目を見開き、興奮した様子で俺に詰め寄ってくる。
「そうだよ」
怯えられるかなとほんの少しだけ心配しながらも、俺がプリュイ大好きなことが伝わるように笑顔で頷いたのだが。
「ジルの言ってた通り、青くて綺麗でぷるぷるしてたね!」
返ってきたのは弾かれたような無邪気そのものな満面の笑顔だ。そこに嫌悪や恐怖は一欠片もない。
俺の心配は杞憂だったらしい。……別の意味で危機感ないのでは、とちょっと心配になったので、後で
「だろ? 昼ご飯の時にでもゆっくり紹介するからさ」
「うん! 楽しみにしてる!」
俺は安堵からへらっと笑って、本当に楽しそうに笑ってくれているイオと笑い合う。
そこへ、
「なぁ、ジル、あれってなんだ?」
と、ナハト様の不思議そうな声が聞こえてきて、俺はナハト様のいる方を見る。
ナハト様の視線の先にあったのは、立ち並んだ三体の雪だるまだ。正確に言うと、真ん中の小さな雪だるまにはさらに小さな雪だるまが付いているんだが、それはさておき俺はナハト様の疑問に答えるべく口を開く。
「それは雪だるまだよ。真ん中のが俺で、くっついてるのはテーミアス。両側にある綺麗な丸いのが主様で、ちょっとボコボコなのがプリュイなんだ」
「へぇ、雪で作った人形ってことか。確かに顔もあるし、目がちゃんとそれぞれの色になってるんだな」
「本当ね! お日様の光を反射してとっても綺麗!」
近寄って雪だるまを示しながらちょっとドヤッとして説明してしまったが、ナハト様もイオも感心した様子で雪だるまを誉めてくれたので、段々と照れ臭くなった俺は二人から視線を外しながら鼻の下を擦って誤魔化しておく。
視線を外した際に、見守ってくれている付き添いイケオジコンビが視界に入ったのだが、彼らも雪だるまを見ながら顔を見合わせて何事か話している。
さすがに大人相手にドヤッとやれるような出来ではないので、俺はあちらの意識を雪だるまからそらすべくナハト様とイオに話を振る。
「せっかくだから、二人も雪だるま作ろうぜ?」
「いいな、楽しそうだ!」
「あたしは可愛いの作りたい」
見守る対象の二人が作り始めれば、イケオジコンビの意識は絶対そちらへ向かうだろうというのもあるが、単純に皆でわいわい雪だるまを作りたかった。
プリュイと一緒だとどうしてもプリュイが手を貸してくれるから、あまり作った感がなくサクッと作れてしまったので正直味気なかったのだ。
このメンバーなら良い感じに楽しくわいわい作れるだろう。
間違っても方向性の違いとかいうアーティスティックなことでぶつかるなんてことも無いだろうし。
そう思っていたんだけど……。
「ジル! オレの雪だるまの方が格好いいよな?」
「ずるい! ジル、あたしの雪だるまの方が可愛いでしょ!?」
初対面ではナハト様に対して遠慮があったイオも、すっかりナハト様の仲良くなったみたいで良かったです。
「「ジル!」」
両側からそれぞれ俺の手を握って詰め寄ってくるナハト様とイオの迫力に押されて、思わず脳内で妙なナレーション流して笑っていたら、焦れた二人から揃って名前を呼ばれる。
笑って誤魔化すという平和的解決策は許されないらしい。
俺の手を握っているそれぞれの手は、夢中になって雪だるまを作っていたため俺と同じように冷えている。
一旦ナハト様の手を離した俺は、まずはイオの両手を取って、ハァと息を吹きかけて温めてあげながらイオの作った雪だるまを振り返る。
「そうだな、イオの雪だるまはイオらしくて可愛らしい」
大まかなところは俺も手伝った少し不格好なイオの雪だるま。
イオのこだわりで頭は他の雪だるまと比べて、頭を小さめのバランスで作ってあり、ニウムさんが何処からか取り出した綺麗な茶色のボタンで目を作り、雪で作ったリボンが頭に飾られている。
「そうでしょ?」
頬を真っ赤にして自慢気に笑うイオに対して、ナハト様が視界の端で落ち込んでいるのが見えたので、俺はイオに頷いてから手を離す。
で、落ち込んでいるナハト様の手を取り、イオと同じように冷え切っている手に息を吹きかけて温める。
「な、な……っ」
やたらと驚いているナハト様の手を離してへらっと笑いかけた俺は、ナハト様の仕上げた雪だるまを見やる。
「イオのは可愛い。で、ナハト様の雪だるまは格好いいよ」
ナハトの様の雪だるまは、俺として作られた雪だるまより少し大きめで、顔は木の枝を駆使してキリッとした表情をしてる……気がする。
「だから、どっちが……なんて決められない」
ずるい言い逃れに聞こえるかもしれないが、これが俺の正直な気持ちだ。
視界の隅っこの方で、イケオジコンビが微笑ましげに見てきていて、若干居たたまれない気分になる。
ナハト様とイオは少し困惑した様子で無言のままお互いをちらちら見ていたが、先に動いたのはイオだ。
「……そうね、確かにナハト様の雪だるまは格好いいかも」
ニコッと可愛らしく無邪気に笑ってナハト様の雪だるまの格好良さを認めるイオ。
やっぱり女の子の方が精神的に大人びてる……というより、イオの素直な性格が出たんだろう。
すぐにナハト様の方も、
「あ、ありがと。……イオの雪だるまは可愛らしいと思うぞ」
と誉められたことへのお礼と、そつなくイオの雪だるまを誉め返してたけど。
「ふふ、ありがとう! リボン、頑張ったのよ?」
「確かに良く出来てると思う。オレも顔つきを格好良くするのに苦労したんだ」
「ナハト様の雪だるまは、キリッとしてて、強そうね!」
「へへ、そうだろ?」
お互いの雪だるまを誉め合うナハト様とイオは、無邪気で可愛らしく……でも俺も何となく二人に対抗したくなってしまい……。
「プリュイの作ってくれた主様の雪だるまは、綺麗な真ん丸なんだぜ? それで、目は主様がそれぞれの色の石を……」
と、最終的に雪だるま自慢に参加し、皆でそれぞれの雪だるまを誉めあう大会みたいになってしまい、イケオジコンビはその間もずっと微笑ましげに見守ってくれていた。
いつもありがとうございますm(_ _)m
大人気ない某赤い人が、雪だるま自慢に参加したくてうずうずしてると思います。もちろん自慢するのはジルヴァラだるまです!←
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