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239話目

お読みくださり、ありがとうございますm(_ _)m

「ふぁ……っ」

 カチリとスイッチが入るような目覚めを迎えた俺は、主様の寝顔を堪能してからその腕の中からそろそろと抜け出す。

 最近、朝方は主様の眠りが浅くなるのか、三回に一回ぐらい腕の拘束が強まって抜けられなくことがあるので、抜け出す技術が磨かれている気がする。

 気配を殺すのは冒険者として役に立つし、ちょうど良いかもしれない。

 本日は何事もなくベッドから降りて伸びをしていると、部屋の何処からかテーミアスが飛んできて定位置となった肩へと着地する。

「おはよ」

「ちゅっ」

 一鳴きしたテーミアスは俺の頬へ頭を擦り寄せて挨拶を返してくれ、そのまま肩の上で毛づくろいを始める。

 その姿を横目で見ながら俺も毛づくろい……もとい身繕いするため洗面所へ向かって歩き出す。

 途中いつも通りプリュイと遭遇するも、今朝は肩の上のテーミアスが教えてくれたので埋まることはなく、直前で停止して朝の挨拶を交わす。

「おはよ、プリュイ」

「オハヨウございマス、ジル」

 挨拶を返すプリュイの表情が何処か残念そうに見えたので、俺は悩むことなく思い切りよく抱き着いて埋まっておく。

「フフ」

「ぢゅ……」

 プリュイは困ったようにふるふるしながらも、微かな笑い声を洩らして俺を受け止めてくれたが、巻き込まれた形になったテーミアスは少し迷惑そうに鳴く。

 本人(?)によると、毛皮がベタベタしそうで嫌だったらしい。

 テーミアスはすぐにプリュイから抜け出してまた念入りな毛づくろいを始めるが、乱れた気配どころかさらふわになっていたらしく「ぢゅぢゅ!?」と驚きの声を上げている。

「ツイデに綺麗にしマシタ」

「そっか、ありがとな、プリュイ。……良かったな」

「ぴゃっ!」

 綺麗になった毛皮に満足したのか、嫌そうだったテーミアスもビシッと前足を挙げて感謝の言葉を告げる。

 可愛らしい見た目にそぐわない男前な感謝の言葉に、俺はくすくすと笑いながら手触りの良くなったテーミアスの毛皮に指を突っ込む。

 そういえばアシュレーお姉さんが毛を刈った場所はもうわからない。

 アシュレーお姉さんの切り方が上手かったのか、テーミアスの毛の伸びる速度がとてつもなく早いのか。

 そんなくだらないことをしばらく真剣に考え、最終的にどうでもいいかとテーミアスのもふもふな腹毛をもふる。

 その間にもプリュイは俺を体へ埋めたまま移動してくれていたので、気付くとほとんど歩かず洗面所まで辿り着いていた。

 テーミアスと並んで水で顔を洗い、揃ってプリュイから水気を拭ってもらい、俺は寝癖も直してもらう。

 前回切ってから結構経ったので、そろそろ髪を切った方が良いかもしれないなぁと鏡を見ると、当然だが黒髪銀目の幼児がこちらを見つめ返してくる。

 俺がへらっと笑うと、鏡の中の幼児も笑う。

 以前はほんの少し違和感があったが、今ではそれも感じなくなった。


 これが『今』の俺だ。


「ぢゅっ!」


「ふっ……!」


 俺が鏡を見て似合わないシリアスをしていたら、鏡に向かって肩の上でポーズを決めたテーミアスをバッチリ目撃してしまい、その可愛らしさに思わず吹き出してしまう。

 そして、笑われたのが気に入らなかったテーミアスによって尻尾で叩かれながらも、俺は笑いを引っ込められず「ごめんごめん」と謝る声も笑い声混じりになる。

 その後何とか表情を引き締めたが、すっかりテーミアスの機嫌を損ねてしまい、最終的に蜜がけナッツを袋一杯貢ぐということで許してもらえた。

 朝ご飯の準備を終えた俺は、起きて来ない主様を迎えに自室へと向かっていた。

 主様を起こすと聞いたテーミアスは、ここに残って一足先に朝ご飯を食べてると訴えたので、俺と主様の朝ご飯の脇にテーミアスの分の朝ご飯を置いておいた。

 テーミアスは賢いのでつまみ食いしたりしないので見張ったりしなくても大丈夫なのだが、プリュイとしては心配らしくテーミアスの死角から触手を伸ばして見張るようだ。

 プリュイはうちの家事担当だから、見た目ただの小動物なテーミアスに家の中を汚されそうで気になるのかもしれない。

「主様ー、朝ご飯出来たぞー」

 寝汚い主様は遠くから声をかけたぐらいでは起きないので、声をかけながら勝手知ったる……というか、自分の部屋の中を歩いていって、ベッドに上体を乗せるようにして主様の寝顔を覗き込む。

「主様、起きて」

 寝顔すら完璧だなと毎朝恒例となってる鑑賞タイムを過ごしていると、主様の瞼が震えて宝石色の瞳が現れる。

 いつ見ても吸い込まれそうな瞳に見惚れていると、主様の顔が近づいて来てゼロ距離で宝石色の瞳を覗き込むことになる。

「おはようございます……」

 寝起きで少し掠れた声の挨拶に、主様の瞳に見惚れてボーッとしていた俺はハッとして、ふるふると頭を振る。

「おはよ! 朝ご飯出来てるから……っと、俺は行かないからな? 一人で顔洗いに行けるだろ?」

 挨拶を返しながら、抱き上げて来ようとする主様の腕を避けて素早くベッドから離れると、捕まる前に宣言しておく。

「………………はい」

 かなり間を感じる返事と共にゆっくりと頷いて主様が動き出したのを確認して、俺は部屋を後にする。

 向こうで主様を待つつもりだったのだが、俺が暖炉前のテーブルにセットされた朝ご飯の席に戻ったのと主様がやって来たのはほぼ同時だった。

「そんなに急がなくても大丈夫だったのに。待たせないように急いでくれたんだな」

「…………はい」

 恐縮する俺に対して一瞬主様が「え?」という表情をしてから頷いた気もしたが深くは気にはしなくて大丈夫だよな。

「冷めないうちに食べようぜ。いただきます!」

「……いただきます」

 今日の朝ご飯は、定番な和食の朝ご飯を目指してみた。残念ながら味噌汁はない。

 玉子焼きに、焼き鮭。ほうれん草もあったから、胡麻和えにしといた。

 汁物はかき玉スープにしたので、和食との相性も悪くない……はず。

 ま、主様ならポタージュ付けようが、カレースープとかにしようが気にせず食べてくれる気もするけど。

 俺は箸で食べているが、主様は少し悩んでからフォークで食べ始めている。

 プリュイによると、こっそり箸使いの練習をしているらしいので、その内和食の時には箸を使う主様が見られるかもしれない。

 そうなったら以前から言ってたけど、うどんを手打ちして食べるのも楽しそうで良いな。

 プリュイに手伝ってもらえば、力がいるうどんを打つ作業も何とかなるだろうし。

 そんな楽しい想像をしながら、便利な魔道具のおかげで美味しく炊けた白飯を味わっていると、テーブルを挟んで食事をしている主様からガン見されている。

 なんだろうと思っていると、主様の前に置かれた皿がほとんど空になっていることに気付いて納得する。

「ほら、これも食べていいよ」

 へらっと笑って俺の分の玉子焼きを箸で持って主様の方へと差し出すと、主様はぽやぽやと嬉しそうに大きめに切られた玉子焼きを一口で食べてしまう。

 美味しそうに玉子焼きを食べる姿を見ながら、ほっそりした見た目に反して大食漢な主様には、おかずもボリューム増やすべきだったかと反省する。

 白飯は漫画みたいなどんぶり山盛りにしてあったのに、それはもう綺麗に空になってるし、玉子焼き一切れぐらいじゃ足りないか。

「まだ食べ足りない?」

 玉子焼きを食べ終え、僅かに残っていた皿の中身も綺麗に空にした主様に心配して問いかけると、主様は俺の方を見て数度瞬きを繰り返して、ふわりと微笑んで、



「ロコが足りません」



と言い放った。

 珍しく軽口が出るぐらいだからとりあえず足りたんだなと一人で納得して頷いた俺は、テーブルの上を片付け始める。

 すぐにプリュイの触手が伸びて来て、俺がまとめた皿をお盆に乗せてキッチンへと運んでいってくれたので、俺は台拭きでテーブルを拭いていく。

 主様はというと、軽口が不発だったのが不服な様子でムッと小さく洩らして、テーブルを拭いていた俺の側へと寄ってくる。

「ほら、もう少ししたらナハト様達来るから……って、言ってるそばから……持ち上げられたら準備出来ないだろ」

 遊ぶのは俺なので、主様にもてなしとかしてもらうつもりはないが、何の前置きもなく抱き上げられてしまい、脱力しながら主様の様子を窺う。



「……補給します」



 何を? と訊ねる前に、主様の顔が近づいて来て、あむあむと頬を何度か甘噛みされ、オマケとばかりに鼻先を噛まれて、流れで軽く唇を重ねてから主様の顔は離れていく。



「えー……あー、うん……」



 色々突っ込みたかったが主様がとても満足そうにぽやぽやしていたので、俺は短く唸って突っ込むことを放棄して、もうすぐ来るはずの友人達をもてなす方へ思考を向けることにするのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


キスまでの流れがしれっとし過ぎてるので、誰かが指摘しない限りはジルヴァラは自覚しないかもしれません←


感想などなど反応ありがとうございます(*´∀`*)


反応いただけると嬉しいです(*>_<*)


そして、総合的なポイントみたいなやつ2000到達!皆様のおかげです。

ありがとうございます!

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[一言] 幼妻を幻視
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